甲状腺腫大の原因はストレス?疾患や治療法、ストレス解消法を解説
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甲状腺腫大の原因はストレス?疾患や治療法、ストレス解消法を解説
「甲状腺ってよく聞くけど何か分からない」
「腫れているということが怖い病気なの? 治し方は?」
このような疑問やお悩みはありませんか?
喉仏あたりが腫れているのは、なんとなくリンパが腫れているのかと思われる方もいるでしょう。リンパは首筋あたり、甲状腺は喉仏の直下あたりですので場所が異なります。
もし、首の横あたりのリンパ腺ではなく甲状腺が腫れている場合、さまざまな病気が原因として考えられるため、速やかな受診が必要です。
以降では、甲状腺を詳しく知らない方のために概要を説明するほか、考えられる疾患について解説します。
甲状腺とは?機能や働き
ここでは、詳しく知らない方のために、甲状腺にどのような役割や働きがあるのかを解説します。
甲状腺はどのようなもの?
甲状腺は喉仏直下にあり、喉を通る骨に肺を逆さまにしたような形でくっついています。通常は柔らかいため触っても感じることは困難です。
しかし、腫れてくると位置が把握でき、肥大化が進むと見ただけでも分かります。小さな内分泌器官ですが、全身の健康を保つとても重要な役割があるため、異常をきたすとたちまち全身が不調に襲われることもあります。
甲状腺は生きる上で欠かせない器官
甲状腺は甲状腺ホルモンを作っている内分泌器官です。このホルモンはヨウ素から作られており、体の発育や新陳代謝、エネルギーの産生、交感神経の活性化など、私たちが生きていく上で欠かせない部分に関わっています。
つまり、なんらかの理由で甲状腺の機能が低下したり異常をきたしたりすると、生命活動に大きく影響します。発育が悪くなる、体がだるくなるなどの症状が現れるようになるのです。
甲状腺機能低下症についてはこちら
異常で発症する「甲状腺の全体が腫れる」病気
甲状腺の異常により、全体が腫れる症状が出るケースがあります。
異常を引き起こす原因疾患は以下の通りです。
- ●橋本病
- ●バセドウ病
- ●亜急性甲状腺炎
- ●未分化がん
では、一つずつ特徴や症状、治療法をまとめて解説します。
橋本病
橋本病は別名「慢性甲状腺炎」とも呼ばれています。リンパ球が甲状腺を破壊していく、恐ろしい自己免疫疾患の一つです。
慢性的に炎症を起こすため機能が低下し、全身の倦怠感やむくみ、月経異常などを引き起こします。妊娠中に発症すると、胎児の発育にも影響を及ぼします。
基本的に治療の必要性はないとされ、対症療法となります。
橋本病についてはこちら
バセドウ病
甲状腺機能亢進症の代表的な疾患であり、自己免疫疾患の一つです。下垂体が生成する甲状腺刺激ホルモンが甲状腺に刺激を与え続けることで、甲状腺は過度に活発化してしまいます。そうして過剰に甲状腺ホルモンが分泌されてしまうことで発症します。
典型的な症状には、手の震えや動悸、汗かき、暑がりなどがあり、女性の場合は生理が止まるケースもあります。
治療法は、薬物療法や甲状腺の摘出手術、放射性ヨウ素内用療法の3つです。
亜急性甲状腺炎
甲状腺内に炎症が起き、組織が破壊される疾患です。発症するきっかけは、風邪やウイルス感染症です。炎症は時間をかけながらゆっくりと自然治癒されます。
症状は炎症が引き起こすものと中毒症が引き起こすものの2種類です。炎症では発熱や痛みを伴う甲状腺の腫れがあり、中毒症ではホルモンが過剰に血中に存在しているため、全身の倦怠感や動悸などの症状があります。
症状が重い場合の治療法は薬物療法です。
未分化がん
未分化がんは、甲状腺がんの約1%を占めるまれな疾患です。腫瘍の成長が非常に速く、なおかつ痛みを伴います。
効果が認められている治療法がないため、約8割の方が1年以内に亡くなってしまいます。
異常で発症する「しこりができる」病気
次に、異常によってしこりが発生する病気をお伝えします。
疾患は以下の通りです。
- ●機能性甲状腺結節
- ●腺腫様甲状腺腫
- ●単純性非中毒性甲状腺腫
- ●濾胞腺腫
- ●嚢胞
- ●甲状腺がん
では、一つずつ特徴や治療法を解説します。
機能性甲状腺結節
甲状腺中毒症を引き起こす原因疾患の一つです。しこりができ、そのしこりが自発的に甲状腺ホルモンを作り出す病気です。
治療法は、しこりの大きさや症状、体調によって異なります。小さい場合は経過観察で対応します。サイズが大きく圧迫症状を強く感じたり中毒症が見られたりする場合の治療法は、手術、インターベンション、薬物療法、放射性ヨウ素内用療法です。
腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)
原因不明のしこりが複数できる疾患です。悪性腫瘍のように感じますが良性のものであり、また痛みなどの症状が特にありません。
治療は必要ありませんが、しこりのサイズが徐々に大きくなったり、検査結果で悪性と言い切れなかったりした場合は手術が推奨されています。
単純性非中毒性甲状腺腫
ヨウ素が不足すると発症しやすい良性の腫瘍疾患です。他にも、ブロッコリーやキャベツなどの過剰摂取や、特定の薬の服用などでも発症します。
腫れが見られる以外には症状は特にありません。ただし、しこりが周囲の組織を圧迫することにより、声枯れや呼吸困難などが現れるケースもあります。
治療法はしこりの大きさや原因によって異なりますが、ヨウ素や甲状腺ホルモンの補充、手術などを行います。
濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)
発症原因が不明の良性の腫瘍疾患です。がん化する可能性は低いですが、経過観察は必要です。痛みは伴いません。
嚢胞(のうほう)
袋状のものができ、その中に液体がたまる疾患です。袋の中身は液体のため悪性腫瘍に進行することはありません。
治療する場合には、基本的に中の液体を抜く治療を行いますが、再発する場合は袋ごと破壊する治療を行います。
甲状腺がん
悪性腫瘍であり、放置すると命に関わる危険な疾患です。
先ほどお伝えした未分化がんも甲状腺がんの一種であり、他にも乳頭がん、濾胞がん、髄様がんがあります。基本的に治療は摘出手術となります。
甲状腺腫大の原因はストレスも!ストレス解消法の紹介
腫れる原因としてさまざまな疾患をご紹介しましたが、実はストレスが原因である場合もあります。ストレス解消法として、厚生労働省が推奨している方法を厳選して3つお伝えします。
- ●軽く運動する
- ●腹式呼吸をする
- ●そのときに合った音楽を聴いたり歌ったりする
では、一つずつ解説します。
(出典:厚生労働省「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/)
軽く運動する
運動は健康に良いだけではなく、メンタルヘルスにも良い影響を与えてくれます。具体的には、気分の落ち込みやネガティブな感情を発散させたり、自律神経のバランスを整えて睡眠の質を向上させたりします。
効果的な運動は、ダンスやサイクリング、軽いランニングなどです。
少し汗ばむ程度を目安に体を動かしてみましょう。
腹式呼吸をする
腹式呼吸には自律神経のバランスを整える効果があります。やり方は、まず息を吐き切ると同時にお腹を凹ませ、吸ったときにおなかを膨らませます。
軽く目を閉じて呼吸に集中して行うと、徐々に心身がリラックスしますのでお試しください。
そのときの気分に合った音楽を聴いたり歌ったりする
音楽には気分を上げたり、反対に落ち着かせたりする作用があります。そのときの気分に合った音楽をかけて、聴いたり歌ったりして音楽を楽しみましょう。
まとめ
甲状腺は疾患からストレスまで、幅広い原因で腫大します。
少しでも異変を感じたら軽視せず、速やかに検査を受けましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師