
A型肝炎ワクチン(Hepatitis A)
A型肝炎ワクチンとは
A型肝炎ワクチンは、A型肝炎ウイルス(HAV)による感染症「A型肝炎」を予防するために開発されたワクチンです。A型肝炎は、主にウイルスに汚染された水や食事を摂取することで感染し、衛生環境が十分でない地域で流行しやすい病気です。日本では上下水道の整備や食品衛生の向上により発症例は減少していますが、60歳以下の多くの日本人はA型肝炎ウイルスに対する抗体を持っていません。そのため、流行地域への渡航や、特定のリスクを持つ方にはA型肝炎ワクチンの接種が強く推奨されます。
A型肝炎ワクチンは、非常に高い予防効果と安全性が認められており、世界中で広く利用されています。接種スケジュールや費用、接種にあたっての注意点は、年齢や健康状態、渡航予定などによって異なる場合があるため、必ず事前に医療機関で詳細を確認し、個々の状況に合った接種プランを立てることが大切です。
A型肝炎の特徴・症状
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる急性の肝臓感染症です。このウイルスは主に「糞口感染(ふんこうかんせん)」と呼ばれる経路で広がります。つまり、ウイルスが含まれている便に汚染された水や食べ物を口にすることで感染します。特に生の魚介類や加熱不十分な貝類、衛生状態の悪い地域の生野菜などが感染源となりやすいです。また、感染者との密接な接触や、性交渉によっても感染することがあります。
A型肝炎ウイルスに感染すると、15日から50日(平均28日)の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。
- ●発熱
- ●全身のだるさ(倦怠感)
- ●食欲不振
- ●吐き気や嘔吐
- ●腹痛
- ●黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- ●頭痛
- ●筋肉痛
特に黄疸はA型肝炎の特徴的な症状です。子どもの場合は症状が軽かったり、まったく症状が出ない「不顕性感染」となることも多いですが、成人や高齢者では症状が重くなる傾向があります。まれに「劇症肝炎」と呼ばれる重篤な状態に発展し、肝臓の機能が急激に失われることもあり、死亡例も報告されています。
A型肝炎が流行している地域・時期
A型肝炎は、衛生環境が十分に整備されていない発展途上国や新興国で特に多く発生します。上下水道が未整備の地域や、飲料水や食物の衛生管理が不十分な場所では、ウイルスが水や食物を介して広がりやすく、集団感染が起こることもあります。アジア、アフリカ、中南米、中東などが主な流行地域です。日本国内では、上下水道の普及や食品衛生の向上により、A型肝炎の発症例は大きく減少しています。しかし、60歳以下の日本人の多くはA型肝炎ウイルスに対する抗体を持っていないため、流行地域への渡航者や、国内でも生や加熱不十分な魚介類(特に牡蠣など)を食べたことによる散発的な感染が毎年報告されています。
A型肝炎ワクチンの接種が特に推奨されるのは、次のようなケースです。
- ●流行地域への旅行、出張、長期滞在を予定している人
- ●医療従事者や食品取扱者など、感染リスクの高い職種の人
- ●男性同性愛者や、注射器を共有する薬物使用者など、特定のリスクを持つ人
流行地域への渡航前は、余裕を持ってワクチン接種を計画しましょう。
A型肝炎ワクチンの概要
製剤の特性・概要
A型肝炎ワクチンは「不活化ワクチン」に分類されます。不活化ワクチンとは、ウイルスを細胞培養で増やした後、化学的な処理によって感染力を失わせ(=不活化)、人間の体に安全に投与できるようにしたものです。A型肝炎ワクチンは、ウイルスの抗原性(免疫を刺激する性質)は保ったまま、病気を引き起こすことはありません。日本国内で使われている主なA型肝炎ワクチンは「エイムゲン」(国産)です。海外では「HAVRIX」「VAQTA」「AVAXIM」「EPAXAL」など複数の製剤が使用されています。いずれも高い安全性と有効性が確認されています。
接種対象と推奨年齢(接種スケジュール)
日本ではA型肝炎ワクチンは「任意接種」となっており、定期接種(自治体の公費助成による接種)には含まれていません。全年齢で接種可能ですが、特に1歳以上の方に対して接種が推奨されています。WHO(世界保健機関)も1歳以上の接種を推奨しています。標準的な接種スケジュール(国産ワクチンの場合)
- ●1回目:任意の時期
- ●2回目:1回目から2~4週間後
- ●3回目:1回目から24週後(約6か月後)
この3回の接種を完了することで、5年程度有効な免疫が得られます。さらに長期の免疫維持を希望する場合は、5年ごとに追加接種(ブースター接種)が推奨されます。
海外製ワクチン(HAVRIX等)の場合
1回目の接種で1年以上の免疫が期待でき、6か月以降に2回目を追加することで、15~20年の長期免疫が得られるとされています。接種方法・注意点
A型肝炎ワクチンは、通常、上腕の筋肉内または皮下に注射します。接種後は、まれにアレルギー反応など急な副反応が起こることがあるため、30分程度は医療機関で安静にして様子を見ることが推奨されます。接種当日は入浴しても問題ありませんが、注射部位を強くこすったり、激しい運動や大量の飲酒は避けましょう。また、接種部位は清潔に保つようにしてください。
もし高熱やけいれん、呼吸困難、全身のじんましんなどの異常な症状が出た場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
他のワクチンとの同時接種の可否
A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンのため、他の不活化ワクチンや生ワクチンと同時に接種することが可能です。たとえば、B型肝炎ワクチンや破傷風ワクチン、狂犬病ワクチン、さらには黄熱ワクチンなどと同時接種ができます。ただし、同時接種を希望する場合は、医師と相談し、健康状態や過去の接種歴を考慮してスケジュールを決めましょう。接種を避けるべき人(禁忌・慎重投与)
以下のような方は、A型肝炎ワクチンの接種を避けるか、慎重に行う必要があります。- ●過去にA型肝炎ワクチンやその成分で重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある方
- ●明らかに発熱している方
- ●重篤な急性疾患にかかっている方
- ●これまでにけいれんを起こしたことがある方
- ●本人や近親者に免疫異常があると指摘されたことがある方
- ●妊婦または妊娠の可能性がある方
ワクチン接種の可否については、必ず事前に医師に相談し、必要に応じて血液検査や抗体検査を受けることも検討しましょう。

A型肝炎ワクチンの効果と安全性
ワクチンの効果(有効性)
A型肝炎ワクチンは、世界中でその高い予防効果が認められています。3回の接種を完了した場合、ほとんどの人が十分な抗体を獲得し、A型肝炎の発症をほぼ100%防ぐことができます。海外製ワクチンでは2回接種で15年以上の長期免疫が得られることも確認されており、非常に信頼性の高いワクチンです。副反応
A型肝炎ワクチンの副反応は、一般的に軽度で一時的なものがほとんどです。主な副反応は以下の通りです。- ●接種部位の赤み、腫れ、痛み
- ●だるさ
- ●発熱
- ●頭痛
- ●筋肉痛
- ●倦怠感
- ●吐き気
これらの症状は通常、数日以内に自然に治まります。重篤な副反応は非常にまれですが、アナフィラキシー(重度のアレルギー反応)などが起こる可能性もゼロではありません。接種後30分は医療機関内で安静にし、異常があればすぐに医師に申し出てください。
その他の留意点
ワクチン接種後も、基本的な衛生管理(手洗い、食品の十分な加熱など)は引き続き重要です。ワクチンによる免疫が十分にできるまでには数週間かかるため、流行地域への渡航前は早めに接種を開始しましょう。
途中で接種間隔が空いてしまっても、最初からやり直す必要はありません。不足分の接種を行えば、しっかりと免疫を獲得できます。
費用と接種の実際
接種にかかる費用
・接種料金:9,900円/回※原則、事前のワクチン確保が必要なため、完全予約制です。
国内外の接種状況(接種率や導入時期)
日本では、A型肝炎ワクチンは2013年から全年齢で接種可能となりましたが、定期接種には含まれていません。そのため、主に流行地域への渡航者や、感染リスクの高い職種の方が接種しています。一方、アメリカや一部の先進国では、A型肝炎ワクチンが小児の定期接種プログラムに組み込まれており、接種率も高い傾向にあります。これにより、これらの国々ではA型肝炎の発症率が大きく減少しています。
A型肝炎ワクチンの最新動向
研究開発や改良の動き
A型肝炎ワクチンは、既存の不活化ワクチンが高い安全性と有効性を持つため、現在大きな改良や新規開発の動きは限定的です。しかし、より長期間の免疫維持や、接種回数の簡略化、他のワクチンとの混合ワクチン開発などが、世界的な研究テーマとなっています。今後は、さらに利便性や持続性が向上したワクチンの登場が期待されています。最新の知見・ニュース
近年、A型肝炎の流行地域での大規模な集団感染(アウトブレイク)や、魚介類を介した国内での散発的な感染例が報告されています。特に国際的な渡航者の増加により、A型肝炎ワクチンの重要性が再認識されています。また、感染症対策の一環として、A型肝炎ワクチンの定期接種化を検討する動きも一部で見られます。A型肝炎ワクチンに関するよくある質問
ワクチン接種後、どれくらいで効果が出ますか?
通常、2回目の接種から2~4週間後には十分な抗体ができます。流行地域への渡航前は、最低でも2回目まで接種を済ませておくことが推奨されます。
途中で接種間隔が空いてしまいました。最初からやり直す必要はありますか?
いいえ、最初からやり直す必要はありません。不足分の接種を行えば、免疫を獲得できます。
妊娠中でも接種できますか?
妊婦または妊娠の可能性がある場合は、原則として接種を避けることが推奨されています。どうしても必要な場合は、医師とよく相談してください。
他のワクチンと同時に接種できますか?
不活化ワクチンであるため、他の不活化ワクチンや生ワクチンと同時接種が可能です。医師に相談のうえ、接種スケジュールを調整しましょう。
ワクチンを接種した後もA型肝炎にかかることはありますか?
3回の接種を完了すれば、ほぼ100%の人が十分な免疫を獲得できますが、極めてまれに免疫が不十分な場合もあります。ワクチン接種後も基本的な衛生管理は続けましょう。
ご予約から接種後の流れ
- ご予約
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- ・ワクチン仮申込フォームを入力し送信してください。 24時間以内(土日・祝日を除く)に、当院からお電話もしくはメールでご連絡を差し上げ、ご予約確定となります。 ※英文証明書をご希望の場合、来院希望日時は申込日から5日後以降の日程をご選択ください。
- ・事前に接種を希望されるワクチンの問診票を下記よりダウンロードしていただきご記入ください。
- ご来院・接種
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●お持ち物 問診票・母子手帳・接種証明書・ワクチン手帳(ある方)
- ・37.5度以上の発熱があるなどの体調不良時には予防接種を受けることができません。
- ・当院以外でも予防接種をおこなう場合は、ワクチンの接種間隔にご注意ください。
- 接種後
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- ・接種後15~30分間は体調変化の経過観察をしてください。
- ・次回のワクチン接種予定がある方は、接種計画(ワクチンの種類・スケジュール)を確認してからご帰宅ください。
- ・接種当日の激しい運動は避けてください。
- ・シャワーや入浴は可能ですが、長風呂は避けてください。
- ・1週間以内に接種部位が赤くなったり痛みが出たりなど、何らかの副反応が生じる場合がありますが、ほとんどの場合は数日以内に自然に軽快します。 日常生活に支障をきたすような症状がある場合、気になる症状がある場合は、当院までお問い合わせください。
注意事項 ※必ず事前にご確認ください。
- ●初回は必ずワクチン仮申込フォームでの事前お申し込みが必要です。 下記「ワクチン仮申込フォーム」をご入力ください。
- ●原則、事前のワクチン確保が必要なため、完全予約制です。 当日の接種をご希望の場合は事前に当院へご連絡ください。
- ●英文証明書をご希望の場合、事前に当院での対応可否を確認しております。 ワクチン仮申込フォームより英文接種証明書をご希望いただき、別途事前にFAXにて記載箇所を明示の上ご送付ください。
- ●証明書は発行までに数日程度お時間をいただく場合もございますのでスケジュールに余裕をもってお問い合わせください。
- ●無断キャンセルはキャンセル料を頂く場合がございますので、予約のご変更はお早めにお電話くださいませ。
- ●中学生以下の方の接種は、小児科医不在のためお断りしております。
- ●高校生~未成年(20歳未満)の方の接種には保護者同席をお願いしております。
問診票について
予防接種時には問診票の記入が必要です。事前に下記より問診票をダウンロードし、ご記入の上お持ちいただくと当日スムーズにご案内可能です。
(当日の状況次第では、お待ち時間が発生する可能性がございます。)
未成年の方の予防接種には、保護者の方の同意が必要です。
保護者の方が予防接種時に付き添えない場合には、事前に問診票をダウンロードしていただき、保護者の方のサインをご記入の上ご持参くださいませ。
医師問診の際に、保護者の方にオンラインでお繋ぎいただくことによって未成年の方は予防接種可能となります。
※医師の判断により、予防接種を中止することがございます。
あらかじめご了承ください。
各種証明書
証明書の種類と料金
証明書の種類 | 料金 |
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当院書式【日本語】 | 3,300円(税込) |
予診票コピー【日本語】 | ― |
領収書【日本語】 | ― |
当院書式【英語】 | 5,500円(税込) |
当院以外の指定書式【英語※事前相談必須】 | 5,500円(税込) |
「国際基準」のワクチン接種記録手帳

当院で接種されたワクチンについては、WHO(国際保健機構)の手帳に記載いたします。 1冊あたり3,300円(税込)です。
A型肝炎についての詳しくはこちら
詳しくはこちら各院の診療時間・アクセスは
下記よりご確認ください。