虫歯になるとどうなる?症状や治療法について解説
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虫歯になるとどうなる?症状や治療法について解説
虫歯といってもさまざまな状態があるため、虫歯を見分けるのは難しいといわれています。また、虫歯を放置することで、歯だけでなく身体にもリスクが生じることをご存知でしょうか。
本記事では、虫歯とはどんな状態か、放置することで起こるリスクを解説します。虫歯によって起こりうる症状や、虫歯の治療方法についても併せて解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
虫歯って何?
虫歯とは、医療用語で齲歯(うし)と呼ばれる状態です。「虫歯という言葉は知っているけれど実際にどんな状態かはあまりわかっていない」という方もいるかもしれません。ここでは虫歯とは何か、どのような人が虫歯になりやすいのかなどを詳しく解説していきます。
虫歯とは
虫歯はエナメル質や象牙質が、口の中の虫歯菌の酸によって溶かされることで起こります。20歳以上の9割以上が虫歯を経験しているとされており、20歳以上では3割の方が虫歯を持つにもかかわらず、治療をせずに放置していることが分かっています。
また、文部科学省によると虫歯を有する方の割合は幼稚園26.49%、小学校39.04%、中学校30.38%、高等学校39.77%です。
虫歯のメカニズム
虫歯は虫歯菌によって起こりますが、私達の口の中にはさまざまな細菌が常に生息しています。このうちミュータンス菌といわれる菌が虫歯の原因菌として知られています。
ミュータンス菌は、食べ物や飲み物に含まれる糖分を栄養にして増殖するのですが、増殖するときにグルカンという物質が放出されます。グルカンはミュータンス菌が歯に付着するのを助けます。付着し、増殖しているミュータンス菌がプラークとよばれるものです。
ミュータンス菌は同時に乳酸も作り出し、歯を酸性にして歯の周囲のエナメル質や象牙質を溶かします。これが虫歯になるまでのメカニズムです。
虫歯になりやすい人
同じような生活をしていたとしても、虫歯になりやすい人となりにくい人がいます。虫歯になりやすいのは虫歯菌が活発に活動しやすい生活習慣の人です。この虫歯のなりやすさに影響するのが歯みがきと食生活です。
歯みがきをする習慣があまりない人や磨いていたとしてもうまく磨けていない人は、プラークをしっかりと除去できておらず、虫歯になりやすくなります。また、頻繁におやつや間食を摂る人の場合、ミュータンス菌の栄養である糖分が頻繁に供給されるので、歯が溶かされやすくなったり、細菌の動きが活発になったりするのです。
ほかにも、歯以外の病気によって虫歯になりやすくなるケースもあります。例えば、病気によって唾液の量が少なくなると、口の中の細菌や酸を洗い流す力が弱くなるので、虫歯になりやすく、進行も速いです。
虫歯の原因
虫歯の原因はさまざまですが、最たる原因は3つあります。
ひとつ目は砂糖などの糖分です。
甘いものを食べ過ぎたりジュースを飲み過ぎたりすると虫歯になりやすくなります。砂糖の摂取量ももちろん虫歯に影響しますが、摂取回数の方が影響は大きく、砂糖の摂取回数が多いと虫歯になりやすいです。
ふたつ目は歯の質です。
生えたばかりの歯は、石灰化という歯を硬くするための作業がまだ十分にできていないため、虫歯になりやすいです。
3つ目は虫歯の原因となるミュータンス菌の量です。
虫歯菌は砂糖を栄養に増えるので、歯磨きをして汚れや菌を取り除かなければ虫歯菌が増えます。細菌の種類によっては2時間で2倍に分裂する細菌もあるのです。
この3つの原因に加えて時間も関係しており、口の中に砂糖が残っている時間や虫歯菌が活動している時間が長いと、虫歯になりやすくなり、6ヶ月~12ヶ月以内には虫歯になるといわれています。3つの原因の内ひとつでもあれば、時間の経過とともに虫歯になっていくので注意が必要です。
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虫歯と知覚過敏の違いは?見分け方を紹介
虫歯は歯の痛みによって自覚する場合がありますが、同じように痛みが生じる状態に知覚過敏があります。ここでは、見極めるのが困難な虫歯と知覚過敏の違いについて解説します。
知覚過敏とは
知覚過敏とは、歯ブラシの毛先が触れたり、冷たい飲食物や甘いものが当たったりしたときに歯に一過性の痛みを感じることです。歯科医院で風を当てられた時に痛みを感じたことのある方もいるかもしれませんが、これも知覚過敏によるものです。
知覚過敏と虫歯の大きな違いは歯が溶けているかどうかです。知覚過敏は象牙質がむき出しになったことで歯がしみますが、虫歯のように歯が削れて象牙質がむき出しているわけではありません。
痛みの期間や程度
知覚過敏は一時的な痛みなので、上述した刺激がなくなれば、痛みもなくなるといわれています。一方で、虫歯は治療をしなければ、痛みは続きます。この点が大きな違いといえるでしょう。
また、知覚過敏は前歯や臼歯が好発部位となりますが、虫歯はどこでも痛くなります。この点も違いといえるのです。虫歯の場合は程度によっては痛み止めを飲まないと痛みが治まりませんが、知覚過敏なら飲まなくても治まります。
歯の見た目
虫歯になると歯の色は茶色くなったり黒くなったりします。また、進行するとぽっかりと穴が開く場合もあるでしょう。一方で、知覚過敏の場合は歯の見た目に大きな変化が見られません。ただ、歯肉の退縮によって知覚過敏が起きている場合には、歯の根元が露出していることがあります。
虫歯の症状と進行
虫歯は、進行度によって症状が異なります。虫歯症状と進行度を知っておけば、自分に虫歯の症状が出た時に、どのくらい進行しているのかが分かるかもしれません。
ここからは、虫歯の症状と進行度について解説します。
初期虫歯
初期虫歯とは、まだ完全に虫歯にはなっておらず、歯の表面のエナメル質が溶け出している状態のことをいいます。そのため、治療をしなくても元に戻る可能性が十分にある状態です。初期虫歯になったときには、初期虫歯となった部分が白くなります。歯の表面に穴は開いておらず痛みもないため、気づきにくいことが特徴です。
C1
初期虫歯よりも少しだけ状態が進行したものをC1と呼びます。C1は、歯の表面のエナメル質のみの小さな虫歯のことです。C1の時点でも自ら虫歯であることに気づきにくく、歯科医院で定期検診を受けて歯科医師から指摘されて気づく場合が多いです。
症状は初期虫歯で白くなっていた部分が茶色っぽくなるのみで、痛みは出ません。
C2
C2の状態に達すると、それまでエナメル質のみにとどまっていた虫歯が一気に象牙質まで進行します。象牙質は痛みを感じる部分なので、C2まで到達すると痛みを感じるようになり、虫歯に気付きやすくなります。
歯の表面に穴が開くこともありますが、穴が小さくても、奥まで広がっている可能性があることから、穴の大きさで虫歯の程度の判断はできません。エナメル質は硬いものの、象牙質はやわらかいため、エナメル質を越えた虫歯は一気に進行が加速します。
C3
歯髄にまで虫歯が達した状態がC3です。歯髄とはいわゆる歯の神経のことです。歯の神経に虫歯が到達しているので強い痛みを伴います。また、目で見てもはっきりとわかるくらいの穴が開いていたり、歯が黒ずんだりするのも特徴です。歯科医院で「歯の神経をとる治療をする」といわれた場合には、C3にあたると考えておいて良いでしょう。
C4
C4は虫歯の最終段階で、歯はすっかり溶けてなくなっており、歯の根っこの部分もほとんど残っていません。神経も溶けきっているので、歯の痛みも感じなくなります。痛みを感じなくなるので治ったようにみえますが、虫歯菌が完全に死滅しているわけではありません。
また、この状態で放置をし続けると歯の根の部分で膿が溜まって腐敗することがあり、これによって顎の骨が腫れたり、発熱を起こしたりする骨髄炎となるリスクが高まります。さらに、血管を通って虫歯菌が全身をめぐり、身体にさまざまな影響を引き起こすリスクが高まります。
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虫歯の治療
虫歯の治療方法は虫歯の進行度によって異なります。ここからは、進行度別に虫歯の治療方法を詳しく解説します。歯科医院に行った時にどのような治療を受けるのかが分からず不安という方はぜひ参考にしてみてください。
初期虫歯~C1
初期虫歯とC1の一部では、歯を削ることはありません。多くの場合が歯磨きで改善できます。そのため、歯科医院では歯磨きの方法を指導することが治療法として用いられています。また、歯科医師や歯科衛生士が歯のクリーニングをして歯垢やプラークをとることも初期虫歯~C1の治療方法の1つです。歯のクリーニングは治療だけでなく予防にもつながるので、積極的に行われる治療法です。
さらに、歯科医院によっては歯にフッ素を塗布して、溶けだした歯のミネラルが再び取り込まれるように促します。ただし、C1でも進行していてC2に近づいているという場合には、虫歯を削って除去し、樹脂製の詰め物をします。
「定期検診になかなか通えない」、「虫歯の進行が怖い」、「歯磨きをしっかりできない」というような場合には削る治療が選択されるケースが多いです。
C2
C2では、虫歯の部分を削って除去する治療が主流です。削ったあとは神経を保護する薬を詰めて様子を見てから詰め物をします。C1までの治療では樹脂製の詰め物を使うので、樹脂を注入して固めて治療は終了しますが、C2では削っている範囲が広いため、樹脂を詰めることはできません。
そのため、歯型を取って銀歯やコンポットレジン、セラミックなどの歯科材料を詰めたり被せたりして、歯の形を復元させる方法を行います。詰めたり被せたりする歯科材料の種類は保険適用のものから自費診療のものまであるため、歯科医師と相談のうえ決められます。
C3以上
C3以上となると、歯の神経まで溶けていることから、神経を抜く治療である抜髄が必要です。抜髄は麻酔をして行われ、その後は歯の根の中を洗浄、消毒する根管治療を行います。根管治療が終了したら歯の根の中に薬を詰めて、土台を作ったうえで先ほどと同様に、銀歯やコンポットレジン、セラミックなどの歯科材料を被せて治療終了です。
C4まで状態が進行した場合も同様に根元の部分に残った膿などを取り除き、洗浄や消毒をします。虫歯を放置して全身に症状が出ていたら、入院して抗生剤の点滴をしなければならない場合もあります。
虫歯を治療せずに放置するとどうなる?
虫歯を治療せずに放置していれば徐々に進行していき、最終的には歯および歯の神経が全て溶けてなくなります。また、全身に影響を及ぼすため、虫歯は放置せずに早期に治療をしなければなりません。
虫歯を放置する方のなかには、「痛みがなくなったから治ったと思った」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、痛みがなくなったのは神経がなくなったからで、虫歯はどんどん進行しています。痛みがなくなったから治ったとは思わずに、すぐに治療を受けましょう。
虫歯の予防方法
虫歯になりたくない人は予防をすることが非常に重要です。ここからは、虫歯の予防方法について詳しく解説します。虫歯の予防方法を実践し、虫歯のない健康的な歯を目指しましょう。
歯科医院を受診し歯の状態を把握する
まずは、歯科医院を受診して自分の歯の状態を歯科医師にチェックしてもらいましょう。初期虫歯やC1の虫歯は自分で気づくことは難しく、医師など専門家の目でなければ気づけない場合がほとんどです。この時点で気付ければ、軽い処置のみで虫歯の治療が終わります。また、C2でも人によっては症状を感じない人もいます。とくにC2からは一気に虫歯が進行するため、早期発見及び早期治療は不可欠です。
さらに歯科医院でクリーニングをしてもらったり、フッ素を塗布してもらったりすることで、虫歯が予防できます。歯科医院を定期的に受診して歯の状態をしっかりと把握し、その都度適切な処置をしてもらいましょう。
歯磨き
虫歯予防に歯磨きは最も重要です。特に初期の虫歯は歯磨きのみでも治せるため正しい方法でしっかりと歯を磨きましょう。基本的に食後はすぐに歯を磨くことを意識し、1日3回は必ず行いましょう。歯の表面の根元にブラシを直角にあてて、横に小刻みに動かし、一度に2本~3本の歯を磨くように意識をして奥歯から順番に磨いていきます。
この時に歯磨き粉を使用しても構いません。フッ素入りのものを使うと、再石灰化を促すため虫歯予防へとつながります。歯ブラシと併せてフロスを使うのも、虫歯予防に高い効果が期待できます。
食生活
いくらしっかりと歯磨きをしていても、日常的に甘いものをたくさん食べていたり、間食をしていたりすると、歯磨きしていても意味がありません。高頻度で食べていると、虫歯菌が酸を作り出せる状況が続いてしまい、常に歯を溶かしている状態となります。
砂糖の多い食事を食べ続けるのも同様です。そのため、間食は時間を決めて摂るようにしましょう。虫歯予防の観点からは甘い食べ物の摂取を控えるのも効果的です。また、よく噛んで食べて唾液の分泌を促すことで、唾液が歯の汚れを洗い流してくれるので、虫歯の予防につながります。
まとめ
虫歯は初期のうちは症状が全くでないため、自分で発見することは非常に困難です。しかし進行してくると、痛みが出たり歯が変色したりと、虫歯になっていることが分かります。虫歯が進行するほど、より多く歯を削らなければならなくなるため、なるべく早期に気づいて治療をするのがおすすめです。早期に気づくためには歯科医院で定期的な検査を受けることが必要です。
かかりつけの歯科を持ち、定期的に歯科を受診しましょう。また、歯磨きや食生活に注意することも虫歯の予防へとつながります。厚生省と日本歯科医師会は「80歳になっても20本以上自分の歯を保つ」ことを推奨しています。
虫歯を予防し、自分の歯をより多く、将来まで残していきましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師