水腎症はどんな病気?原因・症状・治療とかかりやすい人の特徴について解説

  • クリニックブログ
2024/04/30

水腎症はどんな病気?原因・症状・治療とかかりやすい人の特徴について解説

背中や脇腹の急な痛み、血尿・頻尿などの症状があれば、それは腎臓や尿管に尿が溜まる水腎症という病気かもしれません。腎臓の病気といわれると「ちゃんと治る?」「どんな症状がある?」「怖い病気は隠れていない?」などの不安や疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
 
そこで今回は、水腎症とはどんな病気なのか、その原因や症状、かかりやすい人の特徴、治療法について解説します。

 

水腎症とは

水腎症とは、尿管が何らかの原因で詰まってしまって、腎臓に尿が溜まり拡張してしまう病気のことです。
 
尿は腎臓で作られ、腎臓下部にある腎盂から尿管を通って膀胱に送られ、尿道から体外へ排出されます。腎臓から尿が通る道である尿路が詰まると、尿の排出が阻害されます。その結果、腎臓や尿管が拡張して水腎症となり、痛みなどの症状が引き起こされます。

 
 

水腎症の原因

水腎症は、尿管・膀胱・尿道などの尿の通り道が狭くなる・詰まることが原因で引き起こされます。これらが狭くなる・詰まる原因としては、大きく先天性のものと後天性のものに分けられます。

先天性

生まれつき尿道が狭い、尿管の機能がうまく働かないといったものが先天性の原因です。特に小児の水腎症では、腎臓や尿管に何らかの先天的な異常があるケースがほとんどとされています。遺伝が関係しているとも考えられていますが、詳しいことはまだわかっていません。

 

後天性

何らかの病気がきっかけとなって尿の通り道が狭くなる場合は、後天性の原因となります。たとえば、腎臓結石や尿路結石によってできた石が、尿路を詰まらせてしまって水腎症になることがあります。また、高齢男性の場合は前立腺肥大症や前立腺がんなど、前立腺の問題が水腎症の原因になることも少なくありません。他にも、尿管ポリープ、腎盂尿管がん、膀胱がんなどの腫瘍が原因となることもあります。
 
放射線治療や膀胱・尿管の動きを鈍らせてしまう薬剤など、他の病気の治療が影響して水腎症になるケースもあります。

 

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水腎症になりやすい人の特徴

水腎症は、小児から成人まで、幅広い年齢層の人がかかる病気です。一般的には、小児であれば女児よりも男児の方が多く、成人は男性よりも女性の方が多い傾向にあるとされています。また、先天性の原因の水腎症は子どものころに発覚することが多く、後天性の原因の場合は成人が発症することがほとんどです。

 
 

水腎症の症状

水腎症になると、以下のような症状が出ることが多いです。
 

  • ● 腹痛、脇腹の痛み(腎臓の痛み)
  • ● 吐き気や嘔吐
  • ● お腹にしこりができる
  • ● 高熱が出る
  • ● 冷や汗が出る
  • ● 尿量が減る
  • ● 倦怠感がある

 
水腎症は一般的にこうした症状が出ますが、発症原因によって症状の現れ方が異なります。たとえば、尿路結石などが原因で尿の通り道が塞がれて、水腎症が急速に進行した場合、急に背中や脇腹に激しい痛みを生じます。逆に進行がゆっくりの場合は、初期症状がほとんどありません。たとえば、前立腺肥大症などでゆっくり進行する場合、徐々にうずくような痛みが出てきたり、お腹にしこりのようなものができたりして水腎症に気づくことが多いです。


 

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水腎症を放置するリスクと合併症

水腎症は自覚症状がほとんどないようなケースでは、自然治癒することもあります。しかし、何らかの症状を感じている場合は早めに治療を行いましょう。そのまま放置すると、腎臓の機能が低下して、急性腎不全を引き起こすリスクがあるためです。
 
水腎症の合併症には、腎機能障害や尿路感染症があります。特に尿路感染症は発症しやすい合併症です。発症すると血尿や膿尿、発熱といった症状がみられるようになります。


 
 

水腎症の検査方法

水腎症が疑われる場合、以下のような検査を実施します。

各種画像検査

CTや超音波により腹部を撮影して腎臓の拡張の有無やその程度、結石や腫瘍の有無などを確認します。小児の場合、膀胱尿管逆流症など似ている病気があります。そのため、排尿時のX線検査や、利尿レノグラムといった特殊な検査をして、他の病気との鑑別を行う場合もあります。
 

尿・血液検査

水腎症の疑いがある場合、血液検査により腎機能が低下していないかをチェックします。炎症反応をみることで、併発しやすい尿路感染症の評価もできます。尿検査では尿中のタンパク質・血液の混入、細菌の有無、その他異常な細胞の混入について調べます。
 
また、水腎症とあわせて膀胱がんが疑われるケースもあるため、尿中・血液中に問題のある物質が含まれていないかもチェックします。

 

内視鏡検査

内視鏡により膀胱・前立腺・尿管の状態を直接調べることもあります。尿道から内視鏡を挿入し、水腎症が引き起こされる原因となる病気がないかチェックします。


 
 

水腎症の治療方法

水腎症はさまざまな原因で引き起こされる病気であり、治療法もその原因や重症度によって異なります。

先天的な原因であれば手術

先天的な尿路異常によって水腎症が引き起こされ、腎機能低下が著しい場合は尿管狭窄拡張術や腎盂形成術などの手術が必要です。
 

後天的な原因を取り除く

後天的な病気が原因で水腎症が引き起こされている場合、その病気を治すことが水腎症の治療となります。たとえば、結石が原因であれば、経過観察をして結石が自然排出されるのを待つか、結石を砕いたり尿路を広げたりする治療を行います。前立腺肥大症や前立腺がんなどが原因であれば、薬物療法や手術によりその原因を取り除きます。
 

治療後の注意点

水腎症の治療後、尿に血液が混じったり排尿時に違和感を生じたりすることがあります。また、水腎症の代表的な合併症である尿路感染症を引き起こすこともあり得ます。個人差はありますが、血が混じる・排尿時の違和感については1週間~数ヶ月程度で治まります。尿路感染症については、抗菌薬の服用により改善していきます。
 
水腎症の治療後は、こうした注意点はあるものの、治療によって腎機能が回復すれば通常の暮らしに戻れるようになります。


 
 

水腎症は予防できない?

水腎症の原因はさまざまあり、すべてのケースに効果的とされる予防法はありません。特に、先天的な原因の場合、予防は不可能です。
 
ただし、結石については水分不足が影響しますので、適度な水分補給が水腎症予防に効果的と考えられます。また、前立腺肥大症などの病気が重症化する前に治療することで、水腎症予防または悪化するのを防ぐことも可能です。


 
 

まとめ

水腎症は、子どもから大人まで誰もがかかる可能性があります。水腎症を引き起こす原因は多岐にわたるため、治療するにはその原因を特定することが大切です。自覚症状がほとんどないケースでは自然に治ることもありますが、症状がある場合は放置すると腎臓に大きな負担をかけてしまい、腎機能を低下させてしまいます。そのため、背中の痛みや吐き気・血尿・頻尿など異常を感じたら、なるべく早く病院を受診して、早期治療を心がけましょう。


 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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