中性脂肪が高いと危険?基準値と健康に及ぼすリスクとは

  • クリニックブログ
2024/04/15

中性脂肪が高いと危険?基準値と健康に及ぼすリスクとは

健康診断や人間ドックの際に中性脂肪値が高いと指摘されたことはありませんか?中性脂肪が基準値を外れた場合、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。
 
今回は、中性脂肪の基準値と中性脂肪の増加が関係する病気についてご説明します。また、中性脂肪を減らすポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

中性脂肪とは

中性脂肪とは、肉や魚、食用油などに含まれる脂質です。中性脂肪は「トリグリセライド」とも呼ばれ、健康診断の結果では「TG」と記載されていることもあります。

中性脂肪は血中脂質の1つ

血液中の主な脂質は、中性脂肪、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸の4つにわけることができます。前述のように食品に含まれる脂質は中性脂肪であり、中性脂肪の多くは食事から体内に取り入れられます。中性脂肪は体を動かすための重要なエネルギー源として使われますが、摂りすぎた場合には皮下脂肪や内臓脂肪として体内に蓄えられます。
 

中性脂肪の役割

体は糖質を主なエネルギー源としていますが、糖質が不足した場合に用いられるのが中性脂肪です。中性脂肪は血液を通して全身に運ばれ、筋肉や臓器を動かすためのエネルギー源となります。また、中性脂肪は、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸などの摂取にも大切な役割を果たします。
 
その他、中性脂肪には体脂肪として体を寒さから守る働きや、内臓を外部からの衝撃から守る働きもあります。
 

メタボリックシンドロームの診断基準ともなる中性脂肪

体にとって大切な働きをする中性脂肪ですが、中性脂肪が過剰に増えてしまうと肥満の原因となり、生活習慣病を引き起こす恐れがあります。中性脂肪は血液検査で調べることができ、中性脂肪はメタボリックシンドロームの診断基準の1つにも使用されています。ここでは中性脂肪の基準値についてご説明します。
 

中性脂肪の基準値

日本人間ドック学会が示す中性脂肪の基準値は、空腹時30~149mg/dLです。150~299mg/dLは軽度異常、300~499mg/dLは要再検査・生活改善、29mg/dL以下、500mg/dL異常は要精密検査・治療と区分しています。
 
また、日本動脈学会では2022年に「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を改訂し、非空腹時の中性脂肪が175mg/dL異常の場合も高トリグリセライド血症の診断基準となりました。
 

高トリグリセライド血症

中性脂肪の値が基準値である150mg/dL(空腹時)または175mg/dL(非空腹時)を上回る状態を「高トリグリセライド血症」と言います。高トリグリセライド血症は、LDLコレステロールが基準値よりも多い「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが基準値よりも少ない「低HDLコレステロール血症」と並ぶ脂質異常症の1つです。

 
 

中性脂肪が高くなる理由とは

中性脂肪が高くなる原因には、生活習慣の乱れが大きく関係します。中性脂肪を高める生活習慣は、次のようなものです。
 

  • ● 食べすぎによるエネルギーの過剰摂取
  • ● 甘いものの摂りすぎ
  • ● 脂っこい食事の摂りすぎ
  • ● 炭水化物の摂りすぎ
  • ● アルコールの飲みすぎ
  • ● 運動不足

 
食事で摂った糖質や脂質、タンパク質は体内のエネルギー源として消費されますが、余った分は肝臓に送られます。肝臓ではこれらから中性脂肪を合成します。合成された中性脂肪は、血液の流れに乗って皮下脂肪や内臓脂肪となります。したがって、食べすぎは余剰なエネルギーを摂取することとなり、脂肪として体に蓄積してしまうのです。
 
また、肝臓でアルコールを代謝する際には、中性脂肪の合成が促進されるため、飲みすぎも中性脂肪を増やします。さらに、運動不足によってエネルギー消費量が低下すれば、食事から摂取するエネルギー量の方が多くなり、余剰なエネルギーが中性脂肪となってしまうのです。

 
 

中性脂肪の増加が招くリスク

中性脂肪が高い状態が続くと健康にさまざまな影響を与えます。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪が多い内臓肥満に、高血圧や高血糖、脂質代謝異常などが組み合わされた状態を言います。日本では、腹囲が男性は85cm以上、女性は90cm以上であり、これに加えて、血圧、空腹時血糖値、脂質のいずれか2つ以上が基準を上回るとメタボリックシンドロームと診断されます。
 
中性脂肪が高いとメタボリックシンドロームになる可能性が高くなります。
 

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動脈硬化

加齢とともに動脈は弾力を失い、硬くなっていきますが、中性脂肪が高くなると動脈硬化が加速することになります。中性脂肪が内臓脂肪として蓄積されるとLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少するため、動脈硬化が進むのです。
 
動脈硬化は、脂質異常に加えて、高血圧、高血糖、肥満、喫煙、ストレスなどの要因によって悪化することが分かっています。心臓の動脈が硬化すると、血流が悪くなり狭心症を招く恐れがあります。また、血管の壁に付着した脂肪が剥がれ落ちて血栓になり、体中を巡り、心臓や脳の動脈に詰まると、心筋梗塞、脳梗塞を起こします。

 

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中性脂肪を下げるためには

中性脂肪を下げるためには、食事を見直し、適度な運動を行うことが大切です。

内臓脂肪を増やさない食生活

食べすぎ、飲みすぎに気を付け、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。特にアルコールや甘いものの摂りすぎ、炭水化物の摂りすぎなどは注意が必要ですが、極端に糖質や脂質を制限するような食生活も避けなくてはなりません。
 
一番大切なことは、バランスの良い食事を適量食べることです。中性脂肪の吸収を抑える水溶性食物繊維が多く含まれる野菜や海藻、DHAやEPAの含有量が多い青魚などを積極的に摂るようにすると良いでしょう。また、食事の際にはしっかり噛むことも大切です。

 

適度な運動

ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなど、脂肪を燃焼させる効果がある有酸素運動を習慣にしましょう。また、日常生活でも一駅分を歩いたり、買い物に徒歩で出かけたりといった工夫をし、できるだけ体を動かすことも大切です。


 
 

まとめ

中性脂肪が基準値よりも高い状態が続いた場合は、肥満やメタボリックシンドローム、動脈硬化などを招く恐れがあります。中性脂肪のほとんどは、食事から体内に取り込まれます。そのため、中性脂肪を下げるためには、食生活を見直し、適度な運動を習慣にすることが大切です。
 
しかし、中性脂肪が極端に高い場合や食事療法などで改善が見られない場合には、薬物療法を取り入れる必要もあります。健康診断で中性脂肪の高さを指摘された場合には、医療機関に一度相談してみると良いでしょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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