高齢者に多い「心房細動」の症状とリスク、予防法
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高齢者に多い「心房細動」の症状とリスク、予防法
心房細動は、高齢者に多く見られる不整脈の1つです。高齢化に伴い、日本では心房細動の患者さんは増加傾向にありますが、心房細動を治療せずに放置していた場合は、命にかかわる病気を招く恐れもあります。
今回は、心房細動の原因や症状、リスク、予防法などについてご説明します。
心房細動とは
心房細動とは、心房が十分な収縮をしないことで脈が不規則になる不整脈の1つです。正常な場合、心臓は右心房の上にある洞結節と呼ばれる部分から規則的な電気信号が発生し、心室に伝えられます。
しかし、心房細動では左心房にある肺静脈付近から不規則な電気信号が発生するために、心房内の電気信号が乱れ、心房自体が小刻みに震えた状態となってしまうのです。心房が痙攣すると、脈が不規則に速くなります。
心房細動の症状
心房細動は脈が不規則になり、速くなるため次のような症状が表れます。
- ● 動悸
- ● 息切れ
- ● 胸の不快感
- ● めまい
- ● 失神
- ● 全身の倦怠感
ただし、中には自覚症状が表れないケースもあります。また、心房細動は進行性の病気であり、初期には発作が起きる頻度は少ないものの、徐々に発作の頻度は高まり、慢性化する可能性があります。
心房細動の原因
心房細動の最も大きな原因は加齢です。そのため、心房細動は60歳以上の高齢者によく発症します。また、心臓に疾患がある場合や高血圧、甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などの病気がある人も発症しやすくなります。
また、肥満や飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足などの生活習慣がある人も心房細動になりやすいといわれています。
心房細動のリスク
心房細動になると、心房が小刻みに震え、心房内で血液がよどむことから血栓ができやすくなります。血栓が血流にのって脳に運ばれ、脳で血管が詰まると脳梗塞を発症する恐れがあります。心房細動によって生じる血栓は大きいことが多く、脳に与えるダメージも大きくなる可能性もあり、場合によっては死に至ることもあります。
また、心房細動の状態が続くと、心臓に負担がかかります。そのため、心臓の機能が低下し、心臓から十分な血液を送り出せなくなる心不全を発症する可能性もあります。
認知機能低下のリスク
心房細動によって小さな血栓ができると、脳に血栓が詰まり、小さな脳梗塞が多発するといわれています。また、心房細動によって心機能が低下し、脳に送られる酸素が少なくなることなども重なり、心房細動になると認知機能が低下する可能性があります。
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心房細動の検査・診断
心房細胞が疑われる症状が確認できる場合は、心電図検査を行います。心電図は、短時間の心電図記録を検査するものです。そのため、常に心房細動が続いている人であれば通常の心電図で心房細動を検出することができます。しかし、心房細胞が持続しない発作性心房細動の場合は、24時間心電図を記録できるホルター心電図や症状が出た際に記録装置を胸に当てる携帯型振動計などを用いて心房細動を検出しなければなりません。
また、その他の病気ではないことを調べるために心エコー検査や血液検査なども行います。
心房細動の治療法
心房細動では、脳梗塞のリスクを抑えるために血液をサラサラにして血栓を作りにくくする抗凝固療法と心房細動をコントロールする治療を行います。
抗凝固薬の服用
抗凝固薬は血栓をできにくくする薬です。抗凝固薬を毎日服用し、血液を固まりにくくします。ただし、抗凝固薬には出血しやすくなるリスクもあるため、患者さんの状態を確認しながら処方されます。また、抗凝固薬は心房細動そのものを治療する薬ではないため、心房細動が改善されるまで継続して服用しなければなりません。
レートコントロール
電気信号をコントロールし、心拍数が速くなるのを抑える薬を服用することで、心不全を予防し、動機や息切れなどの症状の軽減を目指す治療法です。飲み薬にはジギタリス製剤、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などと呼ばれるものが処方されます。
リズムコントロール
心房細動の発作を予防し、正常の拍動を維持する治療です。心筋の興奮を抑制する抗不整脈薬を服用し、心房細動を起こりにくくします。
カテーテルアブレーション
心房細動の原因となっている肺静脈周辺の心筋を内部から焼き切る治療法です。心房細動のほとんどは肺静脈から発生する異常な電気信号が原因となっているため、カテーテルを用いて肺静脈の出口を焼き切り、異常な電気信号が伝わらない状態にします。
カテーテルアブレーションが成功した場合、薬物治療が不要となる場合もあり、心房細動の根本的な治療法として一般的に行われている治療法です。
外科治療
胸を開き、心臓を確認しながら電気信号が伝わらないようにする手術を行います。歴史のある治療法ですが、患者さんの負担も重くなるため、カテーテルアブレーションが実施されるようになった今ではあまり実施されていません。ただし、他の外科手術が必要になる場合などでは同時に行うことが多くなっています。
心房細動の予防法
心房細動は加齢によって発症するケースが多くなりますが、高血圧、糖尿病、肥満などの病気がある人が発症しやすくなっています。過度な飲酒や脂っこい食事の摂取、喫煙などの生活習慣は、心房細動を招きやすくなります。規則正しい食事と適度な運動を心がけることが心房細動の予防につながります。
また、心房細動は、自覚症状が表れないケースもあります。定期的に健康診断などの検査を受けておくことが早期発見には重要です。
まとめ
心房細動は、高齢者に見られることが多い不整脈の1つです。動機や息切れなどの自覚症状が表れることもありますが、自覚症状がないケースもあります。心房細動になると血栓が作られやすくなり、脳梗塞や心不全、認知症などのリスクを高めます。
心房細動を防ぐためには、日ごろからバランスの取れた食生活と適度な運動をする習慣を身につけ、血液の循環をよくしておくことが大切です。また、心房細動は進行性の病気であり、早期に治療ができれば脳梗塞のリスクも抑えることができます。自覚症状がない場合にも健康診断などを定期的に受けるようにしましょう。
不整脈について詳しくはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師