憩室炎になりやすい人とは?憩室炎の原因・症状と治療・予防法について解説

  • クリニックブログ
2024/04/30

憩室炎になりやすい人とは?憩室炎の原因・症状と治療・予防法について解説

お腹が痛い原因はさまざまですが、「40歳以上、お腹の左側が痛い、喫煙・アルコールが趣味」という人は、憩室炎の可能性があります。憩室炎とは、大腸などにできるポケットのようなくぼみに炎症が起きる病気です。合併症を引き起こす恐れもあり、重症の場合は手術も必要です。「憩室炎になりやすい人とは?」「憩室炎は治せる?予防できる?」という疑問を持つ方もいることでしょう。
 
そこで今回は、憩室炎の原因と症状、憩室炎になりやすい人、憩室炎の治療法と予防について解説します。

 

憩室炎とは

憩室炎とは、風船のような袋である憩室に炎症が起きることです。憩室とは、脆い腸壁の一部が外側に突出してしまい、風船のように袋状になったもののことです。憩室は食道・胃・十二指腸・小腸・大腸などさまざまな消化管にできます。しかし、一般的には大腸にできることが多い傾向にあります。そのため、憩室炎も大腸で発生することがほとんどです。
 
憩室炎になると、腹痛や下痢、吐き気や嘔吐、発熱といった症状があります。また、膿瘍や瘻孔などの合併症を引き起こす恐れがあります。

 

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憩室炎の原因

憩室はさまざまな消化管にできる袋状のもので、主に大腸にできます。複数個できることが多く、大腸の壁が脆くなったり腸管内圧のバランスが崩れたりすることでできやすいとされています。
 
憩室炎は、その憩室に便や細菌などが入り込んでしまうことが原因で引き起こされます。たとえば、大腸にできた憩室に糞便が溜まって長い時間が経過すると、内部で細菌が増殖します。その細菌によって憩室に炎症が起き、憩室炎となるのです。


 
 

憩室炎になりやすい人の特徴

憩室炎はどの年代でも発症する可能性はありますが、40代以上の人に多い傾向にあるといわれています。また、憩室炎のリスク因子として以下のようなものが関係していると考えられています。
 

  • ● 年齢が高い(40歳以上)
  • ● 脂肪が多く肥満である
  • ● 運動習慣がない
  • ● 喫煙習慣がある
  • ● 食物繊維の少ない食生活

 
このような傾向のある人は、憩室炎になりやすいとされます。また、一部の痛み止めや抗炎症薬の影響により、憩室炎にかかりやすくなったり、重症化したりする恐れがあるといわれています。


 
 

憩室炎の検査と診断

憩室がある人で憩室炎の症状が出ている場合は、その症状に基づいて憩室炎と診断されることもあります。ただし、似た症状として虫垂炎や各種がんもあり得るため、憩室炎では腹部と骨盤のCT検査やMRIなどの画像検査を行います。
 
また、炎症が治まった後または治療後に、結腸がんを否定するための大腸内視鏡検査が行われることもあります。憩室炎により大腸を傷つける・破る恐れがあることから、憩室炎治癒後1~3ヶ月ほど経過してから検査するのが一般的です。


 
 

憩室炎の症状

憩室炎における主な症状と合併症について見ていきましょう。

主な症状

憩室炎の症状は主に、腹痛や下痢、吐き気・嘔吐、発熱、腹部を触ると痛みがあるといったものがあります。また、高齢になると腹部の左下の部分に痛みが出やすいことが特徴的です。左側に痛みがある場合は左側型憩室炎と呼ばれ、再発しやすく重症化しやすいとされています。
 

憩室炎の合併症

憩室炎は上記の症状とともに、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
 

  • ● 瘻孔:通常はつながっていない2つの臓器がつながってしまい、さまざまな症状を引き起こす(例:大腸と膀胱がつながり、尿路感染症を引き起こすなど)。
  • ● 膿瘍:膿が溜まった袋ができる。悪化すると痛み・発熱などの症状がある。
  • ● 腹膜炎:腹部と臓器の間にある組織の感染症。
  • ● 狭窄:再発を繰り返すことで組織が厚くなって大腸が狭くなり、便が通過しにくくなる。
  • ● 敗血症:血液感染によって酸素供給が阻害され、臓器が正しく働かなくなる。

 
憩室炎によるこうした合併症が出る場合、重症と判断されます。


 
 

憩室炎の治療

憩室炎の治療法について見ていきましょう。

軽度

症状が軽く合併症を伴わない軽度の憩室炎の場合は、自宅にて安静にすることが第一です。消化器官への負担を減らすため、数日間は水やスープなどを摂り、徐々に消化しやすい柔らかい食べ物を摂るようにします。また、痛み止めや抗菌薬の使用も行う場合があります。
 

重度

強い腹痛がある、高熱であるなど症状が強い場合や合併症が見られる場合は、入院して治療をするのが一般的です。点滴により水分補給や抗菌薬の投与を行い、消化器官に負担をかけないために症状がなくなるまでは何も食べません。抗菌薬により治癒しない、または膿瘍が大きいケースでは、超音波内視鏡検査などでガイドしつつ、皮膚に針を刺して排膿することもあります。
 
上記治療で改善されない、または腸管の破裂・腹膜炎の発症といったことがあれば、速やかに外科手術を行います。


 
 

憩室炎の予防や治療後の注意点

憩室炎の明確な予防法は、今のところ確立されていません。しかし、リスク因子を避けることは、予防や治療後の生活において重要と考えられます。たとえば、生活習慣を整え、バランスの良い食事を摂ることは予防に効果があるかもしれません。
 
また、喫煙はさまざまな病気を引き起こす原因となりますので、憩室炎の再発予防の意味もこめて、この機会に禁煙するのもおすすめです。また、腸に過度な負担をかけないために、アルコールやカフェイン、辛いものなどの刺激物の摂取も控えめにしてみてはいかがでしょうか。
 
肥満も憩室炎のリスク因子とされます。適度な運動をして脂肪を燃焼させるのもおすすめです。また、身体を動かすことで腸が刺激されて働きが活性化することも期待できます。


 
 

まとめ

憩室炎は主に大腸などの消化管にできる憩室に炎症を起こす病気です。憩室があるだけでは特に自覚症状はほとんどありません。しかし、憩室に便や細菌が侵入して炎症を起こすと腹痛や吐き気・嘔吐などの症状が出ます。軽症であれば、胃腸に負担をかけずに自宅で安静にして抗菌薬を使用することで治療します。しかし、重症と判断される場合は、入院や手術をしなければなりません。
 
憩室炎の明確な予防法は確立されていませんが、リスク因子はいくつかわかっています。生活習慣や食生活の改善、運動習慣を身につける、禁煙、アルコールを控えるなどを意識して、憩室炎をできる限り予防していきましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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