百日咳は大人と子供(赤ちゃん)では症状が大きく違う!予防や治療を解説

  • クリニックブログ
2023/12/11

百日咳は大人と子供(赤ちゃん)では症状が大きく違う!予防や治療を解説

「百日咳はどのような病気?」
「咳が長引いているけど、これは百日咳?」
「大人の症状と子供の症状に違いはある?」
このような疑問はありませんか?
 
百日咳はインフルエンザやおたふくかぜほど身近に感じにくい病気のため、詳しく知らないのも仕方ありません。
本記事では、百日咳の特徴や原因、大人と子供や赤ちゃんとの症状の違い、予防法や治療法について解説します。

患者様に聴診器をあてる男性医師
 
 

百日咳とは

百日咳は子供がかかる感染症だと思う方が多いですが、そうではありません。
大人でも感染する可能性は十分にあるのです。
以降では、百日咳の特徴、症状や潜伏期間、原因や感染経路について解説します。
詳しく百日咳について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

特徴

百日咳とは、百日咳菌が原因の感染症で、その名の通り咳が長引くのが特徴です。
乳幼児の時期に受けた定期予防接種の効果が低下した大人の発症が問題となっています。
百日咳は第五類に入る感染症であるため、感染が確認された場合は7日以内に届出が必要です。
 
大きな特徴として、大人と子供で大きく症状が違うことがあげられます。
子供は、感染すると重症化しやすいため注意が必要です。
 

症状・潜伏期間

百日咳の潜伏期間は約7日〜10日で、発症すると徐々に激しい咳発作があらわれます。
「短い咳が連続的に起き、咳が終わるとヒューと音を立てて大きく息を吸い込み、痰が出ておさまる」といった症状を繰り返すのが百日咳の特徴です。
人によっては嘔吐や無呼吸発作の症状があらわれることもあります。
 
初期は軽い風邪のような症状ですが、次第に咳の症状は重くなり、回復期に突入すると激しい咳発作は次第に落ち着きます。
ただし、回復期に入ったからといって、発作性の咳は時折みられるため注意は必要です。

 

原因・感染経路

百日咳は、百日咳菌が呼吸器に付着すると感染し、潜伏期間を経て発症します。
強い感染力を持っているため、ワクチン未接種の赤ちゃんの場合は感染者の飛沫により非常に高い確率で感染することが報告されています。
基本的な感染経路は、百日咳を保有している方からの飛沫感染です。

 
 

大人と子供(赤ちゃん)の症状の違い

「百日咳は子供がかかる感染症」と思われやすい理由は、大人の子供の症状の違いが原因でもあります。
大人と子供では大きく症状が異なるため、この機会に確認しておきましょう。

大人は普通の風邪との見分けが難しい

大人が百日咳を発症しても症状は軽く、普通の風邪とあまりかわらないため風邪と見分けるのはとても困難です。
大人だけでなくワクチン接種をした方も同様で、百日咳特有の咳症状が見受けられないため、普通の風邪と勘違いして過ごす傾向にあります。

 

子供や赤ちゃんは重症化しやすい

子供や赤ちゃんは、大人とは違い百日咳を発症すると重症化しやすいのが特徴です。
特に3〜6か月の乳児の重症化リスクが高く、呼吸困難による心肺停止、肺炎、脳症の合併が見られるケースもあります。
6か月未満は命を落とす危険性が高い病気であるため、とくに家庭内で感染者が出た場合は感染しないよう細心の注意が必要です。

 
 

百日咳の予防法

予防法は、未就学児と大人とで違います。
それぞれの予防法を紹介するので、百日咳にかからないよう対策につとめましょう。

未就学児の予防法

未就学児であれば、乳幼児期にDPTまたはDPT-IPVワクチンを接種するため、抗体があります。
ただし、4~12年で免疫力が低下してしまうため、追加接種して予防することが望ましいです。
未就学児は幼稚園や学校などで感染する可能性があるため、手洗いうがいをこまめにし、感染症対策を日頃から行うことが大切です。
 

 百日咳のワクチンについてはこちら

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大人の予防法

大人のワクチン接種は、日本では基本的に行われていません。
ただし、年齢、予防接種歴を問わず、家族や濃厚接触者については予防投与されるケースもあります。
 
たとえば、妊婦さんや子供がいる家庭で家族に感染者がいる場合は、感染予防・感染拡大予防のために追加接種が可能です。
ワクチンで得られる効果の持続期間は4〜12年です。
 
子供と同様に、外出後や食事前は手洗いうがい実施が推奨されています。
発症を防ぐためにも、呼吸器に百日咳菌を付着させないことが大切です。

 
 

百日咳の診断と治療方法

百日咳の診断方法と治療方法を紹介します。
医療機関を受診した際、どのような流れで検査や治療が行われるのか知りたい方は、ご覧ください。

診断方法

子供や赤ちゃんの場合は百日咳特有の症状から臨床診断が可能ですが、大人は症状からの診断は困難です。
そのため、診断を確定させるために、培養検査や百日咳菌の遺伝子検査、血液検査を実施します。
ただし、培養検査は、ワクチン接種経験者や菌量の低い青年・大人からの菌分離は難しいため向いていません。
 
なかでも感度が高いのは、百日咳菌の遺伝子検査です。
日本では、2016年11月から健康保険適用となった「百日咳菌LAMP法」で遺伝子検査を行っています。
PCR法による検査も可能ですが、特別な医療機関でしか受けられないため、診療所でも受けられるLAMP法が一般的です。
LAMP法は結果も早くわかり、数日で陽性か陰性が判明します。
 
日本における血液検査は2016年に健康保険が適用されるようになりました。
血液検査は、百日咳菌に対するIgM、IgA抗体を測定する検査キットで行われます。

 

治療方法

百日咳の治療では、マクロライド系の抗菌薬が投与されます。
「カタル期」といわれる初期に「アジスロマイシン」や「エリスロマイシン」を投与することで、治療がスムーズに進みます。
ただし、エリスロマイシン投与は生後6か月以上の患者に限られた治療方法で、新生児の場合にはアジスロマイシンでの治療が基本です。
 
投与期間は約1週間で、次第に感染力はなくなっていきます。
咳発作への治療には鎮咳去痰剤が用いられ、ケースによっては気管支拡張剤を使用することもあります。

 
 

まとめ

大人の百日咳は風邪と同じような症状であるため、受診せずそのまま過ごす方が多く見受けられます。
しかし、子供と接触する可能性のある方は受診しないと子供に感染させ、重症化させてしまう可能性もあるためとても危険です。
 
咳が出る場合、手やハンカチなどで口を押さえ、マスクを着用するなど飛沫が飛び散らないようにしましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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