腱鞘炎の症状|手首や指の付け根が腫れる原因

  • クリニックブログ
2024/12/27

腱鞘炎の症状|手首や指の付け根が腫れる原因

パソコンやスマートフォンの長時間使用、指を酷使する仕事や趣味、子育てなど 手首や指の腱鞘炎は、現代の生活習慣と密接に関わる身近な症状です。指の付け根や手首の痛み、腫れ、動かしづらさに悩まれている方も多いのではないでしょうか。
 
本記事では、「ドケルバン病」や「ばね指」といった代表的な腱鞘炎の症状や原因、予防法について、医学的な視点からわかりやすく解説します。早期発見・早期治療が重要な腱鞘炎ですが、この記事を読めば、自分の症状が腱鞘炎かどうかの判断や、適切な対処法を知ることができます。大切な手を守るために、まずは正しい知識を身につけましょう。

 
 

腱鞘炎の症状・原因と治し方について

 

 
手首や指の痛みに悩まされていませんか?腱鞘炎は、日常生活やスマートフォンの使用、仕事など、現代人の生活習慣と密接に関連した症状です。ここでは、腱鞘炎の具体的な症状から原因、なりやすい人の特徴、そして医師による診断方法まで、体系的に解説していきます。
 

腱鞘炎の症状

腱鞘炎の主な症状は、手首や指の付け根における痛みと腫れです。
特徴的な症状として、「ばね指」と「ドケルバン病」の2つがあります。
 
ばね指は、指の付け根の屈筋腱と腱鞘の間に炎症が起こり、指を曲げ伸ばしする際にひっかかりや痛みを感じる症状です。指を伸ばすときに「カクン」と跳ね上がるような感覚があります。
 
一方、ドケルバン病は手首の親指側に生じる腱鞘炎で、親指を動かすたびに痛みが走り、手首の親指側が腫れて熱を持つことがあります。これらの症状により、物をつかむ、こぶしを握るといった日常的な動作が困難になることがあります。
 
 

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腱鞘炎の原因

腱鞘炎は主に手や指の使いすぎによって引き起こされます。腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、腱鞘という保護組織に包まれています。この腱と腱鞘の間で過度な摩擦が生じると、炎症を起こして腱鞘が肥厚したり、腱が腫れたりします。
 
近年では、スマートフォンの長時間使用やパソコンでの作業、ピアノなどの楽器演奏、スポーツ活動などが主な原因として挙げられます。また、女性ホルモンのバランスの変化も影響するため、妊娠・出産期や更年期の女性に多く見られます。
 
さらに、糖尿病患者さんは毛細血管の機能低下により組織がむくみやすくなり、腱鞘炎を発症しやすい傾向があります。
 

腱鞘炎になりやすい人

腱鞘炎は、特定の条件や生活習慣を持つ人に発症しやすい傾向があります。特に40代から60代の更年期女性や、妊娠・出産期の女性に多く見られます。職業や趣味の面では、パソコンやスマートフォンを頻繁に使用する事務職の方、楽器演奏家、美容師、料理人など、手指を多用する職業の方がなりやすいとされています。
 
また、テニスやゴルフなどのラケットやクラブを使うスポーツをする人、編み物や裁縫を趣味とする人も要注意です。基礎疾患として、糖尿病やリウマチを患っている人、人工透析を受けている人も発症リスクが高くなります。
 

腱鞘炎の検査と診断方法

腱鞘炎の診断は、医師による問診と触診が基本となります。まず、どのような動作で痛みが出るか、症状がどのくらい続いているか、痛みの性質などを詳しく聞き取ります。触診では、手首や指の付け根の腫れや圧痛の有無を確認します。
 
特にドケルバン病の診断では、「フィンケルシュタインテスト」という特殊な検査を行います。これは、親指を小指側に引っ張った時に痛みが強くなるかどうかを確認する検査です。より詳細な診断が必要な場合は、超音波検査が行われることもあります。最近では「エラストグラフィー」という機器を使用して、腱鞘の炎症程度を視覚的に確認することも可能です。
 
 

腱鞘炎の治療法

腱鞘炎の治療には、症状の程度や状態に応じて様々な選択肢があります。初期段階では保存療法を中心に治療を進め、症状が改善しない場合は体外衝撃波治療や手術療法を検討します。それぞれの治療法の特徴と効果について、詳しく解説していきましょう。
 

保存療法による治療

腱鞘炎の治療は、まず保存療法から始めるのが一般的です。痛みの緩和や炎症の抑制を目的とした、比較的負担の少ない治療法です。
 
具体的なアプローチとして、テーピング、装具療法、注射療法などがあります。症状や生活スタイルに合わせて、適切な方法を選択していきましょう。
 

テーピングの効果

テーピングは、腱鞘炎の初期症状や軽度の痛みに対して効果的な治療法です。特に違和感程度の軽い症状の場合に推奨されます。テーピングを施すことで、痛みのある部位の過度な動きを制限し、炎症を抑制する効果が期待できます。
 

 
湿布などの外用消炎鎮痛薬と併用することで、より高い効果を得られることがあります。ただし、テーピングだけでは十分な改善が見られない場合は、他の治療法との組み合わせを検討する必要があります。
 

装具療法による治療法

装具療法は、専用のサポーターなどを使用して患部を適切に保護し、安静を保つ治療法です。腱鞘炎の症状がある手首や指の動きを制限することで、腱と腱鞘の摩擦を減らし、炎症の悪化を防ぎます。
 
特に夜間に装着することで、睡眠中の無意識な動きから患部を守ることができます。ただし、完全に動きを制限しすぎると関節が硬くなる可能性があるため、医師の指導のもと、適度な装着時間を守ることが重要です。
 

注射療法の有効性

注射療法、特にステロイド注射は、腱鞘炎の痛みや炎症に対して高い効果を示す治療法です。炎症を起こしている腱鞘の中に直接ステロイド剤を注入することで、2〜3週間以内に症状の改善が期待できます。
 
その効果は通常3ヶ月から半年ほど持続し、ばね指では70〜80%、ドケルバン病では70〜90%という高い有効率が報告されています。ただし、糖尿病患者の場合は血糖値上昇のリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
 

体外衝撃波治療

体外衝撃波治療は、体外から患部に向けて衝撃波を照射することで、治りにくい筋肉や腱の痛みを軽減する治療法です。従来の治療法で改善が見られない腱鞘炎に対して効果が期待できます。
 
現在のところ保険適用外の治療ですが、海外では腱板炎や腱付着部炎の痛み緩和など、幅広く使用されています。患者さんの負担が比較的少なく、短時間で終わる治療法として注目されています。
 

手術療法

手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や症状が再発を繰り返す場合に検討される治療オプションです。主に「腱鞘切開術」が行われ、腫れて厚くなった腱鞘の一部を切開して、腱の通り道をスムーズにします。
 
局所麻酔下で10〜20分程度の比較的短時間の手術で、傷跡も小さくて済みます。手術後は健康な腱鞘が残っているため、手の機能に問題を残すことはほとんどありません。手術による根本的な治療を望む場合は、手外科専門医との相談が推奨されます。
 
 

腱鞘炎の予防方法

腱鞘炎は、適切な予防対策を取ることで発症リスクを大きく減らすことができます。ここでは、日常生活で実践できる効果的な予防法として、手首のストレッチ方法や、近年の発症原因として注目されているスマートフォンの正しい使用方法について解説します。
 

手首のストレッチの効果

腱鞘炎の症状改善と予防には、適切なストレッチが重要な役割を果たします。特にばね指の場合、1〜2ヶ月のストレッチ継続で半数以上の患者さんに症状の軽減が見られたという報告があります。ストレッチは腱の柔軟性を高め、指の付け根の腱鞘を広げて腱への圧迫を軽減する効果があります。
 
ただし、急激な動きや強い刺激は逆効果となる可能性があるため、リラックスした状態でゆっくりと行うことが大切です。スポーツや手を酷使する作業の前後、または合間に定期的にストレッチを行うことで、腱鞘炎の予防効果が期待できます。
 

スマートフォンの使い方

 

 
スマートフォンの使用は現代社会における腱鞘炎発症の主要な原因の一つとなっています。特に片手での操作は、親指と手首に過度な負担をかけやすく、ドケルバン病などの腱鞘炎を引き起こす原因となります。予防のためには、スマートフォンを両手で持って操作することが推奨されます。
 
また、長時間の連続使用を避け、定期的に休憩を取ることも重要です。前かがみや猫背でスマートフォンを見続けることは、肩こりや首こりの原因にもなるため、使用時の姿勢にも注意が必要です。目安として、30分に1回は休憩を取り、手首のストレッチを行うことをお勧めします。
 
 

まとめ

腱鞘炎の予防とケアには、日常生活での意識的な対策が欠かせません。ストレッチや使い方の工夫などを取り入れることで、手首や指への負担を減らし、症状の発生を抑えることができます。
 
さらに、違和感を覚えた場合には早めに適切な対処を行うことが大切です。予防策を実践することで、手や指を健康に保ち、快適な日常生活を送る手助けになります。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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