HDLコレステロールとは?高い・低い場合の影響や基準値に近づく方法を解説
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HDLコレステロールとは?高い・低い場合の影響や基準値に近づく方法を解説
健康診断を受けてHDLコレステロール数値がよくなかったため、不安で気になった方が多いのではないでしょうか。「HDLコレステロールは何を表すもの?」「この数値は体にどう影響するのか知りたい」
今回は、このようなお悩みに答えていきます。
結論からお伝えすると、善玉コレステロールの数値を表しています。数値が高すぎても低すぎても影響が出てくるため、適正値を目指すのがベストです。
以降では、HDLコレステロールの概要、適正値を目指す方法、具体的な体への影響について解説します。
気になっている方は最後までご覧ください。
HDLコレステロールとは?
この章では、HDLコレステロールが何を表す数値なのか、LDL値との違い、基準値について解説します。
HDLコレステロールとは?
HDLコレステロールには、肝臓から作られた余分なLDL(悪玉)コレステロールを回収し、再び肝臓に戻して量を調節する役割があります。動脈硬化を予防するためにコレステロールの量をコントロールしているのです。
HDLコレステロールの量が減ると動脈硬化が起こりやすいと考えられているため、普段から減らさないための習慣を身に付けることが大切です。
LDL(悪玉)コレステロールの違いとは?
LDLコレステロールの特徴は、動脈硬化を引き起こすリスク因子であることと、不規則な生活で量が増えることです。動脈硬化のリスクを下げる作用があるHDLコレステロールに対し、LDLコレステロールは増えすぎると血管に沈着して酸化変性を起こすため、動脈硬化の要因となります。
規則正しい生活を送ることで増えるのがHDLコレステロールですが、LDLコレステロールは偏った食事をはじめとする不健康な生活を送ることで増えます。
基準値は?
HDLコレステロールの正常値は40mg/dL以上です。
この数値に満たない場合は脂質異常症が疑われます。LDLコレステロールとは違い、数値が小さくなるほど動脈硬化のリスクが高まるため、増やすための努力が必要です。
脂質異常症についてはこちら
HDLコレステロールが増えすぎたり減りすぎたりするとどうなる?
HDLコレステロールが増えすぎたり減りすぎたりすると、どのような影響があるのかを解説します
HDLコレステロールが増えすぎるとどうなる?
HDLコレステロールが増えすぎても、基本的に問題はありません。むしろ、動脈硬化や脳卒中、心臓発作のリスクを低下させる可能性があります。
しかし、気を付けなければならないケースもあります。
遺伝性の疾患が原因による数値の上昇はこの限りではありません。理由は、疾患が原因により別の脂質の数値が異常を起こしたり、食べ物の消化時に別の異常をきたしたりする恐れがあるためです。
よって、なぜ数値が上昇しているのかを精密検査ではっきりさせる必要があります。
HDLコレステロールが減りすぎるとどうなる?
HDLコレステロールが減りすぎると、動脈硬化やそれが要因による疾患の発症リスクを高めます。生成量の減少は中性脂肪が高い場合に見られることが多い傾向にあるため、まずは中性脂肪を減らす必要性があります。
中性脂肪のリスクについてはこちら
HDLコレステロール値が高い原因や治療法
HDLコレステロール値が高くなる原因をより具体的に解説します。
治療法もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
高くなる原因は?
数値の高値に関わる原因疾患は主に2つあります。
- ●コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)欠損症
- ●家族性高アルファリポタンパク血症
症状や特徴、数値との関係性をお伝えします。
原因①コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)欠損症
コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)欠損症とは、CETP遺伝子が変異を起こすことで発症する遺伝子疾患です。
1980年代に発見された脂質代謝異常症であり、LDLコレステロールの性質に異常をきたしたり、HDLコレステロールの数値に上昇が見られたりします。
心身に見られる症状はないため、検査を受けるまでは疾患を持っていることには気付かないでしょう。
確立された治療法はありません。
原因②家族性高アルファリポタンパク血症
家族性高アルファリポタンパク血症は常染色体優性遺伝疾患の一種で、さまざまな遺伝子変異によって引き起こされます。
症状は特に見られず、治療も必要ありません。
通常の血液検査でHDLコレステロールの数値が高かった場合に家族性高アルファリポタンパク血症と診断されます。
基本的に治療する必要はない
高いHDL値を治療する方法は基本的にありません。高値である場合、生活習慣を正しても、薬による治療を行っても、正常値に低下させることはできないとされています。
HDL値が非常に高くなる病気は治療する
血液検査によりHDL値が非常に高くなる病気があることが判明した場合、その病気に対して治療を行います。病気によっては数値が下がることが期待できるでしょう。
HDLコレステロール値が低くなる原因と高める方法
HDLコレステロール値が低くなる原因と、基準値に近づける方法をお伝えします。
低くなる原因は?
HDL値が低くなる原因を大きく分けると2つあります。
- ●遺伝性の疾患
- ●生活習慣
以下で分かりやすく解説します。
原因①遺伝性の疾患
HDL値が低くなる原因には「低HDL-C血症」と呼ばれる疾患があります。
遺伝性と続発性の2タイプがあり、多くは続発性によるものです。
遺伝性の疾患には、家族性低HDL-C血症や魚眼病、タンジール病、アポタンパク欠損症などがあります。
原因②生活習慣
先ほどお伝えした「続発性低HDL-C血症」は、生活習慣の乱れが発症原因の一つです。
喫煙習慣があったり、食事の栄養バランスが偏っていたり、運動不足や肥満があったりするとリスクを高めます。
他にも、2型糖尿病や慢性腎不全といった疾患がある場合にも見られます。
基準に近づける方法
HDL値を基準値に近づける方法は以下の4つです。
- ●不飽和脂肪酸を摂取する
- ●適度な運動を実施する
- ●喫煙を控える
では、一つずつ解説します。
方法①不飽和脂肪酸を摂取する
HDL値を増やすためには、不飽和脂肪酸の摂取がおすすめです。不飽和脂肪酸は、さばやアジといった青魚に含まれるDHAやEPA、オリーブ油に含まれているオレイン酸を指します。これらの脂肪酸には、LDL値だけを減らす作用があります。
動物性の脂肪分(バターや肉の脂身など)に含まれる飽和脂肪酸は、コレステロール値を上昇させるためできる限り避けましょう。
方法②適度な運動を実施する
適度な運動は、中性脂肪を減らしてHDLコレステロールを増やす効果があります。運動量は、1週間に900kcal以上が必要です。1回30分の運動を週3回以上実践することが推奨されています。
体重によって消費カロリーは異なりますが、若い方は少しきついと感じる程度のジョギング、高齢者は少しきついと感じる程度のウォーキングがよいといわれています。
方法③喫煙を控える
喫煙習慣がある方は、HDL値が減少しLDL値が上昇しやすいことが分かっています。急にやめるとかえってストレスがかかるため、本数を減らすところからスタートしてみましょう。
まとめ
HDLコレステロールは、健やかな体を保つために大いに役立ちます。
そのため、減りすぎると動脈硬化やそれに関連する疾患の発症リスクを高めることになるため、生活習慣を見直して基準値に近づけることが大切です。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師