くも膜下出血とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/11

くも膜下出血とは?原因、症状、治療法について解説

くも膜下出血とは

脳は、一番外側から「硬膜」、「くも膜」、「軟膜」という3層の膜に覆われています。脳出血の一つである「くも膜下出血」は脳を覆う3層の膜のうち、くも膜と呼ばれる脳の表面の膜と脳の空間(くも膜下腔)に存在する血管が切れて起こる出血のことです。脳卒中の一種で突然起こり、 8〜9割は脳の動脈にできた「こぶ」(脳動脈瘤)が破裂し、出血することが原因です。発症すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。主な症状には、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などがあります。重症の場合、意識消失や死亡につながることがあります。

早期発見と適切な治療が重要で、緊急性が高い病態です。治療方法には、手術や薬物療法がありますが、症状の重症度や発症後の状態によって異なります。死亡率は約50%と非常に高く、処置が遅れると再出血の危険性もあり、早急な対応が重要となります。

くも膜下出血の原因は

くも膜下出血の原因は、くも膜下の血管が破裂することによる出血です。血管が破裂する原因には、以下のようなものがあります。

  

①高血圧

高血圧の状態が長期間続くと、脳の血管に負担がかかり、脳の血管の一部に動脈瘤ができ、くも膜下の血管が破裂するリスクが高くなります。くも膜下出血の原因として、高血圧は最大の原因となります。

  

②脳動脈瘤の破裂

動脈瘤とは、血管が膨らんでいる状態のことで、この膨らんだ部分が破裂すると、くも膜下出血が起こります。動脈瘤は、生まれた時から存在していることもありますが、長年にわたる高血圧によって動脈の壁が弱くなり、生じることもあります。

  

③外傷

外傷が原因となることも多くあります。日常生活において頭をぶつけたり、スポーツで衝突した等の場合、くも膜下出血の原因となります。

  

④脳動静脈奇形の破裂

脳動静脈奇形は破裂すると、くも膜下出血が起こります。動静脈奇形は生まれたときから存在していることもありますが、通常は、症状が現れて初めてその存在が明らかになります。

  

⑤血液の凝固異常

血液が固まりにくくなる状態(出血性疾患)の場合、くも膜下出血のリスクが高まります。

  
以上が「くも膜下出血」の主な原因となります。くも膜下出血は、いつ発症するか予測が難しいため、原因が明確ではない場合もあります。
  

くも膜下出血の症状は

くも膜下出血は、突然の激しい頭痛、意識障害、片麻痺、めまい、吐き気、嘔吐、けいれん、感覚障害、発音障害、視力障害などの症状を引き起こすことがあります。
くも膜下出血は、激しい頭痛が突然現れるのが特徴です。「突然バットやハンマーで殴られたような」「これまでに経験したことがないほど」などと表現されることが多く、今までに体験したことのないような激しい頭痛と言われるほどの強烈な痛みが突然起こります。破裂による突然の激しい頭痛に関しては数秒以内がピークと言われていますが、頭痛をほとんど感じないこともあります。

くも膜下出血を起こすと、出血量が多い場合は脳が圧迫されることで意識を失うことも多く、突然死の原因となります。脳の中の水のまわりが出血により障害され、脳の中に水がたまると、その症状として頭痛、不穏、意識障害、歩行障害等が起こります。治療として、脳の水を腹腔内に流して吸収できるようにします。意識障害は比較的多く、頭痛がなく、いきなり意識を失うこともあります。

症状の程度は、出血の場所や量によって異なります。軽度の場合は、頭痛や軽度の意識障害のみが現れることがありますが、重度の場合は、意識障害や痙攣などの症状が生じ、命に関わることがあります。くも膜下出血の疑いがある場合は、迅速に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

  

くも膜下出血の検査方法と診断

くも膜下出血の診断には、以下のような検査が行われます。

①CTスキャン

CTスキャンは、くも膜下出血の診断に最も一般的に使用される検査です。CTスキャンは、脳の断層画像を提供し、くも膜下出血を検出することができます。

②脳脊髄液検査

脳脊髄液検査は、くも膜下出血を疑った場合、診断の確認のために行われる場合があります。脳脊髄液検査では、出血がわずかでCTスキャンではとらえられない場合に腰から針をさして脳脊髄液を採取し、異常があるかどうかを調べます。

  

③MRIスキャン

MRIスキャンは、より詳細な画像を提供することができますが、CTスキャンよりも時間がかかり、高価であるため、くも膜下出血の診断には一般的には使われません。くも膜下出血はCTスキャンにより診断されますが、発症から時間が経ったり、ごく軽症の場合はCTスキャンではわからない場合があります。その場合にはMRIスキャンを使用します。

  
これらの検査は、医師がくも膜下出血の診断を確認するのに役立ちます。ただし、緊急性がある場合は、CTスキャンが最も速やかに行われることが重要です。
  

くも膜下出血の治療方法

くも膜下出血発症直後も破裂した脳動脈瘤が、血圧上昇などにより、24時間以内に再出血(再破裂)することもあります。再出血によりくも膜下出血が増え、脳全体がダメージを受け、予後が不良となることが多くあるため、くも膜下出血の急性期治療は、脳動脈瘤の「再出血」を防ぐことが重要とされています。この再出血を防止する為に行われる治療が手術です。
代表的な手術方法として、開頭手術と血管内手術があります。

①開頭クリッピング術

くも膜下出血の診断が確定したら、手術を検討することが一般的です。代表的な手術方法として開頭クリッピング術があります。手術による治療は、急速な血液の圧迫を解消し、再出血の予防となります。手術によって、出血している血管を閉塞することで出血を止め、圧迫された脳を解放することができます。

  

②血管内コイル塞栓術

近年では、血管内治療が行われることがあります。これは、手術を行わずに、専用のカテーテルを使って、脳動脈瘤にコイルを詰めることで、血液が脳動脈瘤への流入を防ぎ、再破裂を予防します。

  

③保存療法

手術が難しい場合や、くも膜下出血が軽度の場合、手術後の合併症が心配な場合には、保存的治療が行われます。入院にて安静に過ごし、血圧や頭蓋内圧の管理、呼吸管理、栄養管理、抗けいれん薬の投与、血栓予防薬の投与などが行われ、症状改善を図ります。しかし、保存的治療は、手術に比べて再出血のリスクが高く、入院期間も長くなることがあります。

  
治療方法は患者さんの症状や状態によって異なります。適切な治療方法を決定するためには、専門医の診断と治療が必要です。また、くも膜下出血は、早期に発見・治療することが重要です。症状が現れた場合には、迅速に医師の診断を受け、治療を開始することが必要となります。
  

くも膜下出血の予防方法

くも膜下出血を予防するためには、以下のような方法があります。

①高血圧を予防する

高血圧はくも膜下出血のリスク因子の一つです。高血圧の最大の生活習慣要因は、食塩の過剰摂取と言われています。日本人は食塩摂取が多いため、まず行うべきことは、減塩となります。適切な食生活や運動習慣、ストレスを減らす生活を心がけ、定期的な健康診断を受け、高血圧を予防、コントロールすることが大切です。

  

②喫煙を避ける

タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、血圧を上昇させるため、喫煙はくも膜下出血のリスクを高めます。禁煙することで、リスクを減らすことができます。

  

③頭部外傷を避ける

スポーツや日常生活の中での転倒や衝突、転落等による頭部外傷は、くも膜下出血の原因となります。ヘルメットの着用や注意深く行動、安全な環境づくりを心がけることで、外傷を避けることができます。

  

④適切な食生活や運動習慣を心がける

健康な食生活や適度な運動習慣を心がけることで、血圧を下げ、くも膜下出血のリスクを軽減することができます。

  

まとめ

くも膜下出血は、脳のくも膜下に血液がたまることで起こる病気で、命にかかわることもあります。症状としては、突然の激しい頭痛や意識障害、嘔吐などがあります。 
突然経験したことのない激しい頭痛におそわれたら、迷わず救急車を呼びましょう。くも膜下出血は放置していると再出血を起こし、最悪の事態になりかねません。前兆症状として、血圧が激しく上昇・下降する、急な頭痛(軽い頭痛のこともあります)、視力低下やめまい、吐き気や嘔吐、頭の違和感(モヤモヤしたりボーとする)等があります。前兆症状は時間が経ち、しばらくすると症状が落ち着くことがあり、その後くも膜下出血を起こします。症状が落ち着いていても、すぐに受診し、検査を受けることが大切です。 
日頃から定期的な健康診断や、健康管理を心がけ、くも膜下出血を予防していきましょう。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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