ASC-USとは?がんになる確率やLSILとの違いなどを解説
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ASC-USとは?がんになる確率やLSILとの違いなどを解説
「ASC-USがどのような状態なのか、がんになる可能性があるのか知りたい」とお悩みではありませんか?子宮がんの検査結果で診断されるため、不安になってしまうのは仕方がないことです。
結論からお伝えすると、現在の状態はがんではありません。また、がんへの進行は感染したHPVのタイプによって異なります。
本記事では、ASC-USとはどのような疾患なのか、原因やがんの可能性、経過、子宮がんになってしまった場合の症状や治療について解説します。
ASC-USとは?がんである確率はどのくらい?
ASC-USとはどのような状態なのか、またがんである確率やがんに進行する確率などを解説します。
ASC-USとは
ASC-USは、がんではなく軽度の組織の異変です。病変が見られるものの悪性なのか良性なのかなど、詳しい判別ができないものをASC-USといいます。よって、発症原因を詳細に知るためにHPV検査による精密検査が必要です。
「広島市医師会だより」によれば、ASC-USと診断された方のうちその後の精密検査の結果で「中等度異形成以上の病変が見られる」と診断される方は約10〜20%です。よって、HPVテストもしくは6カ月以内に細胞診再検査を行うことが推奨されています。
(出典:広島市医師会だより(第530号 付録)「細胞診 報告について(婦人科編)」
https://www.city.hiroshima.med.or.jp/hma/center-tayori/201006/center201006-02.pdf)
ASC-USからがんになる確率は高い?
ASC-USからがんになる確率ですが、感染したHPVがハイリスクウイルスの場合は可能性が高まります。通常であれば、免疫によりウイルスが2年以内に排除されるため、がん化する可能性は低めです。
しかし、16型や18型といったハイリスクウイルスは持続感染しやすく、がんに進行しやすい傾向にあります。ハイリスクウイルスの感染が認められた場合は、定期的にがん検診を受けるなどして早期発見に努めることが望ましいです。
婦人科の検診(子宮・卵巣)についてはこちら
精密検査の方法
精密検査では、まずHPV感染の有無をチェックします。白色上皮やモザイク、赤点斑といった病変が見られる箇所の一部を採取し、病理学的診断を行います。
ASC-USからがんになる経過
HPVが子宮内の細胞の中で共存状態になると「軽度異形成」に進行します。もし、消滅されず2年以上持続感染を起こしていると、HPVのDNAが子宮頚部の細胞のDNAに組み込まれ、HSILと呼ばれる「中等度異形成」もしくは「高度異形成」が疑われる状態となります。
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また、上皮内がんに進行していることが分かることもあります。CIN3と診断されたうち、浸潤がんに進行するのは30%程度です。
LSILとの違いは?
ASC-USは、子宮頚部の表面を形作っている細胞(扁平上皮細胞)に変化が見られますが、良性悪性の区別がつかない状態です。一方のLSILは、子宮頚部の表面を形作っている細胞(扁平上皮細胞)に軽度の異常(異形成)が見られる状態です。
ASC-USを起こす原因
ASC-USを起こす原因とウイルスの感染経路について解説します。
HPVとは
HPVは「Human(ヒューマン)」「papillomavirus(パピローマウイルス)」の略称です。
子宮頸がんを発症する方の99%が感染を認められるため、がんとの関連性が強いと見なされています。
絶対にがんになるというものではなく、タイプによってはコンジローマを発症したり、一過性の感染で経過とともに消滅したりするものもあります。基本的には一過性の感染が大多数であるため「念のために経過観察で、がん化していないかチェックする」くらいの気持ちでいるとよいでしょう。
ハイリスクのHPVは10種類以上確認されており、代表的なものは16型、18型、31型、33型、35型、52型、58型です。16型、18型は特にリスクが高いため、定期的な診察が必須です。
感染経路
HPVは性行為によって感染します。そのため、一度でも性行為をしたことがある方は、知らない間に感染していることが多いです。粘膜感染を起こすため、予防にはコンドームの使用が有効です。
子宮がんになってしまったら?症状や治療法
もし、子宮がんに進行してしまったらどうすればよいのでしょうか。
がんが疑われる症状や治療法について解説します。
症状
子宮頸がんの場合、初期症状はほとんどなく無症状であることが多い傾向があります。
そのため、気付かないうちに進行しているケースがよく見受けられます。しかし、まれに白色や黄色のおりもの、血の混じったおりものが見られたり、性行為中に出血や痛みが発生したりすることもあります。
子宮頸がんについてはこちら
子宮体がんの初期症状は、不正出血や月経過多です。もともと生理の量が多い方や、閉経前後で不安定な月経がある方は見過ごしやすいため注意しなければなりません。
治療法
がんが見つかった場合は以下の方法で治療を行います。
- ●手術療法
- ●放射線治療
- ●抗がん化学療法
- ●免疫チェックポイント阻害剤
具体的に治療法を解説します。
手術療法
手術療法は、子宮の一部を切除したり子宮全体を摘出したりする方法があります。
進行が重たかったり再発の不安があったりする場合は全摘出が選択されるでしょう。
手術療法は再発のリスクを減少できるため、有効的な手段です。
しかし、後遺症のリスクが高く、身体への負担が大きいというデメリットがあります。
例えば妊娠できなくなる、あるいはしにくくなるという安全な出産に関するリスクです。
他にも腸閉塞を起こしたり、尿トラブルが起きたりするリスクもあります。
放射線治療
放射線治療は、年齢や進行度、合併症の有無などによって選択されることがあります。
初期のがんでは子宮腔内からの照射で治療することがありますが、一般的には骨盤内照射と子宮腔内への併用照射で治療します。
抗がん化学療法
抗がん化学療法は、抗がん剤を使用した治療です。
進行していたり再発していたりする場合に、放射線治療や血管新生阻害薬と併用して選択されることが多い治療法です。
副作用として強い吐き気と嘔吐、脱毛が有名ですが、近年はこれらの症状が緩和された薬も登場しています。
免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞に送る活性化の阻害信号を遮断する薬です。
免疫細胞が再び活性化するため、がん細胞の排除作用が期待できます。
単体で使用されることはなく、基本的に抗がん剤と併用して使用されます。
適用されるのは、進行しているがんもしくは再発した子宮頸がんです。
予後
子宮頸がんの5年後の生存率は以下の通りです。
- ●Ⅰ期:92.3%
- ●Ⅱ期:76.2%
- ●Ⅲ期:56.5%
- ●Ⅳ期:32.2%
子宮体がんに関しては、他のがんと比較して予後がよく、5年生存率が84.5%となっています。
まとめ
ASC-USはがんではありませんが、感染したウイルスのタイプによってはがんへの進行リスクがあります。
治療は基本的に必要なく、精密検査で原因やウイルスのタイプをはっきりさせ、がん化するリスクが見受けられると治療を開始します。定期的に診察を受け、がんへの進行を阻止しましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師