腹膜炎は命にかかわる危険な病気!歩くと痛いケースや原因・治療法
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腹膜炎は命にかかわる危険な病気!歩くと痛いケースや原因・治療法
「腹膜炎とはどんな病気なの?」
「原因や症状は?」
「歩くとおなかが痛くなるのは腹膜炎のせい?」
このような疑問や不安はありませんか?
腹膜炎はとくに急性の場合だと、命にかかわるため緊急を要するケースが多いです。
本記事では、危険な病気として知られる腹膜炎の原因や症状、歩くと痛い腹痛に関する腹膜炎の可能性について解説します。
腹膜炎とは?
腹膜炎とはどのような症状なのか、特徴や原因、発症メカニズム、症状を解説します。
概要
腹膜炎とは、胃・肝臓・小腸・大腸の外側と内側の壁、横隔膜、骨盤底を覆っている腹膜が、何かしらの原因で炎症を起こしている状態です。
「急性腹膜炎」と「慢性腹膜炎」があり、それぞれ症状や緊急性が大きく異なります。
さらに、一部のみ炎症を起こした「限局性」と、全体的に炎症がみられる「汎発性」に分類されます。
急性腹膜炎を発症した場合、症状レベルが重たくなると細菌の感染が全身に広がり、敗血症や多臓器不全を起こして命を落とす危険があるため、速やかに治療を行わなければなりません。
原因
発症原因は疾患の悪化で、急性か慢性かで原因疾患は異なります。
急性腹膜炎
胆のう炎、虫垂炎、急性すい炎,胃潰瘍穿孔(いかいようせんこう)十二指腸潰瘍穿孔(じゅうにしちょうかいようせんこう)、大腸穿孔(だいちょうせんこう)などが原因の一因です。
虫垂炎について詳しくはこちら
慢性腹膜炎
がん、結核、特発性細菌性腹膜炎(肝硬変の合併症)などが原因の一因です。
メカニズム
発症原因となる疾患は、大きく分けて消化器官に穴があく穿孔(せんこう)と細菌感染の2つです。
消化器官に穴があいた場合、消化液や便が腹腔に漏れ出て発症します。
細菌感染の場合では、肝臓や胆のうなどの臓器が細菌感染を起こし、その炎症が腹膜に広がることが発症のメカニズムです。
症状
「急性腹膜炎」と「慢性腹膜炎」それぞれの主な症状は以下のとおりです。
急性腹膜炎
急性腹膜炎は、名前のとおり突然発症しますが、前兆として腹部の不快感があらわれることもあります。
急激な腹痛、持続的な激痛、痛みの広がり、歩くと痛むなどが主な症状となります。
慢性腹膜炎
慢性腹膜炎は急性とは違い、突然激しい腹痛に襲われることは基本ありません。
症状の進行はおだやかで、2~3か月程度、食欲不振や腹痛、微熱、全身の倦怠感がみられ、症状が引いたりあらわれたりと波があります。
炎症の範囲による症状の違い
腹膜炎は炎症範囲によってもあらわれる症状が異なります。
汎用性は限局性よりも炎症範囲が広いため、強い痛みや吐き気・嘔吐の症状が出やすいです。
加えて、頻脈や速くて浅い呼吸、敗血症を伴うこともあります。
敗血症を起こしている場合は、血圧低下・頻脈・尿量減少といった症状がみられます。
敗血症について詳しくはこちら
歩くと痛い腹痛は「骨盤腹膜炎」の可能性がある
女性で歩くと響くようにお腹が痛いと感じる場合は「骨盤腹膜炎」かもしれません。
以降では、特徴、原因、症状、放置するリスクについて解説します。
概要
骨盤腹膜炎とは、膀胱、直腸、子宮、卵管の表面を覆っている骨盤腹膜が炎症を起こしている状態です。
骨盤腹膜炎にも急性期と慢性期があり、それぞれの状態で症状は異なります。
女性が歩く振動でお腹が響くように痛むケースは、女性特有の疾患が原因である可能性があります。
原因
女性の発症原因は、子宮頸管炎、子宮内膜炎、子宮付属器炎、子宮頸管炎です。
もともと子宮頸管炎だったものが、徐々に上の臓器に感染が広がることで骨盤腹膜炎を発症します。
子宮頸管炎、子宮内膜炎、子宮付属器炎、子宮頸管炎の発症原因の例は以下のとおりです。
原因例
- ● 性行為によるクラミジア
- ● トラコマチス感染
- ● 子宮内避妊器具(IUD)の長期装着
- ● 開腹手術後の細菌感染
症状
骨盤腹膜炎の症状は、下記のとおりです。
急性期
急性期は緊急を要する状態であるため、早急に受診しなければならない状態です。
下腹部全体の持続性のある痛み、悪寒・震えを伴う高熱(39℃以上)、悪心、嘔吐などの症状があります。
慢性期
慢性期になると骨盤内の臓器が癒着を起こし、下腹部痛、腹部膨満感、下痢、便秘といった症状に変わります。
放置すると不妊につながるケースも
骨盤腹膜炎を治療せずに放置すると、子宮と後ろ側の壁に癒着が起こり、不妊の原因になることがあります。
「歩くと振動でお腹に痛みが走る」という方で妊活をしている方は、早めに治療を受けて不妊を予防しましょう。
腹膜炎の検査と治療法
腹膜炎が疑われる場合の検査方法と、診断された場合の治療法を解説します。
検査方法
以下のような検査方法が行われます。
- ● 血液検査
- ● 腹部X検査
- ● CT撮影
- ● 腹水検査
- ● 細菌検査 など
血液検査では、白血球数の増加やCRPの上昇をチェックし、炎症を起こしているかどうかを診断します。
腹部X検査やCT撮影では、腹部内の状態を確認することでどの消化器に穴があいているのか、腹腔内に空気が溜まっているかどうかが分かります。
腹水検査は、腹水の性質と状態をチェックするために行われるため、検査対象となるのは腹水がみられる方のみです。
細菌検査は、原因菌を突き止め、どのような薬が効果的かを調べるために行います。
治療方法
腹膜炎は、原因疾患を治療することで改善できます。
具体的には、消化管穿孔がみられる場合は穴を塞ぐ手術、虫垂炎の場合は虫垂を切除する手術、腹腔内の汚染が確認された場合は洗浄を行う手術を行います。
ただし、急性腹膜炎のなかでも骨盤腹膜炎は、絶対安静の入院と作用の強い抗生物質で治療をスタートさせます。
手術は、薬の効果がみられない場合に行うのが一般的です。
慢性腹膜炎の場合は、抗生物質で細菌を除去する治療が基本で、腹水が溜まっている場合は水抜き治療も行います。
腹膜炎の予防方法とは
腹膜炎の発症原因は多岐にわたるため、確実に予防する方法はないに等しいです。
強いていえば、感染症や潰瘍、穿孔などの疾患を早期に治療することで予防することが可能とされています。
体調不良が続いている場合や気になる症状がある場合は受診し、体の状態を確認することが大切です。
まとめ
腹膜炎の原因となる疾患や症状の強さ、炎症の範囲はさまざまです。
少しでも「胃腸に違和感を覚える」「歩くと響くように腹痛が起きる」といった場合は、早めに受診することで発症を予防でき、また治療もスムーズになります。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師