バセドウ病とは?原因、症状、治療法について解説
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バセドウ病とは?原因、症状、治療法について解説
バセドウ病とは
バセドウ病とは、身体の中の甲状腺という臓器の機能が異常に活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に作られる代表的な甲状腺機能亢進症の疾患です。甲状腺とは、首の前にある臓器です。甲状腺ホルモンは、身体の代謝を活発にするホルモンで、あまりにも多量に分泌されると、身体の臓器に過剰な負担がかかってしまいます。
バセドウ病の発症率は、1,000人いれば2〜6人程度の割合です。女性の方が男性よりも5〜6倍発症しやすく、特に20〜40歳代の女性に多いです。また、バセドウ病は、自分自身の身体を攻撃する自己免疫疾患に分類されます。
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バセドウ病の原因は
バセドウ病の原因は、甲状腺を刺激する抗体という物質が関与しています。抗体とは、通常の免疫システムでは外敵から身を守るためにありますが、自分の身体を攻撃してしまう抗体ができるのが自己免疫疾患と呼ばれます。
バセドウ病で、なぜ甲状腺に攻撃するような抗体ができるのかは不明ですが、さまざまな原因が複合的に影響していると考えられています。遺伝的な理由や、ストレス、過労、妊娠・出産などの環境によるものが組み合わさって発症すると言われています。
バセドウ病では、甲状腺にある甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する抗体ができます。TSH受容体が過剰に刺激されると、甲状腺ホルモンが大量に分泌されることで身体のさまざまな部位に影響を与えます。
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バセドウ病の症状
バセドウ病の症状は身体のさまざまな部位に出ます。全身の症状として、体重が減る、疲れやすい、筋力が低下する、手足がふるえる、起きられないなどがあります。顔の症状としては眼球の突出、甲状腺の腫れなどが特徴です。心臓の症状として、頻脈による動悸や息切れがあります。消化器系の症状は喉がかわいて食欲が増大し、頻回な下痢なども引き起こします。暑く感じるので、皮膚は汗をかきやすくかゆみが出ることもあります。精神的に不安定になり、集中力が低下します。
このような症状のあらわれ方は、年代によっても違いますし個人差も大きいです。若い方には、甲状腺が腫れることが多いですが、高齢者はあまり目立ちません。高齢者は、体重が減りがちですが、若い方では逆に食欲が亢進して体重が増加することもあります。
バセドウ病の検査方法と診断
バセドウ病の検査や診断は、診察、超音波検査、血液検査、場合によっては(放射性ヨウ素)アイソトープ検査(甲状腺シンチグラフィ)などの検査を行います。診察や超音波検査では、甲状腺が腫れていないかどうかや甲状腺に腫瘍がないかどうかなどを確認します。
血液検査では、血液中の甲状腺ホルモン値や、甲状腺刺激ホルモン、バセドウ病の原因となるTSH受容体抗体があるかどうかをチェックします。甲状腺ホルモン値が異常に高く、甲状腺刺激ホルモンが低く、TSH受容体抗体があればバセドウ病と診断できます。
(放射性ヨウ素)アイソトープ検査(甲状腺シンチグラフィ)は、甲状腺がどの程度機能を持っているかを評価する検査です。TSH受容体抗体がない場合は血液検査ではバセドウ病と診断できないですが、症状などからバセドウ病が疑わしい場合に行われます。放射線ヨウ素は、甲状腺に吸収される特徴があるので、バセドウ病で甲状腺ホルモンの分泌が過剰な時には、より多くの放射線ヨウ素が取り込まれます。
また、バセドウ病そのものの検査ではないですが、心臓の評価をするために、心電図検査や胸部レントゲン検査を行うこともあります。
バセドウ病の治療方法
バセドウ病の治療方法には、抗甲状腺薬を内服する治療、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術治療の3種類があります。まずは抗甲状腺薬を内服することが多いです。その後の症状の経過や患者様個人の状態に合わせて他の治療方法を行います。
抗甲状腺薬は、飲んですぐに効果はあらわれません。2〜3週間程度で効果が少しずつあらわれてきて、2〜3ヶ月程度で甲状腺ホルモン値が正常になります。内服してから2〜3ヶ月の間はお薬による副作用が起こりやすいです。副作用としては、皮疹やかゆみ、血液検査で白血球の一種である顆粒球の減少、肝機能異常などがあります。定期的な通院が必要ですが、気になる症状が出たりすれば早めに医療機関を受診してください。
内服してから数年間は継続が必要ですが、内服中かもしくは内服中止後にバセドウ病がくり返し再発する場合には、アイソトープ治療や手術を行います。また、タバコはバセドウ病の治療効果を邪魔するので、禁煙することも非常に重要です。
また、甲状腺ホルモン値が高い間は、心臓に負担がかかって過剰に頻脈になり、不整脈が出現し心臓がうまく機能しなくなることがあるので、激しい運動や心拍数が上がる行為などはしないようにしてください 治療で甲状腺機能が元に戻れば、運動を含め元通りの生活を送れます。
バセドウ病の予防方法
バセドウ病は、原因不明の自己免疫疾患であるため、何をすれば予防できるのかという明確な予防方法はありません。ストレスや過労なども発症に関係しているという報告があるので、ストレスをためないように、疲れすぎないように過ごすようにしてください。
まとめ
バセドウ病とは、身体の中の甲状腺機能が異常に活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に作られる疾患です。原因は、TSH受容体抗体と呼ばれる、甲状腺ホルモンを分泌するのに関わる受容体に対する抗体ができることです。どのようにTSH受容体抗体ができるのかは現時点で分かっていませんが、遺伝的要因と環境的要因が関わっていると考えられています。
バセドウ病の症状として代表的なものは、眼球突出、頻脈、甲状腺の腫れ、体重の変化などがあります。バセドウ病を放置すれば、心臓などの臓器の負担が増えて命に関わる場合があるので早期に発見して治療を行うのが大切です。バセドウ病を発症しないようにする有効な予防方法は、現時点ではっきりとは分かっていません。
検査は診察、血液検査、超音波検査が主流です。甲状腺ホルモンや、TSH受容体抗体の値などを調べて診断します。治療は、まずは抗甲状腺薬を内服します。副作用が内服開始してから数ヶ月は特に出やすいので注意が必要です。治療効果が低い時には、手術やアイソトープ治療を検討します。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師