飲めないのにNASH(非アルコール性肝炎)?原因と早期発見のポイント解説!

  • クリニックブログ
2023/12/12

飲めないのにNASH(非アルコール性肝炎)?原因と早期発見のポイント解説!

「NASH」とは肝臓がんを発症する可能性のある「脂肪肝」のことです。
脂肪肝といえばお酒をよく飲む方がかかる病気と思われるかもしれませんが、アルコールを「飲めない」または「飲まない」方も発症する可能性はあります。
アルコールと因果関係がないにも関わらず、アルコール性肝障害と似た症状が出現するのがNASHです。
 
今回の記事ではNASHの原因やアルコールとの関連性、重症化しないための予防方法を解説します。

アルコールに関連する病気
 
 

NASHとは?

NASHとは「非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis)」の略称です。
アルコールを飲まない、飲めない方でも発症する脂肪肝で、中年層では男性、高齢層では女性がかかりやすいと言われています。
脂肪肝はよくお酒を飲む方がかかりやすい傾向にありますが、飲まないのに発症するのはなぜでしょうか。
ここでは、NASHの原因とアルコールとの関連性、治療せずに放置するとどうなるか解説します。

原因は「肝臓の炎症」

NASHは肝臓の内部で溜まった「脂肪」と「炎症」が原因です。
アルコールを摂取しなくても肝臓の中で炎症が続き、すこしずつ症状が進行していきます。
炎症が進行すると皮膚のかゆみや黄疸、むくみや倦怠感などが現れますが、初期症状は自覚症状がないのがほとんどです。
肝硬変まで症状が進んでしまうと、健康だった頃の体へもどる可能性は極めて低いといわれています。

 

アルコールとの関連性

「アルコール性」と「非アルコール性」の脂肪肝の症状はよく似ています。
肝臓の組織が炎症した場合の状態や、肝硬変や肝臓がんに進行する点もほぼ同じです。
アルコールが原因の脂肪肝は断酒で改善が見込めますが、NASHの場合は不明な点が多いのが事実です。
 
また日本人女性はアルコールを分解する酵素の働きが弱い方が多く、あまりお酒を飲まなくても肝障害や、NASHにつながる可能性も高いといわれています。
NASHの原因はメタボリックシンドロームである可能性が高いという研究もあり、お酒を飲まなくても食べすぎには注意しましょう。
 

肝臓が線維化すると予後に関わる

「肝臓の線維化」とは、ダメージを受けた肝臓の組織が固くなり、正常に機能しなくなることです。
ダメージの原因がアルコールや肝炎ウイルスが原因の場合は、断酒やウイルスの排除で線維化の進行を抑えることができます。
NASHは線維化が進行しやすいとされ肝硬変や肝がんとなる可能性が高く、5年生存率は以下の通りです。
 

  • ● 肝臓がん 50%
  • ● 肝不全 25%
  • ● 肝硬変 75%

 
一度線維化が進行すると回復が困難であるといわれており、治療する方法がまだ開発されていません。

 

 肝硬変については詳しくはこちら

詳しくはこちら

 

NASHの検査と早期発見のポイント

肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、痛みがないため発見が遅れがちです。
成人の4人に1人はNASHを含む肝臓の病気にかかると言われています。
NASHはどのような検査で診断するのか、早期発見のポイントをまとめました。

肝生検

NASHと特定するために最も有用とされているのが「肝生検」といわれています。
肝生検は腹部から針を刺して、肝臓の組織を採取する検査です。
顕微鏡を使用し、採取した肝臓の組織から脂肪肝との鑑別を行うほか、脂肪や炎症がどれくらいあるのか調べます。
脂肪と炎症が認められたことに加えて、肝細胞に損傷が確認できた場合はNASHと診断されます。
肝生検のあと4〜6時間は止血のために安静が必要なため、通常は入院が必要な検査です。

 

CTやMRI

CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像検査)などの画像診断でNASHを断定することはできませんが、脂肪肝の診断に使用します。
CTは肝臓の脂肪面積を推定し、MRIは血管の詰まり具合から脂肪肝を同定し線維化を推定することが可能です。
しかし、CTやMRIなどの画像診断だけではNASHの特徴である肝臓の炎症を見つけることは難しいといわれています。
 

定期的な血液検査で早期発見

肝機能が正常に機能しているか、定期的な血液検査で早期発見を目指しましょう。
肝臓の機能を調べる項目として代表的なものはASTとALTの数値です。
ASTとALTは、肝細胞がどれくらい壊れているか調べる最も基本的な項目で、NASHになっている場合高い値を示すケースが多いといいます。
ふたつの数値が30を超えるとNASHの可能性が高くなるとともに、脂肪肝や肝臓がんの疑いも強くなるため注意が必要です。

 
 

NASHは治る?悪化させないポイント

NASHはほかの肝臓系の疾患より肝硬変や肝臓がんのリスクが高いため、適切な治療が大切です。
肝硬変になったNASHの5年生存率は75.2%、肝臓がんの発症率は約11%と決して予後がいいものではありません。
 
以下では生活習慣の見直し方と、合併する生活習慣病の治療について解説します。

生活習慣を見直す

NASHはメタボ(メタボリックシンドローム)の肝臓病と考えられています。
メタボとは、食べすぎや運動不足などの不摂生から内臓の脂肪がたまった状態で、糖尿病や高血圧など、あらゆる生活習慣病の原因のひとつです。
 
規則正しい生活習慣が、メタボの予防・改善に繋がります。
以下の内容を意識して毎日の生活に取り入れることが大切です。
 

  • ● 一駅分歩く、なるべく階段を使うなど少しずつ生活に運動を取り入れる
  • ● バランスの取れた食事
  • ● 禁煙

 
つらい習慣はストレスとなり逆効果です。
楽しめる範囲から少しずつ取り入れて、健康な体をめざしましょう。
 

合併している生活習慣病を治療する

NASHは肥満やメタボの場合に発症しやすく、「生活習慣病の肝臓への反映像」とも言われています。
本人の気づかないうちに肥満を原因とした糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を合併発症しているケースが多く、ほとんどの場合自覚症状がありません。
肥満も立派な病気で脂肪肝を引き起こす一番の原因のため、減量が必要です。
減量しても効果が認められない場合は、薬による治療を行います。
糖尿病や脂質異常症、高血圧の薬に有効であるとされているため、担当医と相談して治療を開始しましょう。

 
 

まとめ

肝臓はアルコールさえ飲まなければダメージは少ないと思われるかもしれませんが、食べすぎや運動不足、喫煙習慣などの不健康な生活を続けていると脂肪肝が発症し、やがてNASHへ進行します。
 
自覚症状が現れたら深刻な状態まで進行しているサインです。
黄疸やむくみなどの自覚症状が現れる前に、生活習慣の見直しや、定期的な検査を行うようにしましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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