エキノコックス症は動物から感染!症状や治療法、予防も解説
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エキノコックス症は動物から感染!症状や治療法、予防も解説
エキノコックス症という感染症をご存じでしょうか?エキノコックス属条虫という寄生虫から人間にも感染して起こる病気です。あまり知られていない病名ですが、野山によく行く方や北海道を中心にみられる感染症で放置すると死に至ることもある病気です。
この記事では、エキノコックス症はどんな病気なのか、原因や症状、感染した場合の治療や予防方法についても解説しますので、ぜひ最後まで読んで、早期治療に努めましょう。
エキノコックス症とは?原因は?
ここでは、エキノコックス症の原因について解説していきます。
キツネや犬などのフンから寄生虫が人間に感染
エキノコックスが寄生したキツネ、犬、野ネズミ、ブタなどの糞に触れることや、糞に汚染された水を口にするなどで感染する寄生虫疾患です。エキノコックス症は、キツネや犬に寄生して卵を産み、そのフンを介して、何らかの形で人間の口から体内に侵入します。感染源となる寄生虫は2種類います。
感染源となる寄生虫は2種類
エキノコックス属条虫には、単包性エキノコックス症と多包性エキノコックス症の2タイプに分類されます。土中、水中、食べ物などから接種して感染したり、寄生した動物に直接接触して人間の体内に感染します。人間同士の感染、あるいは、多包条虫のブタ肉の摂食を介して人間に感染することはないとされています。
症状の進行は緩慢ですが放置すると死に至ることも
エキノコックス症は、症状の進行が緩慢で、数年から数十年の無症状の潜伏期を経てそれぞれの部位に機能低下による症状が現れます。
潜伏期は第一期とよばれ、第二期になると感染した部位の症状が現れ始めます。主に、上腹部・季肋部の不快感、黄疸、肝機能障害などさまざまです。第三期になると全身状態が強く侵され、肝不全などで死に至ることがあります。
症状が現れる頃には、病気が進行している可能性が高いため、早期発見・早期治療が重要です。
治療は駆虫薬による薬物治療や寄生虫の吸引や手術をする
エキノコックス症の治療法にはいくつか種類があります。以下で解説していきます。
エキノコックス症の診断はCTなどの画像診断と血液検査を用います。また、治療はエキノコックス症が感染した部分の外科的手術と、駆虫薬を使用します。
診断はCTなどの画像診断と血液検査
検査は、下記3つの方法があります。
- ● 画像検査
- ● 血清診断
- ● 嚢胞液の検査
画像検査では、単包条虫と多包条虫によって症状を起こしている部位のCT検査、MRIや超音波検査の画像検査を主に肝臓に行い嚢胞や腫瘍性の病変があるかどうかを確認します。
画像検査にはCTやMRIなどの検査がありますが、これらはそれぞれ特性が違います。例えば、CT検査はコンピュータによる画像断層の撮影を行ない、病気の部分を診断するために行なわれる検査です。体の周囲からX線をあてることで、周輪切りの状態になった断面画像により体の中の異常を見つけるのに役立つ検査です。
CT検査には、造影剤を使用しない「単純CT検査」と造影剤を使用した「造影CT検査」の2種類があり、「造影CT検査」の方がより精密に体の中の異常を検出できます。
MRIは強い磁石と電波を使用して、体内の異常を見つける検査です。CT検査と異なる点は、放射線を使用しないので被爆する心配はないことです。MRI検査は、X線では見つけにくい体内の部位の異常を見つけるのに適した検査です。
これらCTやMRIの検査はよく耳にする検査ですが、腹部の検査には腹部超音波という検査もあります。超音波検査は人の耳には聞こえない高い周波数の音を使って体内にできた病変部を調べるための検査です。超音波を腹部にあて、組織や臓器から跳ね返る波を映像にして検査します。超音波検査のとき、ゼリーを塗るのは超音波が体内に伝わりやすくするためです。
さらに、胸部の検査に使用されるX線検査はとても一般的で、誰もが一度は経験したことがある検査でしょう。X線検査は、体の一方向からX線をあてると通過して、モノクロの濃淡の画像になることを利用した検査です。
血清診断では肝機能や腎機能の低下について検査します。血清診断は、感染の検出に感度が高く、免疫拡散法 (ARC 5) またはイムノブロット法によるエキノコックス抗原の証明によって診断を確認できます。
治療は外科的手術や駆虫薬を使用する
治療は、単包条虫と多包条虫のそれぞれに対するものがあります。
根治するためには、外科的な手術により寄生虫の塊を切除することが必要です。
駆虫薬のアルベンダゾール、プラジカンテルも使用することがあります。アルベンダゾ―ルは、エキノコックス寄生虫が成長することと増殖を阻害する効果があります。プラジカンテルは、体内に寄生した吸虫を殺虫して駆虫するための薬剤で、内服で治療をします。
完全に回復するには早期に発見し、早期に治療を受けることが重要です。エキノコックス症がよく見られる北海道では、一次検診を市町村が行っております。お住まいの市町村、または最寄りの保健所にお問い合わせください。
エキノコックス症の予防方法とは?
エキノコックス症の予防は、野山に行った後には石鹸を使い手をよく洗うことが大切です。エキノコックス症の虫卵は目では見えないため、野生のキツネやリスには近づかない、ペットの犬や猫は放し飼いにしないことで感染を予防できます。
具体的な予防対策として、次のような方法で防ぎましょう。
- ● 野山などに行ったら、石鹸を使ってよく手を洗う
- ● 衣服や靴についた泥を家の中に持ち込まず外でしっかり落とす
- ● 野外の生水は飲まない
- ● 野菜(特に山菜)、果物などは十分に洗い、可能なら加熱する
- ● 犬は放し飼いにしない。野山などではノーリードにしない。
- ● 野生のキツネやリスなどに近づかない
- ● 食品や食器を触る前にペットを触ったら、よく手を洗う
- ● ペットに生肉は与えない
まとめ
エキノコックス症は、犬などの身近なペットから人間に感染する寄生虫による病気です。寄生虫が体内に寄生してから、症状が現れるまでに数年から数十年の年月が必要で、寄生虫の種類や寄生した部位によって、さまざまな症状が現れます。
エキノコックス症のリスクは、感染したまま放置すると、最悪の場合には死に至るケースがあることです。治療は薬物療法や、寄生虫を取り除く、手術が必要になることもあります。血液検査で抗体の有無を調べることで、自覚症状が生じる前でも感染の有無を確認できるため、5年に一回など健康診断を行うようにしましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師