食道裂孔ヘルニアの原因や症状とは?なりやすい人や治療・対策について解説

  • クリニックブログ
2024/04/30

食道裂孔ヘルニアの原因や症状とは?なりやすい人や治療・対策について解説

「胃酸がこみ上げてきて酸っぱい…」という不快感を得たことがある人は多いのではないでしょうか。実はその症状は、食道裂孔ヘルニアが原因かもしれません。食道裂孔ヘルニアとは、本来食道が通るすき間から胃の一部が飛び出してしまう状態のことです。「食道裂孔ヘルニアはどうしてなるの?」「危険な症状はある?」「どんな治療をするの?」など、気になる方は多いのではないでしょうか。
 
そこで今回は、食道裂孔ヘルニアの種類、食道裂孔ヘルニアの原因・症状、食道裂孔ヘルニアになりやすい人、食道裂孔ヘルニアの治療・対策について解説します。

 

食道裂孔ヘルニアとは

食道裂孔ヘルニアとは、食道裂孔から胃の一部が飛び出してしまう状態のことです。食道裂孔とは、食道が通るためのわずかなすき間のことです。食道裂孔ヘルニアが引き起こされる原因はさまざまで、加齢・肥満・喫煙などがリスク因子として挙げられます。
 
食道裂孔ヘルニアでは、症状が出ない人も少なくありません。しかし、胃の一部が飛び出すことで、胸部・腹部の膨満感や嚥下困難、げっぷが出やすくなるといった症状が出ることがあります。また、より重篤な症状が出るケースもあります。

 
 

食道裂孔ヘルニアの種類

食道裂孔ヘルニアは、その状態により以下の種類に分けられます。
 

  • ● 滑脱型:食道および胃の接合部、胃の一部が横隔膜の上に突出してしまうタイプ
  • ● 傍食道型:胃の一部が横隔膜の上に突出して、食道と並ぶ形になるタイプ
  • ● 混合型:食道と胃の接合部が横隔膜の上に突出し、胃の一部が食道と並ぶ形になるタイプ

 
食道裂孔ヘルニアで最も多いのは滑脱型で、高齢者に多い傾向にあるといわれています。

 
 

食道裂孔ヘルニアの原因

食道裂孔ヘルニアが引き起こされる原因はさまざまですが、何らかの理由により腹圧が上がってしまって、胃が押し上げられることで引き起こされることがあります。腹圧が上がる要因としては、肥満・喫煙・腹水・妊娠・慢性的な咳症状(気管支喘息など)があります。
 
また、加齢に伴って食道裂孔が広がってしまっている、生まれつき食道裂孔がゆるいなどの理由で胃の一部が突出しやすくなっているケースもあるようです。


 
 

食道裂孔ヘルニアになりやすい人の特徴

食道裂孔ヘルニアは、腹圧が上がることが原因として引き起こされることが少なくありません。そのため、腹圧を上昇させるものがリスク因子として考えられています。たとえば、以下のようなものが食道裂孔ヘルニアのリスク因子です。
 

  • ● 肥満体型である
  • ● 前かがみ・猫背になることが多い
  • ● 喫煙習慣がある
  • ● 慢性的な咳症状がある
  • ● 妊娠中である
  • ● 夜食習慣がある
  • ● 高齢者

 
これらのことに思い当たるものがある場合、食道裂孔ヘルニア発症のリスクが高まります。


 
 

食道裂孔ヘルニアの症状

食道裂孔ヘルニアを発症したとしても、ほとんどの人は自覚症状がないとされています。もし症状があったとしても、軽微な胸焼けや酸っぱいものがこみ上げる状態(呑酸)などです。げっぷをしやすくなる場合もあります。げっぷが出ることで、胃の臭いが上がってきて、口臭が出ることもありえます。重いものを持ち上げる、力む、前にかがむといった場合にこうした症状が強く出ることもあるようです。
 
このように、食道裂孔ヘルニアはそれほど気にする症状はありませんが、まれに強い痛みを伴うことがあります。これは、食道裂孔に胃が締めつけられてしまって血流が悪化しているためです。この状態を嵌頓(カントン)と呼び、胸部・腹部膨満感、嚥下困難、胸の痛みなどの症状が強く出ます。このように重度のケースでは、手術が必要です。


 
 

食道裂孔ヘルニアの治療

では、食道裂孔ヘルニアの治療法について見ていきましょう。

内科治療と生活改善

食道裂孔ヘルニアの症状がほぼないまたは軽微な症状である場合は、生活習慣の改善や薬物療法をメインに進めます。食道裂孔ヘルニアではあるものの症状がないのであれば、経過観察するケースもあります。
 
たとえば、胃酸の逆流が起きている場合は、食事量を減らしたり体重を減らしたりします。就寝時に頭を高くする、禁煙する、食後の運動を避ける、アルコールや刺激物を避けるといったことも有効です。妊娠中は胃が圧迫されやすいため、なるべくお腹に圧力をかけないような姿勢を見つけることが大切です。
 
また、胃酸が出て胸焼けなどの不快症状がある場合は、それを抑える薬を使用することもあります。

 

手術

食道裂孔ヘルニアで症状が強い場合、重症度の高い嵌頓を予防するために手術をすることもあります。嵌頓である場合は速やかな手術が必要となります。近年は、小さな穴を開けて器具を挿入して行なう胸腔鏡下手術または腹腔鏡下手術が一般的です。完全開腹するよりも手術創が小さく、患者への負担が小さいのが特徴です。


 
 

食道裂孔ヘルニアの対策

食道裂孔ヘルニアは前述の通り、ほとんどは無症状です。そのため、日頃から生活に気をつけて対策することで悪化しにくくなります。
 
以下のようなことを意識してみましょう。

 

  • ● 食事は腹八分目にする
  • ● 脂質はあまり摂りすぎない
  • ● 食後にすぐ横にならないようにする
  • ● 運動習慣を身につけてダイエットを心がける
  • ● 身体を締めつける衣服を着用しない
  • ● ベルトをきつく締めすぎない

 
基本的には、食道裂孔ヘルニアの治療と同じ考え方です。


 
 

まとめ

食道裂孔ヘルニアは、食道が通るわずかなすき間である食道裂孔から胃の一部が突出してしまう状態です。腹圧の上昇が関係していることから、高齢者や肥満の人、喫煙習慣がある人などがなりやすい傾向にあります。多くの場合は無症状ですが、胸焼け・胃酸がこみ上げる・げっぷ・口臭といった軽微な症状が出ることもあります。こうしたケースでは、手術は不要であり、生活習慣の改善や薬物療法により治療します。まったく症状がなければ、経過観察のみということもあります。
 
ただし、食道裂孔により胃の一部または食道が強く締めつけられ、胸部痛を生じることもあります。このケースは重症とされ、速やかな手術が必要です。胃酸の逆流で悩んでいるなど、何らかの不快感や違和感があれば、まずは病院を受診してみましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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