パートナーと一緒の治療が必要となる「尿道炎」とは

  • クリニックブログ
2024/04/30

パートナーと一緒の治療が必要となる「尿道炎」とは

尿道炎とは、尿道に細菌などが感染して発症する病気です。尿道炎のすべてが性感染症ではありませんが、多くの場合、性行為を通じて感染していることが分かっているため、尿道炎に感染した場合にはパートナーと一緒に治療を受ける必要があります。
 
では、尿道炎に感染した場合、どのような症状が見られ、治療しなかった場合にどのようなリスクが発生するのでしょうか。今回は、尿道炎の原因や症状、治療法、治療せずに放置することのリスクなどについてご説明します。

 

尿道炎とは

尿道炎とは、尿の通り道である尿道が細菌などに感染すること発症する感染症です。尿道炎は男性の病気に対して用いられるもので、尿道が短い女性の場合、尿道だけに炎症が起きることがほぼないため、尿道炎と診断されるケースはほとんどありません。

 
 

尿道炎の原因

尿道炎の原因は、細菌やウイルス、真菌などが尿道に感染することです。尿道炎には、性行為を介して感染する「性感染症」と肛門など他の部位を不衛生にしたことが影響して感染する「異所性感染」があります。

 
 

尿道炎の種類と症状

尿道炎は原因となる菌によって次の3つに区分されます。

クラミジア性尿道炎

クラミジアは、日本で最も多い性感染症の1つです。クラミジア・トラコマティスという菌が性行為により粘膜に感染することで発症し、クラミジアに感染すると、男性はクラミジア性尿道炎、女性はクラミジア性子宮頚管炎となります。
 
クラミジア性尿道炎では、排尿時に痛みや違和感を覚えるようになり、尿道からネバネバとした透明や白っぽい分泌物、膿が出てくるケースもあります。ただし、人によっては症状が見られないケースもあります。
 

 クラミジア感染症について詳しくはこちら

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淋菌性尿道炎

尿道が淋菌に感染することで発症する尿道炎です。淋菌性尿道炎も性行為で感染します。
 
クラミジア性尿道炎に比べると、潜伏期間が短く、排尿時の痛みや違和感も強くなる点が特徴です。また、クラミジア性尿道炎では白や透明な分泌物が見られますが、淋菌性尿道炎の場合は乳白色や黄色の膿が見られ、分泌量も多くなります。
 

 淋菌感染症について詳しくはこちら

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非クラミジア非淋菌性尿道炎

クラミジアや淋菌以外の大腸菌、アデノウイルス、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス原虫などが原因で発症する尿道炎を指します。非クラミジア非淋菌性尿道炎も性行為によって感染すると考えられています。症状は比較的軽く、排尿時の痛みや尿道からの分泌物、尿道のかゆみなどが見られます。しかし、クラミジア性尿道炎と同様に症状が軽いため、自覚せずに、感染に気が付かないケースが少なくありません。

 

 マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症について詳しくはこちら

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尿道炎の検査

尿道炎が疑われる場合には、問診を行い、尿中PCR検査で原因となる菌の有無を確認します。尿中PCR検査は、特有の遺伝子を増幅させる精密検査です。また、尿道から分泌物が出ている場合には、分泌物を採取して原因となる菌を顕微鏡で確認する検査や細菌の培養検査を行うこともあります。


 

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尿道炎の治療法

尿道炎の治療は、原因菌に効果のある薬剤の投与が行われます。そのため、まずは検査で尿道炎の原因菌を特定することが大切です。クラミジア性尿道炎や非クラミジア非淋菌性尿道炎にはマクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が用いられます。また、淋菌性尿道炎の場合には、抗生物質の服薬以外に点滴、筋肉注射による治療法もあります。
 
昨今では、抗生物質に耐性を持つ耐性菌も増えており、症状が改善しない場合には使用する薬剤を変更しなければなりません。また、治療後は再度検査を行い、原因菌が消失しているかどうかを確認します。


 
 

尿道炎の治療で大切なこと

多くの場合、尿道炎は性行為で感染します。そのため、尿道炎の症状が見られる場合には、パートナーも感染している可能性があります。クラミジア性尿道炎や非クラミジア非淋菌性尿道炎は、人によっては症状が出ないケースがあり、男性側が治療を受けても、パートナーが感染した状態であれば再び尿道炎を発症する可能性があるのです。
 
尿道炎に感染した場合には、症状が見られない場合でも、パートナーも性感染症の検査を受けることが大切です。


 

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尿道炎を放置するリスク

尿道炎の治療をせずに放置していると、尿道が狭くなってしまうケースがあります。尿道が狭くなった場合、膀胱や腎臓に感染が発生するリスクが高まります。また、淋菌性尿道炎では、尿道の周囲に膿がたまって尿道の壁の一部が膨らみ、感染を起こす場合もあります。その膨らみが大きくなり、破裂して皮膚などに向けて穴が開くと、異常なルートから尿が漏れ出すケースも出てきます。
 
また、尿道から侵入した細菌が精巣上体にまで到達すると、精巣上体が細菌感染する精巣上体炎になるリスクもあります。女性の場合は、クラミジアや淋菌の感染は不妊や子宮外妊娠につながるリスクもあるため、尿道炎を疑う場合には、パートナーも一緒に治療をするようにしましょう。


 
 

尿道炎の予防法

尿道炎のほとんどは、性行為による粘膜の接触で感染します。尿道炎を予防するためには、性行為の際にコンドームを使用することが大切です。また、不特定多数との性行為も感染のリスクを高めます。
 
また、性行為以外にも肛門など尿道周辺が不衛生な状態であった場合も、大腸菌などによって尿道炎になる可能性があります。免疫力を高めるために、規則正しい生活をおくったうえで、入浴やシャワーによって清潔な状態を保つことも大切です。


 
 

まとめ

尿道炎の多くは、クラミジアや淋菌などの細菌に感染することで発症する性感染症です。尿道炎を発症した場合、パートナーも感染している可能性が高いため、パートナーと一緒に治療を受けなければ再感染のリスクも高まります。
 
尿道炎の治療を受けず、放置していた場合には精巣上体まで炎症が広がったり、膀胱や腎臓まで炎症が広がったりする可能性があります。また、女性の場合は避妊や子宮外妊娠につながるリスクもあるため、尿道炎の疑いがある場合には、必ずパートナーと一緒に検査を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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