INDEX
1.
尿路性器クラミジア感染症とは
2.
症状
3.
検査方法と検査ができる時期/潜伏期間
4.
治療方法
5.
予防方法
尿路性器クラミジア感染症はクラミジア・トラコマティスによる感染症です。主に性交によって伝播し尿道、子宮頸管、咽頭、直腸、肛門に感染します。オーラルセックス(咽頭性交)やアナルセックス(肛門性交)により咽頭や直腸といった性器外感染も増えてきています。また、妊婦では子宮内感染や新生児へ感染を起こすことがあります。 クラミジア感染症はすべての性感染症の中で最も罹患率の多い性感染症です。男性、女性ともに症状がない無症候性感染者が多くいます。2020年(令和2年)の全国統計では、性器クラミジア感染症は約28,000件と報告されており(以下「性器クラミジア感染症推移」参照)、年齢別では20代前半にピークがあります。
男性ではクラミジア性尿道炎、精巣上体炎を発症します。クラミジア性尿道炎は感染後1~3週間で発症するとされています。主な症状は、排尿時痛(軽いことが多い)、排膿ですが、淋菌性尿道炎に比べて症状は軽いです。排尿時痛は程度によって排尿時の違和感や、単に「むずむずする」といった訴えをする方がいます。痛みが広がると、会陰部や陰囊の症状を訴える方もいます。排膿に関しては、白色〜透明の分泌物が尿道から出現し、粘稠度が低く量も少ないことが多いです。「気づいたら下着が濡れていた」という訴えで受診されることもあります。尿道を陰茎腹側より外尿道口に向かって圧迫することにより分泌物を認めることがあります。一方で、無症状にも関わらず検査でクラミジア感染が判明することも多いです(無症候性感染といいます)。精巣上体炎になると精巣上体の腫れや軽度の痛みや発熱があります。
女性では子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患を発症します。クラミジア性子宮頸管炎は感染後1~3週間で発症します。帯下(おりもの)の変化、不正性器出血があることもありますが、ほとんどは無症状です。クラミジアを治療しないと子宮頸管→子宮→卵管→腹腔内と上行性感染し、上腹部まで感染が広がると肝周囲炎を起こします。下腹部痛や上腹部痛があり性交渉歴がある女性はクラミジアを検査する必要があります。卵管炎の後遺症として卵管通過障害や卵管閉塞を起こし、異所性妊娠(子宮外妊娠)や不妊症の原因となることもあります。
オーラルセックスが一般的になってきているため、男女とも咽頭感染が増えています。無症状の方がほとんどですが、喉の痛みや腫れなど風邪に似た症状や喉がイガイガするなどの症状を起こすことがあります。性器クラミジア感染症より治療に時間がかかると言われています。 また、クラミジアを含む体液がついた手で目を擦ったりすると、結膜炎になることがあります。 また、アナルセックスにより直腸・肛門クラミジアを発症する可能性があります。排便時出血や粘血便、肛門痛の症状がある方もいますが、無症状の方が多いです。 妊婦では絨毛膜羊膜炎を起こして流早産の原因になったり、分娩時に産道感染を起こし、新生児結膜炎や新生児肺炎の原因にもなったりします。
潜伏期間は淋菌よりも長く1~3週間程度です。症状などがあり来院した場合は、男性は尿や尿道からの分泌物の検査を行います。女性は子宮頸管擦過の検査を行います。性器クラミジア感染症と診断された方は必ず咽頭検査も行います。うがい液で検査できます。クラミジア直腸炎を疑う時は直腸擦過検体や大腸内視鏡検査を行います。肛門クラミジアの検査は肛門擦過検体を用います。確定診断にはPCR (拡散増幅検査)が最も用いられます。PCRは検査結果が出るまで数日要しますが、クラミジアに感染している患者さんの見逃しが少なく、淋菌の同時検出も可能です。パートナーが陽性であれば、無症状でも必ず検査を行う必要性があります。
1
医師問診
2
男性は尿や尿道からの分泌物、女性は子宮頸管擦過による検査
3
1週間後結果説明
抗菌薬の内服が基本となります。使用する抗菌薬としては、マクロライド系、テトラサイクリン系、キノロン系が有効とされており、最もよく選択されるのはマクロライド系に分類されるアジスロマイシン水和物(AZM)を1回のみ内服するという方法です。高濃度で血中に長く留まるため、内服量が足りずに治療が失敗に終わる事例が少ないという利点があります。1回の治療で陰性化しないこともあるので、内服から3週間以上経過してから陰性化したか再検査が必要です。 また、再感染を防止するためパートナーの診断・治療も必要です。女性の場合は不妊症や子宮外妊娠の原因になり得るため、無症状であっても産婦人科を受診して診断・治療を受けた方が良いでしょう。治療中は原則として性交渉は控えるべきです。パートナーと共に治療し、陰性化を確認した後に性交渉を再開しましょう。
性交渉(オーラル、アナル含む)では必ずコンドームを使用しましょう。最初から最後まで正しく使用しないと予防効果は低下します。また、不特定多数との性交渉は感染のリスクが高いため、控えましょう。
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