急性腹痛の原因は?急な腹痛で吐き気や冷や汗が止まらないときの対処法

  • クリニックブログ
2025/02/06

急性腹痛の原因は?急な腹痛で吐き気や冷や汗が止まらないときの対処法

 

 

突然襲ってくる激しい腹痛は、誰もが経験したことのある辛い症状です。特に吐き気や冷や汗を伴う場合は不安も大きく、適切な対処が必要です。
 
本記事では、急性腹痛の主な原因と、症状が重い場合の対処法について解説していきます。緊急性の判断基準や、すぐに病院を受診すべき警告サインについても詳しく触れていきますので、ぜひ参考にしてください。

 
 

急性腹痛とは

急性腹痛とは、突然発症する強い腹部の痛みを指す症状です。通常、発症から24時間以内の比較的短時間で激しい痛みが現れるのが特徴で、その性質は鈍痛から刺すような痛みまでさまざまです。腹痛の部位や性状は原因疾患によって異なり、消化器系の問題だけでなく、泌尿器系や婦人科系の疾患が原因となることもあります。
 
また、吐き気や嘔吐、発熱、下痢などの随伴症状を伴うことが多く、これらの症状の組み合わせは診断の重要な手がかりとなります。中には虫垂炎や腸閉塞など、早急な治療が必要な重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、症状が強い場合や持続する場合は、迅速な医療機関の受診が推奨されます。
 
 

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急性腹痛の原因になる症状

急性腹痛は、その原因が非常に多岐にわたるため、自己診断は危険です。必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
 

急性膵炎

急性膵炎は、膵臓に突然の炎症が生じる深刻な疾患です。主な原因はアルコールの過剰摂取や胆石であり、上腹部に激しい痛みが出現するのが特徴です。この痛みは背中に放散することが多く、しばしば帯状に広がります。
 
また、急性膵炎では強い吐き気や嘔吐を伴い、症状が重症化すると発熱や血圧低下、ショック状態に陥る可能性もあります。早期発見・早期治療が重要で、適切な治療が行われないと命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、これらの症状が出現した場合は直ちに医療機関を受診する必要があります。
 

慢性膵炎

慢性膵炎は、膵臓の炎症が長期間持続し、膵臓の組織が徐々に破壊されていく進行性の疾患です。日常的な飲酒や喫煙、遺伝的要因などが原因となり、急性の激しい腹痛発作を引き起こすことがあります。
 
特徴的な症状として、上腹部の持続的な痛みや背部への放散痛が見られ、食事による痛みの増悪や、消化不良、体重減少なども伴います。進行すると膵臓の内分泌・外分泌機能が低下し、糖尿病や脂肪の消化吸収障害などの合併症を引き起こす可能性があります。
 

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる原因不明の慢性炎症性腸疾患です。主な症状として、急性の腹痛に加えて、血便や下痢、発熱などが特徴的です。通常、直腸から連続的に炎症が広がり、ストレスや食事などの環境因子により症状が悪化することがあります。
 
炎症が重症化すると、激しい腹痛とともに頻回の下痢や出血が起こり、緊急の治療を要することもあります。20〜30代の若年層での発症が多く、長期的な経過観察と適切な治療管理が必要な疾患です。
 

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腸の運動や感覚が過敏になることで引き起こされる機能性消化管障害です。ストレスや食事の影響を受けやすく、腹痛や腹部不快感、便通異常(下痢や便秘)を主な症状とします。特徴的なのは、器質的な異常が見られないにもかかわらず症状が出現することで、食後や精神的なストレスで症状が悪化することが多いです。
 
また、腹痛は排便により軽減されることが多く、朝方に症状が強くなる傾向があります。慢性的な経過をたどりますが、生命に関わる重大な疾患ではないことが特徴です。
 

尿路結石

尿路結石による急性腹痛は、腎臓で形成された結石が尿管内を移動する際に引き起こされる激しい痛みを特徴とします。痛みは腰背部から始まり、わき腹から下腹部に放散することが多く、その強さから「結石痛」や「疝痛」と呼ばれています。多くの場合、突然の激痛として現れ、患者は落ち着きを失うほどの痛みに苦しみます。
 
随伴症状として血尿や頻尿、吐き気を伴うことが多く、特に痛みのために同じ体勢でじっとしていられない様子が特徴的です。水分摂取不足や高カルシウム食の過剰摂取などが発症リスクを高める要因となります。
 

大腸がん

大腸がんは急性腹痛の重要な原因の一つとして知られています。特に進行した大腸がんでは、腫瘍による腸管の狭窄や閉塞が起こり、突然の激しい腹痛を引き起こすことがあります。この場合、腹痛に加えて、吐き気や嘔吐、便秘や腹部膨満感といった症状を伴うことが多く、時には腸閉塞として緊急手術が必要になることもあります。
 
また、がんが腸管壁を貫通して穿孔を起こすと、急性腹膜炎を引き起こし、より重篤な急性腹痛の原因となります。そのため、特に40歳以上の方で原因不明の急性腹痛がある場合は、大腸がんの可能性も考慮する必要があります。
 

小腸がん

小腸がんは急性腹痛の原因となりうる重要な疾患の一つです。特に腫瘍が成長して腸管を狭窄したり閉塞したりすることで、突然の激しい腹痛を引き起こす可能性があります。小腸がんによる腹痛は、食後に増強する傾向があり、腹部膨満感や嘔吐を伴うことが特徴的です。
 
また、慢性的な出血により貧血を引き起こすことも多く、それに伴う疲労感やめまいなどの症状が現れることもあります。早期発見が難しい疾患ですが、原因不明の腹痛や貧血が続く場合は、小腸がんの可能性も考慮して精密検査を受けることが重要です。
 

膵臓がん

膵臓がんは急性腹痛の重要な原因の一つとして知られています。特徴的な症状として、上腹部から背中にかけての持続的な痛みが挙げられ、食事をすると痛みが増強することがあります。
 
また、膵臓がんが胆管を圧迫することで黄疸を引き起こしたり、膵臓の機能が低下することで消化不良や急激な体重減少が生じたりすることもあります。初期は症状が乏しいため発見が遅れやすく、腹痛が現れた時点ですでに進行している可能性があります。そのため、原因不明の持続する腹痛がある場合は、早めに専門医による精密検査を受けることが重要です。
 

食中毒

食中毒は急性腹痛の代表的な原因の一つです。汚染された食品に含まれる細菌やウイルス、寄生虫などが体内に入ることで発症し、通常は食事をしてから数時間から24時間以内に症状が現れます。主な症状として、激しい腹痛に加えて、吐き気、嘔吐、下痢、発熱が見られ、特に嘔吐と下痢による脱水症状には注意が必要です。
 
原因となる病原体の種類によって潜伏期間や症状の程度は異なりますが、多くの場合は適切な水分補給と安静により数日で回復します。ただし、高齢者や子供、持病のある方は重症化するリスクが高いため、早めの受診が推奨されます。
 

狭心症

狭心症は一般的に胸痛を主症状とする心臓の病気として知られていますが、急性腹痛の原因となることもあります。特に高齢者や糖尿病患者では、典型的な胸痛ではなく、上腹部の痛みとして症状が現れることがあります。この場合、消化器系の症状と誤認されやすく、冷や汗、吐き気、左肩や背中への放散痛を伴うことが特徴です。
 
また、食後や運動時に症状が悪化し、安静にすると改善する傾向があります。狭心症による腹痛は心臓の重大な異常のサインである可能性があるため、このような症状がある場合は、早急に専門医による診察を受けることが重要です。
 
 

急な腹痛で病院に行くか迷ったときの判断のポイント

急な腹痛は、様々な病気のサインである可能性があります。いつ病院を受診すべきか迷うこともあるでしょう。以下に当てはまる場合は、受診を検討してみましょう。
 

重度の痛みがある

我慢できないほどの強い痛みや、これまでに経験したことのないような激しい痛みがある場合は、重大な疾患の可能性があります。特に痛みが急激に始まり、持続的に続く場合や、痛みの強さが徐々に増していく場合は要注意です。鎮痛薬を使用しても改善しない場合は、早急な受診が必要です。
 

ショックの徴候がある

冷や汗、顔面蒼白、めまい、意識がもうろうとする、手足が冷たい、脈が速くて弱いなどの症状がある場合は、ショック状態の可能性があります。これは体内出血や重度の感染症など、生命に関わる重大な状態を示唆する可能性があるため、即座に救急車を呼ぶべき状況です。
 

腹膜炎の徴候がある

腹部全体の強い痛みに加えて、腹部を軽く触れただけでも痛みを感じる(圧痛)、急に腹部の力を抜いたときに痛む(跳ね返り痛)、体を動かすと痛みが増強するなどの症状がある場合は、腹膜炎の可能性があります。これは緊急手術が必要となる可能性が高い状態です。
 
 

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腹部に腫れがある

腹部が膨らんで硬くなっている、腹部の一部が異常に膨らんでいる、またはヘルニアのような膨らみがある場合は、腸閉塞や臓器の破裂など、緊急性の高い状態の可能性があります。特に痛みを伴う腫れや、急激に現れた腫れは危険信号です。また、おへその周りが膨らんでいる場合は、腹水貯留の可能性もあり、重大な肝臓や心臓の疾患を示唆することがあります。
 
 

吐き気・冷や汗が出るときの対処法

 

 

腹痛で吐き気や冷や汗が出る場合、まずは安静にすることが重要です。横になる際は、体をやや右に向けて膝を軽く曲げた体勢を取り、腹部を圧迫しないようにします。水分は少量ずつ摂取し、急激な脱水を防ぎます。また、体を冷やさないよう毛布などで保温することも大切です。
 
ただし、このような症状は重大な疾患のサインである可能性があるため、症状が30分以上続く場合や、痛みが強くなる場合は、我慢せずに速やかに医療機関を受診することをお勧めします。特に高齢者や基礎疾患がある方は、より慎重な判断が必要です。
 
 

まとめ

急性腹痛は、その原因が多岐にわたり、時として生命に関わる重篤な疾患のサインとなることがあります。特に吐き気や冷や汗を伴う場合は要注意です。本記事で解説した症状や判断のポイントを参考に、我慢せずに適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。腹痛は誰にでも起こりうる症状ですが、その背景にある疾患を見逃さないよう、自己判断は避け、専門家による適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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