肺の結節影は放置してもいいの?診断の進め方やがんの確率を解説

  • クリニックブログ
2024/07/29

肺の結節影は放置してもいいの?診断の進め方やがんの確率を解説


 

 

「肺のレントゲンに結節影が写っていると言われて不安」
「放置しても問題ないと言われたけど、本当に治療しなくてもいいの?」

 
このようなお悩みや不安を抱えていませんか?
肺に影があると言われると、どうしても悪性腫瘍の存在が頭をよぎる方が多いのではないでしょうか。しかし、実際には他の疾患が原因のこともあれば、すでに治った後である場合もあります。
 
ではなぜ、疾患の可能性があるのにもかかわらず経過観察で治療をしないのでしょうか。
以降では、結節影の概要、考えられる疾患、すぐに治療できない理由について解説します。

 
 

肺の結節影とは?考えられる原因について

結節影がよく分からないという方に向けて概要を説明しつつ、考えられる原因について解説します。
 

結節影とは?

レントゲンを撮った際、本来であれば全体的に黒っぽく写るはずの肺に現れる、丸みを帯びた白い影を結節影といいます。もともと結節とは、しこりを意味します。
 
 

 健康診断の結果、健康診断を受ける時の注意点についてはこちら

詳しくはこちら

 
 
結節影が確認されてもすぐに治療できない理由は、
 

  • ●区別がつかないこと
  • ●あまりにも小さい場合は検査ができないこと

 
この2つです。
 
治療を始めるには、まず精密検査を行い疾患なのかそうでないのか、また疾患である場合はどの疾患なのかを知る必要があります。
 

考えられる原因疾患について

丸みを帯びた白い影がレントゲンに写っている場合、以下の疾患などが原因と考えられます。
 

  • ●肺結核
  • ●肺真菌症
  • ●肺非結核性抗酸菌症
  • ●良性腫瘍
  • ●肺炎
  • ●肺がん

 
では、一つずつ特徴や症状、治療をまとめて解説していきます。
 

肺結核

結核菌による感染症です。リンパ節や骨などにも感染を起こしますが、肺結核の場合は人から人に感染するため隔離が必要です。
感染すると必ず発症するかといえば、そうではありません。
実際はそのうちの1割しか発症せず、免疫ができて終わります。ただし、免疫ができた後でも免疫力が落ちると発症することがあります。
 
主な症状は、咳、血痰や痰、発熱などです。もし、2週間過ぎても咳が続いたり、血痰があったりする場合は受診してください。
治療法は薬物療法です。

 

肺真菌症

真菌はいわゆるカビのことであり、カビを吸い込むことで発症する感染症が肺真菌症です。真菌はさまざまなところに存在しているため、吸わないようにするのは困難です。しかし、ほこりっぽいところを避けることである程度予防できます。
 
症状は結核に似ており、血痰や咳、呼吸困難があります。症状の進むスピードは真菌の種類によって異なり、遅いものから急激なものまであります。
 
治療は基本的に薬物療法ですが、病変が局所の場合は手術を行うこともあります。

 

肺非結核性抗酸菌症

結核菌に該当しないその他の抗酸菌に感染することで発症する感染症です。人から人へは感染せず、土や水から感染します。症状の進行は非常にゆっくりで、10年以上かけて進行するのが特徴です。
 
主な症状は結核によく似ており、血痰や痰、だるさ、咳、寝汗などがあります。
 
感染した場合、治療しても完全に菌が体内から消えることは基本的にありません。なお、治療を行うのはマック菌が原因かつ悪化が見られる場合に限り、薬物療法で対処します。

 

良性腫瘍

発症率は低くまれですが、良性の腫瘍が原因のケースもあります。症状が現れることもほとんどないため、気付かない方が多いです。
治療法は手術ですが、肺炎を繰り返す、呼吸機能の低下といった悪影響が及んでいる場合に行います。

 

肺炎

肺胞がウイルスまたは細菌感染を起こし発症する疾患です。喫煙者は発症するリスクが高まるため、注意しなければなりません。
 
症状は風邪によく似ているため、気付かないケースもあります。見分け方として、38℃以上の熱が数日続き、悪寒や倦怠感、呼吸のしにくさ、色の付いた痰が伴っていると肺炎が疑われます。
 
治療法は基本的に安静と薬物療法です。

 

肺がん

肺がんは末梢形と中枢型があり、症状が異なります。末梢型は初期症状がないことがほとんどのため、とても厄介です。進行してようやく肺炎や胸痛などの分かりやすい症状が現れます。
 
中枢型は早くから咳や血痰が現れるため気付きやすいでしょう。進行すると末梢の気道が塞がり、肺炎や無気肺を発症します。
 
なお、発症の原因ははっきりと分かっていません。ただし、リスク因子として喫煙や遺伝、アスベストなどがあることは判明しています。
 
治療法には手術療法、抗がん剤治療、放射線療法があります。

 

炎症が治った跡の場合もある

何かしらの疾患で炎症を起こしていたものが自然治癒した後にも、影が見られることがあります。このような場合はすでに治っているため、特に治療する必要はありません。

 

結節影が写る状態は自覚症状がある?

疾患にもよりますが、結節影が見られるだけで症状がない場合もあります。もし無症状の場合で医師が検査を勧める場合は、しっかりと検査を受けてください。

 
 

肺の結節影が見つかった場合の検査の進め方

 

 

結節影が見つかった場合の検査の進め方をお伝えします。
 

最初にすること

最初にすることは、CTでの画像診断です。
 
形や大きさを詳細に検査します。もしここでがんの可能性が浮上した場合は、痰から細胞を採取したり、気管支鏡で直接影がある部分から細胞を採取したりして検査します。
 

どうしても診断がつかない場合

画像診断や生検でも診断がつかない場合、針を肺に刺して細胞を採取したり、胸腔鏡を使用して異常影を含む肺の一部を採取したりします。他にも、血液検査や腫瘍マーカーなども行い、がんの可能性を調べます。
 

注意点:小さいと確認が難しい

検査を進めていく中で注意点があります。それは、影の正体が小さい場合です。あまりにも小さいと細胞の採取が難しく、検査ができません。
基本的に、影の部分と肺を採取する方法は体へのダメージが大きく、基本的に避けたい検査法です。
 
そのため、ある程度時間を置いて、大きくなったところで検査を行います。

 
 

肺がんの確率は?

 

 

ここで、初回スクリーニングCTを用いて発見された肺の結節影が、がんかどうかを調べた結果についての報告を紹介します。この実証では、2カ所においてデータが収集されました。
結節影がレントゲンに写り、実際に肺がんが認められたのは一方のデータセットで5.5%、もう一方のデータセットで3.7%だったとのことです。
 
しかし、年間約8万人が肺がんになり7万人が亡くなっているといわれており、誰が発症してもおかしくない疾患ですので、割合が低いからといって油断は禁物です。
 
(出典:The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 日本語版「初回スクリーニング CT で発見された肺結節における癌の確率」https://www.nejm.jp/abstract/vol369.p910
 

 
 

まとめ

肺に影が写った場合、幅広い原因が考えられるためしっかりと鑑別することが大切です。
絶対にがんとは言い切れませんが、実際には肺がんになっている方が多くいますので、しっかりと検査と治療を受けることが重要です。

 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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