クローン病とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/29

クローン病とは?原因、症状、治療法について解説

クローン病とは

クローン病は腸の粘膜に慢性的な炎症または潰瘍を引き起こす疾患である「炎症性腸疾患」の1つで、潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変からなり、口から肛門までの消化管のあらゆる部位に炎症が生じる疾患です。
病変が発症する部位によって分類され、病変が主に小腸に発生する「小腸型」、小腸と大腸の両方に発生する「小腸・大腸型」、主に大腸に発生する「大腸型」の3つの病型に分けられています。最も多いのは回腸(小腸の最後の部分)と大腸ですが、腸以外でも口から肛門までの全ての消化管に発症する可能性があり、非連続的に炎症が起こるのが特徴的です。 
 
日本では難病指定されている疾患ですが、患者数は年々増加し、4万人を超えるといわれています。男性は20〜24歳、女性は15〜19歳がピークといわれており、10〜20代の若年者に多く発症します。男女比は2:1と、男性に多くみられています。


 

クローン病の原因

クローン病の原因は、現段階では分かっていません。
しかし最近の研究では、なんらかの遺伝的な要因や環境因子(食生活や喫煙、細菌・ウイルスの感染など)の影響の結果として、腸粘膜に慢性的な免疫系の異常反応が生じることで発症すると考えられています。

  

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クローン病の症状

クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、病変が発症する部位によっても異なります。
その中でも腹痛と下痢の症状は、半数以上の患者さんにみられます。さらに発熱、体重減少、全身倦怠感、肛門周囲の異常などの症状が現れることもあります。 
 
クローン病の炎症は浅い粘膜から深い粘膜へと進行していきます。腸管壁の深くまで炎症が進行すると、腸にさまざまな合併症が起こることがあります。 
合併症としては、腸管の内腔が炎症によって狭くなる狭窄や腸管がもろくなり穴があく穿孔、腸管に穴があき、腸と他の臓器や皮膚の一部がつながってしまう瘻孔などがあります。 
炎症による粘膜障害で吸収不良や蛋白漏出が起こり、低栄養状態になることもあります。腸以外の全身の合併症では、関節痛や関節炎、アフタ性口内炎、虹彩毛様体炎、結節性紅斑などが挙げられます。
 
また、炎症が長い期間続くことで、小腸がんや大腸がんなどのいわゆる腸管悪性腫瘍を発症するリスクが高くなるといわれています。 
クローン病は、症状が落ち着いている状態(寛解期)と症状が悪化している状態(活動期)を繰り返しながら慢性的な経過をたどっていきます。

 
 

クローン病の検査方法

慢性的に腹痛や下痢、発熱、体重減少、肛門病変などが続き、感染性腸炎などの類似する疾患が除外されるとクローン病が疑われます。
まずは問診で薬の服用歴や海外渡航歴、既住歴などを確認し、クローン病が疑われた場合は検査をしていきます。 
検査方法としては以下のものがあります。
 

①血液検査

炎症反応や貧血の有無、栄養状態の確認を行います。
 

②便検査

便に血液や細菌が混じっていないか検査します。
 

③内視鏡検査

大腸内視鏡検査では、大腸や小腸の一部の粘膜を小さなカメラで観察し、狭窄や瘻孔、潰瘍、びらんなどの有無や部位を確認します。
また、クローン病は全ての消化管に発症する可能性があるため、上部消化管内視鏡検査で口から腸までの間にも病変がないか確認することもあります。内視鏡検査はクローン病の診断には必要不可欠な検査です。
 

④X線造影検査

造影剤を使用し、大腸から小腸を中心とした消化管全体の検査を行います。X線造影検査では、病変の位置や範囲を確認することができます。
 
他にも腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などがあります。
これらの検査や肛門所見などの理学的所見をあわせて、クローン病の診断を行っていきます。

 
 

クローン病の治療方法

治療に際して前述した問診のような物に答えていく必要があります。
現時点ではクローン病を完治させる根本的な治療法はありません。 
治療の目的は病気の活動性をコントロールして寛解状態を維持し、患者さんのQOLを高めることです。 
 
クローン病と診断された場合、まず重症度の判定が行われ、寛解状態を目指した治療(寛解導入療法)が行われます。その後、症状が落ち着いたら寛解状態を維持するための寛解維持療法を行います。 
治療法としては、薬物療法や栄養療法などの内科的治療法と外科的治療法があります。
 

①薬物療法

・アミノサリチル酸(5-ASA)製剤

主に軽症〜中症の場合に使用され、腸の粘膜の炎症を抑える効果があります。寛解導入だけではなく、寛解の維持にも用いられます。
 

・ステロイド製剤

5-ASAの効果が不十分だった場合や炎症が強くみられる場合など、主に中等症以上の場合に使用されます。
短期間の使用で寛解導入をはかるのが一般的で、寛解導入後は徐々に減量していきます。
 

・免疫調節薬

主に中等症以上の場合の寛解導入目的やステロイド薬の減量および中止と寛解維持を目的に使用されます。
 

・生物学的製剤

生体が作る物質(たんぱく質)を薬物として利用した薬です。
従来の治療ではなかなか炎症を抑えられない場合に用いられる強力な治療薬で、寛解導入だけでなく寛解維持療法にも用いられます。
 

・TNF-α 受容体拮抗薬

・血球成分除去療法

など
 

②栄養療法

栄養療法には経腸栄養と中心静脈栄養があります。経腸栄養は軽症〜中等症の場合に行われ、成分栄養剤や消化態栄養剤を経口もしくは胃管を通じて投与します。
中心静脈栄養は重症の場合や消化管狭窄などの合併症がある場合に行われます。 
いずれも腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的とし、寛解導入やその後の維持療法に用いられます。
 

③外科的治療

外科的治療の目的は苦痛の原因となる症状や合併症に外科的処置を加え、患者さんのQOLを改善することです。
根治的な手術は不可能であるため、あくまで姑息的に手術が行われます。多くは、狭窄や穿孔・大量出血などに対して腸管の切除を行います。

 
 

クローン病の予防方法

クローン病は原因が明らかになっていないため、明確な予防方法はありません。
しかし、先進国に多く北米やヨーロッパで高い発症率を示していることから、衛生環境や食生活が大きく影響していると考えられます。また、喫煙をする人は喫煙をしない人より発病しやすいといわれています。

 
 

まとめ

クローン病は厚生労働省の指定する難病の1つで原因ははっきりと分かっていません。
症状も一般的な消化器症状が多いため、気づかずに放置してしまう場合があります。
 
ですが、クローン病の炎症は腸の粘膜の深いところまで及ぶ傾向があるため、病状の悪化を防ぐためには発症の早期から積極的に治療を行い、炎症を抑えることが重要です。 
患者さんが通常の日常生活を送ることができるよう症状をコントロールし、病状とうまく付き合っていくことが大切になります。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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