マダニが原因で発症する「ライム病」の症状や治療法とは

  • クリニックブログ
2024/04/12

マダニが原因で発症する「ライム病」の症状や治療法とは

海外の有名アーティストがライム病に罹患したというニュースを耳にされたことがある方も多いのではないしょうか。欧米ではライム病に感染する人は年間数万人にも上り、重大な社会問題となっています。
 
ライム病は、マダニが媒介される人獣共通の細菌による感染症です。欧米ほどではありませんが、日本でも1986年以来、年間数十件のライム病感染者が報告されています。つまり、日本でもライム病に感染する恐れはあるのです。
 
今回は、マダニが原因で発症するライム病の症状や治療法などについてご説明します。

 

ライム病とは

ライム病とは、細菌の一種であるスピロヘータ科ライム病ボレリアに感染することで発症する感染病です。

ライム病はマダニが媒介する感染症

山に生息する鹿や野ネズミ、野鳥などはライム病ボレリアの保菌者であり、これらを吸血したマダニが人を咬むことによってライム病に感染します。ライム病を伝播するマダニにはいくつかの種類がありますが、日本ではシュルツェ・マダニと呼ばれるマダニが媒介するケースがほとんどです。
 
シュルツェ・マダニは、北海道から九州までの山間部に生息しており、北海道や青森県の一部では平野部にも生息しているといわれています。また、家庭内で生息している家ダニがライム病を媒介することはありません。

 

ヒトからヒトへの感染はない

ライム病は、ライム病ボレリアを保有するマダニに咬まれることでライム病ボレリアが体内に入り込み、発症する病気です。ライム病に感染したヒトからヒトにうつることはありません。

 
 

ライム病の症状

ライム病の症状は、感染からの時間の経過によって変わり、大きく3つのステージに分けられます。

感染初期(ステージ1)

マダニに刺されてから数日から数週間で発病します。初期段階では「遊走性紅斑」と呼ばれる皮疹が見られます。マダニに咬まれた部位を中心に赤く腫れ、周辺に紅斑が環状に拡大する状態です。また、筋肉や関節の痛み、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠感など、インフルエンザのような症状が伴うこともあります。

 

播種期(ステージ2)

感染初期の段階で適切な治療を受けずに放置しておくと、病原体であるライム病ボレリアが血液やリンパの流れに乗って全身に広がっていきます。遊走性紅斑が咬まれた部位以外にも表れ、関節痛や筋肉痛も強くなり、頭痛や動悸、手足のしびれ、不整脈、角膜炎、顔面神経麻痺、髄膜炎などさまざまな症状が見られるようになります。

 

感染後期(ステージ3)

感染後、数か月から数年が経過すると、症状は慢性化し、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎重度などが出現します。

 
 

ライム病の診断法と治療法

ライム病には、次のような診断法と治療法が用いられます。

ライム病の診断法

医療機関では、まず、山林などを訪れる機会やライム病が流行している地域に渡航していなかったかの状況を確認し、マダニに刺された可能性がないかどうかを問診します。また、ライム病感染初期の特有な症状である遊走性紅斑などの症状も確認します。
 
ライム病の診断には、病原体を検出する方法と血清を診断する方法があります。病原体の検出には、紅斑ができている部位の皮膚生検をし、培養検査を行う方法が行われます。また、ライム病ボレリアの遺伝子の有無を調べるためのPCR検査などを行うケースもあります。
 
ライム病ボレリアに感染した場合には、血液中にライム病ボレリアに対する抗体が生産されます。血清検査では、国内のマダニから感染した場合と海外渡航中に感染した場合に応じ、適した血清診断用抗原が異なり、欧州や国内での感染が疑われる場合には国立感染症研究所での検査が可能です。

 

ライム病は4類感染症

ライム病は感染症法において、4類感染症に定められている感染症です。そのため、ライム病と診断された場合には、診断した医師によって保健所への届け出が義務付けられています。
 

ライム病の治療法

ライム病は、マダニが媒介する感染症です。マダニからヒトへ感染するには、48時間以上の吸血が必要といわれているため、マダニが吸着していることに気付いた場合には早めにマダニを除去することが重要となります。ただし、マダニの腹部をつまんでしまうとマダニの体液が流入し、感染のリスクが高くなるため注意が必要です。
 
また、吸着から時間が経過するとマダニの口器部分が皮膚と硬く接着してしまうため、無理に引っ張ると口器が皮膚内に残ってしまうこともあります。マダニの口器などが皮膚に残ってしまった場合は、早めに医療機関での処置を受けるようにしましょう。
 
マダニに咬まれた後、ライム病を発症した場合には、抗生物質を用いた治療を行います。遊走性紅斑に対してはドキシサイクリン、神経症状に対してはセフトリアキソンという抗菌薬が第一選択となります。また、マダニに咬まれた際に、アナプラズマ症にも重複して感染していると疑われる場合には、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンが治療に用いられます。

 
 

ライム病の感染予防のためにできること

ライム病は、マダニに咬まれることで発症する感染症です。そのため、マダニに咬まれないように対策することがライム病の最大の予防法となります。マダニの活動期は、春から初夏、秋です。この時期に山林に出かけるときには、マダニに効く虫よけを使用するとマダニから身を守ることができます。
 
また、長袖、長ズボン、手袋、帽子などを着用し、長袖や長ズボンの裾を手袋や靴下の中に入れるなどして、肌の露出をできるだけ避ける服装を着用しましょう。衣服は、白っぽい色を選ぶと万が一、マダニが付着した場合に発見しやすくなります。


 
 

まとめ

ライム病は、マダニに咬まれることで発症する感染症です。海外では毎年数万件のライム病患者が発生しており、大きな問題となっています。日本でも、北海道から九州までの山林にライム病の病原体を媒介するマダニの生息が確認されており、年間数十件の患者が報告されています。
 
ライム病に感染した場合、遊走性紅斑などの皮膚症状のほか、倦怠感や頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛などのインフルエンザのような症状を発症する可能性があります。また、治療をせずに放置しておくと、紅斑が全身に広がり、筋肉痛や不整脈、角膜炎など、さまざまな症状を招く恐れがあります。
 
ライム病を予防するワクチンはないため、山間部に入るときには、虫よけをしたうえで肌を露出させない服装を選ぶなど、マダニに咬まれないような対策を取ることが大切です。
万一、マダニに咬まれた場合には早めに医療機関に相談するようにしましょう。


 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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