潰瘍性大腸炎とは?原因、症状、治療法について解説
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潰瘍性大腸炎とは?原因、症状、治療法について解説
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に慢性的なびらん(粘膜の表面がただれた状態)や潰瘍(粘膜よりも深い部分まで損傷した状態)ができる病気で、自分の体に対して免疫反応を起こしてしまい、過剰な炎症が続くことによって引き起こされます。この病気の原因や発症のメカニズムは解明されておらず、国の指定難病となっています。同じ家系で発症するケースも多いため遺伝的要因が関与している可能性や、食生活が欧米化したことによる環境要因などが複雑に絡み合って発病している可能性が考えられています。
厚生労働省の調査では、日本における潰瘍性大腸炎の患者数は約22万人と推定されており、男女差はなく発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性で25~29歳となっていますが、若年層から高齢者まで発症する可能性のある病気です。
潰瘍性大腸炎は病変の広がり方によって以下の3つに分類されています。
- ①直腸炎型:直腸にのみ炎症を認める
- ②左側大腸炎型:結腸まで炎症が広がっているが脾彎曲部(ひわんきょくぶ)を越えない
- ③全大腸炎型:脾彎曲部を越えて大腸全体に炎症を認める
また、病状の経過によっても分類されており、症状が落ち着いている状態の「寛解期」と症状が強く現れる状態の「活動期」があり、一度寛解したあとに再び症状が出現し活動期に入ってしまうことを「再燃」と言います。厚生労働省の調査では、潰瘍性大腸炎の患者のうち約半数が寛解と再燃を繰り返す経過をたどるとされています。
潰瘍性大腸炎の症状
代表的な症状は激しい下痢や血便で、強い腹痛やしぶり腹(便意があっても便が出ない)が現れることもあります。重症になると、発熱、体重減少、貧血などの症状が起こり、合併症として皮膚の症状(口内炎など)や関節痛、目の症状(痛みやまぶしさなど)が出現することもあります。
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潰瘍性大腸炎の検査方法
初回受診の際にはまず医師の問診があります。下痢や血便の有無、回数、いつから症状が出てどのくらい続いているのかなどを聴取します。下痢や血便は感染症にかかった場合にも現れる症状であるため、まず感染症の検査をして鑑別することが必要となります。
具体的には、採血、レントゲン検査、便検査をして感染症の可能性がなく、潰瘍性大腸炎が疑われる場合には大腸内視鏡検査(いわゆる大腸カメラ)に移ります。大腸内視鏡検査では、びらんや潰瘍の有無、炎症がどの部位にどのように広がっているのかなどを診ていきます。また必要に応じて組織を一部採取して顕微鏡で詳しく検査をする「生検」を行い病理診断をします。複数の検査の結果を踏まえ、国で示されている診断基準を満たした場合に潰瘍性大腸炎の診断となります。
潰瘍性大腸炎の治療方法
原因不明の難病である潰瘍性大腸炎の治療のゴールは、まずは症状が落ち着いた状態の「寛解」を目指し、その状態を長期間維持することです。原則的には薬による内科的治療が行われますが、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。
1)内科的治療
完治に導く内科的治療はありませんが、炎症を抑え症状をコントロールするのに有効な薬物治療は存在します。主な薬としては以下のようなものがあります。
(1)5-アミノサリチル酸(5-ASA)
潰瘍性大腸炎の治療の基本となる薬剤で内服薬や座薬があり、軽症~中等症の方に使用します。炎症を抑えることで、下痢、血便、腹痛などの症状が著しく減少し、再燃予防にも効果があります。
(2)副腎皮質ステロイド
内服薬や座薬、または点滴で投与します。この薬剤は中等症から重症の場合に用いられ、炎症を抑える効果は高いのですが、再燃を予防する効果は認められていません。また長期間の使用で副作用が現れやすいため使用期間や使用量には注意が必要です。
(3)免疫調節薬、抗体製剤
ステロイドを中止すると再燃してしまう場合やステロイドを投与しても効果が低い場合に用いられます。
(4)生物学的製剤
5-ASA製剤やステロイドの効果が不十分な場合などに用いる薬剤です。日本で使用可能な製剤は以下の通りです。
- ①抗TNF-α抗体製剤
- ②抗α4β7インテグリン抗体製剤
- ③抗IL-12/23p40モノクローナル抗体
- ④JAK阻害薬
(5)血球成分除去療法
薬物療法で効果が十分に得られない場合に用いられる治療方法です。潰瘍性大腸炎の方の大腸の粘膜では、異常に活性化してしまった白血球が炎症を引き起こしています。そのため血液透析のように、専用の装置を使用して血液を一度体の外に出し、異常な白血球を取り除いて再び血液を体に戻す治療を行います。
2)外科的治療
多くの方の場合は内科治療で症状が改善しますが、症状が重い場合や薬による症状のコントロールが難しい場合などは外科的治療が必要となり大腸の摘出手術が行われます。
いくつかの術式があり、その方の状態、年齢、合併症などを考慮した上で選択されます。一時的に人工肛門(ストーマ)をつくることもありますが、多くの場合がその後に閉鎖する手術を受けるため永久ストーマとなる方は少数です。
◆医療費助成について
潰瘍性大腸炎は国の指定難病であるため、定められている重症度分類に基づいて、中等症以上の場合には医療費助成が受けられます。医療費助成の認定が下りると、医療費の⾃⼰負担額が2割となり、世帯の所得に応じて1ヵ⽉あたりの⾃⼰負担額の上限が設けられます。また、軽症の場合でも⾼額医療を継続することが必要と判断された場合には対象となります。
助成認定の申請は、お住まいの都道府県の保健所などの窓口で行うことができ、その際には診断書などの書類が必要となります。申請に関する詳細、不明点については、主治医や病院の医事受付、お住まいの都道府県の保健所などでご確認ください。
まとめ
潰瘍性大腸炎は原因不明の病気で現時点では完治は難しい病気ですが、新たな研究や薬の開発が続けられており、日々治療法は進歩しています。また、完治は難しくても治療によって寛解すれば、仕事や通学など普通の日常生活を送ることも可能となります。
大切なのは症状が改善したからといって自身の判断で治療を中断せず、医師の指示のもと毎日の服薬を欠かさないことです。まずは繰り返す下痢や腹痛など気になる症状がある場合には早めに病院を受診しましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師