急性虫垂炎とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/30

急性虫垂炎とは?原因、症状、治療法について解説

急性虫垂炎とは

何らかの原因により、腸の一部の虫垂という部分が炎症を起こし、発症する病気です。
虫垂は、大腸の一部であり、大腸の一番奥の盲腸という部分にくっついた小さな臓器です。右下腹部に位置しています。
以前は「盲腸」と呼ばれることが多かった病気です。正しくは虫垂の炎症のため、「急性虫垂炎」と呼ばれることが一般的になってきています。
 
急激に発症した腹痛のなかで、診断や治療、主に手術などの迅速な対応を必要とするものを急性腹症といい、その原因として最も多いのが、この急性虫垂炎です。男女関係なく幅広い年齢に生じることがありますが、特に10〜20歳代に発症が多いといわれています。乳幼児や高齢者、妊婦も発症します。
化膿性の炎症性の病気で、炎症の度合いによって重症度が分類されています。カタル性、蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)、壊疽性(えそせい)といった順に進行していき、膿瘍形成や穿孔(せんこう)などの合併症も引き起こす可能性もある病気です。右下腹部に激しい腹痛の症状が出るのが特徴で、手術をする場合も少なくありません。処置が遅れると命に関わることのある病気です。


 

急性虫垂炎の原因

実は急性虫垂炎の原因は、すべてが解明されているといったわけではない病気です。原因が特定出来ない場合も多く、様々あるようです。
糞石(便のかたまり)や食物残渣(口の中に残された食べ物のカス)などの異物、リンパ組織の腫大、腫瘍などが原因となり生じることもあるとされています。
それらが原因となり、虫垂の入り口などが塞がれてしまうことで、内圧の上昇、循環障害が生じていき、二次的にウイルス・細菌感染が加わることによって発症するとされています。
 
また、ストレス、食べ過ぎや飲み過ぎなどの食生活や、不規則な生活、運動不足、便秘や疲れなどの日頃の習慣によっても起こりうる可能性があることも考えられているようです。

  

急性虫垂炎の症状

最初の初期症状としては、腹部の張り、胃痛やみぞおち辺りの痛み、お腹のどの辺とははっきりしないが、周期的に重苦しいような痛み、また、ちくちく、やけるような痛みから始まります。腹痛の症状が現れてくる前には、下痢や便秘が認められることが多いです。その他の症状には、食欲不振、悪心・嘔吐などが現れることもあります。その後数時間〜1日後に、右下腹部に痛みが移動し、激しい腹痛の症状が出ることが多く、また、炎症が進むと軽度の発熱(37℃台が多い)を伴うこともあります。
 
ただ、人によって現れる症状やその症状の程度も変わってくるので判断が難しい病気でもあります。特に乳幼児や高齢者、妊婦では訴えが分かりづらかったり、症状がはっきりしなく、症状が軽いこともあります。症状は軽くても病状自体は悪化する上に、放っておいても自然に良くなることはありません。急性虫垂炎は炎症が比較的早く進む病気です。気づいたら、病院に行ったら、そのときには重症になっていた、という可能性もあるので注意が必要です。

 
 

急性虫垂炎の検査方法

急激に発症した腹痛、右下腹部痛の症状のある他の病気と鑑別していく為に、以下の検査方法でまず状態を評価し、身体所見など含めた総合的判断で、確定診断をしていきます。
 

1 医師による問診、触診

 

2 血液検査

炎症によって白血球が増加したり、炎症の程度を反映するCRPという検査項目の数値が上昇することがあります。
 

3 X線検査

盲腸の拡張や虫垂内のガス像が見られます。
 

 

4 腹部超音波検査や腹部CT検査

腹部超音波検査では炎症を起こしている虫垂の腫大や、虫垂壁の構造の変化などを見ていくことができます。
急性虫垂炎の診断において、非常に有用です。
 

 
また、診断にもっとも有用とされている検査に腹部CT検査があります。腹部CT検査では、腫大した虫垂や糞石の他、周囲への炎症の波及も見ることができます。
そのため、炎症の広がり、合併症の有無の検索にも有用です。他にも、腹部CT検査により他疾患との鑑別をすることができます。

 
 

急性虫垂炎の治療方法

急性虫垂炎の治療方法には、内科的治療と外科的治療とがあります。内科的治療は抗生物質による薬物療法などがあります。
また、腹膜刺激症状を欠く軽症例によっては、絶食をするという治療方法もあります。
 
外科的治療は、手術により虫垂の切除を行います。手術を行う場合として、強い痛みがある場合や、検査結果の炎症反応が強い場合、穿孔(腸に穴が開くこと)を来たしている場合などがあげられます。
内科的治療で症状が軽くなり落ち着いた場合でも、後日再発するリスクがあるため、その再発を防ぐために炎症が落ち着いた後に待機的に手術を行う場合もあります。

 
 

急性虫垂炎の予防方法

急性虫垂炎は原因が様々あり、はっきり解明されているわけではありません。
ですが、その多くが糞石(便のかたまり)や食物残渣(口の中に残された食べ物のカス)などの異物によって、虫垂の入り口などが塞がれてしまうことで起こるとされています。したがって、食べ物に気をつけること、例えば魚の骨や果物の種などは除いて食べること等は予防につながると考えられます。
 
また、便秘も原因となりうることから、腸内環境を良好に保つためにバランスのとれた食生活を意識し、便秘にならないようにすることも大切です。ストレス、過労からくる暴飲暴食や寝不足などが引き金になってしまうこともある為、日頃からの生活習慣を整えることも病気の予防に重要であるといえます。

 
 

まとめ

急性虫垂炎は男女関係なく幅広い年齢に生じる病気です。
食生活、生活習慣、ストレスや便秘などが原因となることもあるため、どんな人でも発症する可能性があります。急性に発症し、時間が経過するほど症状も重くなり、命に関わることもある病気ですが、早急な対応によってしっかり治療することのできる病気です。
 
中には症状が軽い人もいますが、多くの場合では痛みが現れるため、自分で症状を自覚しやすいと考えられます。放っておくとどんどん悪化してしまうので、体調に違和感を感じた時にできるだけ早めに病院を受診することがとても大切です。ただ、発症初期の場合は症状が軽く、診断が難しいこともあります。症状が治まらない、悪化するようなことがある場合は、夜間であっても我慢せずに病院を受診するようにしましょう。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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