
急性腹痛の原因は?急な腹痛で吐き気や冷や汗が止まらないときの対処法
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急性腹痛の原因は?急な腹痛で吐き気や冷や汗が止まらないときの対処法
突然襲ってくる激しい腹痛は、誰もが経験したことのある辛い症状です。特に吐き気や冷や汗を伴う場合は不安も大きく、適切な対処が必要です。
本記事では、急性腹痛の主な原因と、症状が重い場合の対処法について解説していきます。緊急性の判断基準や、すぐに病院を受診すべき警告サインについても詳しく触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
急性腹痛とは
急性腹痛とは、突然発症する強い腹部の痛みを指す症状です。通常、発症から24時間以内の比較的短時間で激しい痛みが現れるのが特徴で、その性質は鈍痛から刺すような痛みまでさまざまです。腹痛の部位や性状は原因疾患によって異なり、消化器系の問題だけでなく、泌尿器系や婦人科系の疾患が原因となることもあります。
また、吐き気や嘔吐、発熱、下痢などの随伴症状を伴うことが多く、これらの症状の組み合わせは診断の重要な手がかりとなります。中には虫垂炎や腸閉塞など、早急な治療が必要な重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、症状が強い場合や持続する場合は、迅速な医療機関の受診が推奨されます。
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急性腹痛の原因になる症状
急性腹痛は、その原因が非常に多岐にわたるため、自己診断は危険です。必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
虫垂炎(盲腸)
虫垂炎は、腹痛の原因として最も頻度が高く、特に10代〜40代の方に多く見られる疾患です。初期にはへその周囲やみぞおち付近に鈍い痛みを感じ、時間の経過とともに右下腹部へと痛みが移動するのが特徴です。
進行すると発熱、吐き気、食欲不振などを伴い、放置すると虫垂が破裂し腹膜炎へ進展する可能性があります。早期に診断し、抗菌薬の投与や手術による切除が行われることが一般的です。違和感を覚えた時点での早期受診がとても重要です。
胆嚢炎(胆石性胆嚢炎)
胆嚢炎は、胆石が胆嚢の出口を塞ぐことなどにより、胆嚢内に炎症が生じる疾患です。右上腹部から背中にかけて強い痛みが生じることが多く、悪寒や発熱、吐き気を伴う場合があります。とくに脂っこい食事の後に痛みが強まる傾向があり、高齢者や糖尿病患者では重症化しやすい点にも注意が必要です。
診断には超音波検査や血液検査が用いられ、軽症であれば点滴と抗菌薬による治療、重症であれば緊急手術が検討されます。
尿路結石
尿路結石は、腎臓や尿管、膀胱などの尿路にできた石が排出される際に尿の流れを妨げ、激しい痛みを引き起こす疾患です。痛みは突然発症し、腰背部から下腹部、外陰部にかけて移動することが多いです。痛みの程度は非常に強く、じっとしていられないほどの場合もあります。加えて、血尿や頻尿、排尿時の痛みを伴うことがあります。
診断にはCTや超音波検査が用いられ、水分摂取や薬物療法で自然排石を促すほか、大きな結石には手術が必要となることもあります。
感染性腸炎
感染性腸炎は、ウイルスや細菌による消化管感染症で、腹痛・下痢・発熱・嘔吐などの症状を引き起こします。因となる微生物にはノロウイルスやロタウイルス、カンピロバクター、サルモネラ菌などがあり、感染経路としては汚染された飲食物の摂取が多く見られます。
症状は数日で自然に改善することが多いものの、高齢者や小児、持病のある方では脱水や重症化に注意が必要です。十分な水分補給と安静が基本ですが、重症例では抗菌薬や点滴による治療が必要となることもあります。
婦人科系疾患
女性特有の腹痛として、卵巣出血、卵巣嚢腫の捻転、子宮外妊娠などがあげられます。排卵期に起こる一時的な卵巣出血は軽症で自然に治ることが多いですが、卵巣がねじれてしまう「捻転」や、受精卵が子宮外に着床する「子宮外妊娠」などは、急激な下腹部痛や吐き気、不正出血を伴い、緊急手術が必要となるケースもあります。
月経周期や妊娠の可能性を踏まえた診断が重要で、婦人科での精密検査(超音波など)が求められます。
急な腹痛で病院に行くか迷ったときの判断のポイント
急な腹痛は、様々な病気のサインである可能性があります。いつ病院を受診すべきか迷うこともあるでしょう。以下に当てはまる場合は、受診を検討してみましょう。
重度の痛みがある
我慢できないほどの強い痛みや、これまでに経験したことのないような激しい痛みがある場合は、重大な疾患の可能性があります。特に痛みが急激に始まり、持続的に続く場合や、痛みの強さが徐々に増していく場合は要注意です。鎮痛薬を使用しても改善しない場合は、早急な受診が必要です。
ショックの徴候がある
冷や汗、顔面蒼白、めまい、意識がもうろうとする、手足が冷たい、脈が速くて弱いなどの症状がある場合は、ショック状態の可能性があります。これは体内出血や重度の感染症など、生命に関わる重大な状態を示唆する可能性があるため、即座に救急車を呼ぶべき状況です。
腹膜炎の徴候がある
腹部全体の強い痛みに加えて、腹部を軽く触れただけでも痛みを感じる(圧痛)、急に腹部の力を抜いたときに痛む(跳ね返り痛)、体を動かすと痛みが増強するなどの症状がある場合は、腹膜炎の可能性があります。これは緊急手術が必要となる可能性が高い状態です。
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腹部に腫れがある
腹部が膨らんで硬くなっている、腹部の一部が異常に膨らんでいる、またはヘルニアのような膨らみがある場合は、腸閉塞や臓器の破裂など、緊急性の高い状態の可能性があります。特に痛みを伴う腫れや、急激に現れた腫れは危険信号です。また、おへその周りが膨らんでいる場合は、腹水貯留の可能性もあり、重大な肝臓や心臓の疾患を示唆することがあります。
吐き気・冷や汗が出るときの対処法
腹痛で吐き気や冷や汗が出る場合、まずは安静にすることが重要です。横になる際は、体をやや右に向けて膝を軽く曲げた体勢を取り、腹部を圧迫しないようにします。水分は少量ずつ摂取し、急激な脱水を防ぎます。また、体を冷やさないよう毛布などで保温することも大切です。
ただし、このような症状は重大な疾患のサインである可能性があるため、症状が30分以上続く場合や、痛みが強くなる場合は、我慢せずに速やかに医療機関を受診することをお勧めします。特に高齢者や基礎疾患がある方は、より慎重な判断が必要です。
まとめ
急性腹痛は、その原因が多岐にわたり、時として生命に関わる重篤な疾患のサインとなることがあります。特に吐き気や冷や汗を伴う場合は要注意です。本記事で解説した症状や判断のポイントを参考に、我慢せずに適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。腹痛は誰にでも起こりうる症状ですが、その背景にある疾患を見逃さないよう、自己判断は避け、専門家による適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師