健康寿命の鍵を握る!ロコモティブシンドロームとは?

  • クリニックブログ
2023/12/20

健康寿命の鍵を握る!ロコモティブシンドロームとは?

「ロコモティブシンドローム」という言葉をご存じでしょうか?
人生100年時代と言われる現代に、長く健康的に生きるためには、ロコモを防いでいくことが重要です。
 
そこで本記事では、ロコモティブシンドロームの原因や予防方法について解説していきます。

クリニックに来たの男性と受付の女性
 

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームという概念や原因について解説します。

ロコモティブシンドロームという概念が生まれた背景

「ロコモティブシンドローム」とは、運動器の障害により移動機能が低下した状態のことです。
移動する能力を表す英語「ロコモティブ(Locomotive)」から作られた言葉で、略称を「ロコモ」といい、日本語では「運動器症候群」と表現されます。
 
世界的にも長寿国である日本では、運動器障害により介護状態や寝たきりとなる人の数が増え続けています。
ロコモティブシンドロームは、日本整形外科学会が提唱した言葉であり、介護状態になることを予防し健康寿命を長く保つために、重要な概念なのです。
 

ロコモの原因

ロコモの原因は、運動器である骨、関節、筋肉、神経に起こる障害です。
加齢に伴う運動器の機能低下や、運動器の疾患、別の疾患による運動器の痛みなどから、移動機能が衰えます。
 
主な原因として
 

  • ● 骨粗しょう症やそれに伴う骨折
  • ● 軟骨や椎間板の変性による変形性膝関節症や変形性脊椎症
  • ● 脊柱管狭窄からくる神経障害や筋力低下

 
などがあります。
 

がんロコモとは

がんの治療や骨転移によって運動器の障害が起き、ロコモになることがあります。
がんの骨転移によって痛みや骨折、麻痺が起きたり、抗がん剤の副作用により神経障害が起きたりすることが原因です。
 
治療のため長期間安静にしていたことで筋力が低下し、それがきっかけでロコモ状態になることもあります。
また、がんと同時に運動器疾患が進行することもありますが、がんの治療を優先したことで悪化したり、がんの痛みと混同したりしてしまうこともあるのです。
 
ですから、がんの治療中であっても、運動器の痛みに対し、適切に検査や診察を行う必要があります。
移動能力を回復し自力で動くことができれば、患者自身のQOL(生活の質)をあげることができるでしょう。
 

子どもロコモの問題

ロコモは、高齢者だけの問題ではありません。
40代から始まるケースもありますし、最近では「子どもロコモ」が問題視されています。
 
小学生くらいの子どもに運動器機能の低下がみられ、つまずいて骨折するなど、思わぬケガをするケースが増えているのです。
ゲームやスマートフォンの普及などで身体を動かす機会が減ったことと、とくに近年では、コロナ禍の行動制限の影響も原因のひとつと考えられています。
 
運動不足や姿勢の悪さから、体幹が弱くなり、筋力が低下している子どもが増えている状況です。
運動機能が改善されないまま大人になると、将来、ロコモになる可能性が高まるため、改善への取り組みが課題となっています。

 
 

ロコモティブシンドロームの症状

ロコモになりやすい方の特徴や、セルフチェックの方法、症状についてご紹介していきます。

ロコモになりやすい方の特徴

50代以降は、加齢により運動器の機能の衰えが加速することに加えて、病気や怪我をきっかけにロコモ状態になるリスクが高まります。
ただし、運動器の機能は、日頃の食生活や運動習慣からも個人差が出ますので、なかには40代からロコモ状態になる方もいます。
運動不足や食生活の乱れがある方、生活習慣病を患っている方は若くても注意が必要です。
 
また、肥満体型の方はロコモになりやすい傾向があります。
膝や腰に負担がかかりやすく、痛みでさらに運動不足と体重増加という悪循環にも陥りやすいのです。
 
一方で、過度なダイエットなどで痩せすぎの方も骨や筋力が弱くなり、ロコモになるリスクが高まります。
女性は、骨密度が急激に低下する閉経以降、骨粗しょう症の発症リスクとともに、ロコモになりやすくなるので注意しましょう。
 

セルフチェックの方法

ロコモかどうか、セルフチェックで調べることができます。

ロコチェック

次の7つの項目をチェックしてみてください。
無理して試して、転倒などしないように注意しましょう。
 

  1. 1. 片脚立ちで靴下が履けない
  2. 2. 家の中でつまずいたり滑ったりする
  3. 3. 階段を上がるのに手すりが必要である
  4. 4. 家のやや重い仕事が困難である
  5. 5. 2kg程度の買い物をして、持ち帰るのが困難である
  6. 6. 15分くらい続けて、歩けない
  7. 7. 横断歩道を青信号で渡りきれない

 
上記項目のうち、どれか1つでも当てはまる場合はロコモの可能性があります。
 

ロコモが進行すると現れる症状

ロコモが進行すると寝たきりになるリスクが高まります。
筋力が減り運動機能が低下してしまうと、歩行機会も減ってしまい、骨粗しょう症を発症しやすくなります。
骨がもろくなると、転倒しただけでも骨折しやすく、それを機に寝たきりになる可能性があるのです。
 
しかし、運動や食生活の見直し、薬物療法など適切な対処をすれば、ロコモは改善する可能性があります。
当てはまる症状がある方は、ロコモが進行する前に病院を受診するのがおすすめです。

 
 

ロコモティブシンドロームと健康寿命

ロコモと健康寿命の関係や予防方法について解説します。

ロコモは健康寿命を短くする原因のひとつ

運動器の障害は、厚生労働省の調査において要支援・要介護状態になる要因の上位にあがっていることからもわかるように、ロコモが進行すると要介護の状態や寝たきりになる恐れがあります。
 
また、2019年のデータでは、日本の平均寿命と健康寿命の間に、男性で約9年、女性では約12年の差があります。
寿命が延びたといっても、要介護状態や寝たきりで過ごす時間も長いのです。
このことからも、ロコモを防ぐことが健康寿命を延ばす鍵になるといえるでしょう。
 

ロコモ、サルコペニア、フレイルの関連

ロコモと同時に語られやすい言葉に、「サルコペニア」「フレイル」があります。
サルコペニアは、運動器の機能低下の中でも、筋肉量と筋力の減少による症候群をいいます。
ロコモと同じように、将来的に要支援または要介護になる可能性が高い状態です。
 
フレイルは「虚弱」を意味し、加齢に伴う身体機能の低下のほか、精神状態や社会的側面も含めた問題も含んだ状態です。
要因により、「身体的フレイル」「社会的フレイル」「精神・心理的フレイル」と分けて呼ばれることもあります。
 
サルコペニアは、ロコモの原因にもなり得ますし、ロコモが進行してフレイルになる可能性があります。
ロコモ、サルコペニア、フレイルは、症状や要因に共通点があり、互いに関連し合う状態です。
 

 サルコペニアについてはこちら

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ロコモの予防方法

人間の骨や筋肉は、40代頃から衰えていきます。
その世代のうちに、運動習慣を身につけてロコモを予防することが、健康寿命を延ばすことにもつながります。
 
日本整形外科学会が提唱している運動「ロコトレ」をご紹介しますので、無理のない範囲で行ってみてください。
 

片脚立ち

片脚立ちはバランス能力をつけるトレーニングです。
転倒しないように、机や手すりなどつかまるものがある場所で行いましょう。
 
1.姿勢をまっすぐにして、片脚を上げる
2.片脚をあげたまま、1分間キープする
※左右とも1分間で1セットとし、1日3セット行う

 

スクワット

スクワットは下肢筋力をつけるトレーニングです。
 
1足を肩幅に広げて立つ
2.お尻を後ろに引くように、2~3秒間かけてゆっくりと膝を曲げ、身体をしずめる
3.ゆっくり元に戻る
※5~6回で1セットとし、1日3セット行う
 

バランスのよい食生活

骨や筋肉を鍛えるには、適度な運動に加えてバランスのとれた食事も大切です。
 
たんぱく質やカルシウムの摂取を意識するほか、エネルギー源である炭水化物や脂質もしっかり摂りましょう。
人間の身体はエネルギーが不足すると、たんぱく質でエネルギーを補おうとします。
それでは、せっかく運動をしても、痩せて筋肉が減少してしまうのです。
 
エネルギーや栄養素を意識して、1日3食をバランスよく摂るようにしましょう。

 
 

まとめ

ロコモは要支援や要介護状態になる要因のうちのひとつです。
人生100年時代に健康寿命を延ばすには、運動習慣を身につけてロコモを予防することが大切です。
 
また、ロコモは適切な対処をすれば、回復や改善の可能性もあります。
症状に当てはまる方は、病院を受診し専門家のアドバイスを受けましょう。


 
 

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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