子宮筋腫とは?原因、症状、治療法について解説
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子宮筋腫とは?原因、症状、治療法について解説
「子宮筋腫ってよく聞くけどがんとは違うの?」
「がん化することはある?」
「原因は何がある?予防できるものなの?」
このような疑問や不安はありませんか?
結論からお伝えすると、がん化することはありませんが筋腫だと思っていたらがんだったという可能性はあります。
子宮筋腫そのものは、がんのように命を落とすリスクはありません。
しかし、治療法の術後リスクや重度の貧血など、生命が脅かされる要因はあります。
今回は渋谷院医師の松下医師が「子宮筋腫」について詳しく解説しますので、参考にしてください。
子宮筋腫って何?
子宮内膜や子宮外に筋肉の塊、いわゆるコブができる疾患です。
基本的に良性のため、命を落としたり転移したりすることはありません。
発症率もそれほど珍しくなく、月経がある年齢であれば誰でも発症する可能性があります。
なかでも、30歳以上の女性の20〜30%にみられる傾向です。
筋腫ができる場所や大きさによっては症状があまりなく、気づかないことも少なくありません。偶然検診で見つかって初めて知る方も多いのです。
子宮筋腫は閉経に伴ってサイズが小さくなる傾向が強いことから、筋腫の発生や増悪は女性ホルモンと関連しているとされています。
注意しなければならないのが、筋腫に類似した子宮肉腫だった場合です。
子宮肉腫は筋腫と非常に見た目が似ている上に症状も似ているため、確定するには検査でがん細胞の有無を調べるのが一般的です。
子宮肉腫の場合は、不正出血や腹痛、腹部膨満などの症状があらわれますので、もし気になる症状がある方は早めに婦人科で検査してもらいましょう。
子宮筋腫は、筋腫が発生する場所によって粘膜下筋腫(子宮の内側)、筋層内筋腫(子宮の筋肉の中)、漿膜下筋腫(子宮の外側)に分類されます。
粘膜下筋腫の特徴
子宮内膜の最も内側にある粘膜に筋腫ができるタイプです。
子宮内膜にできることが影響し、サイズが小さい場合でも自覚症状が出やすいです。
筋腫の血管が子宮内部に露出することもあって出血量が多くなりやすく、月経過多でナプキンを何枚も交換するパターンが少なくありません。
出血量の多さから貧血を引き起こすため、ふらつきや目眩といった症状も見受けられます。
場合によっては不妊につながることもありリスクが大きいです。
症状がひどい場合は手術が検討されます。
筋層内筋腫の特徴
全体で発症率が高く7割を占めており、3種類のなかでも複数の筋腫ができやすいタイプといわれています。
サイズが小さい場合は症状がほとんど出ず無症状の方も少なくありません。
ただし、大きくなったり数が多すぎたりすると、月経量の増加や月経痛などの症状が出やすいです。
場合によっては不妊につながるリスクもあるため、積極的な治療が推奨されています。
漿膜下筋腫の特徴
子宮外にできる筋腫で、全体でも1割〜2割の確率とそれほど発症率は高くはありません。
子宮内膜で発症していないため、無症状のケースが多く気づきにくいタイプでもあります。
筋腫の根元が細い場合は捻れることがあり、強い痛みを引き起こします。
さらには、サイズが大きくなると膀胱や直腸などの臓器を圧迫するため、頻尿や便秘といった症状があらわれます。
子宮筋腫の症状って?
主な症状は、過多月経(月経量が多くなる)と月経痛です。
その他の症状としては、貧血、帯下(おりもの)異常、不正性器出血、腰痛、頻尿、便秘などがあります。また、不妊症や流産の導因になります。
症状はできる場所によって異なり、粘膜下筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。逆に漿膜下筋腫は大きくなっても症状がでない傾向があります。そのため治療が必要かどうかは、子宮筋腫のできた場所や症状によって異なります。
子宮筋腫の検査について
子宮筋腫の確定診断には、以下の検査方法を必要とします。
- ●内診
- ●MRI検査
一つずつ解説します。
内診
内診には様々な検査方法があります。
- ●触診
- ●視診
- ●膣鏡診
- ●エコー検査
- ●細胞診
- ●膣分泌物採取
<触診>
触診では、膣内に指を入れて子宮内の状態を確認します。
子宮が正常に動くか、痛みはあるのかなどをチェックする方法です。
また、お腹を上から押さえて痛みがあるか、子宮や卵巣に腫れがないかも確認します。
<視診>
視診は、外陰部を直接確認する方法です。
傷や湿疹、腫れ、ヘルペスやコンジローマといったできもの、ただれ、腫瘍など見た目にあらわれる病変があるか、またそれはどのような状態なのかを確認します。
<膣鏡診>
膣鏡と呼ばれる器具を膣から挿入し、膣内やおりものの異常を確かめます。
コリン式やクスコ式などといった様々な種類の膣鏡がありますが、一般的に使用されるのはクスコ式や桜井式です。
なお、膣の状態は人によって異なるため、傷つけないよう年齢や状態などに適したサイズのものを選択して使用します。
<エコー検査>
エコー検査は「経腟超音波検査」と「経腹超音波検査」の2種類があります。
経腟超音波検査は、膣内に機器を挿入して超音波を使い、がんやポリープ、筋腫の有無を調べる検査です。
<細胞診>
子宮の内膜や頸部から採取した細胞を調べ、細胞にがん細胞がないかを顕微鏡で調べる方法です。
採取する際はブラシやヘラが用いられます。
<膣分泌物採取>
おりものからウイルスや細菌がないかを調べ、またいる場合はどの種類なのか特定する検査です。
採取する際はブラシが用いられます。
MRI検査
強い磁石と電波を使い、磁場を発生させて病変を探すトンネル状の装置を使って行う検査です。
様々な方向から体内の状況を分析でき、その断面を画像にして病変を確認します。
なお、タトゥーやアートメイクを施している方は、事前申告が必要です。
タトゥーやアートメイクに含まれるインクに反応し、火傷するためです。
また、ペースメーカーを装着している方はMRI検査を受けられません。
磁場が発生するため、電気信号を心臓に送るペースメーカーに狂いを生じさせ、心臓の動きに何らかの影響を及ぼす危険性があります。
婦人科健診について
子宮筋腫の治療について
治療が必要な場合と、治療は必要なく経過観察となる場合があります。
無症状で子宮肉腫など悪性を疑う所見がなければ、定期的に超音波検査などで経過観察します。
症状がある場合は薬物療法か手術療法を選択します。
1: 薬物療法
治療法の一つである薬物療法では、偽閉経療法が行われます。
名前のとおり、閉経した状態を薬で作り、女性ホルモンの分泌を抑制することで筋腫を小さくする治療法です。
長期的な服用により骨密度が低下し、閉経したような状態になるため、ホットフラッシュや肩こり、膣乾燥など更年期障害のような症状を発症する可能性があります。
内服薬、皮下注射薬、点鼻薬などが使われます。
内服薬
内服薬は、薬を経口から服用するタイプです。
レルミナが代表的な薬剤で、毎日同じ時間の食前に、月経周期1〜5日目から1錠飲みます。
飲み忘れや食後の服薬は不正出血が続くことがあるため、服用は正しく行わなければなりません。
皮下注射薬
皮下注射薬は、通院による投与で、インスリン薬のように自己注射はしません。
リュープロレリン注1.88が代表的な薬剤で、初回は月経1~5日目、以降は4週に1回の頻度で合計6回投与します。
点鼻薬
点鼻薬は、左右の鼻腔内に薬剤を吹きつけるタイプです。
スプレキュア点鼻薬が代表的な薬剤で、左右1回ずつを1日3回点鼻します。
3つの投与方法のなかでも効果は穏やかですが、その分副作用も少ないです。
対症療法
対症療法とは、疾患が原因で起きている症状に対して緩和・改善のために行う治療法です。
対症療法では、以下のような方法があります。
- ●鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症剤)
- ●漢方薬
- ●鉄剤
- ●低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤
一つずつ解説します。
鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症剤)
鎮痛剤は、筋腫により起きる月経痛を緩和するために投与します。
腹痛や食欲不振といった消化器系の副作用が起きることがあります。
稀に喘息発作を起こしたり、腎機能障害が起きたりすることもあるため、医師の指示に従って服用してください。
薬剤の種類にもよりますが、妊婦さんには投与できない場合が多いです。
漢方薬
東洋医学の考えでは、子宮筋腫が発症する原因は気(エネルギー)と血の巡りが悪く滞っているためだとされています。
そのため、気血の滞りを改善する生薬を配合した漢方薬を用いて治療を行います。
よく用いられる漢方薬の代表格は、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。
ただ、体質によって合う漢方薬が異なるため、ドラッグストアなどで自己判断によって購入するのではなく、医師の診断をもとに処方された漢方薬を服用することをおすすめします。
鉄剤
鉄剤は、鉄分を補給し、筋腫の出血や月経過多による貧血の症状を緩和・改善するために処方されます。
鉄剤により便が黒くなることがあります。
カフェインは鉄分吸収を阻害するため、緑茶やコーヒーで飲まないようにしてください。
服用後1時間はカフェイン摂取を避けましょう。
低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤
低用量卵胞ホルモンや黄体ホルモン配合剤は、筋腫により起こる月経困難症を軽減するために行う治療法です。
稀に、血栓塞栓症を引き起こすことがあるため、血栓ができやすい疾患を持っている方や体質の方には処方できません。
子宮内黄体ホルモン放出システム
持続的に黄体ホルモンを放出するように装置を装着する治療法です。
効果は最大5年間です。
子宮内膜の細胞増殖を防げるため、筋腫の増大を防止できます。
ほかにも避妊効果や月経痛の緩和、月経量の軽減といった効果があります。
2: 手術療法
手術療法には、大きく分けて保存手術と根治手術の2通りがあります。
保存手術とは子宮を残す方法、根治手術は子宮をすべて摘出する方法です。
術式には以下の3つがあります。
- ●筋腫核出術
- ●単純子宮全摘術
- ●子宮鏡下手術
一つずつ解説します。
筋腫核出術
筋腫のみを摘出するため、子宮を温存でき、将来妊娠・出産を望む方に選択される治療法です。
術式は腹腔鏡手術と、開腹手術の2通りがあります。
開腹手術は傷跡がお腹の表面に残り、切開範囲を広いため目立ちやすいのがデメリットです。
腹腔鏡手術は傷跡が目立ちにくいですが、場所やサイズによっては適用できません。術後妊娠をした場合、子宮破裂を起こすリスクがあることがデメリットです。
単純子宮全摘術
将来の妊娠・出産を望まない場合や筋腫が大きい場合に選択される治療法です。
がんが疑われる場合は全摘出が望ましいです。
なお、方法は開腹手術と腹腔鏡手術の2通りがあります。
筋腫のサイズがそれほど大きくない場合や悪性の疑いがない場合は、傷が目立ちにくく、体への負担も少ない腹腔鏡手術が勧められます。
しかし、サイズが大きすぎる場合や悪性の可能性がある場合は開腹手術を検討しなければなりません。
開腹手術は体へのダメージが大きいこともあり、通常の生活に戻るまでに3〜4週間かかります。
子宮鏡下手術
内視鏡を膣から挿入し、スコープの先端についている電気メスで除去する方法です。
電解質水溶液を使用した場合はこの限りではありませんが、リスクとして水中毒を引き起こすことがあります。
また、子宮の壁に穴があいてしまうリスクもゼロではありません。
食事療法
食事療法とは、摂取する食材や料理で子宮筋腫の悪化を防止するために行う治療法です。
エストロゲンの分泌には食べ物にも関連しており、その作用を用いて分泌を抑制して筋腫の増悪を防ぎます。
動物性脂肪を減らしてイソフラボンメインにする
動物性脂肪は、女性ホルモンのエストロゲンの材料になるため避けたほうが良いです。
代わりに、積極的に摂取したいのがイソフラボンです。
女性ホルモンのような働きをしてくれる作用がありますが、体への作用は非常に弱いです。
そのため、女性ホルモン作用をうまく補いながらもエストロゲンによる筋腫の増大は抑制できると考えられています。
イソフラボンが豊富な食材は、豆乳や豆腐、味噌などの大豆製品です。
美容にもいいとされているので、女性にとって嬉しい効果も期待できるでしょう。
体を温める食事を意識する
東洋医学の血の巡りの滞りが筋腫の原因という考えに基づき、体を温める食事が勧められています。
温めてくれる食材には、ショウガや人参、レンコン、味噌や納豆などの発酵食品、タンパク質などがあります。
飲み物でいうと、ココアがおすすめです。
もちろん、物理的に温めた料理も体を温めてくれます。
煮込み料理やスープ料理などを積極的に取り入れてみてください。
ビタミンBやビタミンEを意識して摂る
ビタミンBやビタミンEは、肝臓の働きをよくしエストロゲンの濃度を下げる働きが期待できます。
ビタミンB群は8種類あり、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンがあります。
これらが含まれている食材は、緑黄色野菜やカツオ、マグロ、アーモンド、鶏ささみなどです。
ビタミンEが豊富な食材は、うなぎ、アーモンド、アボカドなどです。
食物繊維を意識して摂る
食物繊維はエストロゲンを吸収して排出する作用があるため、筋腫の増大や増加を抑制する効果が期待できます。
食物繊維には水溶性と不溶性があり、水溶性には海藻類、不溶性にはごぼうなどがあります。
なお、これらは便秘対策にも役立つため、便通にお悩みの方にもおすすめです。
まとめ
子宮筋腫とは、子宮内膜や子宮外に筋肉のコブができる疾患です。
軽度の場合は無症状の場合もありますが、サイズが大きくなるのに伴い、不正出血や月経過多、不妊症などを引き起こす要因となります。
MYメディカルクリニックのレディース外来では子宮筋腫の診断、薬物治療、定期検診が可能です。手術適応がある方、手術ご希望の方は高次医療機関に責任をもって紹介させていただきます。
まずは、お気軽にご相談ください。
婦人科健診の診察内容について
MYメディカルクリニック渋谷医師
松下 智香子 Dr. Chikako Matsushita
学歴
- 宮崎大学 医学部 卒業
職歴
- 自治医科大学附属病院 初期研修
- 自治医科大学附属病院 婦人科
- 国際医療福祉大学病院 派遣 産婦人科医長
- 自治医科大学附属病院産 婦人科
- 自治医科大学附属病院附属さいたま医療センター 婦人科
- 社会医療法人 母恋 天使病院
- ピュールレディースクリニック錦糸町院
- 2022年8月 医療法人社団MYメディカル 医師
専門
婦人科