クラミジアは感染者数が最も多い性病!感染経路や治療薬について解説
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クラミジアは感染者数が最も多い性病!感染経路や治療薬について解説
クラミジアとは、クラミジア・トラコマチスという微生物が原因で発症する性感染症のひとつです。日本国内での感染者数が最も多く、特に20〜30代の若い女性の感染が多くなっています不妊や早産の原因になりますが、クラミジアは男女ともに自覚症状が出にくいため注意が必要です。
本記事ではクラミジアの代表的な症状や感染経路、治療薬について詳しくご紹介します。
クラミジアの代表的な症状
クラミジアの原因となる微生物は、性器だけでなく口や直腸の粘膜にも感染します。性別や感染した部位によって症状が異なるため、男女別・部位別の代表的な症状を確認しておきましょう。
男性は尿道の痛みや違和感
男性がクラミジアに感染した際の主な症状は、尿道の痛みや違和感です。
- ● 排尿時に痛みを感じる
- ● 尿道にむずむずとした違和感やかゆみがある
- ● 尿道から膿のような液体が出る
上記のような症状が出ている方は、性器クラミジアに感染している可能性があります。
女性はおりものの増加や不正出血
女性がクラミジアに感染した際の主な症状は、おりものの増加や不正出血です。
- ● おりものの量がいつもより多い
- ● 不正出血している
- ● 下腹部や上腹部に痛みがある
- ● 性行為の際に痛みを感じる
上記のような症状が出ている方は、性器クラミジアに感染している可能性があります。
不妊症の原因になることも
女性がクラミジアに感染した場合は、不妊や流産・早産のリスクになります。また、妊娠中では乳児に感染するケースもあるため、注意しなければなりません。
咽頭や直腸に感染した場合
クラミジアが咽頭(のど)や直腸に感染した場合の症状は以下のとおりです。
- ● のどに痛みや違和感がある
- ● 首のリンパ節が腫れている
- ● 排便時に出血する、血便が出る
- ● 肛門に痛みや違和感がある
また、のどに感染した場合は発熱など風邪に似た症状が出ることもあります。
症状が出ないことも多く注意が必要
ここまでクラミジアの症状について解説しましたが、実際には自覚症状が出ないことの多い性感染症です。妊娠時の検査で感染が発覚するケースも多く、気が付かないうちにパートナーに感染させてしまっていることがあります。
クラミジアが少しでも疑われる場合や、感染が不安な方は病院で検査を受けてみると良いでしょう。
クラミジアの原因となる感染経路
クラミジアは国内で最も多い性感染症のため、感染する可能性は誰にでもあります。心当たりがなくても感染することは珍しくなく、不安に思う必要はありません。クラミジアを予防するためにも、原因となる感染経路を確認しておきましょう。
①性行為やオーラルセックスによる感染
クラミジアの主な感染経路は性行為やキスなどのオーラルセックスです。性行為による感染を防ぐためには、コンドームを正しく装着することが重要になります。性器や口の粘膜接触を物理的に遮断し、クラミジアや性感染症の予防を行いましょう。
しかし、コンドームを装着しただけでは性感染症を完全に防ぐことはできません。不特定多数との性行為は避け、定期的に検査を受けることも予防に繋がります。
②性器に触れた手指を介した感染
クラミジアは性器などの感染部位に触れた手指から感染することがあります。衛生状態の良い現代では手指を介した感染は少なくなっていますが、感染した際は念の為手洗いや消毒を行うように心がけましょう。
③妊娠や出産時の母子感染
出産時に産道で乳児にクラミジアが感染すると、結膜炎や肺炎を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。出産後に乳児に目やにや充血、咳やたんなどの呼吸器症状がある場合は、クラミジアの母子感染が疑われます。
母親から乳児への感染を防ぐには、妊娠中や出産前に検査を受けておく必要があります。
心当たりがないのに感染した場合は?
クラミジアは自覚症状が出にくく、心当たりがなくても感染してしまう方もいます。過去の交際相手や、たった1度の性行為が原因で感染しているかもしれません。もしもクラミジアに感染してしまった場合は、まずは治療に専念しましょう。現在パートナーがいる場合は、検査を受けるよう勧めてください。
一度クラミジアに感染すると体内に抗体が作られますが、何度も感染する可能性もあります。パートナー間でのピンポン感染を防ぐためには、2人で治療を受けることが大切です。
性感染症検査についてはこちら
クラミジアの潜伏期間はどのくらい?検査方法とは?
クラミジアの潜伏期間や検査方法について解説します。
クラミジアの潜伏期間は1〜3週間と長い
クラミジアの潜伏期間は1〜3週間程度です。淋菌などの他の性病と比較すると潜伏期間が長く、感染の原因の特定が難しくなっています。
クラミジアの検査方法
クラミジアの検査方法は男女別・部位別に異なります。どのような検査が行われるのか、しっかりと確認しておきましょう。
男性 | 尿や尿道の分泌物を採取する |
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女性 | 子宮頸管内を軽く擦って細胞を採取する |
肛門や直腸 | 肛門や直腸を軽く擦って細胞を採取する |
性器への感染が確認できた場合は咽頭にも感染していることが多いため、男女ともにのどの検査を行います。
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クラミジアの治療や薬について
クラミジアの治療や薬について詳しく解説します。
クラミジアは薬で治療できる
クラミジアは抗菌薬の内服のみで治療できる性感染症です。ただし、クラミジアは1回の治療では完治しない可能性があります。そのため薬を飲んでから2~3週間後以降に検査を行い、陰性が確認できれば完治となります。
治療にかかる期間は、確認検査を含めて最低でも3〜4週間ほどです。治療中は性行為やキス、オーラルセックスなどの性的接触は控えてください。また、飲酒によって抗菌薬の効果が薄れたり副作用のリスクが高くなったりする可能性があるため治療中の飲酒は厳禁です。
クラミジアの薬は3種類
クラミジアの治療に使用する抗菌薬は大きく分けて3種類です。それぞれの薬の効果や特徴を確認しておきましょう。
①マクロライド系
マクロライド系の抗菌薬には、細菌の生命維持に必要なタンパク質の合成を阻害し細菌の増殖活動を抑える作用があります。クラミジアの細菌に対して高い抗菌作用を持つため、クラミジアの治療に使われることが多いです。特に胃酸の影響に強く1回の服用でも持続性のある「ニューマクロライド系」のアジスロマイシンやクラリスロマイシンが最もよく選択されます。
ニューマクロライド系の薬のメリットは、1回のみの服用で治療が可能で飲み忘れの心配が必要ないことです。マクロライド系の薬は苦味が強く、スポーツ飲料やジュースなどで服用すると苦味が増すため水やぬるま湯での服用が推奨されます。副作用として吐き気や下痢、腹痛などの症状が現れる可能性があります。
②テトラサイクリン系
テトラサイクリン系は、細菌のタンパク質の合成を阻害することによって抗菌作用を表す薬です。作用の持続時間によって短時間型、中時間型、長時間型の3種類の薬に分られます。クラミジアの治療では、1日1回の服用を1週間継続する長時間型のビブラマイシンやミノマイシンが選択されることが多いです。妊娠中の場合は胎児に影響を与える可能性があるため、テトラサイクリン系の薬は服用できません。
テトラサイクリン系の注意点は、ミネラルを含むサプリメントや食品と一緒に摂取すると抗菌作用が弱まることです。また、副作用として吐き気や下痢、腹痛などの症状が出ることがあります。
③ニューキノロン系
ニューキノロン系は細菌の増殖に必要な酵素を阻害して、殺菌に似た抗菌作用を表す薬です。幅広い細菌に抗菌作用があり、クラミジアの治療では長期の服用に適したレボフロキサシンがよく用いられます。テトラサイクリン系と同様に、ミネラルを含むサプリメントや食品と一緒に摂取すると作用が弱まる可能性がある薬です。また、下痢や吐き気、食欲不振などの副作用が出ることがあります。
クラミジアは市販薬で治療できる?
クラミジアの治療に使われる薬は、病院からの処方箋がなければ購入できません。抗菌薬を個人輸入で入手することは可能ですが、日本国内で正規に流通している薬とは安全性や有効性の基準が異なります。服用によって健康被害を起こす恐れがあるため、抗菌薬の個人輸入はやめておきましょう。
まとめ
クラミジアは国内で最も感染者数の多い、一般的な性感染症です。自覚症状が出にくく発見が遅れることがありますが、抗菌薬によって治療できます。治療せず放置すると不妊や流早産の原因になるため、定期的に検査を受けておくと安心です。
クラミジアについて詳しくはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師