子宮体がん(子宮内膜がん)はどんな病気?子宮頸がんとの違い、治療、予防について解説!

  • クリニックブログ
2024/09/20

子宮体がん(子宮内膜がん)はどんな病気?子宮頸がんとの違い、治療、予防について解説!

 

 

子宮で発生するがんといわれて、思いつくのは「子宮頸がん」という方が多いのではないでしょうか?
しかし、閉経前後の年齢である50歳頃より子宮体がんの罹患率は急激に増え始め、年齢全体で比べても子宮頸がんより子宮体がんの方が多いことが分かっています。
そして、子宮頸がんと子宮体がん両方を合わせた「子宮がん」は女性のがんの罹患率で5番目に多い病気となっています。
子宮頸がんよりも罹患率の高い子宮体がんとはどのような病気なのでしょうか?
こちらの記事では子宮頸がんとの違いや検査、治療、予防まで解説していきます。

 
 

子宮体がんってなに?

子宮は大きく分けて、子宮頸部と子宮体部に分けられます。
子宮頸部にできるがんが「子宮頸がん」、子宮体部にできるがんが「子宮体がん」です。
 
これから、子宮体がんの症状、原因、治療方法について解説していきます。
 
 

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症状

自覚症状として最も多いのが、月経期以外もしくは閉経後の不正出血です。
他に、排尿時痛を感じたり、尿の出にくさや下腹部痛があります。
がんが進行すると、腹部に張りを感じる方もいます。
 

 

原因

子宮体がんの原因は、エストロゲンが関与している場合と、関与していない場合に分けられます。
 

エストロゲンが関与している
● 出産経験がない
● 閉経が遅い
● 肥満
● エストロゲンを産生する腫瘍
 
エストロゲンが関与していない
● 糖尿病
● 近親者に大腸がんの既往歴がある方がいる
● リンチ症候群
  リンチ症候群とは遺伝性の腫瘍で、大腸がんや子宮がんなどが発症する病気です。

 

検査方法

子宮体がんの検査方法は以下の通りです。
 

  • ●病理検査・病理診断
  • ●内診・直腸診
  • ●子宮鏡検査
  • ●画像検査
  • ●超音波(エコー)検査
  • ●CT・MRI

 
それぞれについて詳しく解説していきます。
 
 

病理検査・病理診断

病理検査は、細胞診と組織診に分けられます。
はじめに細胞診を行い、異常が見つかった場合に組織診を行います。
 

《 細胞診 》 子宮内膜の細胞を採取し、がん細胞がないか顕微鏡で調べる。
 
《 組織診 》 がんが疑われる組織を採取し、顕微鏡で調べる。
      組織型と悪性度が分かるため、子宮体がんの確定診断に用いられる。

 

内診・直腸診

内診は、片方の手の指を膣から入れて、反対の手を下腹部に当てます。
両方の手で子宮の位置や大きさ、形などを確認する方法です。
この時、子宮と周囲の組織が癒着していないかも調べます。
 
転移しやすいとされる直腸やその周囲に異常がないかを確認するために、直腸診を行うこともあります。
 

子宮鏡検査

内視鏡カメラを膣から挿入し、子宮体部にあるがんの位置や形状を直接確認する方法です。
内視鏡は検査時の痛みが少ないよう、直径3㎜程度の細い管となっています。
病理検査と組み合わせることが多いとされています。
 

画像検査

検査を進めていく中で、がんが確定もしくは疑わしい場合に画像診断を行います。
画像診断を行う目的は、がんの大きさや広がりを知ること、転移の有無を確認することです。
画像診断には、超音波(エコー)検査とCT・MRIの2種類があります。
 

超音波(エコー)検査

超音波検査とは、超音波の出る器械を当てることで、臓器から跳ね返ってくる超音波の画像を映し出す方法です。
子宮体がんの検査では、超音波の器械を膣から挿入して子宮の中を観察する経腟エコーを行います。
経腟エコーは、体の外から超音波を当てるより子宮に近づけるため、より鮮明な画像で確認することができます。
 

CT・MRI

CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って検査を行います。
CT、MRIでは、リンパ節転移がないか、ほかの臓器への遠隔転移はないか、周辺の臓器にどの程度がんが広がっているかを調べる目的で行います。
まれに、PET-CT検査も併用することがあります。
 
 

子宮体がんを種類別に分類

子宮体がんは、組織型に分類すると3種類に分けることができます。
 

組織型分類 特徴
類内膜がん
発生頻度が高い
漿液性がん
悪性度が高い
明細胞がん
悪性度が高い

子宮体がんの生存率

子宮体がんの生存率は、がんのステージや診断時の状態、治療の効果などに依存します。
全ステージを考慮すると、子宮体がんの5年生存率は約80%以上とされています。

 
 

子宮体がんの治療法

子宮体がんの治療法についてこれから解説していきます。

治療法

治療法には手術、放射線治療、薬物療法の3種類あります。
これから一つずつ解説していきます。
 
 

手術

手術方法は摘出する部位によって、3種類に分けられます。
 
《 単純子宮全摘出術 》
子宮と両側の卵巣・卵管を摘出する手術方法です。
骨盤内のリンパ節の切除を行うこともあります。
 
《 準広汎子宮全摘出術 》
子宮と両側の卵巣・卵管に加えて、子宮を支える組織の一部も摘出する手術方法です。
骨盤内のリンパ節の切除を行うこともあります。
 
《 広汎子宮全摘出術 》
卵巣・卵管・膣・子宮周囲の組織を含めた広い範囲で子宮を摘出する手術方法です。
 
基本的には開腹で手術を行いますが、がんの状態によっては傷の小さい腹腔鏡下手術が選択されることもあります。
 

放射線治療

手術後の再発予防や、手術が困難な場合に放射線治療が行われます。
放射線治療はがん細胞を小さくすることを目的に、X線やガンマ線を当てる治療です。
子宮体がんは膣から子宮の中に放射線を照射する「腔内照射」が選択されることもあります。
 

薬物療法

薬物療法は、再発リスクを減らすことを目的とする治療です。
他に、手術が困難な場合やがんが再発した場合にも選択されます。
薬物療法には、細胞障害性抗がん剤と内分泌療法薬の2種類があります。
 

子宮体がん末期と診断されたら、どうすればいい?

 

 
子宮体がんが末期と診断された場合、がんのステージはⅣでほかの臓器にも転移しています。
この時期は不正出血や下腹部の痛みだけでなく、転移した臓器特有の症状もでてきます。
がんが転移していた場合、手術による切除は難しい場合が多いです。
 
治療は、辛い症状を軽くするために放射線治療や薬物療法がおこなわれることがあります。
しかし、これらの治療には副作用があるため、積極的な治療せずに症状を緩和する「緩和ケア」を選択することもあります。
 

妊娠を希望する場合、治療法はあるの?

子宮体がんのごく早期の段階で、悪性度が低くかつ予後が比較的良好な状態であれば、妊娠機能(妊孕性)を残した治療法を選択することができます。
その治療法は、黄体ホルモン療法です。
内膜掻爬術を行い、1日に2~3回ホルモン剤を服用します。
 
治療できる医療機関が限られているため、妊娠の希望があることを医師に相談しましょう。
また、子宮体がん治療の第一選択は手術療法であることは変わりなく、黄体ホルモン療法を選択することで病状が悪化する可能性もあります。
治療によるリスクを十分に理解して、治療を受けることが大切です。

 
 

子宮体がんのセルフチェック

がんが進行しないと症状が出にくい子宮体がんですが、症状がなくても気づくことはできるのでしょうか?
これから、子宮体がんになりやすい方の特徴と、セルフチェック方法について解説していきます。
自身に当てはまる項目がないか、確認してみましょう。

どんな方が子宮体がんになりやすい?

子宮体がんになりやすい方の特徴として以下が挙げられます。
 

  • ●閉経が遅い
  • ●妊娠・出産経験がない、または少ない
  • ●子宮内膜増殖症の既往歴がある
  • ●肥満
  • ●リンチ症候群
  • ●乳がんでホルモン療法を受けている
  • ●無排卵性月経
  • ●糖尿病

 

子宮体がんセルフチェック

子宮体がんになりやすい人の特徴から、自身でセルフチェックする項目を作成しました。
当てはまる項目がある方は、婦人科への受診を検討しましょう。
 

  • ●BMIが25以上ある
  • ●糖尿病治療を受けている
  • ●高血圧で治療を受けている
  • ●生活習慣病がある
  • ●妊娠・出産経験がない
  • ●月経不順がある
  • ●不正出血がある(生理以外の時期もしくは閉経後)
  • ●おりものが多い
  • ●ホルモン療法をしている

 
 

子宮体がんの予防・早期発見

子宮体がんは自覚症状がほとんどない状態で、がんが進行していきます。
早期発見するためにはがん検診の受診が必要ですが、2023年時点では子宮体がんは公費での検査ではありません。
そのため検査を受ける機会が少なく、子宮体がんを知らない方もいるかもしれません。
 
これから子宮体がんの予防と子宮体がん検診について解説していきます。

低用量ピル・黄体ホルモン

子宮体がんは、子宮内膜が増殖する子宮内膜増殖症を経てがんに移行します。
低用量ピルや黄体ホルモンを服用すると、子宮内膜の増殖を抑えられるため、子宮体がんの発症リスクを低下させると考えられています。
 
しかし、ピルを服用することで血栓ができてしまう危険性やその他のがんの発症リスクが高まる可能性があります。
リスクを理解した上で、服用による予防について検討していきましょう。
 

子宮体がん検診

子宮体がん検診は2023年時点では厚生労働省が定める公費での検診は行われていません。
しかし近年、子宮体がんは増加しており、厚生労働省もエストロゲン投与経験者などハイリスクの方に関しては不正出血等の症状が出たら速やかに専門医療機関を受診することを推奨しています。
閉経前後の年齢の方で症状が気になる方は、婦人科に相談をしましょう。
子宮体がん以外の病気が隠れている可能性もあります。

 
 

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まとめ

子宮のがんは公費でがん検診が行われている子宮頸がんの方が認知度が高く、不正出血などの症状が出た際に子宮体がんを思い浮かべる方は少ないかもしれません。
しかし閉経前後より子宮体がんは増え始め、2023年現在では子宮頸がんを上回る罹患率となっています。
子宮体がんの検査も子宮頸がんと同様に痛みが少なく、短時間で検査が可能です。
気になる症状がある方は婦人科受診を検討しましょう。

 
 

 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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