CVポートとは? 抗がん剤治療における役割とメリット

  • クリニックブログ
2025/01/10

CVポートとは? 抗がん剤治療における役割とメリット

「抗がん剤の点滴で、毎回血管を探すのが大変……」「静脈が細くて、何度も刺し直されるのが怖い……」、そんな不安や痛みを抱えていませんか?実は、こうした悩みを解決してくれる「CVポート」という医療機器があります。
 
CVポートは、皮下に埋め込む小さなポートから太い血管に薬剤を届ける、安全で痛みの少ない治療法です。血管へのダメージを軽減しながら、確実な投薬を可能にするため、長期の抗がん剤治療をサポートしてくれます。この記事では、CVポートの仕組みやメリット、実際の使用感について詳しく解説します。不安なく治療に専念できる方法を、一緒に見つけていきましょう。

 
 

CVポートとは?安全な留置・穿刺・管理について

抗がん剤治療を受ける患者さんにとって、CVポートは非常に有用な医療機器です。しかし、その役割を理解し正しく管理することが重要です。ここでは、CVポートの基本的な用途や、利用対象となる方について詳しく解説します。
 

CVポートとは?その用途は?

CVポートは、皮下に埋め込まれる医療機器で、抗がん剤や高カロリー輸液を安全に投与するために使用されます。
 
主に、点滴の頻度が高い治療や長期にわたる治療が必要な場合に活躍します。この機器は、カテーテルを通じて中心静脈に直接薬剤を届ける仕組みになっており、従来の末梢静脈からの点滴に比べ、血管への負担が軽減されます。
 
例えば、末梢静脈では刺激の強い薬剤による血管炎や痛みが生じることがありますが、CVポートはこれらのリスクを低減します。さらに、治療中に腕を動かせる自由度が高まり、生活の質が向上するのも特長です。
 

CVポートの利用対象となる人

CVポートの利用対象は、頻繁な点滴や長期にわたる抗がん剤治療が必要な患者さんです。具体的には、末梢静脈への針刺しが困難な方や、血管が細くて脆弱な方に適しています。
 
また、在宅療養で高カロリー輸液が必要な方や、抗がん剤の刺激性が高く、静脈炎を起こしやすい場合にも推奨されます。このように、CVポートは患者の治療負担を軽減し、医療現場でも使用が広がっています。
 
ただし、挿入には小さな手術が必要であり、医師と十分な相談の上で導入を検討することが重要です。
 
 

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CVポートのメリットとデメリット

CVポートは抗がん剤治療における重要な役割を果たす一方で、患者さんが抱える不安や課題も存在します。ここでは、CVポートを利用することで得られるメリットと、それに伴うデメリットについてバランスよく説明します。それぞれの特徴を理解し、自分にとって適切な治療方法を選択するための参考にしてください。
 

CVポートを利用するメリット

CVポートの最大の利点は、確実で安全な投薬が可能になることです。セプタムと呼ばれる広い注入口により、1回で確実に針を刺すことができ、何度も刺し直す必要がありません。
 
また、カテーテルの先端が太い血管に留置されているため、刺激性の強い抗がん剤でも静脈炎を起こしにくく、血管外漏出のリスクも低減できます。日常生活への影響も最小限で、両腕を自由に動かすことができ、入浴も可能です。
 
さらに、長期間の使用が可能で、在宅での治療にも対応できるため、生活の質を維持しながら治療を継続できます。採血や造影剤注入にも使用でき、適切な管理により年単位での使用が可能です。
 

CVポートを利用するデメリットと課題

CVポートの使用には、いくつかの課題や注意点があります。まず、体内に埋め込むための小手術が必要となります。通常は局所麻酔で30分から1時間程度で終わりますが、手術に伴う合併症のリスクがあります。
 
具体的には、カテーテル挿入時の出血や、まれに肺への穿刺による気胸、感染などが報告されています。また、長期使用に伴う合併症として、ポートの詰まりを防ぐために定期的な生理食塩水の注入が必要です。非常にまれですが、カテーテルの破損や血管内での断裂といった事例も報告されています。
 
また、体内に異物を埋め込むことへの精神的な不安を感じる方もいらっしゃいます。
 

CVポートの構造

CVポートは精密に設計された医療機器であり、その構造を理解することは、安全な使用と管理において重要です。ここでは、ポート本体とカテーテルという2つの主要な部分について、その役割と特徴を詳しく解説していきます。
 
それぞれの部分がどのように機能し、安全な投薬を実現しているのか、わかりやすく説明していきましょう。
 

ポート部分の詳細

CVポートのポート部分は、直径2~3センチメートルの小型円盤状の本体で、薬剤を注入するための重要な役割を担っています。ポートの中心部には「セプタム」と呼ばれる特殊なシリコーンゴムが設置されており、ここに専用のヒューバー針を刺して薬剤を投与します。
 
セプタムは高度な耐久性を備えており、約2000回もの穿刺に耐えられるよう設計されています。注入された薬剤は、ポート内部のタンクを通ってカテーテルへと流れていく仕組みになっています。このポート部分は完全に皮下に埋め込まれるため、外見上もほとんど目立たず、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
 

カテーテル部分の構造

CVポートに接続されるカテーテルは、心臓付近の中心静脈に留置される柔軟なチューブです。このカテーテルを通じて薬剤が血管内に送られる仕組みになっています。一般的に使用されるカテーテル素材は、シリコーンやポリウレタンで、これらは長期間の体内留置に耐えられるように設計されています。
 
また、カテーテルの先端は血液の逆流を防ぐバルブ機能を備えている場合もあり、安全性が高められています。この構造により、刺激の強い薬剤を投与しても静脈炎などのリスクを軽減し、治療中の快適性を向上させることが可能です。さらに、適切な管理を行えば、長期間にわたり使用できる点も特徴の一つです。
 

CVポートの留置方法

CVポートは、患者の生活の質を向上させるために開発された医療機器ですが、留置にあたっては慎重な計画と適切な技術が必要です。留置部位の選定から手術手順まで、それぞれの段階で患者にとって最適な選択を行うことが重要です。以下で、留置部位の選定と手術の具体的な手順について詳しく説明します。
 

CVポートの留置部位の選定

CVポートの留置部位は、主に前胸部、上腕、場合によっては腹部が選択されます。カテーテルの血管挿入部位としては、鎖骨下静脈、内頸静脈、上腕静脈が一般的です。
 
それぞれの部位には特徴があり、鎖骨下静脈からの挿入は目立ちにくく皮下トンネルが短いメリットがありますが、カテーテル破損のリスクがあります。内頸静脈からの挿入は肺穿刺のリスクが低いものの、皮下トンネルが長くなります。
 
上腕静脈からの挿入は、肺穿刺のリスクがなく、穿刺時に胸部を露出する必要がないという利点がありますが、腕の動きによりカテーテルの位置がずれやすいという特徴があります。
 

CVポートの留置手術の手順

CVポートの留置手術は、通常30分から1時間程度で終了する比較的短時間の処置です。手術は局所麻酔で行われ、レントゲン透視や超音波診断装置を使用してカテーテルの位置を確認しながら慎重に進められます。
 
皮膚に3~4センチメートル程度の切開を加え、選択した静脈からカテーテルを挿入し、その先端を上大静脈に留置します。その後、ポート本体を皮下に埋め込み、カテーテルと接続して固定します。傷口は縫合され、一週間程度で抜糸が可能です。
 
手術の侵襲は比較的小さく、日帰りや1泊2日の短期入院で実施可能です。傷口が閉じれば、入浴や軽い運動も可能となります。
 
 

CVポートへのヒューバー針による薬剤投与手順

CVポートを安全に使用するためには、正確な手順に従って薬剤を投与することが重要です。ここでは、医療現場で実践されている標準的な投与手順を、準備から後処置まで詳しく解説していきます。適切な手技を理解することで、より安全で確実な投与が可能となります。
 

1.必要な物品の用意

薬剤投与を安全に行うために、以下の物品を事前に準備します。
 

  • ●消毒薬
  • ●ヒューバー針
  • ●清潔な手袋
  • ●生理食塩液
  • ●10mL以上のシリンジ(2本)
  • ●透明フィルムドレッシング
  • ●サージカルテープ

 
これらの物品は、清潔な環境で準備し、使用直前まで滅菌状態を保つことが重要です。
 

2.手洗いと手袋の着用

感染予防の観点から、CVポートへの穿刺前には適切な手指衛生が不可欠です。標準的な手洗い手順に従い、手指を清潔に保ちます。その後、清潔な手袋を装着します。この工程は感染リスクを最小限に抑えるための重要なステップとなります。
 

3.CVポート周囲の観察

投与前には、以下の点について慎重に観察を行います。
 

  • ●留置部位の出血や異常がないか
  • ●皮膚の発赤、腫脹、疼痛の有無
  • ●皮膚の清潔状態
  • ●薬液注入に支障をきたす要因の有無

 
これらの確認により、安全な投与が可能か判断します。
 

4.ポート周囲の消毒と穿刺

消毒は、CVポートの中心部から外側に向かって円を描くように行います。アルコールを含んだ0.5%以上のクロルヘキシジンの使用が推奨されています。
 
穿刺時は、皮膚を軽く張り、ポートが動かないよう固定してから、ヒューバー針をポート底部に当たるまでゆっくりと垂直に刺入します。同じ箇所への繰り返し穿刺は避けることが大切です。
 

5.通路確認

10mL以上のシリンジを用いて生理食塩液を注入し、以下の点を確認します。
 

  • ●注入時の抵抗の有無
  • ●穿刺部周辺の腫れや痛みの有無
  • ●薬液の適切な流れ

 
必要に応じて逆血確認も実施しますが、その場合は必ず20mL以上の生理食塩液でフラッシュを行います。
 

6.ヒューバー針の固定方法

確実な固定により、針の抜けや位置ずれを防止します。透明フィルムドレッシングを用いて固定し、必要に応じてガーゼで高さを調整します。固定後は、針の動きがないことを確認し、患者の体動に支障がないよう配慮します。
 

7.投与後のヒューバー針の取り外し

投与終了後は、ポートをしっかりと押さえながら、ヒューバー針をまっすぐ一気に引き抜きます。針刺し事故を防ぐため、抜針時の反動に注意が必要です。カテーテル先端にスリットバルブがある場合は、血液の逆流を防ぐ効果が期待できます。
 

8.消毒と創部のケア

抜針後は穿刺部周辺を再度消毒し、必要に応じて絆創膏を貼付します。出血がある場合は適切に圧迫止血を行います。この段階で異常がないことを確認し、次回の使用に備えて穿刺部の状態を記録しておくことが推奨されます。
 
 

CVポートの管理方法

CVポートを安全に長期使用するためには、適切な管理が不可欠です。日常的な観察から定期的なメンテナンスまで、医療スタッフと患者さんが協力して行う管理のポイントについて、実践的な内容をご紹介します。
 

CVポートの看護における重要ポイント

CVポートの安全な使用には、定期的な観察とケアが重要です。特に注意が必要なのは穿刺部周囲の状態で、腫脹、発赤、漏れの有無を定期的にチェックします。
 
また、ヒューバー針が確実に刺入されているか、点滴の滴下状態は良好か、ドレッシング材の状態(濡れや剥がれ)はどうかなども重要な観察ポイントとなります。
 
これらの状態に異常が見られた場合は、早期に対応することで重大な合併症を防ぐことができます。
 

CVポートからの血液採取

CVポートからの採血は可能ですが、慎重な判断が必要です。採血を行う場合は、カテーテル内に残った薬液が検査データに影響を与える可能性があるため、基本的には末梢からの採血が推奨されます。
 
また、閉塞や感染のリスクを考慮する必要があります。採血を実施した場合は、必ず20mL以上の生理食塩液で十分なパルシングフラッシュを行い、カテーテル内の血液残存を防ぐことが重要です。
 

長期間使用しない場合のCVポートの管理方法

CVポートを長期間使用しない場合でも、定期的なメンテナンスが必要です。カテーテルの閉塞を防ぐため、4週間から3か月程度の間隔で生理食塩液またはヘパリン加生理食塩液でのパルシングフラッシュを行います。
 
ただし、医学的に不要と判断された場合は、安全に抜去することも検討されます。フラッシュの間隔は使用しているカテーテルの種類によって異なるため、各施設のルールに従って実施することが重要です。
 

まとめ

CVポートは、抗がん剤治療や長期の輸液管理において、患者さんの負担を軽減する重要な医療機器です。体内に完全に埋め込まれているため日常生活への制約が少なく、在宅での管理もしやすいという特徴があります。
 
適切な穿刺方法とフラッシュなどの定期的なメンテナンスを行うことで、漏れや閉塞、感染などの合併症を予防し、長期間安全に使用することができます。各施設の基準に従った適切な管理と、患者さんご自身による日常的な観察が、安全な治療継続の鍵となります。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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