気管支拡張症はどんな病気?知っておきたい原因や治療方法

  • クリニックブログ
2023/12/19

気管支拡張症はどんな病気?知っておきたい原因や治療方法

気管支拡張症は国内の患者数は多いとはいえないものの、一度かかると根気強い治療が必要になる病気です。
 
もし気管支拡張症が疑われた場合、どのような検査や治療を受けるのでしょうか?
この記事では、気管支拡張症の原因や症状、治療方法などを解説していきます。

咳をしている男性
 
 

気管支拡張症とは?

気管支は空気の通り道のため、狭くなるのはもちろん問題ですが、反対に「拡張」してしまうとはどのような状態なのでしょうか?
まずは、気管支拡張症の原因や症状を見てみましょう。

気管支拡張症とは

気管支拡張症とは、何らかの原因で気管支の内壁に傷がつくことで気管支が慢性的な炎症を起こして、気管支が拡がった状態です。
気管支自体は拡張していますが、広くなった内腔には炎症により増加した痰が溜まったような状態になり、空気の通り道自体は狭くなります。
気管支が傷ついて拡張した気管は細菌などを体外に排出する機能が衰え、痰がたまりカビや細菌が繁殖しやすくなってしまいます。

 

気管支拡張症の原因

気管支拡張症の直接的な原因は、気管支が傷つくことです。
傷がつく主な原因としては呼吸器の感染症が悪化したり繰り返したりすることが挙げられます。
しかし、感染症のほかにも異物の誤嚥や、有害な気体・粉塵を吸い込むこと、自己免疫性疾患・アレルギーなども気管が炎症を起こす原因になるため注意が必要です。
 

気管支拡張症は予防できる?

気管支拡張症を予防するには、原因となりうる病気の予防・早期治療が有効といえます。
また、喫煙は肺機能を低下させるため禁煙をする、有害な気体や粉塵を扱う場合はマスクを着用するなど環境面での工夫も予防手段の一つです。

 
 

気管支拡張症の症状

実際に気管支拡張症になると、どのような症状が現れるのでしょうか?
症状を知ることは早期の受診・治療にもつながるため、ぜひ確認しておきましょう。

症状① 慢性的な咳

気管支の炎症と新たな感染を繰り返すために現れる症状が長引く咳です。
特に早朝や夜に咳が増え、多くの場合は痰が絡んだような重く湿った咳が出ます。

 

症状② 喀痰・喀血

気管支拡張症になると気管内に痰が増えるため、咳と同時に痰が排出されることが増えるでしょう。
また、一度損傷した内壁は弱くなり、軽い炎症や傷で出血しやすくなります。
その結果、咳とともに血液が出る「喀血」も、気管支拡張症にみられる症状の一つです。

 

 血痰の原因についてはこちら

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症状③ 肺機能の低下

気管支拡張症は、病気の範囲によって肺の1~2箇所のみで起こる「限局性」と肺の中の複数箇所で起こる「びまん性」に分類されます。
病気になった箇所が多く範囲が広いほど肺機能は低下して、息切れ・疲労感などの症状が現れることがあります。

 

気管支拡張症と合併しやすい病気

気管支拡張症の方は、気管支の炎症・感染が肺胞まで広がることで肺炎を起こしやすい状態です。
また、原因は明確になっていませんが慢性副鼻腔炎やびまん性汎細気管支炎を併発することが多く、その状態を副鼻腔気管支症候群といいます。
 
さらに、肺の組織が機能を失っていくことで、その組織に血液を供給している心臓にも負担がかかり肺性心(肺からの負担が原因の心不全)になることもあります。

 
 

気管支拡張症は難病?どのような検査で診断する?

根治が困難で治療に時間を要する病気を難病と呼び、中でも厚生労働省から指定された「指定難病」と診断されると医療費の助成を受けられる場合もあります。
 
気管支拡張症は、この指定難病にあてはまるのでしょうか?
また、診断にあたってどのような検査を行うのでしょうか?
 

気管支拡張症は指定難病ではない

気管支拡張症は慢性的で治療が難しい病気ではありますが、厚生労働省が定める「指定難病」には該当しません。
そのため、入院を繰り返すなど医療費が負担となっている場合は、指定難病医療費助成制度ではなく高額療養費制度や医療費控除などを活用しましょう。
 
ただし、指定難病に該当する病気が気管支拡張症の原因となっているケースがあるため、実際の診断や申請については医師に確認することをおすすめします。
 

検査方法① 画像検査

画像検査とは、X線写真・CT・MRIなど画像を見ることで身体の状態を調べる検査です。
気管支拡張症が疑われる場合は、X線写真やCTで気管支拡張の有無・病気の範囲などを確認します。

 

検査方法② 呼吸機能検査

肺の病気が疑われる場合は、病名を判断するためでなく病状の進行度を確認するため、呼吸機能検査を行います。
呼吸機能の検査では、肺に空気を溜める・吐く・吸うなどの機能について確認を行うのが一般的です。
 

検査方法③ 喀痰培養検査

感染症が原因と考えられる場合、痰に含まれる細菌の種類を調べます。
原因となっている細菌を知ることは炎症・感染の治療を行うために重要です。

 
 

気管支拡張症の治療方法

気管支拡張症は根治が難しい病気とされますが、もし診断を受けたらどのような治療方法があるのでしょうか?

治療法① 薬物療法

気管支拡張症自体の治療薬はありませんが、症状の悪化を防ぐために薬物療法が有効とされています。
薬物療法では、去痰薬によって痰を排出しやすくしたり、抗生剤によって原因となる気管支の炎症を抑えたりすることが主な目的です。
 
また、新たな感染などにより状態が急激に悪化した場合は抗菌薬に加えて気管支拡張薬を使用することもあります。
 

治療法② 理学療法

気管内に溜まった痰は細菌の温床になるだけでなく、呼吸を妨げてしまうため可能な限り排出することも大切な治療の一つです。
そのため、排痰を促す呼吸法「ハフィング」や、姿勢により痰の排出を助ける「体位排痰法(体位ドレナージ)」の練習を行う場合もあります。
 
また、排痰を促す訓練だけでなく、口すぼめ呼吸・腹式呼吸などの呼吸訓練も呼吸苦の緩和に有効な理学療法です。

 

治療法③ 外科的療法

病巣が限局的である場合など、医師によって外科的治療が有効と判断された場合は、手術により病巣部分の肺を切除することがあります。
外科的療法を行った場合、残った肺は完治に近い状態になる可能性が高いとされていますが、手術の適応と判断される症例は少数です。
 
その他の外科的療法として、喀血が多い場合には出血を止めるためのカテーテル治療を行うことがあります。
 

治療後の注意点

低下した呼吸機能を補う治療法として、空気よりも高濃度の酸素を少量ずつ吸入する「酸素療法」があります。
酸素療法は小型のボンベを使用することで家庭でも続けられる治療法で、呼吸苦を緩和するだけでなく肺性心の予防・改善にも有効です。
 

治療法④ 酸素療法

気管支拡張症と診断され、治療を始めた後はどのようなことに注意して生活すれば良いのでしょうか?
日常生活の中でできることとして、まずは免疫力や体力を保つための規則正しい生活と、内服や排痰を習慣化していきましょう。
 
また、症状の急な悪化(急性増悪)を防ぐために感染症や新たな気管支の炎症を予防することが重要です。
具体的には、禁煙・手洗い・マスクの着用のほか、呼吸器の病気やインフルエンザなどの予防接種を受けることをおすすめします。
感冒症状など体調の変化を感じたら早期に医療機関を受診して、早期治療に努めることも気管支拡張症の進行を抑えるポイントです。

 
 

まとめ

気管支拡張症の原因は多岐にわたり、症状がゆっくりと進むため原因が明確に分からないこともあります。
気管支拡張症は根治が難しい病気とされますが、早期発見し症状悪化のリスクを減らすための治療・生活改善を続けることで進行を抑えることができる病気です。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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