膀胱炎とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/18

膀胱炎とは?原因、症状、治療法について解説

「トイレに行く回数が増えた」
「排尿時に痛みがある」
「残尿感が消えない」
といった症状に心当たりはありませんか?
これらの排尿に関する症状が出たら「膀胱炎」の可能性があります。
 
本記事では、以下の項目に分けて解説していきます。

  •  ・ 膀胱炎の種類とそれぞれの症状
  •  ・ 膀胱炎の主な原因
  •  ・ 治療法や予防法

 
膀胱炎の理解を深め、症状の改善や予防に役立ててください。

 
 

膀胱炎って何?

「膀胱炎」という言葉はよく耳にするものの、実際にはどのような疾患か疑問に思う方も多いでしょう。
以下に膀胱炎の定義や原因、症状、種類についてまとめました。
 

膀胱炎とは

膀胱は尿を貯めるタンクのような役割があります。
 
膀胱炎とは、その膀胱内で発生した炎症によって膀胱の機能に異常が生じる病気で、その多くは膀胱内に細菌が感染することで発症します。
 
膀胱が尿を一定量ためると収縮して排尿しますが、炎症によってこの機能が正常に働かなくなると、頻尿、排尿時の痛み、残尿感などの排尿障害が引き起こされるのです。
 
膀胱炎は一般的に女性に多く見られますが、男性でも発症することがあります。
 
女性の場合、膀胱炎に対する悩みを相談しづらく、病院を受診するタイミングが遅れることがあるため、少しでも排尿に異常を感じたら早めに泌尿器科を受診しましょう。
ほとんどの膀胱炎は薬物療法だけで、比較的短期間にて完治させることが可能です。
 
そもそも膀胱炎の症状は男性よりも女性に多い理由として、以下の2つが考えられます。
 

  • 1. 男性と比較して尿道が短いので細菌が膀胱に早く到達してしまう
  • 2. 尿道と肛門の距離が近いので、大腸菌などの細菌が入りやすい

 
体の構造上、男性よりも女性の方が発症しやすい病気なのです。
 

膀胱炎の原因

主な原因は以下になります。
 

  • ・トイレに行くことを我慢する
  • ・疲労やストレスの蓄積
  • ・生理中・性行為後のタイミング
  • ・食事

 
膀胱炎は健康な方でも引き起こしてしまう身近な病気でもあります。
 
日常で無意識にしてしまっている行動が膀胱炎につながる可能性もありますので、ぜひご確認ください。
 

トイレに行くことを我慢する

トイレを過度に我慢することは膀胱炎のリスクを高める原因の一つです。
膀胱が過度に拡張すると血行不良を起こし、免疫力が低下します。
 
また大腸菌などの細菌感染による膀胱炎の場合、細菌が侵入した状態で尿を我慢すると尿の中で細菌が繁殖するため、膀胱炎を発症する可能性が高まります。
 

疲労やストレスの蓄積

大腸菌などの細菌は私たちの肛門にいる常在菌ですが、ストレスや疲労が蓄積していたり、睡眠不足が続いたりすると大腸菌など細菌に対する抵抗力が低下します。
 
その結果、免疫力が低下すると膀胱内に侵入した細菌に抵抗することができず、膀胱炎になりやすくなるのです。
 
ストレス
 

生理中や性行為後は気を付ける

不衛生な性行為は、膀胱炎のリスクを高める一因となります。
性交中、尿道がわずかに傷つくことで、そこに細菌が繁殖する可能性があるためです。
特に膣の乾燥がある場合、ダメージはさらに大きくなることがあります。
膀胱炎の予防策として、性行為後はすぐにトイレに行き、排尿をするとよいでしょう。
 
月経中は膣内に雑菌が繁殖しやすい時期です。
膣内に大腸菌などの細菌が存在すると、膣の近くにある尿道口にも菌が入り込むリスクが高まり、それが尿道口で繁殖して膀胱炎を引き起こす可能性があります。
また、汚れた生理用品は細菌が増殖しやすいため、定期的に交換し、細菌の繁殖を防ぐことが大切です。
 

食事も気に掛ける

膀胱炎の原因や症状の悪化には、普段食べている物も深く関わっています。
基本的にコーヒーや酸味が強い食べ物は、間質性膀胱炎の症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
 
また、複雑性膀胱炎の原因となる糖尿病や尿路結石の発症には食事が深く関わっているため、栄養バランスを考えて高タンパク質、高糖質の食べ物の摂りすぎには気をつけましょう。
 
 

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膀胱炎の症状

急性膀胱炎の主な初期症状は以下のものになります。
 

  • ●排尿後すっきりしない
  • ●排尿時の痛み
  • ●尿の回数が増える
  • ●尿の混濁

 
特に排尿最後に現れるしみるような強い独特の排尿痛がある場合には、急性膀胱炎が強く疑われます。
 
対して、慢性膀胱炎は、わかりやすい症状が出ることはほとんどなく、進行するまで気付かないことが多いです。
慢性膀胱炎の場合はかなり進行してから頻尿や排尿痛、残尿感などを生じます。
 
膀胱炎が進行すると起きやすいのが「腎盂腎炎」という病気です。
腎盂腎炎になると、次のような症状が現れ、治療にも時間がかかります。
 

  • ●血尿
  • ●下腹部の痛み
  • ●発熱
  • ●吐き気

 
膀胱炎かもしれないと感じたら、早めに病院を受診しましょう。
 

膀胱炎の種類

一言で膀胱炎といっても、いくつか種類があります。
 

急性膀胱炎

急性膀胱炎は、女性の約半数が生涯に一度はかかったことがあるといわれるほど多い病気です。
排尿時のしみるような痛み、頻尿、残尿感、血尿などが典型的な症状です。
 
急性膀胱炎は尿道から膀胱内に侵入した菌が膀胱内の粘膜に付着・定着し炎症を起こす疾患です。
原因菌は大腸菌が原因菌であることが多いですが、さまざまな菌が原因菌となりえます。
 
男性が膀胱炎の症状を訴える場合は、前立腺肥大症や前立腺炎、尿道炎など別の疾患の可能性もあることを覚えておきましょう。
 

慢性膀胱炎

急性膀胱炎が短期間で治りやすいのに対し、症状が長引き慢性化したものを「慢性膀胱炎」と呼びます。
 
慢性膀胱炎になる原因は主に2つあります。
 
1つ目は、処方された薬を正しく服用しなかったり、適切な治療が行われなかったりしために急性膀胱炎が再発し、結果として慢性化するケースです。
2つ目は、基礎疾患が原因で膀胱が細菌に感染し、その治療過程で膀胱炎が慢性化してしまうケースです。
 
膀胱炎を引き起こす基礎疾患は以下の通りです。
 

  • ●尿路結石
  • ●前立腺肥大症
  • ●膀胱がん
  • ●糖尿病

 
ただし、どちらのケースも症状は軽度にとどまることが多く、自覚症状が現れないこともあります。
 

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎(ハンナ型)は、膀胱に原因不明の炎症が生じ、その結果として頻尿や膀胱、尿道に違和感や痛みが現れる病気です。
膀胱内視鏡では、ハンナ病変と呼ばれる特徴的な粘膜の異常が確認されます。
 
間質性膀胱炎は、細菌感染による急性膀胱炎とは異なり、尿に異常が見られないことがほとんどです。
そのため、医療機関で急性膀胱炎と診断され、抗生剤が処方されることがありますが、一時的に症状が改善しても再び同様の症状が現れます。
尿に異常がないのに症状が続くため、精神的な問題と誤解されることも少なくありません。
 
頻尿が顕著な場合は、過活動膀胱と診断され、治療薬である抗コリン剤が処方されることがありますが、多くの場合、あまり治療効果がないといわれています。
 

放射性膀胱炎

放射線膀胱炎は、がんの治療に使用される放射線の副作用として起こる膀胱の炎症です。
 
通常、放射線膀胱炎は骨盤領域(膀胱、結腸、直腸、卵巣、子宮、前立腺周囲の領域の腫瘍の治療)への放射線照射後に発生します。
 
放射線療法の完了から6か月未満で発生する急性の場合もあれば、放射線療法の完了から6か月以上経過して発生する遅発性の場合もあります。
 

出血性膀胱炎

出血性膀胱炎とは出血を伴って発症する膀胱の炎症で、ウイルス、細菌薬剤、放射線などが原因です。
また、抗がん薬(エンドキサン、イホマイド)によっても引き起こされることがあります。
 
出血性膀胱炎は、大人よりも子どもに多く、特に子どもの場合、ほとんどはウイルス感染が原因です。
出血性膀胱炎の主な症状は以下の通りです。
 

  • ●尿の回数が増える(頻尿)
  • ●排尿後もまだ残っている感じがする(残尿感)
  • ●排尿時、痛みがある(排尿時痛)
  • ●尿が赤みを帯びている(血液が混ざる)

 
症状は急性膀胱炎と似ていますが、出血性膀胱の場合は明らかな血尿が見られます。
 

腎盂腎炎

腎盂腎炎(じんうじんえん)、または腎盂炎(じんうえん)は、腎臓から尿が集まる腎盂やその周辺に細菌感染が広がり、炎症を引き起こす病態です。
腎臓は血流が豊富な臓器であるため、感染が全身に広がり、菌血症や敗血症に進行する可能性があります。
 
一般的に腎盂腎炎の前触れとして膀胱炎があり、膀胱炎が悪化し腎盂腎炎へと繋がります。
腎盂腎炎の主な症状は、発熱と腰痛、腎臓付近をたたくと痛みを感じる叩打痛というものです。
腎盂腎炎は腎臓の実質全体に炎症が起こるため、腎臓付近を叩くと痛みが生じます。
 
また、発熱に伴って頭痛、寒気や悪寒、だるさ、倦怠感を感じることもあります。
発熱は高熱になることが多いですが、初めは微熱程度であることが多いです。
膀胱炎の後に発熱が見られはじめた場合には、左右の腰のやや上付近をたたいて痛みがないかどうかチェックしましょう。
 
 

膀胱炎の検査について

膀胱炎の診断は、医師の問診と尿検査、血液検査が行われることが多いです。
 

1: 尿検査

膀胱炎の疑いがある場合、一般的に行われる検査は尿検査です。
尿検査では、尿中の白血球反応や潜血反応、蛋白や糖を調べます。
 
初めの尿には膣のおりものなどが混入しやすいため、尿を採取する場合、初めの尿より途中の尿(中間尿)をとります。
 
より正確な検査結果を求める場合は、導尿(どうにょう)を行うこともあります。
尿検査で、一定数以上の白血球や細菌が見つかれば膀胱炎と診断でき、さらに尿中の細菌を培養して菌の種類を調べます。
 

2: 血液検査

膀胱炎や尿道炎では血液検査に異常が見られないことが多いため、診断には主に尿検査が用いられます。
 
しかし、出血性膀胱炎や腎盂腎炎、前立腺炎、精巣上体炎では、白血球、CRPという炎症反応が上昇することが多いため、採血による診断も必要です。
 
血液検査
 
 

膀胱炎の治療は?

膀胱炎の治療は抗菌薬などの飲み薬による治療がほとんどです。
 
多くの場合は、内服を開始してから3日以内に症状が改善して、1週間後には症状が治まっています。
治療中は膀胱内に増殖した細菌を尿と一緒に排出するために、水分補給をしっかりと行い、定期的にトイレに行くようにしましょう。
 
薬を飲み始めると短い期間で症状が改善する方がほとんどですが、薬の服用期間は医師の指示に従い、途中で内服を中断しないようにしましょう。
内服薬を全て飲んで無症状になっても、耐性菌と呼ばれる抗生物質が効きにくい細菌が潜んでいる可能性があるからです。
内服終了時には再度尿検査を行い、完治しているか確認する必要があります。
 
しかし、抗菌薬の内服で治療を行っているのにも関わらず症状の改善が見られない場合は、服用を中止し医師に一度相談しましょう。
別の治療方法の提案や別の薬、漢方薬での治療という選択肢にもなります。
 

 

膀胱炎の予防方法は?

膀胱炎は一度かかると、完治しても再発しやすい病気です。
膀胱炎の悪化は日常生活にも影響が出てしまうことも多くありますので、膀胱炎を繰り返さないために日頃から予防をしていきましょう。
 
以下に、膀胱炎の予防法について説明します。
 

トイレを我慢しない

トイレを我慢しないことは、膀胱炎の予防として有効です。
膀胱に尿が溜まる時間が長くなると、菌が繁殖しやすくなります。
外出時などは、事前に排尿を済ませておきましょう。
 
尿意を催すのは生理現象ですので、日常的にトイレを我慢することは避けたほうが良いでしょう。
 

陰部の清潔を保つ

膀胱炎を予防するためには、尿道口からの菌の侵入をできるだけ防ぐことが重要です。
 
女性の場合、排せつ後に後ろから前に拭くと、肛門周囲の細菌が尿道に入る可能性があります。必ず前から後ろに拭くようにしましょう。
 
おりものシートや生理用ナプキン等同じものを長時間使用していると、蒸れやすく雑菌が繁殖しやすい環境になりますので、こまめにシートの交換をしてください。
また、性交後は入浴や排尿を心がけるようにし、常に陰部の清潔を保つことが大切です。
 

免疫力を高める

膀胱炎の予防には、免疫力を高めることが効果的です。
免疫力が正常に働いていれば、膀胱に細菌が侵入しても増殖せず、感染を防ぐことができます。
 
免疫力を向上させるためには、日常的にストレスや疲れを溜めないようにして、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
膀胱炎を避けるためにも、日頃から体調管理や規則正しい生活を送ることが大切です。
 
 

まとめ

本記事では、膀胱炎の症状について詳しく説明しました。
膀胱炎の症状とは、膀胱内で起きた炎症により異常を引き起こしてしまう症状で、膀胱内に細菌感染するのが主な原因です。
 
いつもよりトイレに行く回数が増えてきたかもしれないな…と思っていても、それはたまたま起きた症状ではなく、その裏には別の疾患が隠れている場合があります。
 
また膀胱炎は女性だけではなく、男性にも起こり得る病気です。
 
トイレに行った後にあまりすっきりしないというような些細なことでも、膀胱炎の前兆である可能性がありますので、少しでも違和感がある場合は、医師に相談してください。
 
早期の治療で比較的短期間で症状改善が見込めるため、セルフチェックで当てはまる箇所がある場合は早めの医療機関受診を行いましょう。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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