脂肪肝とは?原因・症状・予防法について
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脂肪肝とは?原因・症状・予防法について
「脂肪肝は怖い病気なの?」
「一度なったら改善できない?」
「脂肪肝の改善方法が分からない…」
このような不安を抱えていませんか?
確かに脂肪肝は体にとってよくありません。
しかし、すぐに命を落とすといったような状態ではなく、放置すると生命を脅かす疾患につながる可能性がある状態といえます。
以降では、原因や症状、予防策について解説します。
脂肪肝って何?
脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積されてしまった状態です。脂肪肝の状態が続くと、肝炎や肝硬変を引き起こします。
さらに、脂肪肝の種類によっては肝臓がんへ進行していく可能性もあり、放置するのは危険です。
脂肪肝の原因や対策方法を知り、ならないように気を付けたり、少しでも異変を感じたら受診したりすることが大切です。
肝臓がんについてはこちら
脂肪肝の原因って?
脂肪肝にはアルコール性と非アルコール性があり、それぞれで原因は異なります。
アルコール性の脂肪肝
アルコール性の脂肪肝は、アルコールの過剰摂取によって発症します。
アルコールによって脂肪肝になる理由は、中性脂肪の合成です。
アルコールの分解は肝臓によって行われることが知られていますが、分解の際に中性脂肪の合成が行われます。
分解量が多いほど合成されやすくなるため、アルコールの飲みすぎは脂肪肝のリスクを高める原因になるのです。
非アルコール性の脂肪肝
現在、非アルコール性の脂肪肝の方が増えている傾向にあります。
非アルコール性を引き起こす原因は、糖質の取りすぎやスナック菓子の食べすぎ、肥満、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)といった疾患です。
特に、肥満になると肝臓に中性脂肪が蓄積され、燃焼しきれない状態が続くため、脂肪肝のリスクが高まります。
脂肪肝の3大原因
脂肪肝の3大原因には以下が挙げられます。
- ●肥満
- ●糖質の過剰摂取・糖尿病
- ●アルコール性
全国健康保険協会の報告によれば、肥満により発症する方の割合は48%、糖質の過剰摂取・糖尿病は18%、アルコール性は18%となっています。
この結果から、もっとも脂肪肝になるリスクを上げるのは肥満であるといえるでしょう。
(出典: 全国健康保険協会「脂肪肝」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/20140810001.pdf)
脂肪肝の症状とは
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、炎症があっても初期の時点では自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断の画像検査や血液検査を受けて初めて発見されるケースがあります。
疲れやすい・体がだるい、食欲不振、腹部右上の鈍痛などの自覚症状が出始めた頃には、すでに炎症が強く進行しているケースもあります。
脂肪肝(肝炎)の種類
脂肪肝は、「非アルコール性脂肪性肝」「アルコール性脂肪肝」の大きく2つに分類できます。
傾向でいうと、重症化やがん化しやすいのは、非アルコール性脂肪性肝です。
以降で詳しく種類ごとの特徴を解説します。
1:非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、先ほどにも解説した非アルコール性の脂肪肝です。
そして、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは、非アルコール性脂肪肝が重症化し、肝炎を引き起こしている状態です。
NAFLDの約10%の方がNASHに進行し、約5~10年後に5~20%の方が肝硬変になります。
さらに、肝硬変になった方の40~60%が肝不全にまで進行するようです。
なお、5年後に肝細胞がんになる方は0~15%となっており、5年生存率は高く60~90%にも上ります。
2:アルコール性肝炎
アルコール性肝炎は常習飲酒家の方が発症する傾向があり、多くの場合、大量飲酒後に食欲不振・だるさ・発熱の自覚症状が出現します。
また、肝臓は痛みを出さない臓器ですが、アルコール性肝炎を発症すると肝臓の腫れとともに右上腹部に痛みが出現し、黄疸も見られ、尿の色が紅茶色になります。
さらに悪化すると腹水とむくみも出現します。
血液検査では、白血球・肝酵素が増加し、肝酵素AST(GOT)は200IU/L以上、貧血・血小板減少・アルブミン減少・プロトロンビン時間の延長・クレアチニン上昇など、その他の原因で起こる急性肝炎と類似の血液検査異常を示します。
脂肪肝の検査や診断について
脂肪肝の検査方法や診断について解説します。検査方法は3種類です。
- ●腹部超音波検査
- ●血液検査
- ●CT検査
では、一つずつ解説します。
1: 腹部超音波検査
腹部超音波検査では、お腹の表面に超音波を発する機械をあて、内臓からの反射波をその装置が受けとり電気信号にかえてモニターに写します。
肝臓に脂肪が蓄積されている場合、内臓が正常な肝臓と比較して白っぽく写ります。
2: 血液検査
血液を採取して異常がないかを調べます。
肝臓系の検査では、総タンパク・アルブミン・AST(GOT)とALT(GPT)・γ-GTPに異常がないか確認します。
AST(GOT)は心臓・筋肉・肝臓に多く存在する酵素であり、ALT(GPT)は肝臓に多く存在する酵素です。
これらの数値が高い場合には脂肪肝、急性肝炎、慢性肝炎、肝臓がん、アルコール性肝炎の可能性があります。
またγ-GTPは、肝臓や胆道に異常があると血液中の数値が上昇します。
この数値が高い場合にはアルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害が疑われます。
なお、飲酒習慣のある方は高い数値であるケースがあります。
3: CT検査
CT検査とは、X線を使って全身の断面像を撮影し、体表からでは確認できない内臓の状態を詳細に確認する検査です。
当院での脂肪肝の検査・治療方法はこちら
脂肪肝(肝炎)の予防・改善するためには?
脂肪肝(肝炎)を予防するもしくは改善するためには、運動不足・過食・過度な飲酒習慣を改善することが必要になります。
1: 運動
脂肪燃焼効果の高い有酸素運動を習慣にしましょう。
有酸素運動は、心拍数が120回/分程度に上昇するような強度の運動です。
例えば、会話ができる程度のペースのジョギング、大股で早歩き、階段昇降などが該当します。
運動は毎日する必要はなく、週2回以上でも構いません。
ご自身のペースで無理なく始めてみましょう。
脂肪燃焼効果を高めたいのであれば、20分間以上の運動が必要です。
ひと昔前までは、連続20分でなければ意味がないといわれていましたが、最近では断続的でも効果が期待できるといわれています。
効率よく脂肪燃焼をしたい方は、最初に筋トレを5分くらい行ってから有酸素運動を20分以上するのがおすすめです。
最初に筋トレをすることで成長ホルモンが分泌され、有酸素運動による筋肉の分解を阻止できます。
2: 食事
過食・肥満を解消するには、食事の見直しが必要です。
まずは昨日一日の食事を思い出してください。
欠食することなく朝昼夕の3回食事をとりましたか?
仕事が忙しいからと、ファストフードばかり食べていませんか?
糖質・タンパク質・脂質・野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維やビタミンを摂取できましたか?
何か一つに偏ることなくバランスよく食べることが大切です。
加えて、摂取カロリーも振り返ってみましょう。
「一日1食だけダイエット」「極度な糖質制限ダイエット」などを聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一日1食だけダイエットは血糖値の乱高下を起こし、血糖コントロールがうまくいかなくなるため、糖尿病を発症するリスクが高まります。。
また、極度に糖質を制限することで一時的に体重が減ることもありますが、元の食事に戻すと大きくリバウンドする可能性が高いです。
健康的に痩せるためには、旬の食材を取り入れた和食中心の食生活をおすすめします。
テレビやスマホを見ながらの”ながら食べ”は控え、ゆっくりよくかんで副菜の野菜から順番に食べましょう。
NASHを改善する食事レシピの例
NASHの改善には、肝臓にやさしい食事をとること、肥満の改善が大切です。
今回は、一般財団法人 肝疾患研究会が紹介しているレシピを一部ご紹介します。
ご家庭でも作れるほど簡単で、肝臓を労わることもできるのでぜひお試しください。
こちらのパスタメニューは、通常のパスタ麺ではなく「こんにゃくパスタ」を使用しています。
糖質やエネルギーをカットできます。
また、冷製パスタなので、夏バテで食欲が低下している方も手軽に食べられます。
<材料:2人分>
● こんにゃくパスタ:120g
● 鶏ささみ:60g
● 酒:小さじ1弱
● ミニトマト:100g
● オクラ:60g
● しそ:10枚
● A 濃口しょうゆ:小さじ1弱
● A ごま油:小さじ1強
● A 水:50g
● A 顆粒中華だし:0.6g(少々)
● A 砂糖:1g
● ごま:4g
● きざみのり:0.4g
<作り方>
1. 鍋に水を入れて沸騰させる
2. 鶏ささみにお酒を掛ける
3. 1の鍋に鶏ささみを入れてゆでる
4. 火を止めて取り出し粗熱を取り、冷めたら細かく裂く
5. オクラを板ずりして産毛を取る
6. 1の鍋でオクラを固めにゆがき、冷めたら5mm幅にカットする
7. ミニトマトはヘタを取り、半分にカットする
8. しそを千切りにし、すぐに冷水にさらす
9. 新しい鍋にAの調味料を入れ火にかける
10. 粉末状の調味料が溶けたら火を止め、冷蔵庫で冷やしておく
11. 新しい鍋でこんにゃくパスタをゆでる
12. ゆで終わったら流水でしめる
13. お皿に盛り付けて完成
こんにゃくパスタは硬めにゆでるのがおすすめですが、好みの硬さでゆでていただいて構いません。
(参照URL:一般財団法人 肝疾患研究会 今月の肝臓にやさしい食事レシピ 8月の献立
https://www.kanshikkan.com/recipe/841)
3: 飲酒
テレビを見ながらお酒を飲む、おつまみを食べながらお酒を飲むといった習慣がある方は、つい飲みすぎてしまう傾向があるため気を付けましょう。
例えば、お酒の缶は一日1本のみにするなど、飲酒量を設定すると飲みすぎを予防できます。
また、最低連続2日間肝臓を休ませる”休肝日”を設定することも推奨されています。
肝臓を守るための習慣を考えてみましょう。
脂肪肝の治療薬
脂肪肝の特効薬はまだ開発されておらず、発症原因の治療薬を用いた治療がメインとなっています。
また、生活習慣の改善でも追いつかない場合、肝硬変や肝臓がんへの進展を予防するための薬物療法を行います。
以降で詳しく解説しますので、参考にしてください。
治療薬1:ビタミン剤
ビタミンEは、肝臓の炎症を改善したり、繊維化した肝臓を改善したりする効果が期待できます。
理由は、抗酸化作用によって脂肪肝に関係する肝細胞の酸化ストレスを軽減できるためです。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の方にも効果的であるとの報告もあります。
治療薬2:脂質代謝異常治療薬(フェノフィブラート、ペマフィブラート)
脂質代謝異常治療薬は、脂質異常症による脂肪肝の改善に期待できる治療法です。
この薬を服用することにより肝機能が回復したもありますが、まだ十分なエビデンスが集まっていません。
なお、ペマフィブラートは特に有効性があることが期待され、研究が進められています。
治療薬3:肝庇護剤(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン)
肝庇護剤は、肝臓の破壊が進むことを予防する薬です。
肝機能改善にも期待できます。
特に、高濃度のウルソデオキシコール酸が配合された薬は有効性があるとされていますが、日本では取り扱いがありません。
治療薬4:糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)
糖尿病治療薬は、肥満や糖尿病を合併する脂肪肝の方に重要な治療法となる可能性があります。
SGLT2阻害薬は肝臓の保護ができることに加え、体重減少や血糖降下の効果があるためです。
インドでは、2型糖尿病で脂肪肝を持つ方に投与したところ、他の標準治療と比較して肝脂肪量が減少したという改善例があります。
治療薬5:高血圧の薬(ARB・ACE阻害薬)
高血圧を患う方の脂肪肝には、高血圧の薬が用いられています。
脂肪肝に関わる細胞と結合する「アンジオテンシンII受容体」を作らせない作用があるため、脂肪肝の改善が期待できます。
サプリも脂肪肝改善に役立つのか
サプリが脂肪肝の改善に役立つといわれることがありますが、実際はどうなのでしょうか。
そもそもサプリは薬ではなく食品です。
病気を改善するような強い効果があるものをサプリとして販売することは禁じられています。
しかし、食事で病気の改善ができることを考えると、サプリも期待できるかもしれません。
以降では、サプリによる脂肪肝改善をご紹介します。
アスタキサンチンが非アルコール性脂肪肝炎に期待できる効果
サプリでもアスタキサンチンが配合されているものは、非アルコール性脂肪肝炎に期待できるとされています。
アスタキサンチンとは、ビタミンEよりも強力な抗酸化作用を持つ物質です。
アスタキサンチンは、非アルコール性脂肪肝による繊維化や炎症に効果があるとの報告もあります。
配合量によっては、サプリを飲むことである程度進行を予防できるかもしれません。
注意1:サプリは薬ではない
注意しなければならないのは「サプリは薬ではない」ということです。
先ほどもお伝えしましたが、サプリは医薬品ではないため、体に大きな影響をもたらすことはありません。
あくまでサプリは補助として使い、基本は生活習慣の見直しを行いましょう。
注意2:サプリを飲む場合は医師に相談する
サプリの成分によっては、持病の悪化リスクのほか、薬との組み合わせが悪い可能性もあります。
購入する前に、必ず医師に相談しましょう。
注意3:異変を感じたらすぐに中止して医師に相談する
サプリは肝臓にダメージを与えることがあります。
また、人によってはアレルギーを発症することもあるため、異変を感じたらすぐに中止して医師に相談してください。
まとめ
健康診断で脂肪肝を指摘された方は、手遅れになる前に今日から生活習慣の改善に取り組むことが大切です。
当院では、生活習慣に関する項目に所見を認めた方を対象に保健指導を実施しております。
特定保健指導は40歳以上を対象とした指導ですが、40歳未満の方に受けていただける若年保健指導もご用意しております。
皆さまのお悩みを保健師が予防医学の視点でサポートし、生活習慣改善に向けて、生活スタイルに合わせた食事や運動などについて、保健師から提案させていただいております。
詳しくは当院ホームページの保健指導の項目をご覧ください。
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当院では、腹部造影CT検査や腹部超音波検査といった画像検査や血液検査などを受けることができますので、ご心配な方は一度ご相談ください。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師