心膜炎とは?胸が痛い症状の原因、治療法を解説
- クリニックブログ
心膜炎とは?胸が痛い症状の原因、治療法を解説
「胸が痛い」「もしかして自分は心膜炎なのかも?」と不安に思っていませんか?
心膜炎とは、ウイルス感染など何らかの原因で心膜が炎症を起こし、胸痛が起こる病気のことです。
多くの場合、風邪のような症状が先に出る場合があり、見過ごされやすい病気です。
この記事では心膜炎の基本的な知識から原因、症状、そして治療方法をわかりやすく解説します。
特に、最近胸が痛いと感じることが多い方はぜひ参考にしてみてください。
心膜炎とは?
心膜炎とは、心臓を覆っている薄い膜である「心膜」の炎症です。
心膜炎を発症し、心膜間に液体が溜まると、心臓の機能に影響が生じる恐れがあります。
さらに詳しく解説します。
心膜とは
心膜は、心臓の外側を覆う厚さ3mm未満の二層の膜です。
心膜は袋状になっており、層の間の空間は心嚢と呼ばれています。
この心嚢には心嚢液という液体がわずかに貯留しており、心嚢液は外部からの衝撃緩和や、心臓の円滑な動きを保つための潤滑剤として機能しているのです。
何らかの原因で心膜が炎症を起こすと、心嚢液がたくさん溜まってしまい、心臓のポンプ機能を阻害してしまいます。
心膜炎の種類
次に心膜炎の種類について解説します。
急性心膜炎
急性心膜炎は突然発生する心膜の炎症です。
感染症や外傷、自己免疫反応などで心膜に炎症が起こることで発症します。
主な症状は胸痛や発熱、呼吸困難などです。
また「急性心膜炎」は突如として発症してしまうものですが、症状が半年以上もの間続く場合は「慢性心膜炎」と診断されます。
心タンポナーデ
心タンポナーデは心膜炎が進行するなどして心嚢に大量の液体が溜まってしまい、心臓の働きを阻害してしまっている状態のことです。
心嚢液が溜まることで心嚢内の圧が上昇し、心臓のポンプ機能が障害され全身へ血液が十分に送り届けられなくなってしまいます。
心タンポナーデの状態が持続すると、血圧が急低下しショック状態に陥る恐れがあります。
胸の痛みや、呼吸困難など重篤な症状が出ている場合には、早期に循環器内科を受診しましょう。
心タンポナーデについて詳しくはこちら
収縮性心膜炎
収縮性心膜炎は、心膜炎が少しずつ進行した結果として生じる病気であり、心膜が繊維化・石灰化するなどして癒着することで心膜が硬くなってしまうという病気です。
心膜は心臓を覆う膜なため、心膜が硬くなると心臓の拡張と収縮が妨げられ、心臓のポンプ機能が低下してしまいます。
心臓に流れ込む血液量および全身へ送り出す血液量も減り、さまざまな全身症状を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。
心膜炎の原因
心膜炎の主な原因や、昨今話題となっている新型コロナワクチンによる心膜炎の特徴について解説します。
急性心膜炎のほとんどはウイルス感染症
急性心膜炎の大部分は、ウイルス感染症が原因と考えられています。
原因と考えられているウイルスの種類は、コクサッキー、エコー、アデノウイルスなどです。
しかし、ウイルス感染が急性心膜炎の原因であるという証明するのは難しく、原因を特定できない「特発性急性心膜炎」と診断されるケースも多く見られます。
原因として考えられる疾患
急性心膜炎は、ウイルス感染以外の原因で発症する可能性もあります。
主な原因疾患を次に示します。
- ● 膠原病、自己免疫性疾患
- ● がん
- ● 心筋梗塞の後、尿毒症
- ● その他(薬剤性、放射線性、外傷性、また心臓手術後など)
膠原病について詳しくはこちら
日本の新型コロナワクチンによる心筋炎・心膜炎の特徴
新型コロナワクチン接種後、心筋炎や心膜炎の発症する報告が話題です。
日本循環器学会の声明によると、「新型コロナウイルスワクチン接種後の急性心筋炎と、急性心膜炎の発症率は、新型コロナウイルス感染後の急性心筋炎と急性心膜炎の発症率に比較して極めて低い。」と報告されています。
また、症状も軽症であった報告が大半です。
日本循環器学会は、新型コロナウイルスワクチンの利益と危険性を比較すると利益の方が上回るという見解を示しています。
ただし、新型コロナワクチン接種後に気になる症状が出た際には、速やかに循環器内科を受診しましょう。
心膜炎の症状
心膜炎は軽症の場合が大半ですが、重症化すると心タンポナーデや収縮性心膜炎などを引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
胸の痛みには要注意
胸の痛みは循環器疾患の特徴的な症状です。
さらに症状は呼吸や咳、体を動かした際に強くなる傾向にあります。
心臓の機能が障害されている恐れがあるため、気になる場合は循環器内科を受診しましょう。
心膜炎を早期発見するポイント
心膜炎を早期発見するポイントは、胸の痛みです。
胸の痛みに加えて、以下のような症状が現れた場合には速やかに専門医の診察を受けましょう。
- ● むくみ
- ● 倦怠感
- ● 息苦しさ
- ● 疲れやすい
軽症であることが大半ですが、心筋炎や心タンポナーデを合併した場合は非常に危険ですので注意が必要です。
心膜炎の検査と治療方法
早期発見と治療は、合併症を防ぐうえで非常に重要です。
病状を正確に把握するための検査と、痛みや炎症を管理する治療法について解説します。
心膜炎の原因を特定するための検査
心膜炎の診断は、患者の症状や身体検査に基づいて、心電図、血液検査、心臓超音波検査、胸部レントゲン検査などが行われます。
心電図検査は心臓の電気刺激を記録し、心臓のリズムや活動に異常を確認する検査です。
心膜炎の場合、90%の患者で心電図異常が現れるため、初期診断で使われます。
心電図検査は、体の6ヶ所に電極を取り付け仰向けになり数分で完了するため、負担が少ない検査です。
血液検査では白血球や、体に炎症が起きていることを示すCRPが上昇します。
心膜の肥厚や、心嚢液の溜まり具合を確認する心エコー検査、胸部レントゲン検査、必要に応じて心臓MRI検査や心臓カテーテル検査、心膜の組織を採取する病理検査も行い原因を特定します。
心膜炎の治療方法
心膜炎の治療では、症状の軽減と炎症抑制を目的として、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)であるアスピリン、痛風発作の際によく使われるコルヒチンなどが投与されます。
重症の場合や心タンポナーデが発生した場合には、二層の心膜の間(心嚢)へ針を刺し溜まった心嚢液を排出する処置も必要です。
ウイルス感染以外が原因の場合は、原因疾患の治療が求められます。
まとめ
この記事では心膜炎の基本的な知識から原因や症状、そして治療方法まで解説しました。
心膜炎はウイルス感染が原因となっていることが非常に多いため、手洗い・うがいなどの感染予防を行い、胸の痛みなど気になる症状が現れた場合には循環器内科を受診するようにしましょう。
当院の循環器内科についてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師