大腸がんとは?原因、症状、治療法について解説
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大腸がんとは?原因、症状、治療法について解説
大腸がんは、がん罹患率の1位を占める身近ながんです。
では大腸がんはどのような病気なのでしょうか。
本記事では、大腸がんの定義や原因、症状などについて解説していきます。
大腸がんの疑いがある方や大腸がん検診を受ける方は本記事を参考にしてください。
大腸がんとは
大腸がんの概要、原因、症状、病期、深達度について解説していきます。
大腸がんとは
大腸とは全長1.6m太さ5〜8cmの管で盲腸・結腸・直腸から構成されています。
その中でも結腸は上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸の4つの部位に分けることができます。
大腸は主な働きとして「小腸で消化・吸収された残渣物の消化・吸収」と「蠕動運動(腸内容物を直腸へ運ぶ)」、「分節運動(消化・吸収促進の為の食物と消化酵素の混和)」を行っています。
この部位の表面粘膜から発生する悪性腫瘍を「大腸癌」といいます。
大腸癌は「腺癌(分泌腺組織に由来する上皮性の悪性腫瘍)」と「扁平上皮癌(扁平上皮という薄くて平らな上皮から発生する上皮性の悪性腫瘍)」の2種に分けられ、主に腺癌である事が多いです。中には大腸ポリープが癌化するケースもあります。
発生部位としては直腸とS状結腸に発生する事が多く、癌罹患率では男女計で見ると1位、癌死亡率では男女計で見ると2位に値するほど身近に発生しうる癌です。
そのため予防・悪化防止の為の検査や、適切な治療が必要となります。
大腸がんは50~75歳の方に多く見られ、高齢の方ほど発生頻度が高まります。
また男女比は5:4と男性が多く発症している傾向があります。
大腸がんの原因
大腸癌の発生には生活習慣との関わりが深いとされています。
その中でも食事との関係が特に指摘されており、野菜類から摂取される「食物繊維」は大腸癌のリスクに予防的であるとされていますが、肉類から摂取される「動物性脂肪」は大腸癌の発生を促進するといわれています。
近年の日本における食事の欧米化により食事は「高脂肪摂取、低繊維食」の傾向にあるため大腸癌の大きな一因として考えられています。
しかしそれだけではなく、喫煙による発癌物質の摂取や肥満(運動不足)による腸の活動低下、便通過時間の遷延等も癌の発生の一因としてあげられていることや遺伝的な要因から家族の病歴との関わりもあるとされていることから、原因は多数あるとされています。
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大腸がんの症状
初期は無症状であるため自覚症状がない場合が多いです。
便潜血陽性の反応が出ることはあるが発見は遅れることが多く、腫瘍が大きくなるにつれて症状が出現します。
また大腸の右側(盲腸〜横行結腸)と左側(横行結腸〜直腸)で腸管内腔の広さが違うため、初期症状が異なります。
以下が大腸がんの主な症状です。
- ●血便
- ●便秘・下痢を繰り返す
- ●便の状態変化
- ●体重の減少
- ●貧血
- ●おなかのしこり
右側結腸▶︎特に盲腸〜上行結腸は内腔が広いため、腫瘍のサイズが大きくなるまで腸管狭窄を起こしません。
そのため、軽度の腹痛や便秘などが初期症状となります。
癌からの出血によってしだいに貧血や体重減少がおこり、腫瘤を触知するようになります。
左側結腸▶︎下行結腸〜直腸は内腔が狭いため、狭窄症状を起こしやすいです。
水分が吸収され便も固くなっている為、便秘が起こりやすくそれに伴って腸蠕動運動の低下や腹部膨満感、腹痛の症状も起こりやすいです。
また、狭い内腔に腫瘍がある事から腫瘍からの出血が便に混じって出てくるため、血便や下血の症状も起こる場合も多いです。
腫瘍によって腸閉塞を起こした場合は腹痛に加え、排便の停止、嘔気・嘔吐の症状もみられ、嘔吐に伴った脱水症状(脈拍の増加、血圧の低下、末梢血管の収縮等)など全身状態の悪化へと繋がります。
大腸がんの末期症状は以下のとおりです。
- ●腸閉塞
- ●貧血
- ●腹膜播種
大腸がんは、早期の段階では症状はほとんどまったく見られません。大半は検診などの便潜血反応で発見されます。
ある程度進行してくると、上記のような症状が現れます。
少しでも早期に発見するために、以下のような方は進んで検診を受けてください。
- ●家族で大腸がんにかかった方がいる
- ●大腸ポリープが見つかったことがある
- ●10年以上、潰瘍性大腸炎にかかっている
大腸がんの病期・深達度
大腸がんの進行度を表わす指標として、病期・深達度を示します。
大腸がんの病期
- ステージ0
- ▶︎がんが大腸粘膜内に留まっている
- ステージ1
- ▶︎がんが固有筋層までに留まっている
- ステージ2
- ▶︎がんが漿膜下層を超えて浸潤する
- ステージ3
- ▶︎がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認める
- ステージ4
- ▶︎がんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器への転移を認める、または腹膜播種がある
【深達度】
早期癌
(1)粘膜内に留まっている
(2)粘膜下層に浸潤
進行癌
(1)固有筋層に浸潤
(2)固有筋層を超えて浸潤
(3)漿膜を超えて浸潤
(4)隣接臓器へ浸潤
大腸がんの転移
大腸がんのリンパ節転移、血行性転移、腹膜転移について解説していきます。
リンパ節転移
リンパ節転移とは、がん細胞が発生した部位(原発巣)からリンパ管内へ浸潤し、リンパ管内を移動してリンパ節に到達して増殖することです。
がん細胞は次々とリンパ節に転移し、増殖すると考えられています。
したがって、がんの手術をする際には原発巣だけではなく、なるべく広範囲のリンパ節を切除することが、再発を予防する最善の方法です。
大腸がん周囲のリンパ節は、その部位の大腸を栄養する動脈に沿って存在し、大腸に近い方から腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節に分類されます。
手術で切除したリンパ節を顕微鏡で検査し、大腸がんのリンパ節転移の有無と転移数でN0~N3と表示し、大腸がんのステージを決める際に利用します。
血行性転移
血行性転移とは、がん細胞が原発巣から周囲の組織へ浸潤し、血管内へ侵入、血管内を移動して、他の臓器へたどり着き、そこで増殖することです。
血管の流れによって転移しやすい臓器が決まっています。
大腸がんが血行性転移しやすい臓器は肝臓と肺です。
肝転移が多く見られ、大腸癌研究会のデータによると、大腸がんの治癒切除後、肝臓への初発再発率は7.1%と報告されています。
腹膜転移
大腸がんが腸管の壁を超えて広がる場合、直接他の臓器へ浸潤したり、がん細胞が腹腔内に散らばったりします。
後者を腹膜転移もしくは腹膜播種(ふくまくはしゅ)と呼びます。
腹膜転移は肝転移や肺転移よりも手術における切除率が低く、予後が悪い病態です
またリンパ節転移、血行性転移、腹膜転移により大腸がんが他の臓器へ転移している場合を遠隔転移と呼びます。
がん細胞は遠隔転移した先で増殖し、がんとなって大きくなります。
大腸がんの初期検査方法
大腸がんの診断に使われる初期検査方法である便潜血反応、腫瘍マーカー検査について解説していきます。
便潜血検査
便が腸管内を移動する際に、腫瘍がある場合には腫瘍に擦れて目に見えない程度の微量の出血が便に付着します。
2日分の排便を採取し、便に混じったその血液の有無を調べる検査です。
※この検査で陽性反応が見られた場合に精密検査が推奨されています
便潜血反応の弱点は、大腸がんがあっても出血しなければ分からない点と、痔出血や月経血が混じるとがんがなくても陽性になってしまうという点です。
費用は自治体によって異なりますが、40歳以上の方であれば無料から1000円程度になります。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーは癌細胞があることによって反応を起こした正常細胞が発生する特徴的なタンパク質を調べる検査です。
癌の確定診断に繋がる検査ではなく、がん診断の補助や治療後の経過を見るときに有用とされています。
腫瘍マーカーだけでは癌の進行具合は判断できず、癌があっても数値が高くでないといった場合もあるため、その他の画像検査との結果と合わせて診断がされます。
腫瘍マーカー検査の費用は、人間ドックのオプションなどで調べた場合は2000円程度です。
それに対して、自宅でできる検査キットで調べた場合は20,000円ほど必要になります。
大腸がん検査に引っかかった際の精密検査の種類
大腸がんの初期検査に引っかかった際の精密検査の種類と費用について解説していきます。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査はスコープ(カメラ)を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸内視鏡粘膜全体の観察を行い病変の有無を調べる検査です。
粘膜を直接観察できる為、色調の変化や粘膜面の変化を捉えることができます。
長いスコープが挿入される事や腸内を綺麗に観察するための前処置(下剤の内服)は身体的負担がかかる面もありますが、悪性が疑わしい病変やポリープが見られた場合には、その場で生検検査(組織の一部を採取し病理検査へ出す検査)を実施することが可能であり、小さなポリープや病変を見つけられるため早期発見に繋がるといったメリットが大きいです。
便潜血陽性反応が出た場合第1選択となる検査です。
通常の大腸内視鏡検査の費用は、医療保険の3割負担で6000円程度です。
ただし大腸ポリープが見つかりポリープを切除する場合は、3割負担で20,000~30,000円くらいかかります。
注腸造影検査
肛門から管を挿入し、空気とバリウム(造影剤)を注入してレントゲン写真を撮影する検査です。
癌の形やサイズ、腸管内腔の通過状態を調べることができます。
検査中は大腸粘膜表面へ造影剤を全体的に付着させるために医師の指示に従って体を傾けたり、回転させる等の動作や肛門から注入された空気が逃げて大腸がしぼんでしまわないよう「おなら」を我慢する必要があります。
通常痛みはあまりないとされていますが、空気注入時の腹部膨満感等は検査の影響で現れます。大腸内視鏡検査が腸の癒着や腫瘍の影響で受けられない場合の代替方法となることが多いです。
腸管が重なり合っていると、バリウムも重なってしまい、病変が見つけにくいことがあります。
注腸造影検査の費用は、医療保険の3割負担で4000~6000円くらいです。
CT・MRI検査・超音波検査
大腸CT検査は肛門からガスを注入し腸管を膨らませた状態で撮影を行う検査で、X線を使用して画像の描出を行うため、大腸の内側まで詳細に病変の有無を調べることができます。
※X線を使用するため妊婦は検査不可
大腸MRI検査は磁気を使用して、腹部臓器の断層を撮影を行う検査。特に骨盤内を詳しく調べることが可能です。
CT・MRI共に腫瘍が見つかった場合に詳細な組織検査をすることは不可能ですが、大腸癌の腫瘍だけでなく周辺臓器への転移の有無など全身状態の評価に非常に有効な検査です。
術前検査などで用いられることが多い傾向があります。
費用は医療保険の3割負担で11,000円くらいです。
超音波検査では、大腸がんが大腸の壁外に浸潤していないか、肝臓などに転移していないかを調べます。
費用は医療保険の3割負担で2000円くらいです。
PET検査
PET検査は、癌細胞のブドウ糖を正常細胞よりも非常に吸収しやすいといった性質を有効活用した検査で、FDGというブドウ糖によく似た薬剤を静脈注射にて体内に流し込み、その分布を画像にする検査です。
CT検査・MRI検査と同様に全身状態の評価に有効な検査であり、他の検査で転移等の診断が難しいとされる場合に行われることがあります。
CT検査と組み合わせたPET-CT検査ではより詳細に全身状態の評価を行うことができます。
※糖の分布を利用するため既往に糖尿病がある方や高血糖の方には向きません。
PET検査は、他の検査でがんの病期、転移、再発を診断できないときにのみ、医療保険が適応されます。
検査薬を注射する際に針を刺す痛みと、0.1~1%未満の頻度で気分が悪くなってしまう方もいますが、検査中に他の負担はありません。
検査できる施設は限られており、費用は約10万円と高額です。
直腸指診・肛門直腸鏡検査
直腸指診は、肛門から一番近い位置にある直腸の診察です。
肛門から指を挿入して、届く範囲の中で腫瘤を疑うような膨らみや硬いものが触れないかや血液の付着がないかを調べる検査です。
直腸がんの約80%は直腸指診によって発見されるといわれています。
大腸がんが疑われる場合、最初に行われることが多い検査です。
直腸がんだけでなく、前立腺、膀胱、子宮、卵巣の腫瘤が発見されることもあります。
肛門直腸鏡検査は、長さが約10cmの金属管状の肛門鏡を挿入して、直腸を直接観察する検査です。
浣腸などの前処置が必要なく、比較的簡便に行える検査ですが、直腸以外の大腸は観察できないため、この検査だけでは大腸がんは否定できません。
大腸全体を調べるためには、大腸内視鏡検査が必要です。
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大腸がんの治療方法
大腸がんのステージや深達度によって治療方法が選択されます。
大腸がんは、治癒率が80%と比較的高く、治りやすいがんです。
ステージ別の治療法
大腸がんのステージ別治療法をご紹介していきます。
ステージ0・ステージ1(T1軽度浸潤)
内視鏡治療が第一選択です。
治療後の病理診断の結果、外科手術が必要ならば外科治療を追加します。
内視鏡治療ができない場合、手術(開腹手術・腹腔鏡手術)をします。
※軽度浸潤:粘膜下層に1mm未満で広がっていること
ステージ1(T1 高度浸潤またはT2)
手術(開腹手術・腹腔鏡手術)
※高度浸潤:粘膜下層に1mm以上広がっていること
ステージ2
手術(開腹手術・腹腔鏡手術)
病理診断の結果、再発リスクが高い場合は補助化学療法を追加します。
ステージ3
手術(開腹手術・腹腔鏡手術)
補助化学療法を追加します。
ステージ4
1. 遠隔転移巣および原発巣を切除できる場合:手術
2. 遠隔転移巣は切除できるが、原発巣を切除できない場合:薬物療法、放射線治療、対症療法など
3. 遠隔転移巣および原発巣を切除できない場合:薬物療法、放射線治療、対症療法など
4. 遠隔転移層は切除できないが、原発巣は切除でき、原発巣による症状がない場合:薬物療法、放射線治療、対症療法など
5. 遠隔転移層は切除できないが、原発巣は切除でき、原発巣による症状がある場合:手術および薬物療法、放射線治療など
内視鏡治療
内視鏡を使って治療する方法です。
※内視鏡治療の適応として、病変が粘膜下層にとどまっていることが条件とされます。
ポリペクトミー
有茎型といわれる盛り上がった形の病変に適応されます。
スネアと呼ばれる細いワイヤーで茎の部分を締め付けて焼き切る治療方法です。
切除に伴う出血や、まれに穿孔が見られることがあり、重大な合併症の場合は外科手術が必要になることもあります。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)
病変が粘膜層に留まっているが有茎型のように隆起しておらずなだからな場合に適応とされます。粘膜下層へ生理食塩水を注入し病変部位が持ち上がるように隆起させ、スネアで締め付けて焼き切る治療方法です。
切除に伴う出血や、まれに穿孔が見られることがあり、重大な合併症の場合は外科手術が必要になることもあります。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
2cm近くのサイズの早期癌は粘膜切除の治療方法では病変の取り残しによる再発起きてしまう可能性があることから、2cm近いサイズの病変でEMRでの切除が難しい場合や病変が陥没している場合に適応とされます。
切除する病変の周囲にマーキングを行い、粘膜下層へ生理食塩水など薬剤を注入して病変部位を持ち上げます。浮かせた部位をマーキングに沿って切開し、専用のナイフで剥離を行う治療方法です。
切除に伴う出血や、まれに穿孔が見られることがあり、重大な合併症の場合は外科手術が必要になることもあります。
②外科的治療
手術
※粘膜下層より下へ浸潤している場合は外科的治療の適応となります
※腫瘍の位置によって切除する腸管の範囲が異なってきます
▶︎回盲部切除、右半結腸切除、横行結腸切除、S状結腸切除など
腹腔鏡手術
腹部に5ヶ所程度の小さな創をつくり、二酸化炭素にて腹腔内を膨らませ、腹腔鏡という内視鏡機器を使用しながら腫瘍切除の手術を行います。
開腹手術に比べて術後の創部痛は少ないが、手術自体に時間を要します。
腹部に開けた小さな穴から腹腔鏡や筒(ポート)を挿入します。
腹腔鏡により腹腔内の状態をモニターに映し、術者はモニターを見ながら、ポートからハサミや鉗子(かんし)などの手術器具を入れて手術します。
最後に切除した臓器を小さな穴から取り出して手術は完了です。
開腹手術
腹部を大きく切開して腫瘍摘出を行う手術です。
患部を直接見ながら進められる為、手術時間も短く、術中の出血などトラブルにも素早く対応する事が可能です。
しかし腹腔鏡手術とは反対に創が大きい為、術後の疼痛がつよく身体的負担が大きい面や腸管が空気に触れる分、術後の腸管麻痺など合併症が起きやすくなる可能性があります。
外科的治療の場合、腸管の長さや術式によっては腸管同士を再度繋ぐことが難しく人工肛門増設の適応になる場合もあります。
使いきりの手術器具をほとんど使わないため、手術費用が腹腔鏡手術より安くて経済的です。
薬物療法
手術によってがんをすべて取り除くのが困難な場合、薬物療法が選択されます。
がんを小さくして手術で取れるようにしたり、がんの進行を抑えて症状を軽くしたり、延命したりするのが薬物療法の目的です。
以下の要件を満たすかどうかによって治療の適否を判断します。
- ●少なくとも、自分で歩くことができ、身の回りのことを行える
- ●肝臓や腎臓などの主な臓器の機能が保たれている
- ●他に重い病気がない
治療に用いる薬物の種類をご紹介していきます。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫細胞にかけられたブレーキを外して、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。
体には、異物を排除する免疫機能が備わっており、がん細胞を異物と見なし、免疫で排除してくれる可能性があります。
しかし、がん細胞には、免疫機能にブレーキをかけて、攻撃を免れる仕組みがあります。
がん細胞と免疫細胞が結合する部分を免疫チェックポイントと呼びます。
免疫チェックポイント阻害薬は、この結合を阻害することにより、免疫のブレーキを外して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。
細胞障害性抗がん薬
従来の抗がん薬であり、がん細胞の増殖を阻害します。
がん細胞だけでなく、正常な細胞も影響を受けるため、いろいろな副作用が見られるのがデメリットです。
副作用として、治療中から見られるアレルギー反応、治療後1~2週間目で現れる吐き気や食欲不振などの消化器症状、治療後2週間以上経った時点での脱毛などがあります。
また血液検査を行って明確になる肝機能障害、腎機能障害、白血球減少なども大きな問題です。
分子標的薬
がん細胞の増殖やがんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にする薬です。
分子標的薬には、小分子化合物や抗体薬が含まれます。
分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を標的にして、がん細胞の増殖を抑えます。
細胞障害性抗がん薬と比べると、正常な細胞への影響が少ないため、副作用もあまり見られませんが、下痢や肝機能障害、薬剤性肺炎などの副作用は発症する可能性があります。
抗体薬は、がん細胞の表面にある特定のタンパク質を結合し、がん細胞を攻撃する抗体を利用して治療する薬です。
がん細胞の周りにある環境に作用して働くものもあります。
副作用として、治療の初期に高熱や関節痛、息苦しさが見られることがあります。
放射線治療
放射線治療は、腫瘍を含めた必要最低限の部位に放射線を当て、細胞内のDNAを切断しがん細胞にダメージを与える治療法です。
高エネルギーX線を発生させるリニアックと呼ばれる放射線治療装置が用いられます。
放射線は、正常な組織にもダメージを与えますので、副作用が極力小さくなるように最新の注意が必要です。
大腸がんの放射線治療には補助放射線治療と緩和的放射線治療があります。
- ●補助放射線治療:直腸がんの骨盤内での再発を予防します。
- ●緩和的放射線治療:がんの再発や転移による症状(吐き気、嘔吐、めまいなど)を和らげます。
放射線治療の副作用は、だるさや吐き気、白血球減少、膀胱からの出血などです。
緩和ケア・支持療法
緩和ケアは、がんの治療に伴う心と体、社会的なつらさを和らげます。
支持療法とは、がんによる症状や、がん治療の副作用・後遺症を軽くするための予防・治療のことです。
緩和ケア・支持療法は、大腸がんの末期だけではなく、がんと診断されたときから始まります。
つらさを感じるときには、いつでも治療を受けられます。
大腸がんの予防方法
食事の欧米化が原因とされているため、バランスの良い食事(食物繊維やカルシウムの摂取)を心がけることや禁煙、適度な運動を行うことでの肥満予防など日常生活の行動が、癌予防へと繋がっていきます。
日頃からの健康意識が大切です。
また定期的な癌健診の受診も早期発見のきっかけとなるため、便潜血検査など精密検査に繋がる検査を積極的に行うことが推奨されます。
大腸がんの生存率と死亡率
大腸がんのステージ別5年生存率と人口あたりの死亡率をご紹介していきます。
大腸がんの5年生存率
大腸がんと診断されてから5年後に生存している確率です。
- <結腸がん>
- ステージ0 :93.0%
- ステージ1 :92.3%
- ステージ2 :85.4%
- ステージ3a:80.4%
- ステージ3b:63.8%
- ステージ4 :19.9%
- <直腸がん>
- ステージ0 :97.6%
- ステージ1 :90.6%
- ステージ2 :83.1%
- ステージ3a:73.0%
- ステージ3b:53.6%
- ステージ4 :14.8%
出典:大腸癌研究会 全国登録2000~2004年症例 https://www.jsccr.jp/registration/report.html
大腸がんの死亡率
- 大腸がんと診断された数(2019年)
- 155,625人(男性87,872人、女性67,753人)
- 人口あたりの罹患率(人口10万対)
- 123.3人(男性143.1人、女性104.6人)
- 大腸がん死亡者数(2020年)
- 51,788人(男性27,718人、女性24,070人)
- 人口あたりの死亡率(人口10万対)
- 42.0人(男性46.2人、女性38.0人)
出典:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html
まとめ
早期の大腸がんは、ほとんどまったく症状がなく、大半のケースは検診などで見つかります。
検診や人間ドックでは、便潜血反応、腫瘍マーカー検査が行われます。
初期検査で引っかかった場合、大腸内視鏡、注腸造影検査などの精密検査の対象です。
その後、大腸がんのステージや深達度によって治療方法が選択されます。
大腸がんの5年生存率は、ステージ0では93%と比較的良好です。
大腸がんは早期治療を行えば治癒する疾患であるため、早期発見につながるがん検診を受けるなど、日頃から予防に努めることが健康への第一歩となるため、積極的に受診をしましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師