大腸憩室症は無症状?ストレスや食事が原因?治療法や予防法についても解説

  • クリニックブログ
2024/02/27

大腸憩室症は無症状?ストレスや食事が原因?治療法や予防法についても解説

大腸憩室症とは何かご存知でしょうか。
あまり馴染みのない疾患ですが、憩室は40代から形成されやすくなり、加齢とともに発症率があがります。
 
今回は、憩室とはなにか、症状や原因、治療方法、また予防や早期発見のポイントも解説していきます。

 

大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)とは?

憩室症の患者数は少なくありませんが、病名としてはあまり聞いたことがないという方が多いかもしれません。
まずは、憩室症とはどのような病気で、何が原因となっているのかについて解説していきます。

そもそも憩室って何?

消化管にできる小指の先ほどの小さなポケット状の突起で、消化管の中から外側に飛び出すように形成されます。大腸は、消化管の中でも憩室ができやすい部位です。憩室ができても痛みや不調を感じることは少なく、炎症などが起こり痛みを感じたタイミングで医療機関を受診し、はじめて憩室があることを知る方も多いでしょう。

 

大腸憩室の原因は?

憩室ができる原因は、消化管の壁の強度が内圧より弱くなることと考えられています。また、大腸では蠕動運動が弱まると内圧が上がりやすくなるため、便秘がちな方は憩室ができやすいと考えて良いでしょう。腸の組織も活動も、加齢とともに衰えていく傾向があり、憩室症の有病率も年を取るにつれて上昇します。
 
大腸憩室症の有病率は40代で10%以下とされますが、80代を超えると有病率は50%前後であることからも、憩室症と年齢の関係は深く繋がっています。

 

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無症状の大腸憩室症で発症する2つの合併症

冒頭でも触れたとおり、憩室があっても無症状な方は非常に多いです。
しかし、憩室がもとになって痛みなどの自覚症状が現れることがあります。
 
ここからは、憩室が原因になって発症する「大腸憩室炎」と「大腸憩室出血」という合併症について見ていきましょう。

大腸憩室炎

憩室は小さなポケット状になっており、中に排泄物のカスなどが溜まりやすいため、正常な腸壁よりも細菌が繁殖しやすい形状です。このポケットの中で細菌が増えると、憩室に炎症が起こり「憩室炎」という状態になります。
 
主な症状は波の少ない腹痛・炎症による発熱です。そのほかに、腸が過度に刺激されたことによる下痢・嘔吐がみられる場合もあるでしょう。また患者さんが高齢であるほど再発・重症化のリスクが高いとされます。加齢のほか、喫煙習慣や肥満も憩室自体を増やしたり、炎症を起こしやすくなったりといったリスクを高める要因です。
 
憩室炎が重症化すると穿孔(腸に穴が開く)などにつながることがあり、この穴からお腹の中へと炎症が拡がる可能性もあります。腹腔内で炎症が起こると腹膜炎などを併発し重症化することが多いため注意が必要です。
 

大腸憩室出血

憩室の血管が便による刺激で破れて、出血を起こすことがあります。前兆がなく突然血便が出るため、痛みなど辛い症状はないものの患者さんは不安になるでしょう。
 
憩室が多く頻繁に出血がある場合は、貧血などにつながる可能性があるため注意が必要です。

 
 

大腸憩室症の検査・治療をガイドラインに沿って解説

憩室の病気が疑われる場合、どのような検査を経て診断を受けるのでしょうか?
また、憩室炎・憩室出血と診断された場合はどのような治療を受けるのでしょうか?

大腸憩室炎の検査・治療

大腸の憩室に関する病気では、問診で自覚症状を確認するほか血液の検査や腹部のCT・エコーを行います。憩室炎の場合は、血液の検査で上昇がみられるのはCRPや白血球数といった炎症に関する値です。また、CTやエコーでは炎症を起こした部分の腸壁が厚くなっていることが確認できます。
 
炎症のみが起きているケースでは飲食をやめて点滴からの栄養・水分補給に切り替え、抗生剤で炎症を抑えながら保存的に経過を見るのが一般的です。ただし、画像診断で膿のかたまり(膿瘍)が見られた場合は、チューブを使って膿を体外に出す「ドレナージ」という治療を行うことがあります。
 
また、本来は腹腔内(腹膜と内臓のあいだ)には空気がありませんが、この空間に空気が確認できた場合は憩室が穿孔している可能性が高いため注意が必要です。このように炎症が悪化して憩室穿孔が起こると、腹膜炎を合併する可能性が高いため穿孔している部分を塞いだり切り取ったりする手術を行うことがあります。

 

大腸憩室出血の検査・治療

憩室出血が疑われる場合も、憩室炎と同様に血液検査や画像診断を行います。憩室出血の場合、血液検査では炎症に関する値と併せて貧血の度合いを確認することが多いでしょう。出血は経過観察をしていくうちに自然に治ることが多いですが、出血量が多い場合や貧血が進行している場合は大腸内視鏡で出血部分をふさぐ治療を行います。

 

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大腸憩室症の予防・早期発見の方法

大腸憩室症は繰り返しやすい病気で、完全に予防することは難しいと考えられます。しかし、生活の改善をすることで再発の確率を下げることはできるでしょう。また、もし発症・再発した場合でも、早期発見に努めることで重症化する前に治療を始めることができるはずです。
 
最後に、憩室の再発防止・早期発見のためにできることをまとめました。

便秘対策(食物繊維、水分、運動、菌活)

腸に便やガスが溜まった状態では内圧が上がりやすく、またお通じのたびに強くいきむことも腸の内圧を上げることにつながります。このような状況が続くと憩室ができやすいため、便秘対策を行うことが憩室の主な予防法となります。
 
便秘対策では、まず水分や食物繊維を積極的に摂取することが大切です。高齢になると「トイレが近くなるから」と飲水を控える方もいますが、成人の身体が1日に必要とする飲水量=1.2リットルを目安に、こまめに水分補給をしましょう。
 
また、食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。不溶性食物繊維は、豆類や穀物に多く含まれます。一方、オクラ海藻などは水溶性食物繊維を豊富に含む食材です。加えて、発酵食品を積極的に摂るなど、腸内細菌を良い状態に保つ「菌活」にも便通をスムーズにする効果が期待できます。
 
そのほか、運動を習慣づけることも腸の動きを活発化させるため便秘の解消に有効です。便秘だけでなく肥満も憩室症のリスクを上げる要因になるため、便通を改善すると同時に減量も期待できるという点でも運動の習慣は重要です。
 

刺激物を摂りすぎない

刺激物と聞くと香辛料をイメージする方が多いかもしれませんが、それだけでなくカフェインやタバコ・お酒も腸には過度な刺激となり得るでしょう。
 

定期検診

憩室ができても、炎症や出血が起こるまでは症状が全くない方がほとんどだといわれています。そのため、自覚症状で憩室に気付くことは難しく、早期発見には大腸カメラを受けることが有効です。大腸がん検診なども活用しながら、定期的に腸内の様子を確認することをおすすめします。


 
 

まとめ

憩室ができても自覚症状はないことが多く、炎症や出血が起きて初めて異常に気が付く方がほとんどです。憩室炎や憩室出血は予後の良い病気ですが、稀に重症化することがあります。軽症のうちに治療を始めるために、不調に気付いたら早めに受診をしましょう。
 
MYメディカルクリニックでも、エコーや内視鏡などの設備が整っており、消化器専門の医師が診察することができます。腹部の不調を感じたら、ぜひご相談ください。

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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