血栓症の原因や引き起こされる病気とは?セルフチェックリストと治療法・予防法を解説
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血栓症の原因や引き起こされる病気とは?セルフチェックリストと治療法・予防法を解説
「エコノミークラス症候群」という病気を聞いたことがある人は多いことでしょう。これは、血栓症という血栓によって血管が詰まることで引き起こされる病気です。血栓症は、動脈・静脈どちらにも起こる可能性があり、脳梗塞・心筋梗塞など生命にかかわる重篤な症状を引き起こす恐れがあります。「血栓症ってなに?」「血栓症でどんな病気になる?」「血栓症を予防するには?」など、疑問を持たれる人もいることでしょう。
そこで今回は、血栓症とはなんなのか、血栓症の原因や引き起こされる病気、治療法・予防法の解説と、血栓症リスクがわかるチェックリストを紹介します。
血栓症とは
血栓症とは、何らかの原因によって血液が固まって血栓になり、それによって血管が詰まってしまう病気の総称です。血栓によって血管が詰まると血流が阻害されてしまい、各部位や臓器に栄養が行き届かなくなります。その結果、機能障害が発生したり、各組織の壊死が引き起こされたりします。
血栓症は最悪の場合、死に至ることもあるため、早期発見・早期治療はもちろん、定期的な検査による兆候の発見や予防を行うことが大切です。
血栓症には2種類ある
血栓ができる場所はさまざまであり、血栓症はできる場所によって大まかに2種類に分けられます。動脈に血栓ができる場合は動脈血栓症、静脈にできる場合は静脈血栓症です。動脈・静脈血栓症のそれぞれの原因や引き起こされる代表的な病気について解説していきます。
動脈血栓症の原因と引き起こされる病気
心臓から全身へ血液を運ぶための血管です。血液中には酸素や栄養素が豊富に含まれていて、身体の各組織へ必要なものを送り届ける役割があります。この動脈に血栓ができるものが、動脈血栓症です。
原因
動脈血栓症になる原因はさまざまあります。たとえば、血液中に脂質や糖が多いと動脈血栓症になりやすい傾向にあります。そのため、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病にかかっている人は動脈血栓症に注意が必要です。
また他にも、不整脈や弁膜症といった心臓機能に問題があるケースや、血管炎・血管内皮細胞の損傷など、血管に異常が発生しているケースでも動脈血栓症を発症しやすくなります。
代表的な病気:心筋梗塞・脳梗塞
心筋梗塞や脳梗塞は、動脈血栓症によって引き起こされる代表的な病気です。心筋梗塞は、心臓に栄養を送る冠状動脈に血栓ができた場合に引き起こされます。強い胸の痛みや吐き気・冷や汗、さらには呼吸困難といった症状があります。
脳梗塞は、脳に栄養を送る動脈に血栓ができた場合に引き起こされる病気です。脳は身体にさまざまな指令を送る役割がありますが、脳梗塞になるとその指令が身体の各部位に伝わりにくくなります。そのため、片側の手足が麻痺する、顔面の脱力・ろれつが回らないといった症状が出ます。
心筋梗塞や脳梗塞は生命にかかわるリスクが高い病気です。もし上記のような症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。
脳梗塞について詳しくはこちら
静脈血栓症の原因と引き起こされる病気
静脈は、血液が身体の各部位から心臓へ戻るときの血管です。身体中から二酸化炭素や老廃物などを回収し、肺・肝臓・腎臓など血液をきれいにする臓器を通って心臓へ戻ります。この静脈に血栓ができるものが、静脈血栓症です。
原因
動脈は心臓がポンプとなって血液を流していますが、静脈は筋肉を動かすときに起こるポンプ作用によって血液が流れます。そのため、身体をあまり動かさない状態が長期間続くと、静脈の血流は滞りやすくなり、血栓もできやすくなります。つまり、身体の筋肉を使わないことが、静脈血栓症の原因となるわけです。
たとえば、妊娠中やギプスの固定などで身体をあまり動かせない、デスクワークや飛行機移動で長時間座っているといった状態が続くと、静脈血栓症になりやすいです。また、肥満や筋肉が少ない人も静脈血栓症になりやすい傾向にあります。
代表的な病気:エコノミークラス症候群
エコノミークラス症候群は静脈血栓症の代表的な病気です。ふくらはぎは第二の心臓といわれ、歩くことで静脈の血流を促すことができます。しかし長時間同じ姿勢でいると足を動かさなくなり、ふくらはぎのポンプ機能が使えません。そのため、静脈に血栓ができやすくなります。
長時間の飛行機移動が原因で起こることが多いため、エコノミークラス症候群といわれています。しかし、飛行機だけでなく長時間の車や電車移動、デスクワークなどでも発症する可能性があります。突然の呼吸困難、胸の痛み、歩行時にすぐ息切れをするなどいつもと違う異常を感じるようであれば、病院を受診しましょう。
エコノミークラス症候群について詳しくはこちら
血栓症の治療方法
血栓症の治療法は、第一選択として薬物療法が選択されます。動脈と静脈で生成される血栓が異なるため、治療薬も異なるものを使用しなければなりません。
動脈血栓症
血流の速い動脈で生成されやすい血小板血栓を溶かすため、「血栓溶解薬」という薬を使用します。
静脈血栓症
血流の遅い静脈ではフィブリン血栓が生成されやすく、血液が固まらないように「抗凝固薬」を使用します。重度の血栓症または、薬が合わない場合などは外科手術やカテーテル治療によって血栓を取り除きます。
血栓症のリスクセルフチェック
血栓症は外側からは見えない血管の病気であり、誰にでも起こり得る可能性があります。特に静脈血栓症は長時間のデスクワークや飛行機・車移動といった、身近な行動が原因で引き起こされます。
以下のチェックリストで、ご自身の血栓症リスクについて確認してみましょう。
- ● 血栓症になったことがある・なった家族がいる
- ● 骨折によりギプスを巻いている
- ● 心臓・肺・腎臓の病気がある
- ● 手術・病気により長期入院した・している
- ● 高血圧・脂質異常症・糖尿病である
- ● 妊娠中・出産直後である
- ● デスクワークがほとんどである
- ● バス・飛行機などで長時間・長距離移動が多い
- ● 運動することがほとんどない
- ● 避難所などあまり動かせない環境にいる
- ● 喫煙習慣がある
もし複数の項目が当てはまるようでしたら、血栓症に注意しましょう。次に予防法について解説しますので、参考にしてみてください。
血栓症の予防方法
血栓症は、血液が固まって血管を詰まらせてしまう病気です。そのため、水分不足には注意しなければなりません。適度に水分補給をして、脱水状態にならないようにしましょう。また、動脈・静脈はそれぞれ異なる特徴・役割がありますので、血栓症の予防法も以下のように違いがあります。
動脈血栓症の予防
動脈血栓症は、血管の異常や血液の質が悪くなることで引き起こされます。そのため、運動・食事・生活習慣の改善を行うことが予防のために重要です。ウォーキングや水泳などの軽度の運動を1日30分程度、継続して行いましょう。また、バランスのよい食生活を送ることや睡眠をしっかりとる、禁煙するなどの生活習慣の改善も心がけましょう。
静脈血栓症の予防
静脈血栓症は、長時間身体を動かさないことで引き起こされます。特に歩かずにずっと座っている状態が続くと静脈血栓症のリスクが高まります。予防のためには、適度な歩行をしたり、定期的に立ち上がって身体を伸ばしたりするとよいでしょう。飛行機の中など立ったり座ったりが難しい場合は、足首や足の指を動かすだけでも、ふくらはぎのポンプ機能を促されます。また、毎日ストレッチをして筋肉を柔らかくしておくのもおすすめです。
定期検査で予防と早期発見
日頃の血栓症も大切ですが、定期的な検査も大切です。定期的に人間ドックを受ければ、血管の状態が診られるため、血栓症のリスクを把握できます。また、血栓症を早期発見し、悪化する前に早期治療することも可能です。
まとめ
血栓症は血液中に血栓ができ、血管が詰まってしまうものであり、それによってさまざまな病気が引き起こされます。動脈と静脈それぞれに血栓症があり、引き起こされる病気には違いがあります。いずれにしても、重篤なケースでは生命にかかわります。今回の記事を参考に、日頃から予防を意識し、早期発見・早期治療を目指しましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師