胆管にできるがん「胆管がん」の症状と治療法

  • クリニックブログ
2024/04/30

胆管にできるがん「胆管がん」の症状と治療法

胆管がんは、胆管にできる悪性腫瘍です。胆管に腫瘍ができると胆汁の流れが悪くなり、胆汁が血液中に混じることで皮膚や目が黄色くなる黄疸の症状が表れます。そのほか、胆管がんではどのような症状が見られるのでしょうか。
 
ここでは、胆管がんの症状と治療法についてご説明します。

 

胆管と胆管がん

胆管がんとは、胆管にできるがんです。まずは、胆管の位置を確認してから、胆管がんについてご説明しましょう。

胆管とは

「胆管」は、肝臓で作られた消化液である胆汁を十二指腸に流すための長さ10~15cm程度、太さ0.5~1cm程度の管です。胆管は肝臓の中にあり、左肝管と右肝管からなる「肝内胆管」、2つが合流する「総肝管」、総肝管と胆嚢管とが合流した「総胆管」で構成されます。
 
胆管の途中には、一時的に胆汁を蓄えて濃縮する「胆嚢」があります。また、胆管が十二指腸に開口する部分を「十二指腸乳頭部」といい、胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部を合わせて「胆道」といいます。胆汁は、脂肪の消化酵素であるリパーゼを助け、脂肪を分解しやすくさせることで吸収させやすくする働きがあります。また、水に溶けない脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割もあります。

 

胆管がんとは

胆道にできたがんを「胆道がん」と呼び、胆道がんには「胆管がん」、「胆嚢がん」、「乳頭部がん」があります。このうち、肝内胆管、総肝管、総胆管に発生する悪性腫瘍を「胆管がん」といいます。胆道がんは、日本では珍しいがんではなく、年間2万人以上の方が胆管がんと診断されています。また、胆管がんは男性に多く見られるがんです。

 

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胆管がんの症状

胆管がんでは、次のような症状が見られます。

黄疸

胆管がんの最初の症状は、黄疸です。黄疸は、目や身体が黄色くなる症状で、胆管に悪性腫瘍ができると胆汁が胆管を通れずにあふれてしまうことで生じます。胆汁の中に含まれるビルビリンは黄色~褐色をしているため、胆管からあふれ出た胆汁が血液中に増加することで身体が黄色くなるのです。
 

ビルビリン尿

ビルビリンは、尿中にも排泄されるようになります。そのため、尿が紅茶のような濃い色に代わります。
 

便が白くなる

便が褐色や茶色であるのは、ビルビリンが含まれているためです。しかし、胆管がんによって胆管の通りが悪くなり、胆汁が十二指腸に流れ込むことができなくなると、ビルビリンが腸に流れないために便が白っぽくなります。
 

発熱

胆汁に細菌が感染すると、胆管炎を発症して高熱が出る場合があります。
 

皮膚のかゆみ

胆汁が血管内に流れ込むと、血液中に胆汁酸も流れ込み、皮膚がかゆくなるケースがあります。
 

疼痛

腫瘍が大きくなると、右わき腹やみぞおちに痛みを感じることがあります。
 

体重減少

胆管がんが進行すると食欲が減退し、体重が減少することがあります。

 
 

胆管がんの診断

胆管がんの診断では、血液検査や腹部超音波検査を行い、異常が発見された場合にはCTやMRI検査などを行います。

血液検査

黄疸が出たり、白色便が出たりする症状は、胆管がんだけでなく、胆嚢がんや乳頭部がんでも現れます。胆道がんが疑われる場合には血液中のビルビリン、ALP、γ-GTPなどが上昇します。また、腫瘍マーカーとして、CEA、CA19-9の上昇がないかを測定します。
 

腹部超音波検査

腹部に超音波の出るプローブをあて、肝臓や胆管、胆嚢などの状態を確認します。胆管の狭窄や閉塞、閉塞の影響によって拡張した胆管なども超音波検査で確認が可能です。
 

CT検査

腫瘍がある場所や周囲への広がり、転移などを調べるための画像診断です。静脈から造影剤を注入し、腫瘍の状態や血管の位置などをより鮮明に把握することができます。胆管がんは腫瘍の部位や広がりによって手術の方針も変わるため、CT検査による診断は適切な治療を行ううえで重要な意味を持ちます。
 

MRI・MRCP検査

強力な磁石を使用し、CTでは得られない胆管や膵管の画像を確認できます。
 

超音波内視鏡検査(EUS)

超音波が先端についた内視鏡を挿入し、胃や十二指腸から超音波で胆管にできた悪性腫瘍や周囲の状態を調べます。腫瘍に近い場所から観察できるため、より詳細な状態を把握できます。生検を行う際にも超音波内視鏡検査を実施します。
 

内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)

十二指腸まで内視鏡を入れ、十二指腸乳頭から胆管内に造影剤を注入し、胆道を直接造影する検査です。黄疸が生じている場合には、プラスチックチューブや金属ステントを入れ、胆管を広げる処置を行うケースもあります。

 

生検・細胞診

悪性腫瘍ができている部位の組織や細胞を採取し、顕微鏡で確認することで胆管がんの確定診断を行います。

 
 

胆管がんの治療法

胆管がんの治療法は、進行度合いによって異なります。ステージⅠ~Ⅲまでの基本治療は外科手術です。また、手術が難しい場合や転移が確認されている場合は、化学療法や放射線治療も行います。

外科手術

悪性腫瘍がある部位や腫瘍の広がりによって手術の方法は異なり、肝臓に近い部位に腫瘍がある場合は肝臓も含めた切除、十二指腸側に近い場合には膵臓や胃を含めた切除が必要になります。
 

化学療法

外科手術による切除が難しい場合は、抗がん剤による化学療法を行い、がんの進行を抑えたり、症状を和らげたりします。ほとんどのケースで外来での治療が可能です。
 

放射線治療

胆管がんに対する放射線治療の有効性は十分に証明されていませんが、黄疸や疼痛を緩和する目的で行われることがあります。
 

内視鏡的減黄術・胆道ドレナージ

黄疸が出ている場合、胆汁を体外に排出する必要があります。内視鏡を使って胆管内にプラスチックチューブや金属製のステントを留置し、黄疸を軽減します。内視鏡での治療が難しい場合には、胆管に針を刺してチューブを入れ、胆汁を排出させる胆道ドレナージを行います。


 
 

まとめ

胆管がんは、肝臓と十二指腸を結ぶ胆管にできるがんです。胆管がんは、早期に発見できれば手術によって完治させることもできます。黄疸が出ている場合や便が白っぽい場合など、気になる症状が見られる際には、早めに医療機関に相談しましょう。
 
また、健康診断の血液検査の結果、肝臓に関わる数値が基準値を上回っている場合にも胆管がんの可能性があります。健康診断の結果をしっかりと確認し、異常が指摘された場合には早めに医療機関で再検査を受けることも大切です。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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