IBDとはどんな病気?完治する?原因や症状と検査・治療法について解説
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IBDとはどんな病気?完治する?原因や症状と検査・治療法について解説
IBDとは炎症性腸疾患のことで、大切な消化器である腸に炎症を引き起こす病気の総称です。主に原因が明らかでない潰瘍性大腸炎やクローン病のことを指し、慢性的な下痢・腹痛・血便などの症状があります。「原因がわからないなんて怖い」「どうやってIBDがわかる?」「IBDは治療できる?」など疑問や不安を感じる方は多いのではないでしょうか。
今回は、IBDの種類・原因・症状、検査・診断方法、治療法について解説します。
IBDとは
IBDとは、炎症性腸疾患の英名である「Inflammatory Bowel Disease」を略したものです。腸管に炎症が生じることで、慢性的な下痢や腹痛といった症状があります。原因が明らかである特異的なIBDとして、細菌やウイルスによる感染性腸炎や薬の影響による薬剤性腸炎があります。
しかしIBDは、原因不明の潰瘍性大腸炎やクローン病のことを指すことがほとんどです。前述の通り慢性的な症状があり、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴的です。
IBDの種類と原因・症状
前述の通り、IBDは主に潰瘍性大腸炎やクローン病を指します。しかし、原因が明らかである特異的なIBDも存在します。以下で、それぞれの種類や原因ついて解説します。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、腸内細菌や食生活、免疫機構などが関係して引き起こされるとも考えられていますが、はっきりとした原因はいまのところわかっていません。
潰瘍性大腸炎になると、大腸に炎症が起きて粘膜が傷つき、慢性的な腹痛・下痢・血便といった症状が出ます。症状が出る活動期と、症状が治まっている寛解期があります。寛解期に入ることで治ったと思われても、症状が再発して活動期に入ることも珍しくありません。再発を繰り返すことから、潰瘍性大腸炎は長期の治療が必要です。
また、長期にわたって大腸の炎症が続くことで大腸がんリスクを高めてしまいます。がん予防のためにも、寛解期であっても検査を継続することが大切です。
潰瘍性大腸炎について詳しくはこちら
クローン病
クローン病の原因は、遺伝的な要因、食事や腸内細菌などの影響によって、免疫機能が過剰になっているか異常が生じることで発症するのではないかともいわれています。しかし、詳しい原因については潰瘍性大腸炎と同様に明らかになっていません。
潰瘍性大腸炎はその名の通り大腸に炎症が発生しますが、クローン病は口から肛門までさまざまな消化管で起こり得ます。多くの場合は、小腸・大腸・肛門などに炎症が起き、下痢・血便・腹痛・発熱・貧血・肛門病変・体重減少といった症状が引き起こされます。さらに、倦怠感や関節痛、皮膚症状などが現れることもあります。
クローン病は若い世代で発症することが多いとされ、特に男性に多い傾向があるのが特徴です。また、クローン病は一箇所だけでなく、消化管のさまざまな箇所にて断続的に発生するのが特徴であり、狭窄や瘻孔などの合併症を引き起こすことが少なくありません。こうした合併症が起きることで、小腸・大腸・肛門をはじめとした消化管にて、器質的な障害が発生する恐れもあります。
ちなみに、クローンとは病気を最初に報告した医師の名前からつけられたものであり、クローン技術などのクローンとはまったく関係がありません。
クローン病について詳しくはこちら
その他原因が明らかなもの
IBDは原因が明らかでない潰瘍性大腸炎やクローン病が主ですが、原因が明らかな特異的な病気も含まれます。たとえば、感染性腸炎は細菌やウイルスが原因となって引き起こされる疾患です。発熱・下痢・腹痛・嘔吐といった胃腸炎の症状が現れます。人にうつる可能性があるため注意が必要です。
薬剤性腸炎とは、薬の影響によって発症するIBDです。非ステロイド系抗炎症薬や低用量アスピリンなどの副作用によって引き起こされることがあります。こうした薬を服用する機会が多い高齢者や、腎不全・白血病などの基礎疾患を持つ人は発症しやすいとされています。
IBDの検査・診断方法
IBDの診断を下すためには、腸に炎症を起こす他の原因、たとえば感染症などを否定しなければなりません。そのため、複数の検査を行います。
便と血液検査
便からサンプルを採り、細菌やウイルスまたは寄生虫による感染症がいないか検査します。さらに血液検査などによって、淋菌やヘルペスウイルスまたはクラミジアなどの性感染症がないかも検査していきます。
内視鏡検査や生検
便検査・血液検査によって感染症が原因でないと明らかになったならば、内視鏡検査やX線検査などの画像検査を行います。IBDによる炎症がどのような形態なのか、範囲はどれくらいなのかなどを調べます。
また、内視鏡検査では、炎症を起こしている消化管の粘膜からサンプルを採取する生検を実施することもあります。これは、IBD以外の疾患ではないか明らかにするためです。腹部X線やCTによる画像検査でも、他の疾患の可能性がないか調べます。
IBDの治療法
特異的なIBDについては原因を特定したうえで、それを取り除く・改善する治療を行います。たとえば、感染性腸炎であれば、原因であるウイルス・細菌を特定したうえでそれに応じた薬を用います。
一方、潰瘍性大腸炎やクローン病などのIBDは、根治的な治療法が存在しません。そのため、IBDでは炎症を和らげることで症状をコントロールして、寛解期を長く維持する薬物療法が治療の中心となります。
ただし、薬を使用しても治療効果が十分でない場合は、手術を行うケースもあります。たとえば、重症の潰瘍性大腸炎の場合は、大腸を全摘して小腸と肛門をつなぐ回腸嚢肛門管吻合術を行うことが一般的です。
まとめ
IBDは原因が特定されているものもありますが、ほとんどの場合は原因不明の潰瘍性大腸炎やクローン病のことを指します。いずれの病気も原因として疑われるものはあるものの、それらが確実に原因であるとは判明していません。そのため根治療法は存在しておらず、薬によって症状を緩和しコントロールする治療がメインとなります。重症であれば、外科手術を検討する場合もあります。
また、IBDは再発するケースも多く長期間の治療が必要です。さらに発症から長い年月が経つと、大腸がんリスクが高まります。そのため、IBDの症状の有無にかかわらずたとえ寛解期であっても、定期的に病院を受診して検査することが大切です。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師