ノロウイルスとは?症状や潜伏期間、感染経路などを解説
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ノロウイルスとは?症状や潜伏期間、感染経路などを解説
感染性胃腸炎には、細菌・ウイルス・寄生虫などさまざまな原因がありますが、ノロウイルスはその代表格です。
なかでも、日本における胃腸炎の原因はノロウイルスが最も多く、その特徴を知っておくことが予防につながります。
本記事では、ノロウイルスの症状や感染経路、治療・予防方法について解説します。
ノロウイルスとは
ノロウイルスとは、胃腸炎などの原因となるウイルスの一種で、人の小腸粘膜で増殖します。
1960年代よりアメリカで急性胃腸炎の患者の糞便中より繰り返し検出され、平成14年8月の国際ウイルス分類委員会(ICTV)において、小型球形ウイルスの一種でノロウイルス属に分類されました。
日本においても冬季に急性胃腸炎を引き起こすウイルスとして注目を集め、コロナウイルスよりも前に5類感染症に位置づけられました。
5類感染症とは
感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)による感染症の5類型のひとつ。
感染力の強さや発症時の症状の重さなどに基づく総合的な観点からみた危険性が最も低いとされている。
ノロウイルスの特徴
ノロウイルスは、感染すると激しい下痢や嘔吐などを引き起こすウイルスの一種であり、冬の感染性胃腸炎の原因の約6~7割を占めます。
ノロウイルス自体は通年でみられますが、特に11月~2月頃の冬場に流行する「激しい胃腸炎」を引き起こすウイルスとして感染力の強さが特徴です。
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ノロウイルス感染の原因
ノロウイルスの感染経路として、経口感染と接触感染があります。
経口感染源としては、牡蠣やツブなどの貝類が有名です。接触感染では、感染者の嘔吐物や便中のウイルスが手をつたって経口感染に至ります。
ノロウイルスは感染力が強いため、特に発症が多く見られる飲食や介護の現場などでは細心の注意が必要です。
少量のウイルスが体に入るだけでも、小腸など消化管で増幅し、強い症状にまで発展します。
ノロウイルスによる急性胃腸炎の発症の要因には、環境要因・宿主側の免疫力・感染経路の3つの要素が挙げられます。
これらのうち一つでも欠けると罹患や重症化の恐れがあるため、注意が必要です。
ノロウイルス感染時の症状
ノロウイルスに感染すると1~2日程度の潜伏期間を経て発症し、症状は2~3日ほど続きます。
嘔吐・腹痛・下痢など消化器系に症状が出ることが多く、発熱する場合もあります。
普段から身体を鍛えていて体力のある人は無症状に近くなることもありますが、高齢者や子供、基礎疾患がある人などは脱水症状になりやすく、周囲の人も心配するほどにぐったりとすることもあります。
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感染後の治療や注意点
ノロウイルスに対する有効な治療薬はありません。
ノロウイルスの症状が出た場合、下痢や嘔吐での脱水に対する対処・補正が必要となるため、まずは水分や栄養分の補給をこまめに行いましょう。
また、健康な方と抵抗力が弱い高齢者とでは必要な対処が異なります。
もともと健康な方であれば自宅で安静にするのが一番であり、吐物や下痢を排出しきるのが基本の対処法です。
高齢者や子供、免疫機能が低下している方などで、水分などの経口摂取が難しいケースでは、脱水に対して点滴などの処置が必要となります。
吐物を飲み込んでしまわないようにする必要もあるため、対処に不安がある場合は早期の受診をおすすめします。
早期に回復しても、糞便中のウイルス排出期間は1週間ほど続くことがあります。
発症初期に市販の「抗原検査キット」を使えば15分程度でノロウイルス抗原を検出でき、体調不良の原因を明らかにできます。なるべく早期に発見し、感染の拡大を防ぎましょう。
病気になり始めの時期(急性期)から症状は強く出るため、食べ物など生活必需品の準備はデリバリーを利用したり、周囲の人に助けを求めたりしましょう。
ノロウイルスの予防方法
ノロウイルスに対するワクチンはありません。ノロウイルスは、主に手を介して経口摂取するため、完全に避けるのは難しいと考えられます。
そのため、規則正しい生活習慣など、感染しても軽症で済む免疫力を獲得することを目指しましょう。
また、感染の確率を減らすためには、食品を加熱処理すること、こまめで丁寧な手洗い、調理器具をよく洗うこと、排泄物を正しく処理することが大切です。
消毒についてもアルコールだけでは不十分であり、次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターなどに含まれる)の使用が効果的です。
その他ウイルス感染時を想定した準備は災害対策と同様に大切であるため、普段から保存のきく食料を準備しておきましょう。
まとめ
ノロウイルスは冬季に流行する激しい胃腸炎を引き起こすウイルスですが、インフルエンザのような治療薬やワクチンが存在しません。
感染力が強いため、かからないための予防だけでなく、他の人に感染を広げないための予防も大切です。
接触感染するため完全に予防することは難しく、自身の免疫力を高めて発症しても軽症でのりきることと、感染経路のリスクに注意を払い、適切な対処をすることを意識しておきましょう。
ノロウイルスは症状が激しいため、外出ができなくなることも想定されます。普段から保存のきく食べ物を準備しておき、万が一に備えて買い出しに協力してくれる人への声掛けもしておきましょう。
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自己紹介
- 大阪府出身。
都内医学部を卒業し、医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、医療機関で臨床業務に携わっている。
近年は内科診療・予防医学・心療内科などの生活に密着した御相談にも診療幅を広げ、「健康を通じたハッピーな生活をお手伝いしたい」ことをテーマとしている。