血がドロドロになる多血症とは?種類や原因・症状と治療法・予防について解説
- クリニックブログ
血がドロドロになる多血症とは?種類や原因・症状と治療法・予防について解説
多血症は、貧血とは逆で血が濃くなってしまう病気です。血液がドロドロになることで、血流障害が起き、頭痛やめまいといった症状が出ることがあります。放置すると血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞といった、深刻な病気のリスクを高めてしまいます。「どうして多血症になるの?」「放置したら危険?」など、多血症に関して疑問や不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、多血症の種類や原因、多血症の症状、多血症の治療法、予防や注意点について解説します。
多血症とは
多血症とは、血液中の赤血球が異常に増加してしまう病気のことです。血液は、白血球・血小板・血漿・赤血球という成分からできています。何らかの原因によって赤血球が増えると血液が濃くなって、粘り気があるドロドロの状態になります。血液が濃くなりドロドロになってしまうと血流が悪化するため、かゆみや頭痛・めまいなどさまざまな症状が現れます。
多血症そのものが生命に関わるケースはほぼないものの、合併症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
多血症の種類と原因
多血症は発症原因によって3種類に分けることができます。
相対的多血症
相対的多血症とは、血液中の血漿が減少してしまい、相対的に赤血球濃度が高くなった状態の多血症です。相対的多血症は下痢や嘔吐、高度なやけどなどによる水分不足により、体液が急激に減少することが原因で引き起こされます。利尿剤の影響で水分不足になり、相対的多血症になるケースもあります。
また、ストレスによっても引き起こされることがあるため、ストレス性多血症とも呼ばれます。このケースでは、高血圧・糖尿病などの生活習慣病や肥満を合併している中年男性に多く発症する傾向にあります。
真性多血症
真性多血症は、血液中の遺伝子に異常が発生することが原因で赤血球が増加する多血症です。血液細胞は造血幹細胞という細胞によって作られます。この造血幹細胞の中にある遺伝子(多くの場合はJAK2遺伝子)が何らかの理由で変異すると、血液細胞が多く作られます。結果的にすべての血球が過剰に作られ、赤血球の絶対数も増加してしまうため、真性多血症になるわけです。
二次性多血症
二次性多血症は、酸素不足や腫瘍などが原因で引き起こされる多血症です。低酸素状態になると酸素供給力を高めるため、身体は酸素を運ぶ役割を持つ赤血球を増やします。そのため、肺の疾患や睡眠時無呼吸症候群により慢性的に低酸素状態になっていると、赤血球が過剰に増加してしまい、二次性多血症になってしまうのです。喫煙習慣がある、高地トレーニングをするといったことも二次性多血症の原因になります。
また、二次性多血症は赤血球を増やす造血因子であるエリスロポエチンが異常に増加することでも引き起こされます。たとえば、肝細胞がんや腎臓がんなどの腫瘍があるとエリスロポエチンが増加し、二次性多血症の発症リスクが高まります。
多血症の症状
多血症は赤血球が増えて血液がドロドロしてしまう病気です。発症初期は自覚症状がないことがほとんどですが、進行すると主に以下のような症状が出るようになります。
- ● 顔が赤くなる
- ● 目が充血する
- ● かゆみがある
- ● 頭痛・めまい・耳鳴り
- ● 手足のチクチクする痛み・しびれ
- ● 思考力が鈍る
- ● 発熱や発汗
また、血液がドロドロになることで固まりやすくなり、血栓症を併発することも少なくありません。血栓症を併発することで、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。さらに、脾臓が腫れることもあり、腹部膨満感の症状が出ることもあります。
心筋梗塞について詳しくはこちら
多血症の検査と診断
まず、問診により喫煙歴、睡眠時無呼吸症候群、心疾患などの病歴を確認した上で、血液検査を行い、血液中の成分濃度をみて多血症の疑いがあるかを調べます。真性多血症や二次性多血症であれば、赤血球はもちろん白血球や血小板の数値が増加しています。さらに、血液検査によってJAK2遺伝子が変異しているかも確認します。
また、二次性多血症は肝細胞がんや腎臓がんなどの腫瘍が原因で引き起こされるケースも少なくありません。そのため、CT検査やMRI検査を行う場合もあります。他にも、赤血球を増やすエリスロポエチンの数値を調べたり、血液を作り出す骨髄液を調べるために骨髄穿刺や骨髄生検を行ったりします。
多血症の治療法
多血症の種類によって、その治療法や進め方が異なります。
相対的多血症の治療
水分不足により血漿が減少して相対的に赤血球濃度が増えている場合、水分補給や点滴などを行って血漿の量を戻す治療を行います。また、下痢や嘔吐など水分不足を引き起こす症状を解消する治療も行います。相対的多血症のうちストレスが原因であれば、ストレスの解消が治療となります。また、生活習慣病を併発しているケースも多いため、その治療を行います。
真性多血症の治療
真性多血症の治療は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める血栓予防を目的として行われます。出血や血栓を起こしたことがある、または65歳以上であれば高リスク、どちらにも該当しない場合は低リスクと分類した上で治療を行います。
低リスクの場合は、瀉血により血液を抜き取って赤血球の数をコントロールする治療法が一般的です。低用量アスピリンを用いて血栓を予防する抗血栓療法も行います。これに加えて高リスクの場合は、造血幹細胞の働きを抑える分子標的薬や抗がん薬を使うことがあります。
二次性多血症の治療
二次性多血症は、多血症を引き起こしている原因疾患を取り除く治療を行います。睡眠時無呼吸症候群が原因である場合は、就寝時にマウスピースを装着したり、機械により空気を送り込むCPAP療法を行ったりして、睡眠時の酸素供給を正常に整えます。喫煙や薬剤が原因で二次性多血症になっているケースでは、禁煙や薬剤を使用中止して経過観察し、腫瘍が原因であれば外科手術により切除します。
また、必要があれば瀉血や抗血栓薬の使用もあわせて実施します。
多血症は予防できる?
多血症は大きく相対的多血症・真性多血症・二次性多血症の3つに分類でき、それぞれ原因が異なります。そのため、多血症全体の効果的な予防法はありません。しかし、適度な運動やバランスの良い食生活、禁煙などをすることで血栓症の合併症リスク低減につながります。多血症の先にある心筋梗塞や脳卒中などの合併症を防ぐためにも、生活習慣の改善はぜひ行いましょう。
まとめ
多血症は血液がドロドロになる病気です。軽度であれば自覚症状がない場合もありますが、血管が詰まる血栓症につながってその先にある心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。特に喫煙習慣がある方は多血症リスクが高いため注意が必要です。多血症が疑われるようでしたら、なるべく早く病院を受診して検査・治療を行いましょう。
多血症について関連記事はこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師