性器ヘルペスとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/18

性器ヘルペスとは?原因、症状、治療法について解説

性器ヘルペスって何?

性器ヘルペスとは、ウイルスの一種である単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)を病原体とする性感染症です。単純ヘルペスウイルスの感染によって、性器やその周辺に水疱性病変や浅い潰瘍が形成される疾患です。
ヘルペスウイルスに一度感染すると、体内からヘルペスウイルスを取り除くことはできません。ヘルペスウイルスは神経をつたって、主に腰仙髄神経節などに潜伏感染します。そして潜伏感染したヘルペスウイルスは何らかの刺激(風邪、過労、深酒など)によって再活性化し、再び神経をつたって、元の場所の粘膜や皮膚に病変を表します。そのため、一度ヘルペスウイルスに感染した人は、長年にわたって再発を繰り返します。2019年の全国統計では、性器ヘルペスは約9,400件と報告されており(下記「性器ヘルペス報告数推移」参照)、再発が特徴的な性器ヘルペスは20代後半にピークとなってから,60代後半までなだらかな減少傾向を示し,クラミジアや淋菌感染症と比べ広い年齢層にみられます。



 

性器ヘルペスの原因って?

性器ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルスの感染です。
単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)は主に口唇やその周囲に感染し、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)は主に性器に感染します。しかし、口唇ヘルペスにかかったことがある人とのオーラルセックスで口から性器にHSV−1が感染することもあります。
HSV−2の初感染経路はほとんどが性行為ですが、性器同士の接触がなくても唾液などを介してパートナーに感染させてしまうことも多いです。また、一見病変がなく正常に見える性器や肛門部の皮膚からの伝播や、ヘルペスの自覚症状が全くない時でも粘膜や分泌液などにウイルスが含まれている場合は感染する場合があります。
分娩前後のヘルペスウイルス感染症として、産道感染により新生児単純ヘルペス感染症を引き起こす場合もあります。水疱などの皮膚病変、眼球・口腔粘膜病変といった局在型から脳炎や肝障害などの臓器病変を含む全身型まで様々な症状を呈します。

 

性器ヘルペスの症状って?

初感染し2~10日の潜伏期の後に、外陰部に多数の水疱性病変や浅い潰瘍病変を伴う激しい痛みがあります。潰瘍は左右対称(左右の陰部が互いに接する位置)にできることが多いです(kissing ulcer)。ときには臀部や大腿にも症状が出現し、症状が強い場合は排尿困難や歩行困難、38℃以上の発熱を認めることもあります。
2~4週間で自然に治癒しますが、治癒後も月経や性行為、免疫力が低下したときなど様々な誘因にて再発を繰り返します。男女ともに感染していても無症状の場合もありますが、一度発症すると最も再発率が高い性感染症といわれています。初めて感染した際が最も症状が激しく、再発した際には初発ほど症状はひどくないと言われています。

 

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検査方法と検査ができる時期/潜伏期間

感染機会から2〜10日の潜伏期間を経て発症する場合が多いです。
性器ヘルペスの診断は視診、ウイルス検査、血液検査があります。性器ヘルペス症状がでている際には視診やウイルス検査を主におこない、性器ヘルペスの抗体価を調べたい場合は血液検査をおこないます。

 

性器ヘルペスの治療は?

バラシクロビル(バルトレックス)、アシクロビル(ゾビラックス)、ファムシクロビル(ファムビル)といった抗ヘルペスウイルス薬を初発は5〜10日間、再発は5日程度内服します。これらは1回の用量や1日の内服回数が異なりますが、どれを服用しても治療効果は同程度です。
初感染の性器ヘルペスは、2〜4週間程度症状がありますが、抗ヘルペスウイルス薬を内服することで症状が治まるまでの期間が短縮され、内服を始めるのが早いほど病状悪化を抑えることができるため、早期の内服開始(できれば24時間以内)が大事になります。
患部の水疱や潰瘍に対してゾビラックス軟膏やアラセナA軟膏等を塗布する場合や、疼痛がひどい場合は鎮痛薬を処方することもあります。
初発の際に症状があまりにも激烈で排尿困難や歩行困難、高熱による衰弱がある場合は注射用アシクロビルの点滴加療や入院が必要な場合もあります。
再発の場合は性器に明らかな病変がみられなくても、知覚の違和感としてムズムズ、チクチク、ヒリヒリ、ゾクゾクするといった前駆症状を感じる場合が多いため、そういった症状が出た場合は早めの受診を推奨します。

 

性器ヘルペスの予防方法は?

原因の単純ヘルペスウイルスを完全に死滅させる治療法は現代の医療では確立されていないため、一度単純ヘルペスウイルスに感染してしまうと完治は不可能であり、症状を抑えることしかできません。そのため、感染をしないということが何よりも重要となります。
複数のパートナーとの性行為を避けてください。
また、先述した通り、過去に感染歴がある方は無症状でもウイルスを排出している可能性があり、パートナーが感染してしまう場合があります。性器の接触がなくても分泌液を介してウイルス感染の可能性があるため、オーラルセックス時でもコンドームを正しく使用しましょう。
単純ヘルペスウイルスの感染歴がある方は、症状が出ているときは大量のウイルスを排出するため、パートナーに感染させないためにキスや性行為は避けましょう。
再発頻度が多い方には、頻度に応じて保険で再発抑制療法を受けることができます。これは抗ヘルペスウイルス薬少量を毎日内服することにより、抗ヘルペスウイルス薬を服用している期間はヘルペスウイルスを増殖させないといった治療法です。
ヘルペスの再発を長期間防ぐことでヘルペスウイルスの増殖を抑制し、簡単には再発しない傾向となることが期待されます。
性行為と比較すると感染確率としては低いですが、ウイルスを保有する体液がついた物品との接触によって感染する場合もあるため、便座やタオルなど身体に触れるものを共有しないことも予防となります。

 

まとめ

性器ヘルペスは主に性行為で感染する疾患です。感染をしても無症状の方も多く、気づかない間にパートナーに感染をさせてしまうこともあります。感染した症状が初発の際には外陰部の水疱や潰瘍病変があらわれ、激しい痛みを伴うため大変苦痛が大きいです。また、現在の医療では単純ヘルペスウイルスを死滅させる治療法は確立されていないですが、性感染症のなかでもとても再発率の高い疾患であるといわれているため、なによりも感染をしないということが重要です。
性器ヘルペスに感染した際は初発の段階で早めの治療が効果的です。症状が出ている際は大量のウイルスが排出されているため性行為はもちろんのこと、キスなど粘膜や体液の接触も控える必要があります。感染をした場合は再発予防の治療法もあるため、症状に応じて治療に取り組みましょう。
当院では単純ヘルペスウイルスの診察や検査も可能であるため、感染の可能性がある方や再発疑いの方、無症状だが過去に罹患したことがないか心配な方は是非受診をしてみてください。

  

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MYメディカルクリニック顧問 北村 唯一医師

監修:MYメディカルクリニック 顧問

北村 唯一 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1973年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 1998年 東京大学医学部附属病院泌尿器科 教授
  • 2006年 財団法人 性の健康医学財団 理事
  • 2008年 東京大学 名誉教授
  • 2008年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 院長
  • 2011年 財団法人 性の健康医学財団 理事長
  • 2013年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 名誉院長
  • 2014年 自靖会親水クリニック 院長
  • 2014年 光靖会北村記念クリニック 名誉院長
  • 2018年 医療法人社団裕志会 理事長
  • 2022年 医療法人社団MYメディカル 顧問

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