未破裂脳動脈瘤は無症状!2つの手術とくも膜下出血のリスクや予防法を解説

  • クリニックブログ
2023/12/15

未破裂脳動脈瘤は無症状!2つの手術とくも膜下出血のリスクや予防法を解説

検査をして脳動脈瘤が見つかると、経過観察とするのか手術をするのか医師と相談することになるでしょう。
未破裂脳動脈瘤は症状がないことが多いので、いつ破裂するか分からないといった恐怖も芽生えるかもしれません。
 
本記事では、脳動脈瘤とは何か、治療方法、万が一破裂した場合に生じるくも膜下出血のリスクや予防法をご紹介します。
脳動脈瘤の知識を深め、ご自身あるいはご家族の治療方針検討にお役立てください。

頭痛を訴える女性
 
 

脳動脈瘤とは?症状はないって本当?

そもそも脳動脈瘤とは何でしょうか。
まずは脳動脈瘤の概要や症状について解説します。

脳動脈瘤とは

脳動脈瘤とは、血管の壁が薄くなり脆くなった部分に血液が入り、膨らんだコブのことです。
発生する要因は未だ解明されていませんが、高血圧・喫煙・動脈硬化・遺伝などが関係しているともいわれており、割合にして100人中1〜5人が有しているとされています。
 
診断には、造影剤やカテーテルを使用せずに脳血管を撮影できる頭部MRAを用いることが一般的です。
さらに細かく動脈瘤の形やサイズを確認する必要がある場合は、造影剤を使用したCT検査を行います。
脳血管の状態や血流をみる際は、カテーテルを使用した血管造影検査を行うこともあります。
 

脳動脈瘤の症状

脳動脈瘤は、未破裂と破裂に大別できます。
動脈瘤が破裂するとくも膜下出血をおこし、頭痛などの症状が現れますが、破裂していない場合はおおむね症状が見られません。そのため、脳ドックやめまいなどの症状で検査をした場合に偶発的に見つかることが多いでしょう。
 
ただし動脈瘤が増大すると、場所によっては視神経を圧迫し、物が二重に見えるなどの症状が現れることもあります。

 
 

脳動脈瘤の治療方法

では、脳動脈瘤が実際に見つかってしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。
治療適応の基準や手術についてご説明します。

脳動脈瘤の治療適応

まず前提として、動脈瘤は必ず治療しなければならない、というわけではありません。
動脈瘤の治療適応は以下のような基準が定められています。

 

  • ● 大きさが5mm以上の場合
  • ● 大きさが5mm未満であっても、有症状・形がいびつ・破裂しやすい部位にあるなど、破裂リスクが高い場合

 
上記に該当する動脈瘤は治療を検討する必要がありますが、サイズが小さく破裂リスクが低いと判断される動脈瘤は経過観察とします。
無理に手術を行うことで、逆に危険が及ぶ場合があるためです。
 
もちろん、小さければ安全という保証はないので、定期的に頭部MRAで検査をすることが大切です。
発見されたばかりの段階ではサイズが増大する可能性もありますので、見つかってから2〜3年は半年〜1年程度のスパンで見ていくのがよいでしょう。
 

脳動脈瘤の手術

手術の方法は動脈瘤の形状や発症部位などを加味して決定されます。

血管内手術

血管内手術とは、血管の中にカテーテルと呼ばれる細い管を通して動脈瘤まで到達させ、コイルで動脈瘤内部を詰めるという手法です。
コイルの周りに血栓がつくられることで固まり、破裂を防ぎます。
手術痕が残らず体への負担が少ないことがメリットとして挙げられますが、再発しやすいことがデメリットです。
 
動脈瘤のサイズが10mmを超える場合はコイルでは血流遮断が不十分なため、フローダイバーターステントを用いた手術を行います。
動脈瘤のある血管にステントを留置することで、動脈瘤内の血栓化を促す治療法です。

 

クリッピング術

クリッピング術は頭部の皮膚を切開し頭蓋骨を開け、動脈瘤の根元をクリップで挟むことで血流を遮断する手法です。
感染症などの合併症が生じるリスクは高く、痛みも伴います。
しかし、再発率が低く、根治に優れている点は利点といえるでしょう。

 
 

くも膜下出血のリスクとは

くも膜下出血は命を落とす危険性のある恐ろしい病気です。
ここではそのリスクや発症原因を解説します。

くも膜下出血とは

くも膜下出血とは、脳動脈瘤が破裂することで脳の表面が出血することです。
発症すると、バットで殴られたような激しい頭痛や嘔吐、手足の麻痺などが生じ、場合によっては意識を失うこともあります。
一度破裂すると約半数は死に至るか昏睡状態となり、正常に社会復帰できるのは全体の約1/3ともいわれます。

 

くも膜下出血を発症する原因

くも膜下出血は、動脈瘤が破裂することで起こります。
しかし、まれに脳動静脈奇形やもやもや病による血管の破裂や、頭部を強打することでも発症します。
 
一方で、男性に比べ女性のほうが発症しやすいといわれているのはご存じでしょうか。
その理由は、妊娠による高血圧や血管の拡張、動脈硬化を抑制する女性ホルモンが年齢とともに減少していくためです。
これらの要因は、動脈瘤が生じることにつながる可能性があるといわれています。
また、ストレスもくも膜下出血のリスクを高めます。
 

破裂率はどのくらい?

「日本脳神経外科学会主催研究」によると、日本人を対象にした未破裂脳動脈瘤の破裂率は、年間0.95%とされています。
100人中1人が破裂する割合であり、破裂予防に努めていくことが大切です。

 

 くも膜下出血については詳しくはこちら

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くも膜下出血の治療と予防

くも膜下出血の治療方法や今日からできる予防について解説します。

くも膜下出血の治療方法

くも膜下出血に対する治療も、未破裂脳動脈瘤の術式と同様、脳血管内手術またはクリッピング術のうち、より適している方を選択します。
 
くも膜下出血の治療においては、合併症にも注意しなければなりません。
脳血管が細くなることにより脳梗塞が起こりやすくなる脳血管攣縮や、脳室内に髄液がうっ滞することで脳室が拡大する水頭症などを発症する危険性があります。
 
予後をできるだけいい状態にするためにも、動脈瘤の処置と併せて早急に出血を洗浄することが大切です。
 

くも膜下出血の予防

脳動脈瘤の破裂を防止するには、血圧管理が重要です。
高血圧になると動脈瘤にかかる圧が高くなるため、破裂率を高めることにつながります。
 
そのほか、喫煙習慣や運動習慣が少ないこと、過度の飲酒(1日あたりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上)をすることも、くも膜下出血のリスクを高めます。
まずは禁煙や飲酒を控えるなど、生活習慣を見直すことから始めましょう。
 
また、脳動脈瘤や脳梗塞などの家族歴がある場合も要注意です。
症状がある場合はもちろん、無症状でも一度脳ドックなどで検査を受けることをおすすめします。

 
 

まとめ

未破裂脳動脈瘤は、見つかった段階ではいつ破裂するのか誰にも分かりません。
だからこそ、定期的な検査を行い、場合によっては手術を検討することも必要です。
 
手術は形状や発症部位により、コイル塞栓術かクリッピング術かを選択します。
どちらも一長一短のため、医師とよく相談することが大切です。
命に関わるくも膜下出血を予防するためにも、まずは飲酒や喫煙を控え、健康的な生活を送っていくことから始めていきましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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