疲れやすさは甲状腺機能亢進症の前兆かも?治療や検査、妊娠時について

  • クリニックブログ
2024/02/14

疲れやすさは甲状腺機能亢進症の前兆かも?治療や検査、妊娠時について

なにもない時に妙に疲れやすかったり、心臓がどきどきするということはありませんか。もしかすると、それはホルモンが過剰に動いているために起こる「甲状腺機能亢進症」の恐れがあります。
 
今回は、甲状腺機能亢進症についてご紹介します。甲状腺機能亢進症の原因や治療方法、併発しやすいうつ病についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

呼吸に違和感を感じている
 

甲状腺機能亢進症とは

甲状腺機能亢進症とは、どのような症状なのかをご紹介します。

甲状腺が異常に働きすぎている状態のこと

甲状腺は喉仏の下部にある蝶々のような形をしており、甲状腺ホルモンを分泌する働きを持っている器官のことです。
 
分泌されたホルモンは血液とともに全身を流れて、全身のあらゆる細胞に刺激を与えて新陳代謝を促します。細胞の活性化のほか、心臓などの臓器の働きを促す交感神経の働きを助けたり、子供の精神的、肉体的の成長を行ったりするため、人間が生きていくうえで欠かせないホルモンといえるでしょう。
 
甲状腺機能亢進症とは、この甲状腺ホルモンを適量以上に分泌してしまう症状のことで、全身の細胞を盛大に刺激してしまい、さまざまな影響がでてくることです。
 

バセドウ病との違いは

バセドウ病は、自身が生み出した抗体が甲状腺を攻撃してしまい、ホルモンを大量に生み出してしまう病気です。甲状腺機能亢進症といえばバセドウ病であると同一視されるほど、この症状の原因とされています。
 
しかし、バセドウ病が原因である場合、甲状腺が腫れて大きくなってしまうのですが、腫れないこともあります。その場合はバセドウ病とは別の異なる病気が原因の可能性があり、一口にバセドウ病だけが原因であるというわけではありません。

さまざまな症状が出る

甲状腺が働きすぎてホルモンが大量に分泌されてしまうと、あらゆる細胞を活性化させてしまうため、さまざまな症状が身体や精神に現れます。甲状腺自体が腫れ上がったり、しこりができてしまったりするほか、常に体のほてりや動悸、息切れなどを起こしてしまいます。
 
また甲状腺ホルモンは精神にも影響を与えることが判明しており、主に体重の急な増減や不眠、不安症などの症状を引き起こしてしまうことがあるようです。

 

複数の原因がある

先述の通り、甲状腺機能亢進症はバセドウ病と同一視されるほど原因として最もよくみられますが、ほかのことが原因である場合もあります。バセドウ病以外の場合、主に原因は以下のものです。
 

  • ● 甲状腺炎
  • ● プランマー病
  • ● 薬によるもの

 
甲状腺炎はウイルスによる感染などが原因で甲状腺に炎症を起こしてしまっている状態のため、発症してしまっている恐れがあります。同様にプランマー病は、年齢層の高い方にみられることが多く、甲状腺にできたしこりの中で異常にホルモンが作られるという病気のため、発症しているのかもしれません。
 
その他に考えられる原因としては、甲状腺ホルモンを刺激する薬物などの副作用的効果や大量に服用しすぎてしまっていることが挙げられます。

 

 バセドウ病について詳しくはこちら

詳しくはこちら

 

甲状腺機能亢進症の検査方法は

甲状腺機能亢進症の検査方法をご紹介します。

通常は血液検査で甲状腺のホルモン量を測る

甲状腺の検査は、甲状腺機能検査といい、血液を採取して、血液内に含まれるホルモンの量を測る血液検査です。
 
甲状腺ホルモンは血液にのって全身に流れていくため、適正な数値が出やすいとされており、血液中に含まれている量が基準値以上である場合は、甲状腺機能亢進症であると診断します。しかし、まれに脳の「下垂体」と呼ばれるホルモンを調節する部分が正常に機能できていないことがあり、正確にホルモン量が測定できないとされる場合もあります。

 

バセドウ病以外が疑われる場合は画像検査も行う

医師が喉に触れた際にしこりがあるとされた場合、プランマー病などの可能性を考慮して超音波検査などの画像検査を行うことがあります。超音波検査で主に調査されるのは、しこりのなかにホルモンが過剰につまっていないかやしこりの大きさなどです。
 
また放射能成分を含む特殊な液体を注射して甲状腺を放射線カメラで撮ることもあり、こちらは甲状腺の機能が働きすぎているのか、または低下しているのかを他の臓器にあるホルモン量と見比べて調査することがあります。
 

主な自覚症状

自覚症状は主に以下のものが認められています。
 

  • ● 疲れやすくなった
  • ● 大量に汗が出る
  • ● 動悸・息切れをする
  • ● 手が震える
  • ● 著しい体重の減少

 
特に異常に疲れやすくなったという方が多い傾向にありますが、手が震えたり、体重が著しく下がっていたりするなどの複数の状態になっている場合は、医療機関で診察を受けることがおすすめです。

 
 

甲状腺機能亢進症になってしまったら

甲状腺機能亢進症の症状には、どのような治療法があるのでしょうか。治療法や日々を過ごすうえでの注意点について解説します。

原因によって治療法は異なる

主にとられる治療法は、甲状腺の働きを抑制する効果のある薬などを用いた薬物治療です。しかし、甲状腺機能亢進症の治療は、原因となる病気などを考慮して行われるため、さまざまな方法がとられます。薬の副作用があったり、症状が重かったりする場合は、甲状腺を摘出する手術を行うことがあり、手術後は定期的にホルモンを補充するための治療を行うことが必要です。

 

バセドウ病の場合は目や皮膚の手術を行うこともある

バセドウ病の特徴的な症状として、目や皮膚に異常が出てしまうことがあります。眼球が前に突き出してきたり、ものが二重に見える複視という症状や皮膚が硬くなり、かゆみなどが出てくるのです。
 
バセドウ病が原因である場合は、これらの治療も行わなければならず、テープで眼球が前に出ないようにしたり、軟膏などでかゆみを抑えたりします。重篤な状態の場合は、甲状腺の状態をみながら手術を行う必要があります。

 

正常になるまでは、激しい運動は避ける

甲状腺の働きが正常になり、血中のホルモンの数値が平常になるまでは、激しい運動などは避けましょう。過剰にホルモンが分泌されている間は、心臓への負担が大きく、不整脈などを引き起こす原因になるかもしれません。
 
また喫煙されている方は、服用中決してタバコを吸わないようにしてください。薬の効果が弱まるばかりか再発してしまう恐れがあり、大変危険です。

 
 

甲状腺機能亢進症になると精神も不安定になる

甲状腺は精神にも多くの影響を与えることがわかっており、症状が出てしまうと患者は精神的に不安定になってしまうことがあります。甲状腺機能亢進症と合併しやすいこころの病気である「うつ病」について、ご紹介します。

甲状腺ホルモンの増減で精神が不安定になる

分泌されたホルモンの数値が高い場合、精神的なさまざまな症状が出る恐れがあります。主な症状としては、不眠や不安症、感情の制御が困難になってしまったり、知能に問題が出てきてしまったりといったことです。
 
そのため、精神疾患や痴呆症が疑われることも多く、精神疾患などの検査に甲状腺の検査が同時に行われて、ホルモンの量の調査が行われます。

 

甲状腺機能亢進症と合併しやすいうつ病とは

うつ病とは、脳に回るエネルギーが不足している状態で起こる精神病のことです。多くの原因はストレスとされ、甲状腺機能亢進症はホルモンが正常に分泌されないために脳に大きな負担が加わっている恐れがあります。
 
また、発病の前後一年程度で大きなストレスを患者が抱えてしまったために、うつ病が発症してしまう可能性があると言われています。

 

甲状腺薬でうつ病は回復するのか

先述の通り、甲状腺の異常は精神にも影響を与えているため、精神疾患の検査には甲状腺の検査も行われます。これは、精神疾患であるか甲状腺の異常であるかの診断が大変難しいためです。実際、抗うつ薬で改善のみられない患者には甲状腺の薬を処方することがあり、約20%の確率で症状が良い状態に向かうと言われています。


 

 うつ病について詳しくはこちら

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まとめ

ここまで「甲状腺機能亢進症」についてご紹介してきましたが、いかがでしょうか。バセドウ病を含め、甲状腺機能亢進症の原因となる病気はさまざまな症状を引き起こします。
 
そのうえ甲状腺ホルモンは心にまで影響を及ぼすため、突然無気力になったりイライラが止まらなかったりするうつ病のような症状が出てしまうかもしれません。医師とよく相談し、しっかりと治療することで症状を和らげることができるでしょう。


 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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