突発性難聴とは?原因、症状、治療法について解説
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突発性難聴とは?原因、症状、治療法について解説
突発性難聴とは
突発性難聴は厚生労働省により「難病指定」されている病気です。
突発性難聴とは、ある日突然、片方の耳が詰まったようになり、音が聞こえにくくなる(あるいは、まったく聞こえなくなる)病気です。音をうまく感じ取れない難聴のうち、原因がはっきりしないものの総称で、両耳に起こることが多いですが片側に起こる場合もあり、幅広い年代に起こります。
前日は問題なかったにもかかわらず、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくい、あるいは電話の音が急に聞こえなくなるなど、前触れなく突然に起こることがあります。聞こえにくさは人によって異なり、全く聞こえなくなる人もいれば高音だけ聞こえなくなる人もいます。後者では、日常会話に必要な音は聞こえているため、難聴に気付くのが遅れてしまいがちです。基本的に聴力が良くなったり、悪くなったりを繰り返すといった症状の波はありません。
また、難聴の発生の前後には、耳が詰まった感じや耳鳴り、めまい、吐き気などを伴うケースも多く、耳鳴りで受診したところ突発性難聴だったという人もいます。難聴やめまいが起こるのは1度だけであり、メニエール病のように何度も繰り返すことはありません。
突発性難聴は、以上のような症状を医師の問診で確認したり、様々な聴力検査や画像診断を用いて診断されます。厚生労働省によって「難病指定」を受けている治療の難しい病気です。発症後すぐに治療を受けないと、難聴や頑固な耳鳴りが残ったり、放置しておくことで聴力を失う場合もあるため、早めの受診と治療開始が大切とされています。
一年間にどれくらいの人がなるの?
2001年の調査では、おおよそ全国で年間3万5千人(人口100万人に対し275人)。かつての統計では40歳代から50歳代の女性に多く見られていましたが、最近では10代から20代の若い方や男性も増加傾向にあり、年齢や性別における差は見られなくなってきています。また、最近は病気の認知度の上昇につれて、患者数も増加する傾向にあります。
突発性難聴の原因
突発性難聴の原因は、明確にはわかっていませんが、以下のような要因が関連していると考えられています。
- ①感染症: ウイルスや細菌による感染が原因の場合があります。
- ②血液循環の異常: 内耳に血液が十分に届かないことによって発症することがあります。
- ③自己免疫疾患: 自己免疫反応が過剰に起こることで、内耳の組織が炎症を起こすことがあります。
- ④突発性難聴に対する遺伝的素因: 遺伝的要因により、突発性難聴が家族に集積している場合があります。
- ⑤薬物: 一部の薬剤が原因となることがあるとされています。
- ⑥ストレスや精神的ストレス: 突発性難聴がストレスによって引き起こされる場合があります。
しかし、突発性難聴が発症するメカニズムについては、まだ解明されていない点が多く残されています。
突発性難聴の症状
突発性難聴の主な症状は以下の通りです。
- ①突然の聴力低下: 急激な聴力の低下が起こります。片耳または両耳に現れることがあります。
- ②耳鳴り: 音が聞こえない側の耳で、耳鳴りが発生することがあります。
- ③難聴: 聴力が低下し、周囲の音が聞き取りにくくなります。
- ④めまい: 突発性難聴によって、めまいや立ちくらみが生じることがあります。
- ⑤頭痛: 突発性難聴によって、頭痛が発生することがあります。
- ⑥吐き気や嘔吐: めまいなどの症状が原因で、吐き気や嘔吐が生じることがあります。
これらの症状は、突然現れ、数日から数週間で回復することがある一方で、完全に回復しない場合もあります。また、症状が現れた場合は、すぐに医師の診察を受けることが重要です。
耳鳴りについて詳しくはこちら
突発性難聴の検査方法と診断基準
突発性難聴の診断には、以下のような検査が行われます。
- ①聴力検査: ピュアトーンオーディオメトリーや音声認識閾値テストなどの聴力検査が行われます。
- ②耳鼻咽喉科検査: 耳鼻咽喉科医による耳の内部検査や喉の検査が行われます。
- ③MRI検査: 脳や内耳の異常を調べるため、MRI検査が行われることがあります。
- ④血液検査: 免疫力や感染症を調べるための血液検査が行われることがあります。
突発性難聴の診断基準は、以下のようなものがあります。
- ①急激な聴力の低下が起こること。
- ②他の症状(耳鳴り、めまい、頭痛など)が伴うこと。
- ③耳鼻咽喉科検査で、耳の内部に異常が認められないこと。
- ④他の疾患(突発性難聴ではない疾患)が原因として除外されたこと。
これらの基準を満たす場合、突発性難聴と診断されることがあります。ただし、診断が難しい場合もあるため、診断には専門的な知識と経験を持った医師の判断が必要です。
突発性難聴の治療方法
突発性難聴の治療は、症状の程度や原因によって異なります。一般的には、以下のような治療が行われます。
①ステロイド治療
ステロイド薬を使用することで、炎症を抑え、聴力の回復を促すことができます。投薬は、内服や点滴などがあります。
②血管拡張剤治療
血管拡張剤を使用することで、内耳の血流を改善し、聴力の回復を促すことができます。
③酸素療法
高濃度の酸素を吸入することで、内耳の血流を改善し、聴力の回復を促すことができます。
④その他の治療法
鍼灸、電気刺激、音響療法など、様々な治療法がありますが、その効果はまちまちです。
治療は、症状が現れた時期が早いほど、効果が期待できます。また、治療法は専門医の判断によって選択されるため、自己判断での治療は避けるべきです。
突発性難聴の予防方法
突発性難聴は、発症の原因がはっきりしない病気であり、予防法は明確にはありません。しかし、以下のような注意点を守ることで、発症を予防することができます。
①騒音対策
騒音が原因となる突発性難聴を予防するためには、長時間の大音量の音楽鑑賞や、工場や道路などの騒音の多い場所での勤務を避けることが大切です。
②健康な生活習慣
喫煙や飲酒、ストレスなどが、突発性難聴の発症を促進することが知られています。健康的な生活習慣を心がけ、充分な休息を取ることが大切です。
③耳の衛生管理
耳の中を清潔に保ち、耳の中に異物が入らないように注意することも予防につながります。
④定期的な健康診断
難聴を引き起こす病気(高血圧、糖尿病、脳卒中など)の早期発見や治療を行うために、定期的な健康診断を受けることも重要です。
以上のような予防方法は、突発性難聴に限らず、耳の健康を維持するためにも役立ちます。
まとめ
突発性難聴の治療はいかに早く始めるかが重要です。発症後48時間以内に治療を開始した場合、聴力回復は約50%であり、改善した方を含めると約2/3に上ったとする結果*1が報告されており、治療開始が早ければ早い程、治療により聴力が改善する傾向にあり、遅くとも発症1週間以内の受診が望まれます。
難聴の症状を1か月以上放置してしまうと、聴力が固定され、治療をしても難聴が残ってしまう可能性が高まります。
主な出典・引用元
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師