
便が細いのは便秘だけじゃない?大腸がんや切れ痔の可能性も
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便が細いのは便秘だけじゃない?大腸がんや切れ痔の可能性も
最近、便が細くなった気がする……、そんな違和感をおぼえたことはありませんか?便が細くなる原因は、単なる便秘だけではありません。大腸がんや切れ痔など、重大な病気のサインかもしれないのです。
実は便の太さは、私たちの健康状態を映し出す重要なバロメーターであり、普段は気にしていなくても、いつもと違う変化を感じた時は要注意です。
本記事では、便が細くなる原因や考えられる疾患、受診のタイミングまで、医師監修のもと詳しく解説します。早期発見・早期治療につながる大切な知識を得ることで、あなたの不安を解消し、適切な判断ができるようになりましょう。
便が細くなる仕組み
便が細くなる原因には、腸内環境や肛門の物理的な問題などが関与している可能性があります。特に健康的な便の形状と比較することで、その異常が際立ちます。以下では、便の正常な太さと細くなるメカニズムについて詳しく解説します。
正常な便の太さとは
健康な人の便は、水分量が70~80%で、適度な柔らかさを保った「バナナ型」が理想的とされています。人間の大腸は直径が3~4センチメートルほどあるため、健康な状態では便もその太さに準じた形で排出されます。
色は黄味がかっているほど腸内の善玉菌が多いことを示し、においもそれほど強くありません。これは腸内環境が良好な状態にあることを表しています。逆に、生活習慣の乱れやストレス、何らかの疾患がある場合は、便の色が黒くなったり、強い悪臭を放ったりすることがあります。
便が細くなるメカニズム
便が細くなる主な原因は、大きく分けて3つのメカニズムが考えられます。
1つ目は、腸の一部が狭くなることで、そこを通過する便も細くなるケースです。大腸がんや大腸ポリープなどが発生すると、腸管が狭窄し、便の通り道が制限されます。特に血便を伴う場合は要注意です。
2つ目は、便がやわらかすぎる状態です。下痢までは至らなくても、便が柔らかいと排便時に肛門が十分に開かず、結果として細い便となります。
3つ目は、肛門自体が狭くなっている場合です。主な原因として切れ痔が挙げられ、特に排便時や排便後の痛みを伴う場合は注意が必要です。
便が細い原因
便が細くなる原因には、腸内の疾患や肛門の物理的な要因など、さまざまな背景が考えられます。良性の原因から注意が必要な病気まで、それぞれの可能性を詳しく解説します。
良性の原因
細い便が出ることには、比較的軽度で治療可能な原因もあります。以下では、便秘や痔核(いぼ痔)、肛門周囲の炎症がどのように便の形状に影響を与えるかを解説します。
便秘
加齢による食欲低下や過度なダイエットにより食事量が減ると、腸の動きが鈍くなります。その結果、消化物が腸内をゆっくりと通過する間に水分が過剰に吸収され、細くて硬い便になることがあります。
また、腹筋や腸周りの筋力が低下している場合も、便が細くなりやすく、排便後も残便感が残ることがあります。更年期の女性は、エストロゲンの分泌低下により自律神経が乱れ、腸の機能が低下することで便秘になりやすい傾向があります。
痔核(いぼ痔)
肛門の血管が腫れることで便の通り道が狭くなり、結果として便が細くなることがあります。痔核がある場合、出血や痛み、かゆみ、粘液の分泌などの症状を伴うことがあります。
特に排便時の痛みや出血が気になる場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
肛門周囲の炎症
切れ痔(裂肛)などで肛門付近の皮膚が炎症を起こすと、肛門が狭くなることがあります。特に慢性的な切れ痔の場合、傷が治るたびに肛門がわずかに縮むため、徐々に便が細くなっていきます。
出血は少量でも、排便時や排便後に痛みがある場合は注意が必要です。重症化すると1cm以下の便でも排便が困難になる可能性があり、その場合は手術が必要となることもあります。
要注意な原因
以下の症状が見られる場合は、重大な病気の可能性があります。早期発見・早期治療が重要となりますので、症状が続く場合は必ず医療機関を受診しましょう。
大腸がん
大腸がんが進行すると、腸管が狭くなることで便が細くなります。特に、頻繁に便が細くなったり血便が見られたりする場合は、大腸がんの可能性を疑う必要があります。
腸管の狭窄により、便が自然とやわらかくなることもあります。初期の大腸がんは自覚症状が少ないため、40歳以降は定期的な大腸検査を受けることが推奨されています。
大腸がんについてはこちら
直腸がん
直腸がんは腸の末端部分にできるがんで、便が通過する直前の部分が狭くなるため、特に便が細くなりやすい特徴があります。症状として、頻繁な便意、残便感、血便などが現れることがあります。
直腸は骨盤内の深い位置にあり、周囲には重要な臓器や神経が存在するため、早期発見・早期治療が特に重要です。
その他の腸の病気
過敏性腸症候群では、下痢と便秘を繰り返すことで便が細くなることがあります。また、潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に炎症が起きて潰瘍ができ、それにより便が細くなる場合があります。
炎症性腸疾患の場合、腹痛や血便などの症状を伴うことが多く、近年日本でも患者数が増加傾向にあります。いずれの場合も、適切な診断と治療が必要となるため、症状が続く場合は消化器専門医への相談をお勧めします。
腸閉塞についてはこちら
気をつけるべき症状
便が細くなる症状があるとき、どのような場合に医療機関を受診すべきか、また様子を見ても大丈夫な場合について解説します。症状の程度や持続期間によって対応が異なりますので、適切な判断ができるよう、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
すぐに受診が必要なケース
便が細い状態が継続的に続く場合は、重大な病気のサインである可能性があるため、医療機関への受診をおすすめします。特に以下の症状が併せて出現する場合は要注意です。
- ●残便感が続く
- ●便秘や下痢が繰り返し起こる
- ●血便が見られる
- ●お腹が張る感じがする
- ●腹痛がある
- ●体重が減少している
40歳以上の方は大腸がんのリスクが高まる年代であり、これらの症状がある場合は特に早めの受診が推奨されます。大腸がんは早期発見・早期治療が重要な疾患のため、定期的な検査も重要です。
経過観察でよい場合
一時的に便が細くなることは珍しくありません。以下のような場合は、しばらく様子を見ても問題ありません。
- ●便が一時的に柔らかくなっている
- ●次の日には通常の太さに戻る
- ●他の不快な症状を伴わない
- ●一過性の下痢症状による場合
ただし、生活習慣の改善(十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動など)を行っても症状が改善されない場合や、不安が強い場合は、医療機関への相談をお勧めします。心配な時は、早めに専門医に相談することで、適切な診断と対応を受けることができます。
対処法と予防
便が細くなる症状を改善し、予防するためには、日々の生活習慣の見直しが重要です。ここでは、効果的な対処法と予防のポイントについて解説していきます。
生活習慣の改善ポイント
規則正しい生活を送ることで、便の状態を改善することができます。食生活では、食物繊維を豊富に含む野菜、果物、海藻類、きのこ類を積極的に摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。また、十分な水分摂取も大切です。
適度な運動は腸の蠕動運動を促進するため、毎日30分程度のウォーキングなどを習慣にすることをお勧めします。さらに、便意を感じたら我慢せずトイレに行き、毎日同じ時間帯に排便習慣をつけることも効果的です。
予防のための注意点
便の太さは健康状態を知る重要な指標となります。予防のためには、以下の点に注意が必要です。
- ●ストレスをためない生活を心がける
- ●十分な睡眠時間を確保する
- ●喫煙を控え、過度な飲酒を避ける
- ●食事の時間を規則正しくする
- ●運動不足を解消する
特に40歳以上の方は、年に1回は大腸がん検診を受けることをお勧めします。早期発見・早期治療が可能となり、より良い治療成績につながります。
まとめ
便が細くなる症状は、単なる便秘だけでなく、様々な原因が考えられます。一時的なものであれば生活習慣の改善で対応できますが、症状が継続する場合は重大な病気のサインかもしれません。
特に、血便や腹痛を伴う場合、便秘と下痢を繰り返す場合、残便感が続く場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。日頃から便の状態を観察し、異変を感じたら適切な対応を取ることで、健康な腸内環境を維持することができます。
定期的な検査と適切な生活習慣の維持が、健康な排便状態を保つ鍵となります。不安な症状がある場合は、ためらわずに消化器専門医に相談することをおすすめします。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師