肝血管腫はどんな人にできやすい?放置していい?その原因や症状と治療すべきケースについて解説
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肝血管腫はどんな人にできやすい?放置していい?その原因や症状と治療すべきケースについて解説
人間ドックなどで肝血管腫が見つかると、なんとなく怖くて不安になる方は多いのではないでしょうか。しかし、肝血管腫は良性腫瘍ですから、過剰に心配する必要はありません。とはいえ、「肝血管腫ってどうしてできるの?」「どんな人にできやすい?」「治療すべきケースはある?」という疑問を持つ方もいることでしょう。
今回は、肝血管腫の原因や症状、肝血管腫ができやすい人、肝血管腫で治療すべきケースについて解説します。
肝血管腫とは
肝血管腫とは、肝臓にできる腫瘍のことです。肝臓内にある毛細血管が増殖して絡み合い、塊になることで発生します。自覚症状はほとんどなく、人間ドックなどで検査を受けることで偶然発見されるケースが多いです。良性腫瘍であり、放っておいてもがん化することはまずないとされています。ただし、肝臓がんとの違いがわかりにくいため、発覚した場合は病院を受診して検査するとよいでしょう。
また、肝血管腫はそのほとんどが海綿状血管腫というスポンジ状であることが特徴です。
肝血管腫の原因
肝血管腫は血管の異常増殖によりできるものということはわかっているものの、根本的な発生原因までは明らかではありません。後述しますが、女性に多い傾向があることから、女性ホルモンが肝血管腫の発生要因に関係しているのではないかという考えもあります。妊娠や、女性ホルモンのエストロゲンの投与によって、肝血管腫が大きくなることもあります。
肝血管腫ができやすい
肝血管腫になりやすいのは30~50代とされ、男性よりも女性の方が多い傾向にあります。前述の通り、女性ホルモンの影響により大きくなりやすいとされます。さらに、肝血管腫は出産回数の多い女性に多く見られます。
ただし、小児においても稀に肝血管腫が発現することがあります。
肝血管腫の症状
成人が発症する肝血管腫は、ほとんどの場合で無症状です。血液検査をしても正常な数値であり、特に問題となることはありません。自覚症状がないため特別な検査をすることもなく、年に1回の検診や人間ドックなどでたまたま見つかる、というケースがほとんどです。
ただし、稀に巨大な肝血管腫ができる場合があります。大きな肝血管腫ができた場合、肝臓のある右側の腹部の痛み、腹部膨満感、食欲不振、吐き気などの症状が出ます。
また、巨大な肝血管腫内で血栓症が発生した場合、全身の出血症状が現れ、鼻血が出やすくなったり青あざができやすくなったりします。他にも自然破裂を起こすことがあり、その場合、腹痛や貧血、出血性ショック症状などの症状が現れます。
肝血管腫の検査と診断
人間ドックなどで肝血管腫と疑われるものが見つかった場合は病院を受診しましょう。病院では、がんを否定するために超音波・CT・MRIなどの画像検査、尿や血液による腫瘍マーカーの測定などの検査を行います。多くの場合は、画像検査によって診断をほぼ確定可能です。
肝血管腫の治療
肝血管腫はどのように治療するのか、以下で解説します。
基本的に治療は必要ないが経過観察が必要
肝血管腫は良性腫瘍であり、基本的に自覚症状もありません。そのため、検査によってがんが否定された場合は、治療せずに経過観察となることがほとんどです。「問題ないのに経過観察が必要なのはなぜ?」と思う方もいらっしゃることでしょう。
実は、肝血管腫は稀に巨大化して腹部症状を引き起こしたり、腫瘍が破裂したり、合併症を発症したりするケースがあります。こうしたケースでは、治療が必要となります。そのため、肝血管腫が見つかった場合は、定期検診による経過観察を継続することが大切です。
治療が必要になるケース
肝血管腫が大きくて膨満感や食欲不振などがある
肝血管腫はほとんどの場合は数センチしかありません。しかし、稀に通常の倍以上ある大きさの巨大腫瘍ができることもあります。その場合、膨満感や食欲不振、吐き気といった不快症状が出るため、治療を検討します。
肝血管腫が破裂した・破裂しそう
肝血管腫は自然に破裂することはほぼありません。しかし、通常の倍以上もの巨大腫瘍の場合は自然破裂するリスクが高まります。破裂すると体内で大量出血してしまい、腹痛・貧血・出血性ショック症状などが引き起こされます。生命に関わる危険な状態であるため、速やかな治療が必要です。定期検診を受けて巨大な肝血管腫が見つかった、最近急に大きくなったといった場合は、治療を行いましょう。
合併症が出た
巨大な肝血管腫ができると、血管腫内に血栓が数多くでき、「カサバッハ・メリット症候群」という疾患を合併することがあります。血液凝固異常になることで出血が止まりにくくなり、鼻血・血便など全身の出血症状が見られるようになる疾患です。脳内出血が起きれば生命を脅かしますので、早めに治療すべきです。
手術による治療
肝血管腫の治療法としては、切除手術とカテーテル手術があります。切除手術には、十数センチお腹を切る開腹手術と、数ミリの穴を複数開け腹腔鏡というカメラを用いて病変を取り除く腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術は術後の回復が早く傷も残りにくいですが、肝血管腫の位置によっては適用できないことがあります。その場合は、開腹手術を実施します。
カテーテル手術は、足の付け根からカテーテルを入れて肝血管腫に流れる血流そのものを止める方法です。ただし、肝血管腫が破裂した際の緊急応急処置として行われるため、改めて巨大化した肝血管腫を切除する可能性があります。
肝血管腫が肝臓がんに移行することはある?
肝臓と言うと肝臓がんを思い浮かべ、「肝血管腫ががんになることもあるのでは?」と心配される方もいることでしょう。しかし、肝血管腫が肝臓がんに移行することはまずありません。年1回の経過観察は巨大化していないかを確認するものです。各種検査によってがんが否定され、肝血管腫であると確定したのであれば心配する必要はありません。
肝臓がんについて詳しくはこちら
まとめ
肝血管腫は肝臓にできる良性腫瘍であり、通常であれば自覚症状はなく、経過観察のみで治療することもありません。ただし、肝血管腫なのか肝臓がんなどの悪性腫瘍なのかの判断は、検査しなければわからないものです。人間ドックなどで肝血管腫があると指摘を受けた場合は、必ず病院を受診しましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師