その不調は貧血かも?症状・原因・危険な数値や食生活のポイントを解説
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その不調は貧血かも?症状・原因・危険な数値や食生活のポイントを解説
貧血を起こしているときの症状として、息切れや疲労感などが挙げられます。あなたがそのような不調を感じているのだとしたら、もしかすると貧血になっているのかもしれません。
そもそも貧血がどういったものなのか、考えられる原因や症状、貧血を改善するために注意したい食事のポイントをチェックしてみましょう。具体的な数値や数値化されにくい「かくれ貧血」についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
貧血とは
貧血とは、全身に酸素を運ぶ役目を持つヘモグロビンが減少することにより、酸素が供給されないことから不調を引き起こす状態のことです。具体的にどのような症状があるのか、また、どのような方が貧血に気をつけるべきなのかを解説します。
貧血の症状
血液の重要な働きは酸素を運ぶことで、赤血球中のヘモグロビンが酸素と結びつくことによって全身に運搬されます。ところが、ヘモグロビンが減少すると酸素が各器官に十分に供給されなくなり、さまざまな不調を引き起こすのが貧血です。
症状として、頭痛・眠気・疲れやすい・動悸・息切れ・めまい・血色不良などがみられるようになります。
貧血を起こしやすい方や注意すべき方
女性は月経や妊娠など出血に関わるライフイベントがあるため、男性に比べて貧血に注意する必要があります。毎月の月経、妊娠・授乳期には母子ともに鉄のほか多くの栄養素が必要です。また、子宮筋腫などの婦人科系疾患で貧血を起こす場合もあります。
そのほか、思春期に激しいスポーツをすると、汗と一緒に鉄分が流れ出て、激しい呼吸により酸素を消費した結果、鉄分不足が生じることもあります。また、高齢者も貧血に注意が必要です。食事量の低下により鉄などの栄養が不足することで、貧血になるおそれがあります。
貧血の原因
貧血の原因は、大まかに「鉄分の不足」「その他の栄養不足」「慢性疾患」「血液の病気」の4つに分けられます。それぞれの原因を解説し、関連のある疾患についてもご紹介します。
鉄欠乏性貧血
貧血の中でも特に多いといわれているのが、血液中に含まれる鉄分が不足している状態を指す、鉄欠乏性貧血です。
鉄分が不足する要因は、偏りのある食生活や過度なダイエットによる鉄分の摂取不足や、胃潰瘍・大腸ポリープといった消化管出血、月経により鉄を損失していることなどが挙げられます。そのほか、十二指腸潰瘍など消化器官の障害で鉄分が吸収できない状態でも貧血は起こります。
あるいは、成長期や妊娠期などで、多くの鉄を必要としている場合に普段の食事だけでは摂取量が足りていない、といった要因も考えられるでしょう。
胃潰瘍について詳しくはこちら
その他の栄養不足
胃切除後などによるビタミンの欠乏、栄養不良による葉酸の欠乏なども貧血を引き起こす要因となります。また、希少な例ではありますが、銅欠乏や亜鉛欠乏でも貧血が生じます。これらの栄養不足が貧血の原因となるのは、赤血球をつくるための栄養素が不足した結果、赤血球量が減少してしまうためです。
そのほか、アルコールの多飲でも貧血は引き起こされます。鉄の吸収を促進するビタミンCや赤血球の代謝を維持するビタミンB群が消費されるためです。
慢性疾患
慢性腎臓病、関節リウマチ、甲状腺疾患などの慢性疾患が原因で貧血が起こる場合もあります。慢性腎臓病になると貧血を生じやすいのは、赤血球を作るホルモンが減少してしまうためです。
関節の炎症を引き起こす関節リウマチや、代謝が低下する甲状腺疾患は、赤血球を作り出す機能が低下するため貧血に注意する必要があります。
関節リウマチについて詳しくはこちら
貧血を引き起こす病気
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がん・大腸がんなどの消化管疾患は、吐血や下血などの症状がしばしば見られることから、貧血と関連があります。多量の出血ではなく、便に少量の出血が混じる潜血といわれる状態でも要因となるため注意が必要です。
そのほか、子宮筋腫による経血の増加や白血病により赤血球の量が減少することでも貧血は起こります。
血液の病気
貧血が鉄欠乏性貧血・栄養不足・疾患による影響ではないと判断された場合、血液の病気であるおそれがあります。
具体的には以下のような血液疾患が考えられます。
- ● 血液を作り出す役目を持つ骨髄の機能が低下した「再生不良性貧血」
- ● 血液を作り出す骨髄で赤血球が作られなくなる「骨髄異形成症候群」
- ● 腫瘍化した白血球が増殖することで正常な血液の産生を妨げる「白血病」
- ● 骨髄で免疫細胞が異常に増殖することで血液の産生を阻む「多発性骨髄腫」
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貧血の検査
貧血を調べるためには血液検査を行います。見極めに必要な項目は、「赤血球数」「ヘモグロビン濃度」「ヘマトクリット値」の数値です。項目ごとの基準値と貧血と判断する数値について解説します。
赤血球数
血液中に含まれる赤血球数の基準値は、男性が410万〜530万個/mm、女性が380万〜480万個/mmです。この基準値を下回ると貧血と診断されます。さらに、200万個/mmを下回るようであれば重度の貧血です。
ヘモグロビン濃度
ヘモグロビンは鉄原子を含むヘムとタンパク質から成り立っており、ヘムは赤い色素を持っています。そのためヘモグロビンは赤色をしていることから「血色素」ともいわれており、酸素を全身に運ぶ大切な役割をもっています。そのヘモグロビンが赤血球中に含まれる割合を示したものがヘモグロビン濃度です。
ヘモグロビン濃度の基準値は男性が14〜18g/dl、女性が12〜16g/です。男性が13g/dl以下、女性が11g/dl以下で貧血とみなされます。基準値より1〜2g/dl低い段階では、自覚症状はほとんどありません。
ただし、男女ともに10g/dl以下になった場合は、中等度から重度の貧血と判断します。
ヘモグロビンについて詳しくはこちら
ヘマトクリット値
ヘマトクリット値は一定の容積の血液中に含まれる赤血球の割合を表す数値のことであり、貧血の診断に欠かせない項目の一つです。ヘマトクリット値の基準値は男性が40〜50%、女性が35〜45%とされており、基準値より低い場合は貧血が疑われます。
なお、妊娠中は数値が低く出る場合もあるほか、大量の発汗で脱水状態になると数値が高く出ることもあるため、数字を鵜呑みにせず身体の状態も把握することが大切です。
数値にあらわれない「かくれ貧血」とは
「かくれ貧血」とは、別名「潜在性鉄欠乏症」といいます。数値にはあらわれないものの、体内の貯蔵鉄が不足しており、放置すると貧血になるおそれがある状態です。
体内にある鉄分の大半はヘモグロビンに含まれていますが、およそ1/3は血液中のフェリチンに含まれています。そのため、ヘモグロビン値が正常であっても、フェリチン値が低下すると頭痛やめまい、不眠、疲労感などの症状が生じるのです。
一般的な血液検査にはフェリチン値は含まれていません。しかし、かくれ貧血と診断するためには、フェリチン値を調べる必要があります。
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鉄分摂取量の目安や組み合わせるといい栄養素とは
貧血にならないためには、1日に必要な鉄分量を確保するとともに、鉄と相性のよい栄養素も併せて摂取することが大切です。本項では、1日に必要な鉄分摂取量の目安と、鉄と組み合わせのいい栄養素について解説をします。
1日の鉄分摂取量の目安
1日における鉄分摂取量として推奨されている量は、成人男性で7.5mg、月経のある女性で10.5mgから11mg、閉経した女性であれば6.5mgとされています。
人間は1日に男性の場合で約1mg、女性の場合で約0.8mgの鉄を消費しています。また、女性は1回の月経で、10〜80mgほどの鉄分を排出してしまいます。鉄分は体内で合成できない栄養素であるため、日々の食事から補わなければなりません。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違い
食品中に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄に分類されます。ヘム鉄はレバーや赤身の肉、魚などに多く含まれており、非ヘム鉄は野菜や卵、牛乳などに含まれています。
ヘム鉄の方が吸収率が高いため、積極的に摂取するようにしましょう。肉や魚などのたんぱく質が、鉄の吸収を促進するといったメリットもあります。
鉄分と合わせて摂るのがおすすめの栄養素
鉄の吸収を高めるためには、たんぱく質のほかにビタミンCを摂取することも大切です。また、葉酸やビタミンB12は赤血球の産生を促します。
レバーは鉄・たんぱく質・葉酸・ビタミンB12を含むため、貧血改善に万能な食材です。併せてビタミンCを多く含むパプリカやブロッコリーといった緑黄色野菜や、イチゴやオレンジなどの果物を摂るとよいでしょう。
また、胃酸が分泌されることでも鉄の吸収が良くなるといわれています。そのためには酸っぱいものを食べたり、よく噛んだりすることが効果的です。
まとめ
貧血の大半は鉄が欠乏することによる貧血です。しかし、それ以外の原因として栄養不足や病気が原因で起こる場合もあるため、単なる貧血だと思って見過ごさないことが大切です。
鉄分はもちろん、タンパク質やビタミンCなどを摂取することを意識し、不調が改善されない場合は医師の判断を仰ぎましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師