気になる胸痛の原因とは?病気ごとの症状や受診のポイントもあわせて解説!
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気になる胸痛の原因とは?病気ごとの症状や受診のポイントもあわせて解説!
胸痛を感じると「何か重大な病気なのではないか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、胸痛の原因として考えられる病気や検査方法、注意すべき胸痛の特徴などについて解説いたします。
受診の際に患者さんがチェックしておくべき項目についても触れますので、ぜひ受診の際の参考にしてみてください。
胸痛の原因となる病気
痛みを感じるのは、身体に異常が起こっているサインです。
胸が痛いと感じるとき、身体の中ではどのようなことが起きているのでしょうか?
最初に、胸痛の原因となる病気について解説します。
肺や胸膜の病気
胸痛を伴う肺の病気としては、気胸・肺がんなどが考えられます。
気胸は若い男性に多い病気で、肺の表面にできた嚢胞が破れることが主な原因です。
また、肺自体には痛みの神経がありませんが、肺癌が周囲の骨などに転移することで胸痛・背部痛・肩の痛みを感じることがあります。
さらに、肺の周りの胸腔・胸膜が炎症を起こしたことによる膿胸・胸膜炎なども胸が痛む原因になるでしょう。
膿胸や胸膜炎のように体内で炎症が起こっている場合は、胸の痛みだけでなく発熱・倦怠感を自覚する方もいます。
心臓や血管の病気
循環器疾患が原因で起こる胸痛は緊急性が高いため、注意が必要です。
痛みを感じる心臓の病気としては、心臓の血管が狭くなったことによる狭心症・心筋梗塞などが挙げられます。
狭心症と比較すると心筋梗塞は痛みの持続時間が長く、強い痛みを感じるでしょう。
一方、血管の病気の中で痛みが強く緊急性も高い病気としては大動脈解離が挙げられます。
血管は3層の膜によってできていますが、大動脈解離は一番内側の膜が破れることで中間の膜に血液が流れ込んで血管が内層と外層に乖離する病気です。
また、体内でできた血栓が肺の動脈に詰まる肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)でも大動脈解離に似た症状が現れることがあります。
大動脈解離について詳しくはこちら
消化器の病気
胃の粘膜に炎症・潰瘍・腫瘍などが発生した場合や、胆のう・膵臓の病気も胸に痛みを感じる原因となります。
このように、胸の痛みを感じても実際の原因となっているのは胸部の臓器ではない可能性もあるでしょう。
そのほか、逆流性食道炎など食道の病気でも胸の痛みを感じる方がいます。
逆流性食道炎について詳しくはこちら
神経・筋肉・骨の病気
肋骨と肋骨の間には、骨に沿うように「肋間神経」という神経が通っています。
この肋間神経が何らかの原因で刺激されることも胸に痛みを感じる原因の一つです。
痛みがあるのに検査をしても原因が特定できないという場合もありますが、水疱瘡ウイルスによる帯状疱疹や側弯症による神経の圧迫など、原因が特定できる場合もあります。
肋間神経痛について詳しくはこちら
心因性の症状
医療機関を受診して検査を受けても特に異常を指摘されないというケースがあります。
このような症状の原因は精神的なストレスである可能性が高く、病名としては「心臓神経症」と診断される場合があるでしょう。
胸痛症候群とは
胸痛症候群とは10〜20代の若い女性に多いとされる「原因不明の胸痛の総称」です。
そのため、一度は胸痛症候群と診断されても、検査を進めるうちに筋骨格・神経の病気などの原因が明らかになり、診断名が変わる場合もあります。
この病名は、狭心症・気胸など胸痛の原因となる病気が検査で否定された際の仮の診断名といえるでしょう。
胸痛と頭痛が同時に起こるのは危険?
頻繁に頭痛を感じる方の中には、頭痛と同時に「胸が痛い」と感じた経験がある方もいるかもしれません。
このように、胸痛と頭痛を同時に感じる方は狭心症のリスクが高いと考えられています。
その理由に関連するのが片頭痛の発生メカニズムです。
片頭痛は、脳の血管が痙攣した後に拡張することで起こると考えられています。
脳血管の収縮を頻繁に起こしやすい方には、冠動脈の痙攣が起こる頻度も高いといわれています。
冠動脈の痙攣が頻繁に起こると狭心症になるリスクが高まるため、注意が必要です。
胸痛で病院を受診する際のポイント
ここからは、病院に行くタイミングや、受診前に患者さん自身がチェックしておくべきことについて解説します。
受診のタイミング
「胸痛は心疾患の症状」と認識されることもありますが、一方で肋間神経痛・心因性の痛みなど緊急性の低い胸痛もあります。そのため、胸の痛みを感じた際に受診すべきかどうか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そうした場合に指標になるのが、痛みの強さと症状の持続時間です。
内臓や胸膜に異常が起きている場合は、少なくとも数分以上は痛みが続くケースがほとんどです。
症状が強い場合は、救急要請をしましょう。
疾患のサインを見逃さないことは早期治療のために重要ですが、ごく短時間の痛みであれば緊急性は低いと考えられます。
このような場合は、まずかかりつけ医など近隣のクリニックを受診して、医師がさらに専門的な精査・治療が必要と判断した場合に大きな病院へ紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
緊急性の高い危険な胸痛とは
胸の痛みを感じる病気の中で緊急性の高いものとしては気胸・狭心症・心筋梗塞・大動脈解離などが挙げられます。
気胸の代表的な症状は、突然の痛み・息苦しさ・呼吸による痛みの悪化などです。
狭心症・心筋梗塞・大動脈解離も突然痛みを感じるという点では同じですが、呼吸をしても痛みの強さが大きく変わることはありません。
心疾患の痛みについては「焼けるような感じ」「締め付けられる感じ」「押しつぶされる感じ」といった表現が頻繁にきかれます。
症状の持続時間は狭心症で5〜15分程度、心筋梗塞では30分以上です。
一方大動脈解離の痛みは「突然の引き裂かれるような痛み」といわれることがあります。
胸痛のほかにみられる症状は腹痛・失神など多様です。
痛みの強さや種類のほかにも、周囲から見て呼吸が苦しそう・意識がもうろうとしている・冷や汗をかいているなどの症状がみられた際には救急要請することをおすすめします。
「意識もあるし、いきなり救急車を呼ぶのは躊躇してしまう」といった場合は「#7119(救急安心センター事業)」に電話をして症状などを伝えることで、専門的な知識を持つ看護師・相談員などから救急要請が必要かどうかなどアドバイスをもらうことができます。
受診前に確認しておくべきこと
患者自身が感じた症状を医師に正しく伝えることが早期の診断につながることがありますので、受診の前に痛みが起こる状況・頻度・継続時間などを思い出して確認しておきましょう。
また、痛みの場所・範囲・痛みの種類・胸痛以外の症状なども大切な診断の手がかりとなります。
胸痛の治療方法
胸痛の原因が分かってからは、どのような治療を受けるのでしょうか?
原因となる病気ごとに主な治療法について解説します。
薬による治療方法
炎症が胸痛の原因となっている場合、消炎剤を用いたり、症状に対して鎮痛薬・神経痛薬を用いたりするなど、外科的な治療が必要ないケースでは薬による治療が中心となります。
また、がんが原因で胸に痛みを感じる場合などには、痛みを抑えることを目的として抗がん剤を使用することもあるでしょう。
また、薬による治療は手術に比べると身体への影響が小さく済むと考えられます。
そのため、重大な病気でも症状が軽い場合には薬での治療を試みることがあります。
たとえば、大動脈解離や肺動脈血栓症などは、薬で血圧を下げたり血栓を溶かしたりすることで症状が改善する場合もあります。
循環器の治療方法
胸痛の原因が狭心症・心筋梗塞である場合には、カテーテル治療で狭くなった血管を広げたり、冠動脈バイパス手術を行ったりと心臓の虚血状態を改善する治療を行います。
また、大動脈解離が降圧剤と安静では改善しないと判断された場合は、裂けた血管を元に戻すために手術が必要です。
肺動脈血栓症も同じく、投薬で改善がみられない場合は血栓を取り除くためのカテーテル治療・手術を行います。
呼吸器の治療方法
胸痛の原因が気胸である場合は、胸部にチューブを入れて肺から胸腔内に漏れた空気を体外に排出します。
この治療は胸腔ドレナージと呼ばれており、漏れた空気に圧迫されていた肺を元に戻すことが目的です。
胸腔ドレナージで治らなかったり再発を繰り返したりする場合は、手術によって気胸の原因となる肺嚢胞を切除します。
胸痛の予防法
循環器系の胸痛を予防するためには、生活習慣病の予防が大切です。
特に、肥満・高脂血症・高血圧症・糖尿病といった病気は狭心症・心筋梗塞・大動脈解離の発症につながるおそれがあります。
食生活や運動習慣を見直し、もし生活習慣病を指摘された場合は早めの治療を心がけましょう。
呼吸器系の胸痛について、気胸には日常生活の中でできる予防策は少ないといわれています。
しかし、喫煙は気胸につながる「気腫性嚢胞」とも関係が深く、肺がんのリスク因子となります。そのため、呼吸器疾患がもとになる胸の痛みを予防するためには、禁煙をすることが大切です。
まとめ
胸痛は、肺や心臓などに重大な異常が起きているサインとして現れることもある症状です。
しかし胸が痛むことにはさまざまな原因があり、病気ごとに特徴的な痛みが現れることもあれば、症状からは原因が予測できない場合もあるでしょう。
痛みが続く・強い痛みを感じる・胸痛以外にも気になる症状があるといった場合、まずは医療機関を受診して原因を調べることをおすすめします。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師