立ちくらみが起きる原因とは?病気の可能性・対処法について解説
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立ちくらみが起きる原因とは?病気の可能性・対処法について解説
立ち上がる動作や、神経の反射で血圧が下がって脳血流が減少すると、立ちくらみがおこります。
多くは短時間でおさまるため「これくらい平気」と考えがちですが、繰り返し起こる立ちくらみや、加えて頭痛や吐き気が起こる場合には、重篤な病気が隠れている可能性があり、早急な対応が必要です。
立ちくらみが起こる原因や病気、対処法について見ていきましょう。
立ちくらみの原因は?
実は「立ちくらみ」は正式な医療用語ではありません。
医療用語では、失神しそうな状態ということで「前失神」と呼びます。
失神とは、一時的に脳への血流が減少し意識を失うことです。
失神の原因はおおまかに分類すると以下の4通りです。
- ● 起立性低血圧
- ● 神経調節性失神(反射性失神ともいいます)
- ● 心原性失神
- ● その他
このうち、頻度は10%以下ですが、一番危険なのが「心原性失神」です。
不整脈や心臓そのものに異常があるため、命に関わり、早期発見が望まれます。
原因をしっかりと診断し治療につなげられるクリニックや病院を受診することが大切です。
では、それぞれの原因について詳しく説明します。
起立性低血圧
起立性低血圧には、座った状態から立ち上がると目の前が暗くなる、血の気が引いた感じがする、などの症状があります。
人が横になった状態から立ち上がると、重力の影響で約500〜800mlの血液が下半身へ移動し、心臓へ戻ってくる血液量が約30%減り、血液が減少して血圧が低下します。
健康な人であれば、血圧の低下に対して「体の血圧を感知するセンサー」が働いて血圧を正常な値に戻すことができますが、このセンサーのどこかに異常があったり、血液の量が異常に少ない状態では、立ち上がった際に、血圧の低下を引き起こすとされているのです。
神経調節性失神
神経調節性失神は、反射性失神とも言い、何らかの原因により血圧や心拍数をつかさどる神経反射が異常をおこすことにより失神します。
メカニズムごとの分類は以下の3つです。
- 1. 血管迷走神経反射
- 2. 頸動脈洞過敏性失神
- 3. 状況失神
血管迷走神経反射
血管迷走神経反射は強い痛み、疲れやストレスなどがきっかけで起こります。
- ● 朝礼の際に倒れてしまう
- ● 採血の時に気分が悪くなる
副交感神経の1つである「迷走神経」が働き、血圧・心拍数が低下し、脳への血流が低下することで、めまいや立ちくらみなどの症状が続き、放置すれば失神にいたります。
迷走神経反射について詳しくはこちら
頸動脈洞過敏性失神
中高年男性の失神患者の多くはこの頸動脈洞過敏性失神にあたります。
- ● 荷物の上げ下ろしなど首を回す、曲げ伸ばしするとき
- ● ネクタイを締めたとき
「頸動脈洞」とは、血圧を監視する圧受容体で、首元に存在しているセンサーのようなものです。
頸動脈洞が、加齢による動脈硬化などで過敏な状態になると、首元への刺激に反応し、脳への血流が減少してしまい、失神します。
状況失神
以下のような「特定の状況・動作で起こる失神」のことは状況失神といいます。
- ● 排尿排便時
- ● せき込んだとき
- ● 嘔吐したとき
さまざまな状況において細かいメカニズムは異なりますが、迷走神経活動の急激な亢進などにより、血圧が低下して失神がおこるとされています。
立ちくらみの原因は多岐に渡る
以下のような状態も、立ちくらみの原因となります。
- ● 脱水:血管内の水分の量が低下すると、血流が低下し、血圧が下がり、立ちくらみを起こしやすい
- ● 貧血:貧血で全身の酸素が不足していると、脳に十分な酸素が行き届かず、立ちくらみを起こしやすい
- ● 体に疲労が蓄積している場合:睡眠不足や過度に疲労を感じている場合、自律神経が乱れ、めまいや立ちくらみなどにつながる
男性の立ちくらみには病気が隠れている可能性がある
立ちくらみの原因の一つである「貧血」は、月経による出血などで女性に多いイメージがあるかもしれませんが、男性の場合であっても「貧血」が考えられます。
貧血となる原因は、胃や大腸などの消化管から大量に出血するなどの場合にも起こります。便が黒い、血が混じっているなどの場合は、速やかに受診しましょう。
立ちくらみが起きた時の対処法は?
では実際に立ちくらみが起きた際にはどういった対処を行うのが適切なのでしょうか。
まずは安静にする
自宅の場合は、ベッドやソファに横になり休みましょう。
外出先の場合、その場にしゃがみこんだり、壁などにもたれかかって体を休めます。
立ちくらみが起こり、そのまま意識を失って倒れてしまうと、頭をぶつける危険性があります。
また、横断歩道や駅のホームなどで転倒してしまうと危険です。
無理に動かないようにしましょう。
少しずつ水分をとる
軽症の立ちくらみでは「起立性低血圧」や自律神経の乱れによる「神経調節性失神」が原因として考えられます。
体の水分が不足した状態で、脳への血流を改善する意味でも、水分を少しずつとりましょう。
病院の受診が必要なケース
一番危険な「心原性失神」の特徴は「前触れもなく立ちくらみ・失神がおこる」ことです。心原性失神は、命に関わる病気であり、緊急の治療が必要な場合があります。
心原性失神に関わらず、原因を突き止めるためにも、立ちくらみが繰り返し起こる場合は、一度クリニックを受診しましょう。
立ちくらみは何科を受診するべきか
立ちくらみに続いて視界が暗くなり、失神した場合は、内科や循環器内科で精密検査を受けましょう。
貧血や、重篤な不整脈が隠れている可能性があります。
血液検査で貧血の具合を確認したり、心電図検査で危険な不整脈がないか調べます。
立ちくらみに続いて、めまい・頭痛、嘔吐する場合は、脳神経内科・脳神経外科を受診しましょう。
脳出血の可能性も考えられます。
CTやMRIなどの検査で、脳に異常がないか調べる必要があります。
当院の血液内科についてはこちら
立ちくらみの予防法
自律神経の乱れなどによる立ちくらみの予防法を紹介します。
主に日常生活の中で改善できる簡単な方法ですので、できそうなものから試してみてください。
適度な運動
適度に運動することで、全身の血行が改善されます。
運動は、起立性低血圧の治療としても取り入れられているようです。
ウォーキングなどで下半身を動かすことで、下半身の血液が戻りやすくなるため、立ちくらみの予防につながるといわれています。
日常生活の改善
日常生活を整えることは、体調を整える上での基本です。
睡眠をしっかりとる、バランスの取れた食事をとるなど、日常生活を改善しましょう。生活リズムが整うと、自律神経のバランスがよくなります。
立ち上がり方、起き方
立ち上がる時は、急に立ち上がらずに、ゆっくりと一動作ずつ行いましょう。
横になっている時も座っている時も、「これから立ち上がるよ」と体に知らせるように、足の指先や足首を動かしてみてください。そのあとにゆっくりと起き上がります。
特に起立性低血圧では、生活習慣の見直しが大切です。
上記で説明した方法を試した上でも、立ちくらみの前兆がある場合は、すぐに安静にし、ゆっくりと動作を行うようにしましょう。
まとめ
立ちくらみは、様々な場面で多くの方が経験する症状です。
安静にすれば自然になおる事が大半である立ちくらみですが、中には、病気が隠れている可能性もあります。
立ちくらみに加えて、失神・頭痛や嘔吐などの症状が繰り返し起こる場合には、無理をせずに病院を受診しましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師